Hatena::ブログ(Diary)

風雲童話城ブログ

2016-09-20

[][][]『ガラスの壁のむこうがわ』著/せいのあつこ 絵/北澤平祐

ガラスの壁のむこうがわ

ガラスの壁のむこうがわ

せいの/あつこ

大阪府出身。立命館大学文学部卒・同大学院前期課程修了。第十二回長編児童文学新人賞佳作。「季節風」会員。「うつのみや童話の会」会員。『ガラスの壁のむこうがわ』がデビュー作(BOOKデータより)

「早く友だちができるといいね」と、言われ続ける主人公、由香の描き方が、せいのさんらしく、痛く迫ってくる。

何気なく、周囲の人が言った言葉が、由香には、ぱしん、とぶつかってくるのだ。

それは、まるで、見えないガラスの豆みたいに、由香の心だけ、ぱしん、と打って、ころがって消えるのだ。お母さんが言った言葉も、クラスメイトの言葉も、ぱしん、ぱしんと、由香を打ち続ける。その切なさ、どうしようもなさが読者にも迫ってきて、胸が痛い。

けれど、この物語が、悪者といい人、いじめる人といじめられる人を色分けしただけの物語ではないことは、最後まで読めばわかる。誰の心にもある我儘な心、意地悪な気持ち、それに気付いた主人公のシーンに、私はつい泣きそうになった。

そして、ただ、人が羨ましくて仕方がなかった由香が気づいたのは、自分が自分であるままに楽しく生きる方法だった。いや、それに気づかせてくれたのは、これまで求めてきたような一方通行の友だちではなく、互いに認め合い磨き合っていける友だちだったのだ……それって、何? どうしたら、そうなるの? って思う方は、ぜひ読んで下さい。

個性的な子が生きにくい日本の学校にも、個々の先生や、子どもたちの愛は溢れているのだと、心温まるお話です。

2016-08-07

[][]若冲 ぞうと出会った少年』著/黒田志保子

若冲―ぞうと出会った少年

若冲―ぞうと出会った少年

京都の青物問屋「枡屋」の長男として生まれた若冲が「奇想の画家」として世に出るまでを描く。(BOOKデータより)

かの天才絵師、若冲の少年時代を彷彿としました。

時代を細やかに描いているにかかわらず、時代小説という距離を感じることなく、今の物語としても読める少年少女むき時代小説です。

作者の黒田さんは、時代物語を書くと思っていなかったとおっしゃっていますが、いやいや、まさに書くべき人が書いたと感じました。

絵を描くことに憑りつかれた少年、若冲の思いや焦り、そして、家族への愛のため、迷い苦しみながら、それを乗り越えて、絵師として生きる決意をする……これは、現代を生きる少年少女にとっても、とても力になる物語ではないのかと思いました。

そしてまた、この時代の自然災害や火事なども描かれ、私達の暮らす日本という土地は、常にそういう試練に遭って生き延びてきたのだということを、少年少女たちが知っておくことは、とても大切だとも思いました。

命の限り、ひたむきに生きる若冲の生きとし生ける者への愛の深さは、そういう国に生まれ死んでいく民族ならではなのかもしれません。

私が作家デビューした頃から親しかった黒田志保子さんですが、心から、いい作品を書いたね♡と、伝えたい一冊でした。

2015-08-04

[][][]『あめ・のち・ともだち』著/北原未夏子 絵/市居みか

日本児童文学者協会&国土社の公募「ともだちって☆いいな」入選作。

きょうは、トモキのたんじょう日。とおくへこしたゴウくんが、あそびにくる。トモキが、はりきってへやをかざっていると、ふしぎなあんごうがとどいて…。なかよしのふたりは、どんなたんじょう日をむかえるのかな。(BOOKデータより)

季節風同人、北原美夏子さんのデビュー作。

まだ、八歳と七歳のゴウとトモキ。

最初はにがてだったゴウを好きになってゆくトモキの気持ちが子どもらしく自然で、すうっと物語に入っていけます。

お誕生日の約束をめぐってのすれちがいのハラハラドキドキも、子ども心をつかんでいて、幼年ものに、たまにあるわざとらしさがなくて、あったかくて、いいお話でした。

フォーレンジャーの稲妻マーク、たしかにカッコいいよね〜♪