オーガストの二次創作はなぜブレイクしないのか?

 夜明け前より瑠璃色な-Moonlight Cradle-を買うかどうか迷ってます。PS2版で甘い展開をほとんど描いてくれなくて消化不良のエステルと、エロ展開が描かれていなかったみたいなリースが気になってます。
 さて、前回のエントリでオーガストの同人人気の低さについて言及しましたが、コミケでのスペース数やオンリーイベントの規模の面もさることながら、SS(小説)の数もそれほど多くないようです。
 ただゲームの売り上げ数は、最新作であるFAで10万本を突破したと言う情報もあり、既に鍵や東鳩シリーズと肩を並べるほどの人気となりました。それなのに同人人気の盛り上がり方は、鍵や型月には遠く及ばない規模にとどまっています。なぜ大きくなっていないんでしょうか?
 僕は「よあけな」のPS2版をプレイしたのみなので、そこからのイメージだけで語りますが、いくつかこれじゃないかな?と思う部分があるので挙げてみます。

-ストーリー的に自己完結している
 鍵などに比べると、オーガストのシナリオは自己完結しているのかな、と。恋愛して成就して、甘い展開があって、関係に危機があって、そして乗り越えてエンディング、みたいな。要は、一連の流れに特に不満も無く、途中で「あれ?こういう展開もよくね?」っていうこともなく、満足感はあるんだけどそれまで、みたいな。鍵なんかだと「この終わり方は無いだろ!!」って不満もあったり、あるいは恋愛要素が薄いせいで「もっと甘いのを!」みたいな欲求も湧いてきたりで、いくらでも書く余地があるんですよね。そして読み手も同じように感じている。でも、オーガスト作品に関しては、その辺の欲求が湧かないんじゃないかなあと。よあけなでも、リースとか一部謎のありそうなキャラはいるんですが、ゲーム全体としての謎とまではいかないレベルですし、あくまで脇キャラの謎なんで、それを考察して二次創作に生かそう、とまでは行かないんですよね。書き手でさえそう思うんですから、読み専の人たちはもっと原作だけで完結しているんじゃなかろうかと。

-エロを描ききっている→エロへ欲求が同人でぶつけるほど無い
 PS2版しかやってない僕にはわかんないのですが(汗、ただ、エロ無し版でもわかるのが、Hシーン前後の展開の自然さと凄さ。特段漸進さがあるわけではないんですが、エロが無くてもエロシーンの素晴らしさがわかるという、甘さの描き方が素晴らしいと思いました。そこから感じたのが、エロを描きたいから同人をやる、って欲求や衝動が沸き起こらないのかなあ、と。実際にとある調査で、ギャルゲージャンルにおけるエロ同人誌の割合は、鍵や型月、アイマスなどのジャンルでは低かったんですよね。ストーリーや純粋なキャラへの思い入れの強いジャンルではエロがそれほど流行らないのかもしれません。逆に東鳩2なんかではエロの割合が相当に高かったですし。ですから、オーガスト作品もエロで出すには、キャラへの思い入れが深く、エロを描きたい!もっと見たい!と思う人が少ないのかもしれません。


-読み専に好かれる作風?
 これは推測ですが、書き手にあまりウケていないのかな?と。考察をしなければならないような部分が少なく、要はゲームを一度プレイすればほぼ謎が解けるみたいな、そういうある意味でユーザーライクな部分が、読み専の人たちに強く支持されているのかな、と。どちらかと言えば僕らみたいな、後から考察することを前提にして、一度では読み解けないようなシナリオで普通じゃない?って考えているような作り手側?の人間には物足りないんじゃないのかなあと。オーガストのユーザーライクな姿勢は、あまり作り手側を刺激するようには見えないのかもしれません。少しくらい、読み手(ユーザー)に不親切なところとか、ある意味投げっぱなしなほうが、二次創作をしたくなる衝動に駆られる人間が多くなるようにも思います。その意味では、ユーザーライクな姿勢が売り上げを押し上げる一因にはなっているのでしょうが、反面、二次創作を盛り上げる要素にはなりえていない気がしました。鍵とか投げっぱなしですからねw アクの弱さが、100点か0点かを求める二次創作者には受けず、平均80点を求める読み専の人たちに受けたのかなとか。TH2とかは逆に、キャラにシナリオがついて行ってない感じもありましたので、逆に補完したくなるのかなと。

-コンシューマ(ギャルゲー)市場の縮小
 東鳩Kanonが爆発的にヒットした時代は、エルフやアリスソフトといったエロゲオンリーのユーザーと、ときメモやらサクラ大戦やらのコンシューマのギャルゲーオンリーのユーザーとが、ちょうど融合した時期だったように記憶しています。
 実際、ギャルゲーの売り上げ数は目に見えて減少しています。
http://d.hatena.ne.jp/Nota/20080714/1216038606
 こうしてみると、ときメモサクラ大戦シリーズの売り上げは突出しているのですが、そのほとんどが2000年前後という時期に集中しています。要は、この時期にギャルゲーというジャンルが爆発的に広がり、ライトなユーザーにも触れる機会が多くなり、それで同人にも伝播していったのだろうと。逆に最近では、エロゲ界では上限10〜15万本ながら毎年売り上げ自体は一定を保っているのですが、コンシューマ移植作の売り上げは、5万本も超えない状態に陥ってしまってます。前にも書いたかもしれませんが、エロゲユーザーと言うのは結構特殊な存在です。一般的ではありません。なので、その少ないエロゲユーザーの中から更に同人とか二次創作をやってる人間ってのはそう多くないんですよね。エロゲの流行を追いながらやってるって人が。どちらかと言えばブランドを絞ってやってる人のほうが多いような。
 葉っぱ(リーフ/アクアプラス)作品の健闘が光りますね。葉はライトなユーザーを取り込む戦略には長けているようです。あまりゲームのジャンルを固定化してないのもいいのかもしれません。
 オーガストをこの分野で当てはめてみると…やはり時代の流れの影響を受けているようにも思えます。つまり、2000年前後に「よあけな」のコンシューマ版を出していたら、平気で10万本以上売り上げていたでしょう。それが5万本行ったかどうかなんですから…。コンシューマ機におけるギャルゲー(恋愛メイン)市場が大幅に縮小していることに他ならないように思えます。ま、PC普及率が高まって、コンシューマ機しか持って無い人間が減ったことで、移植作が初プレイだって人が減っていることも影響はしているでしょうけども。

-時代の流れ
 前回のエントリで書いたように、世界観やシナリオがガッチリと固められている作品が同人では敬遠されて、割と自由度の高い作品が好まれる傾向が強まっているってことです。

-べっかんこう絵に問題?
 オーガストといえばべっかんこう絵、べっかんこう氏といえばオーガスト、と言うくらいに、氏の絵がオーガストのイメージを形作っていると言うか、それそのものがオーガストと言っても過言では無いと思います。そのくらいにべっかんこう絵のイメージはでかいはずです。そのべっかんこう氏の絵が二次創作の障害になっているような気がするんですが…。それだけで一つのエントリが書けそうなので、この部分はまた後日やろうかと思います。
 
 例のキャベツなどアニメ化に恵まれていないという部分もあるでしょうが、TH2もアニメでは大して話題にならず、ゲーム原作での人気がほとんどでした。のでやはり、原作単体での人気が物を言うんじゃないかなと。アニメが絶賛されたAIRなんかは、そこからの同人人気はあまり拡大しませんでしたし、CLANNADではアニメ化以前から同人人気は割と一定でしたからね。
 また、歴史の古さが同人人気を左右してるんじゃ?ってこともありますが、Keyジャンルで同人活動をしている人たちの多くは、Kanonくらいから活動している…人ってのは少なく、むしろCLANNADすらプレイしてなくて、リトバスから入ったって人もいますから、ずっと同じジャンルにとどまってる人が多いから盛り上がっている、ってのも間違いではあります。
 個人的には、べっかんこう絵に対する障害が大きい気がするんですけどね。そこさえクリアしてしまえば、もう少し同人が増えてもいい気がしますが。ただ、緩やかに人気が拡大していった感じで、ブーム的な盛り上がりじゃなかったですから、同人野郎が飛びつきにくかった感もあります。ので、これからもオーガストの同人人気はそれほど高まらないように考えています。作風を変え、実験的な作品を出すのなら動きがあるのかもしれませんが…。
 オーガストで同人をやってる方、盛り上がってると感じている方で気分を害した方がいたらすいません。