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風雲童話城ブログ

2015-10-11

[][][]輝く空と風、熱い少年の日々…『自転車少年 チャリンコボーイ』著/横山充男 絵/黒須高嶺

高知県の大河沿いの町で、八・五キロのコースを、小学生三人組みのチームで二周する自転車のタイム・トライアルレースが開催された。旗がふりおろされると同時に飛び出した、ちょっとめずらしい取り合わせの中小の三人。「ヒャッホー」とさけぶムードメーカーの吉平、自転車は坂道に強いマウンテンバイク。「ゴーッ」とあわせたキャプテンの颯太、自転車はスポーツ車のクロスバイク。「ラジャー」とこたえた情報係の晴美、自転車はがっしり型のランドナー。断トツ優勝候補は、南小のチーム。本気で、あいつらに勝ちてーっ! ゴールが見えてきたぞ、距離にして一キロ。よっしゃ。勝負はここからだぜ! カシャカシャカシャ、シャリシャリシャリ、シャーシャーシャー……聞こえてくるのは、三台のちゃりんこの音だけだ。はじけろ、小学校高学年男子! (BOOKデータより)

横山充男さんの四万十シリーズ六部作のラストの一冊です。

青い空、蒼い海、照りつける太陽と、澄んだ空気、きらめく風……四万十シリーズすべてを象徴する空と海と川と少年の物語、熱〜い一冊が、またまた届きました。

今回は自転車レースに挑む少年たち。といっても、今どきのスポーツタイプの自転車は高価で、よほど裕福な家庭の子どもしか手に入れることはできません。

裕福で恵まれたエリート少年チームに挑む、ごく普通の小学生の主人公と、その仲間たちが個性的で魅力的です。彼らがどうやって結ばれ、自転車に夢中になっていくのか、その過程がとても楽しいです。結果だけではなく、その過程こそが宝物だと思える物語こそ、むしろ、現代の子どもたちの力になるのではないのか…と思えた一冊でした。

さてこのシリーズは、1999年発行の『光っちょるぜよ、ぼくら』(文研出版/日本児童文芸家協会賞)に始まり、『少年たちの夏』(ポプラ社/課題図書)『おれたちゃ映画少年団』(文研出版)『夏っ飛び!』(文研出版)『ラストスパート!』(あかね書房)と続いた四万十川シリーズです。

どの作品も、横山さんのデビュー二作目となった『少年の海』(文研出版/児童文芸新人賞/課題図書)にも繋がるシリーズとも言えます。

鬱々と縮こまっていくテーマではなく、まさに夏の太陽に向かってゆく少年たちの吹き出す汗と友情のシリーズです。

こういう物語を描かせれば、児童文学界ひろしと言えども、この横山充男さんの右に出る人はいないでしょうか?

からっと明るく、まぶしい青空のようなこのシリーズを、ぜひ読んでみて下さい。

空の青さや、吹き抜ける風に心が洗われるような気がして、晴れ晴れと気持ち良くなること請け合いです。

少年の海 (文研じゅべにーる)

少年の海 (文研じゅべにーる)

少年たちの夏 (for Boys and Girls)

少年たちの夏 (for Boys and Girls)

2013-11-26

[][]『ラスト・スパート』(あかね書房

f:id:rieko-k:20131126170133j:image:left←amazonでは、まだ画像なしでしたので、画像アップしました〜

四万十川が豊かに流れる高知の町で、小学校最後の春をむかえた翔と親友の正信。町は、お祭り好きの大人たちのおかげで活気があるが、翔たちは、ただ元気に毎日をすごしているだけだった。そんなある日、河川敷でくらす男と出会う…。(BOOKデータより)

横山充男さんの新作です。

横山さんといえば、太陽、海、夏、少年たちの名作が数多くあります。

児童文学に希少な、本格少年文学の作家さんです。

今回も危なげなく、太陽の下、元気いっぱい駆け回る少年たちが、もう、本から飛び出してきそうです。

女性作家には決して書けない世界。

いや、それだけではなく、あの高知の海と川の町、四万十川流域に育った人にしか書けない物語です。

あの空と太陽の下で育てば、子どもはみんな健康になる〜♪ そんな気がするほど、子どもらしい、少年たちらしい物語です。

都会暮らしの鬱屈した暗い少年などは出てきません。

スコーンと突き抜けた青空と、少年たちの吹き出す汗と、心地よい風の物語。

そう、私も四万十へは数度行きましたが、あの町は、海風の町でもあるのです。

あの町では、少年たちだけでなく、おじさんたちもスコーンと突き抜けていて、いつまでも少年の顔をしているような気がします。心のくったくが昇華されて、明るくなるような物語です。

2013-04-06

[][]『天の磐笛(一)』

天の磐笛(第一巻)

天の磐笛(第一巻)

あの『水の精霊』から八年。時代はさらに混迷を深め、世界は文明の行き詰まりに喘いでいる。そんな現代を舞台にして、人間の作りあげた文明の根幹に迫る物語が電子書籍として上梓された。横山充男が放つ新たな大長編第一巻目である。『水の精霊』の姉妹編ともいえる本編は、高校生の主人公が、古代史の謎を解きながら人間の観念の本質である言霊や音霊に迫っていく。高校二年生である石上琅は、幼いときに両親を交通事故で亡くし、それ以来マンションでひとり暮らしを続けてきた。叔父の竜次が後見人であったが、月に一度やって来ればいいほうだった。亡き父親は信州大学で古代史を専門とする教員であったが、高校生になった琅も、いつしか縄文から弥生にかけての祭祀に興味をもつようになる。所属している民俗歴史研究会で、勾玉が楽器と関係していたのではないかという仮説をたて、友人の沢木洋介と資料集めをしていた。そんなとき、マンションに子鬼が出現し、死ぬほどの恐怖を味わう。その原因は、叔父の竜次にあった。土佐祭文流の呪術師であり、呪術師同士の争いに琅は巻き込まれたのであった。その争いの中で、亡き父親の家系が「太夫」と呼ばれる呪術師であったことが明らかに……(amazon内容説明より)

一気に読みました。今二巻目の半ばです。

登場する人物に、単純なキャラクターはいません。主人公の琅は高校生でありながら、内面に抱えている思い、葛藤、心の闇と光……の深みは、一巻を読み終えてなお、まだ計り知れません。そして、琅の叔父の竜次もまた、まだまだ謎めいています。

この琅と竜次にとって「敵」である若い呪術師、その妹、りんという少女はある種の特殊な能力を有する石笛吹きですが、この少女については、二巻の半ばでもまだ何も知らされてはいないのです。

そして、琅の亡き母親が、少女時代を過ごしたという奈良県山越村というのは、拙作『忍剣花百姫伝』にては「星鏡の磐座」とした実際に壮大な磐座のある地です。

物語は、この壮大な星鏡の地、山越村へつながっていくのではないかと、わくわくして読んでいます。

「天の磐笛」とは、握りこぶし二つ以上の大きさをもつ石笛をさす宗教楽器だそうです。

その磐笛をめぐる謎、事件が次々と起こって、読み出したら止まりません。しかも、謎が謎を呼んで、この先どうなるのか予測さえできません。

3.11の大震災、原発事故も物語の中に取り込まれていて、この困難な時代の文学ともいえるのではないかと思っています。

2008-06-11

[][]『星空へようこそ』横山充男

[rakuten:book:12933967:image]

懐かしいあの四万十川の町、光と風と青空の天地、高知県一条市が舞台です。

幸太と淳は星空を観測する観望会の小学生会員。二人の願いは、もっと性能のいい望遠鏡を買うこと。当然、両親はそんな贅沢な品は買ってくれません。

そんなある日、淳が、河原でひろっただけの石が高く売れるという話を聞き込みます。二人はさっそく河原の石さがしをします。

とはいえ、そう簡単に石は見つかりません。そこで、幸太はおじいちゃんのウナギ漁を手伝ってお小遣いをもらうことにしました。

そんな時、おじいちゃんの家へやって来たのは、都会育ちの幸太のいとこ愛梨でした。

お父さんを早くに亡くして、キャリアウーマンのお母さんが海外勤務になり、海外での準備ができるまで、愛梨は祖父母に預けられることになったのです。

大人びてなまいきな愛梨に、幸太は逃げ腰になりますが、親友の淳は心を惹かれていくようです。うぶで真っ直ぐで愛すべき少年たちと、心に傷をもつ都会の少女が、星空を通じて出会い、理解し合う爽やかな夏物語。

あとがきによれば、この本の作者も編集長も画家さんもかつて天体少年だったとか。さすがに星空の表現がダイナミック。読んでいるだけで、満天の星が目前に広がります。望遠鏡で宇宙に分け入ってゆく冒険を体験できます。

本を読んだ後は、 きっと、星空を見上げてみたくなりますよ。