京アニ+ポニーキャニオンがリトルバスターズ!のアニメ化に踏み切らない理由とは?

※2011年8月に最新のリトバスアニメ化関連記事を書きましたので検索で来られた方はこちらからどうぞ。
京アニはない?〜リトルバスターズ!アニメ化は実現するのか?・2011年夏版

 Angel Beats!も終わり、そろそろ鍵っ子の中では高まってきているのが「リトルバスターズ!リトバス)」のアニメ化の声です。これまで何度も憶測情報やらデマ流言などがありましたが、そのたびにソースが無かったりして噂の領域を越えることはありませんでした。VA馬場社長もTwitterや実際に話されていた感じでは「話があれば……」という状態だったので、VAとしては特にAB!があるからどうこう、というわけではなさそうな雰囲気です。
 今までの流れとして、恐らくリトバスのアニメ化をするのであれば、まず京アニこと京都アニメーションポニーキャニオンでしょう。劇場版もしくはKanon以来のアニメ版となれば東映アニメーションも有り得ますが、京アニでアニメ化される可能性が高いという認識はあるかと思います。AB!で実績のあるPA worksの可能性もあるにはありますが……。でも、ここでは京アニポニーキャニオンのコンビ(ムービックも含みますが)での話に留めておきます。
 さて、本題としてですが……。なかなかアニメ化の声が聴こえてこないのがリトバスです。既に発売して3年が経過していますが、一向にアニメ化の話が出てきていません。そもそもKey作品のアニメ化はゲーム発売から数年後が慣例だったために、リトバスも十分な熟成期間を経て作られるものなのかもしれませんが、何となく「そろそろそういう話が無いとおかしくないか?」という気がしないでもありません。何せ、既にクドわふたーも出てますし、Rewriteも体験版でかなりの情報が公開されたとのことで、だんだんと世間からリトバスの熱も薄れつつあるように感じています。むしろそろそろアニメ化の話だけでも出しておいたほうがいいんじゃないかと思うわけですが、それすらも今の段階では無さそうです。
 個人的には、京アニリトバスのアニメ化に踏み切らないのは理由があると思っています。今までだと、Key作品→他作品→Key作品→他作品……という流れで来ていたのが、けいおん!!でその流れが変わってしまいました。けいおん!!の後は「日常」というシュール系のギャグ漫画が予定されており(ただし詳細や形態は不明)、まだまだリトバスの名前は挙がってきていません。やるなら相当な準備期間もいるでしょうし、発表から半年くらいは間もあるでしょうから、今年中のアニメ化は無くなったものと見てもいいでしょう。どうも先延ばしにしているというよりも、やりたがっていないような気がしてならないのです。
 もちろんリトバスのアニメ化ともなれば、BDは2万枚以上は売り上げるでしょうから、まあまず大きくこける心配はないでしょう。構成の難しさは言うまでもありませんが、やれば話題には必ずなると思うのですが……それでもやりたがらないのは以下のような理由があるからだと思っています。

  • 声優のキャスティングが出来ない

 けいおん!!もそうですし、ハルヒらき☆すたなんかもそうですが、これらは全て原作が漫画・小説など「声のついていない原作」です。そうなると、アニメ化の際には声優のキャスティングをしなければなりません。というか、逆に言えばキャスティングの自由があります。ここが、ゲーム原作の作品と大きく異なる点じゃないかと考えています。
 リトバスだと、既に声優が決まっていて、迷わなくても良いという反面、キャスティング面で戦略的に動くことはできません。
 「けいおん!」なんかはその点、ものすごく声優のキャスティングが生きた作品ではないかと思います。一期が始まる当初は、ほとんどの声優が無名の若手だったわけですが、豊崎愛生日笠陽子といった、声優としての演技力もある程度はありながら、歌唱力がずば抜けていたあたりを重要視したキャスティングでものの見事に大成功しました。けいおん!を見ていればわかるように、声の演技はもちろんでしょうけど、OPやED、挿入歌やキャラソンに至るまで、全ての歌曲を起用した声優に歌わせているあたりを見ても、このキャスティングが歌わせることを見越した起用であったことは間違いないところでしょう。当時は若手で無名だった声優を起用することにより、けいおん!関連の仕事を重点的にやれるので、色んなメディア展開も可能だった、という面もあったように思いますが、それも最初のキャスティング段階で、アニメ制作側が狙った通りの起用が出来たからやれたことなんだろうと思います。
 そう考えると、既にキャスティングが決まってしまっているリトバスでは、そうした戦略は打てないわけです。
 リトバスの声優は、そもそもエロゲ化を視野に入れていたこともあって、ほぼ全ての声優がエロゲ声優です。エロゲ声優というと差別的な言い方にも見えますが、表名義もありながら実際はエロゲで使っている名義が通る声優ばかり、という意味です。事務所的にはどうなっているのかはわかりませんが、エロゲ的にはオールスターと言えるような豪華なキャスティングではあるので、表名義として売りだしていこう、というところまでは考えられていないような気はします。一部、例えば朱鷺戸沙耶役の櫻井浩美は、Angel Beats!のゆり役として抜擢もされていて、個人的には売りだそうという意図は見えはするのですが。
 キャラソンだって、既に鈴・沙耶・佐々美・佳奈多と出ているわけですが、麻枝准を始めとしたKeyスタッフによる作詞作曲です。まだ出ていないキャラもいるにはいますが、やるとしてもアニメ側が作ったものを原作ファンが受け入れるかどうかは微妙なところです。
 こう考えると、キャスティングがアニメ側で出来ないことで、ずいぶんとアニメ制作側の自由度の意味では小さくなってしまっているように感じるのです。

  • 原作ファンの影響力が強い

 一部エロゲ原作のアニメでは、キャスティングの変更というのがしばしば行われます。これは、前述のような戦略的なキャスティングをアニメ制作側がしたい場合であるとか、あるいはやむを得ない場合(表では仕事が出来ないとか? スケジュール的にとか?)に、原作から一部キャラが変更されたりというケースがあります。割と批判されやすいケースですが、Key作品に関しては更に批判の声が大きくなりそうなのです。
 Key作品で原作から声が変わったといえば、AIRの主人公である国崎往人ですが、AIRはそもそもは声がついておらず、コンシューマ版を出すときに声を追加したということもありましたので、それほど大きな批判に晒されることはありませんでした。Kanon美坂栞も、コンシューマ版・アニメ東映版やドラマCD、そして京アニ版と声が異なるそうなのですが、一部に違和感を訴えるような声もありましたがそれほど大きくはありませんでした。
 しかしながら、リトバスでは事情が大きく異なるような気がします。原作のゲームには最初から声が入っています。そして、まあ素晴らしいキャスティングですし演技力で魅了されているわけです。リトバスの声の部分に関して、不満がある人はほとんどいないはずです。なので、ここから何らかの事情で声優さんが変わったりすると、それこそ原作ファンからのブーイングが非常に激しくなるのではないかと思うわけです。そしてその理由が、戦略的な、あるいはアニメ制作側の大人の事情的な意味でのキャスト変更だったりした場合は、原作ファンのボイコットまで起きるんじゃないかとさえ考えてしまいます。
 ……と、それほどまでに考えてしまうのは、他のゲーム原作アニメではあるのだろうか? とも思います。これは、原作派がかなり多い、あるいは原作派の影響力を無視できないKey作品ならではの問題なのかな? ということです。
 特に京アニの作るKeyアニメは、原作派のユーザーや原作スタッフへの配慮というか気遣いが随所に見える作りをしています。音楽を自前で作らず、ゲームのサントラから使ったりするあたりは最たるものでしょう。なので、今さら原作派を落胆させるようなキャスト変更はしにくいだろうなあ、と思います。 その他でも、原作を活かすということは、つまりはアニメオリジナル要素の割合が減ってしまう、ということにもつながると思います。アニメオリジナル回を作ったりするのが、特にKey作品のアニメでは非常に難しいですよね。必ず賛否両論ある場所になってしまってますし。CLANNAD ASの場合、そのオリジナル回が原作者の麻枝准が「ないわー」と言ったとかという話もあったとかで、それもアニメ制作側には入ってきていることでしょう。
 とまあこんな感じで、原作ファンが強い、あるいはその動向が無視できないKey作品においては、アニメ化の際にそこに縛られることも多いのかな? と思うわけです。
 そういえば、京アニCLANNADでDVD特典としてついたDVDオリジナル回の智代や杏エピソードは、どちらも分岐後の原作エピソードなんですよね。アニメオリジナルエピソードは本当に少なかったと思います。

  • 音楽CDによる売り上げがアニメ制作側に入らない

 特にCLANNADがそうだったのですが、「だんご大家族」「時を刻む唄」などの曲はアニメ用の新曲だったのですが、発売元はKSLとVAだったんですよね。というわけで全くアニメ制作側にはお金は入ってきてないはずです。ジャケ絵がアニメの絵だったので、その辺ではアニメ側にもお金は入ってきたのかもしれませんが、作詞作曲がKeyの中の人だったわけですし(メグメルは違いますが)、印税的なものもすべてVAということになっています(KSL発売のものはJASRAC管轄外なので、そもそも印税というものも発生しないのかもしれませんが)。
 Angel Beats!に関しても、楽曲は全てKSLからの発売になっています。もちろん鍵作品といえば、麻枝准折戸伸治の音楽があってこそ、というイメージもあるからなんですが、全てVA側の楽曲になっているのは、恐らく他のアニメからすれば考えられないようなものだと思います。まあ内情はどうなっているのかはわかりませんが……。
 そして、さきほどのキャスティングの話の続きですが、つまりはアニメ側からの仕掛けでの楽曲リリースがやりにくい構造なんじゃないかと思うわけです。けいおん!!を何度も取り上げるのもアレですが、けいおん!!で言えば、主題歌(OP/ED)の曲調に、放課後ティータイムとして女子高生バンドが作ったような曲調に、更にはキャラソンな曲調もあって、実は曲調が統一されていないんですよね。こういう混在が許されるのは、アニメ制作側が意図的にCDをリリース出来ているからではないかと思うわけです。
 これがKey作品になると、曲を作るのが麻枝准など原作スタッフになるために、アニメ側の意図的な展開が図れないことにもなります。
 もちろん、劇場版AIRCLANNADのように、アニメ制作側がオリジナルで楽曲を制作する、というやり方もあるにはあるんですが、原作ファンからはあまり支持されなかったようにも記憶していますので、やりにくいのはやりにくいでしょうね。

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 とまあ色々と挙げてみたわけですが、詰まるところ、「儲からない」のと「原作派の批判を招きたくない」ことからやりにくいのだと思います。特に京アニの場合、平野綾らの認知度を高めたハルヒらき☆すた、主要キャラの声優が皆有名になっていったけいおん!らと、Key原作アニメとでは事情が違いすぎます。
 それでも、リトバス京アニからアニメ化されるという噂が絶えないのは、ファンの要望が強いからなのか、京アニがKey作品のアニメ化にこだわっているからなのかはわかりません。京アニが一躍有名になったのが「AIR」だったからかもしれませんが。
 けいおん!!ではアニメオリジナルエピソードでもかなり頑張っている京アニなので、「オリジナルに弱い」京アニというのは、特に原作が強すぎてやりにくいKey作品だからこそ、とも言えるのかもしれませんね。そこは、リトバスでも相当苦労しそうな部分ではありますが……。


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