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風雲童話城ブログ

2015-03-30

[][][]『きずなを結ぶ震災学習列車』著/堀米薫

岩手県の海ぞいを走る三陸鉄道では、東日本大震災後、「震災学習列車」を運行しています。この列車に乗ると、地震と津波で受けた被害のあとや、復興していく被災地のようすを見ることができます。そして、被災した人たちの思いや願いを、生の声で聞くことができるのです。そこでは、どんなことが語られているのでしょうか―。(BOOKデータより)

佼成出版社のノンフィクションシリーズの一冊です。

宮城県南部にお住いの作家、堀米薫さんから届いた心に響く真実の物語。

あの震災時、陸の孤島を呼ばれた地域に暮らす人々がどれほどの苦難に見舞われたのか、また、その地域を支えようとする三陸鉄道の苦闘の歴史もさることながら、さらに震災を乗り越え、明日へと挑戦する三陸鉄道の人々の故郷への愛が胸に迫ります。

巻末に書かれた作者のメッセージには、宮城に住まわれていてあの震災を直に体験した人だからこそ、これを記録なさったんだなと思える素晴らしい言葉がありました。

「人が住んでいない場所に、鉄道を通しても無駄だと思いますか? そうじゃない。私たち三陸鉄道は、人がいなくなったからこそ通すんですよ。だって、鉄道が通っていなかったら、みんながもどってきたくても、もどってこられないじゃないですか」

三陸鉄道の二橋さんの言葉です。

人が住んでいない所には鉄道はいらないと考える、大都会の大多数の人間にとっては目からうろこの言葉ではないでしょうか。

人は、企業はどうあるべきか、国とは、自治体とは、公共機関とはどうあるべきか、人の命と暮らし、そしてその心を大切に考えなければ、故郷も国も荒廃をまぬがれられないことを、三陸の人々は知っていました。

私たち自身もまた、悲しいけれど、人より命より、企業の収入、お金だと考える企業や人々があることを、あの震災と津波の後に知ってしまいました。いや、この国の政治さえそういう人々が牛耳っている現実があることをどう受け止めればいいのでしょうか?

そう考えた時、原点は、この三陸鉄道を支える人々の真心にあると感じます。

震災で事故を起こした原発や、全国の原発は、比較的人口の少ない地域に建築され続けながら、その地域の人々のためにあるのではなかったことは明らかです。むしろ、事故があった時、被害者が少なくてすむ地域におこうという考えだったのでしょう。

原発は大都会のためにあるといわれてきましたが、それも疑問です。実の所、企業や国の一部の人々が潤うためにあったのではないでしょうか?

三陸鉄道にかかわる人々の真心に比して、この国の企業のあり方を問わずにはいられませんでした。

2015-01-23

[][][][]『金色のキャベツ』著/堀米 薫 絵/佐藤真紀子

あたし、わすれない!このキャベツ畑を、ぜったいにわすれないから!夏休み、あたしは両親にないしょで、大好きな仁ちゃんのはたらくキャベツ畑へ行った。そして、テストもピアノの発表会もない高原の畑で、「キャベツで生きてる」人たちに出会った― (BOOKデータより)

人生をいかに豊かなものにするか、感じるか……ということを教えてもらったような気がします。都会でギスギスと暮らす主人公の少女、風香だけでなく、読者の渇いた心も瑞々しく満たし、豊かにしてくれるような作品でした。

堀米薫さんは、全国同人誌連絡会「季節風」の同人でもあり、毎年秋に開催される「季節風大会」でも、レギュラーの作家さんでもあります。

季節風大会は、プロアマにかかわらず生原稿を引っ提げて集まり、二日かけて合評会をする熱い作家の研修の場で、この作品は、この季節風大会の「愛の物語分科会」へも提出されたことのある物語です。その作品が見事に結実して、この一冊の本になりました。

物語を読んでいると、見事な玉のようになったキャベツの畑の壮大な風景が目に浮かびます。キャベツ作りにかかわる人々のキラキラ輝く瞳も、汗も見えます。それだけでなく、キャベツサクッとを切った瞬間の音や香り立つ甘い匂い、その味まで、想像するだけで強く印象に残るのです。このレシピのコールスローを食べてみたいと、読者は皆思う事でしょう。

この物語は、少女、風香の喜びを読者も共に体験できる稀有な一冊でした。

風香が心惹かれる拓也も魅力的で、人が生きることの厳しさと喜びを、その背中で体現しているような少年で、生きることは甘くない、けれど、喜びに溢れていると感じさせてくれました。

ありがとう、仁ちゃん、風香、拓也って、お礼をいいたくなる物語です。

ぜひ、読んでみて下さい。

2014-12-28

[][][]『モーモー村のおくりもの』著/堀米 薫 絵/岡本 順

モーモー村に、ようこそ!この村の、ほんとうの名前は「百々谷村」。でも、人より牛の方が数が多いので、「モーモー村」と呼ばれているのです。ある春の日、モーモー村に、ママをなくした美咲がやってきました。自信をうしない、さびしさをかかえた美咲の心を、モーモー村のやさしい風がつつみこみます。小学中級から。(BOOKデータより)

季節風同人の作家、堀米薫さんの新刊です。

堀米さんは作家でもあり、一方で、山々に囲まれた豊かな土地で、牛を飼い、農業もなさっています。この物語は、その豊かな自然との触れ合いが随所に織り込まれた作品です。

牛の出産、母牛と子牛の愛、ホタル舞う棚田、稲の花の匂い、巣立っていく子牛…など、都会暮らしの子どもたちには体験できない物語が描かれています。登場する人物像も、子どもから年寄りまで、どの人も豊かでたくましく、その色彩も香りも、目に見えて、ふくいくと香ってきそうです。

体験した人にしか書けない濃く豊かな物語なので、自然との触れ合いの少ない都会の子どもたちに、素晴らしい贈り物になると思います。

また、この物語には、沢山のお婆さんが登場しますが、その人たちがみな素晴らしい能力を持っていらして、周囲から尊敬されていらっしゃるのを見て、その土地の人々を羨ましく感じました。私の育ったのは京の下町ですが、やっぱりおばあさんが一杯いらしたけれど、こんなに生き生きとなさっていたり、周囲から尊敬されたりというような幸せなお婆さんはそれほど多くなかったような気がします。都会の年寄りにもこんな幸せを〜と、心から願わずにはいられませんでした。

2014-03-25

[][][]東日本大震災を語り継ぐ物語『思い出をレスキューせよ!』著/堀米薫

写真、本、手紙、長い時間を生きのびてきた紙には、人々の記憶まで残されています。それを救うことで、被災者の大きな力になるのです。写真、本、手紙や書き物、賞状…、長い時間を生きのびてきた紙には、人々の記憶まで残されている。東日本大震災の被災地や、全国のボランティア団体などで進められた、被災した写真を救う「写真洗浄」(「BOOK」データベースより)

この物語は、宮城の作家として、素晴らしい物語を次々刊行されている堀米薫さんの新刊ドキュメントの物語です。

主人公の金野聡子さんはイギリス留学などを通じ、「紙本・書籍保存修復士」「製本家」となられた方です。

故郷を襲った東日本大震災によって、津波に流され、瓦礫やごみにまみれてしまった多くの方々の家に保存されていた家族の写真、本、古書、賞状…それらを自ら洗浄し修復しようと思い立った金野さんのご苦労やご活躍を丁寧に描き切ったドキュメントです。

この物語を語るより、金野さんが問いかけられたこの言葉をご紹介したいと思います。

「思い出を救うことは、被災した方が、これからを生きていくための大きな力になる。そうは、思われませんか?」

この言葉につまっている大きな愛、深い愛こそが、この物語の骨格となっています。

一読に値する一冊であり、語り継いでいってもらいたい記録でもあります。

2013-03-21

[][]『命のバトン 津波を生きぬいた奇跡の牛の物語』著/堀米薫(佼成出版社

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宮城県農業高等学校、通称「みやのう」では、生徒たちが三十四頭の牛を大切に育てながら、牛のコンテスト「共進会」を目指してがんばっていました。ところが、二〇一一年三月十一日、東日本大震災がおこり、大津波が「みやのう」におそいかかります。生徒たちだけでなく、牛の命も守ろうと奮闘した先生たち。その手によって助けられた命は、やがて被災した人たちに大きなはげましを贈ったのです―。(BOOKデータベースより)

あの時の恐怖がよみがえります。あのなか、「みやのう」の学生たちが代々も護ってきたDNAを継いだ牛たちを救おうと、命がけで飼育小屋に駆け付けた先生方の熱い思い。津波の迫る寸前、飼育小屋につながれた牛たちを放すことはできたのですが、直後、押し寄せてきた大津波。死を覚悟した先生方を救ったのは「みやのう」の高台にあった農場の滑車の鉄骨でした。

無事でと願った牛たちの多くが溺死したなか、高台に逃げて助かった牛たち、遠い町でみつかった牛たち、どこの牛ともわからないのに、餌をやってくれた町の人々…どの出来事も、あの時の出来事と思えば、胸に迫ります。

人も動物も助け合ったあの日、あの時……命の温かみがしみじみと伝わってきます。

命の瀬戸際に追い詰められた時、牛も人も命の温かさにこそ、心を癒されるのかもしれません。

2013-03-02

[][]『林業少年』作/堀米薫 絵/スカイエマ

林業少年

林業少年

山持ちとして代々続く大沢家の長男・喜樹は、祖父・庄蔵の期待を一身に受けていた。家族から「干物」と陰口をたたかれる庄蔵だが、木材取引の現場では「勝負師」に変身する。百年杉の伐採を見届け、その重量感に圧倒された喜樹は―。山彦と姫神の物語。 (amazon内容紹介より)

 

現代の子どもたちがほとんど知らない山のこと、林業のことを描ける作家はめったにいません。ましてや、児童文学として書いてくれる作家がいたことは、子どもたちにとって大切な宝物になるはずだと思いました。

今や、安価な輸入材に押されて売れにくい国産材だけれども、山を守って育てる林家、その現場で働く山の仙人といってもいいような職人たち、機械ではない命の震えを感じさせてくれる力強い馬の姿に、心からの敬意と、切ないような愛おしさがわきあがってきます。百年杉を目の前で見たような臨場感に、木の姿をした日本の神に出会ったようで、登場人物と一緒に手を合わせたくなりました。画家のスカイエマさんも、挿絵を描くために山へ入られたとか。丁寧に、愛をこめてつくられた一冊です。読まなきゃソン!といってもいいような、命と愛がつまった物語です。

2013-02-28

[][]『語りつぎお話絵本3月11日 1』作/堀米薫・ささきあり 絵/スガワラケイコ・タカタカヲリ(学研)

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語りつぎお話絵本3月11日(全8巻)

語りつぎお話絵本3月11日(全8巻)

2011年3月11日に発生した東日本大震災を題材とする、聞き取りをもとにしたノンフィクション絵本。体験者の実話と、地震に関する資料ページで構成している。被災体験を読者に伝え、その心情と教訓をわかりやすく伝える。 (amazon内容説明より)

貴重な語りつぎ絵本の中の一冊目には、堀米薫さんの「りょうくんと子牛の光」と、ささきありさんの「どろ水がふきだした」の二つの物語が入っている。どちらも、あの3.11大震災を体験した人しか書けない物語で、あの震災を語りつぐために貴重な物語です。

「りょうくんと子牛の光」は、友人作家である堀米さんの作品。子どもと子牛の触れ合いが胸に迫りました。農業と畜産をしておられる堀米さんの暮らしには、彼女のブログ日記で度々触れているし、同人仲間でもあることから、直にお話しする機会も多いのです。私自身、子牛の光が生まれた時も知っています。命が生まれる瞬間のあの喜びと輝き。すくすく育っていく命の愛しさ……その一つ一つの愛を、あの震災、あの原発事故はどれほど奪っていったのでしょうか。

天災はどうしようもないかもしれない。けれど、人災である原発事故のせいで人々は故郷を奪われ、牛も豚も鶏も野生の生き物も、どれほど死んでいったでしょう。

そう思えば、すんだことは仕方がないと忘れてしまうことは、決して、してはならないことだと思います。語り継ごう。そして、もう二度とこんなことが起こらない暮らしを選び取ろうと、強く思わせられた絵本でした。

2012-04-03

[][]おめでとう〜季節風同人快進撃続々…

チョコレートと青い空 (ホップステップキッズ!)

嬉しいお知らせです。

季節風同人、堀米薫さんの『チョコレートと青い空』(そうえん社)が、日本児童文芸家協会新人賞を受賞されました!

堀米さん、ほんとにおめでとう〜

「チョコレートと青い空」は、季節風大会の、亡き後藤竜二さんの物語分科会に提出された作品です。

後藤さん、喜んでいらっしゃるだろうなあ。

さらに、季節風同人の快進撃が続いています。詳しいお知らせはまた後日に。