ホラーやグロ以外の要素も楽しみたい、アニメ「Another」

 今期アニメでも非常に異色というか我が道を行く感のあるAnotherが面白くなって来ました。もともと、イカ娘やアザゼルさんなどの水島努監督と花咲くいろはAngel Beats!P.A.WORKSが組むということで期待はしていましたが、予想していたよりも恐らくは原作が面白いのでしょうか話そのものも面白いし自分好みな感じでした。
 ただ、とはいえ世間的にはそんなに火がついていないようですし、ホラー要素やグロ的な部分が印象として勝ちすぎているような人が多いようにも思えます。なので今回は、ホラーやグロを普段から特に好んで観ているわけでもない自分の目から見るAnotherが面白く見えている部分を紹介していきたいと思います。前回の記事もその一端ではあるんですが、更に踏み込んで観てみたいと思います。
 ちなみに、自分は原作未読でアニメ4話まで観た感想からの記事ですがどうぞ。

  • 映像の美しさと細やかさ

 これは前回の記事でも一部書きましたが、今期アニメでも随一ではないかと思うくらいのレベルだと思います。元々P.A.WORKSの背景美術は非常に定評がありますが、キャラクターの作画までここまで良かった記憶はあまりないってくらいに綺麗ですね。個人的には、静止画としても凄く綺麗な絵なのにめちゃくちゃ細かくよく動く方に目が行きます。何気ない表情の変化や仕草までヌルヌル動くんですよね。他のアニメで言うところの「今の場面凄かったよね」な作画がほぼずっと続く感じでもあります。その上で、1話終盤に主人公の恒一が委員長に鳴のことを言った時の表情の変化の時みたいな更に動く場面もあるので、テレビアニメとしてかなりの水準、とまで言えるのではないでしょうか。基本的には会話シーンがほとんどで、派手なアクションとかそういうものがあまりないからこそ出来る芸当でもあるのでしょうが、作画に割くリソースを惜しげもなく割いている印象です。
 背景が素晴らしいのは相変わらずですが、色使いがとにかく素晴らしいの一言です。原色の赤が際立つ鮮やかさなのに、どのシーンも確実に暗い雰囲気を出してますよね。そして人物もその雰囲気に溶け込む者や、違和感のある柔らかさを感じる者とかそれぞれのキャラクターに応じた色をしているように感じます。
 こうした際立つ作画が作品の雰囲気作りにもつながっていますし、よりエグいシーンが悲惨に見えるようにもなっているのですが、グロシーンの引き立て役というよりは、細かい心情の変化や状況の変化が細やかに描写され、視聴者にも伝わるように演出されているのだという見方のほうがより楽しめるんじゃないかと個人的には思ってます。

  • コミュニティ単位として観る「Another」

 個人的に面白いなーと思って観てるのがこの作品内での人間関係です。主人公を中心とする人間関係の他に、コミュニティ単位での人間関係でも事件や謎に対するスタンスが全然違うのも面白いところでしょう。
 まずは3年3組というコミュニティの中での人間関係を。主人公の恒一は転校生かつ、「さかきばら」という禁句的な苗字を持つことで3年3組内でもかなり腫れ物的な扱いを受けています。そして恐らくは見崎鳴か過去の事件への対策係である赤沢さんと彼女や過去の事件に関する噂を信じるグループ、1話で恒一の周りにに群がるクラスメイトを外から訝しげに観ていたキャラクターたち、関わろうとしないキャラ、自分たちだけの世界に入ってるキャラと、いくつかのグループに分かれるような気がしています。まだ、主人公に積極的に関わろうとしたクラスメイトの他にはわからないキャラが多いのですが、例えばエンディングにも出てきているメガネでショートの子なんかは「外から訝しげに観ていた」グループに入るので、どう関わってくるのかが今から楽しみでならないのです。我関せずなグループではないので、いずれ恒一に何らかのアクションを起こすのは間違いないでしょうし。
 「よみきた」における3年3組と他のクラス、というコミュニティの違いも大きいですよね。他のクラスでは恐らく過去の事件についても教えられていないのでしょうし、ナレーションのように入る男女のうわさ話でもあったように腫れ物扱いにしてハブられているのが3年3組なのでしょうから。また、「よみきた」か別の中学かでも事件に対する知識が大きく違うようにも感じます。恒一のおばさんである怜子はあまり事件のことや噂のことに詳しくないようにも見えますし、看護婦の水野さんに至ってはほとんど無知に近いのですが……。
 3年3組に在籍している、あるいは在籍していた人間が親兄弟にいるのかどうかという繋がりで観るのも興味深いですよね。怜子は言い伝えみたいなものは知っているけど事件については少しずつしか出て来ません。どうも、恒一の母親が事件にかなり深く関わっているようですし、トラウマ的というか心の奥底にしまい込んでいるような雰囲気です。水野さんは当初は弟と話さなかったのに、事件や謎についてのことで弟と関わるキッカケになりましたし、恒一との接触と弟という存在からいきなり深く3年3組と関わってしまった(それが死に繋がった?)と観るのも面白いんじゃないかと思います。
 そしてもう一つは「夜見山」という街(の市民)というコミュニティですね。田舎町ということで閉鎖的でもありますし、噂が広がりやすいこととも関わりがあるのでしょう。ただし、そこの住民だからといって事件についての知識があるとは限らず、逆に事件や謎に縁が無くともいきなり近づいて巻き込まれてしまう可能性がある、とも言えると思います。現時点で亡くなった2人は恒一との繋がりが強かったり「見崎鳴」というワードを聞かされたという共通点もありますが、恐らくは委員長もそうなんでしょうが家族にも話したりしたのかもしれません。どちらも3年3組に在籍している子どもの側ではなく家族から巻き込まれているのが印象的ですね。

  • 人間ドラマとして観る「Another」

 コミュニティとしての項と関連するのですが、主人公の恒一を中心とする、あるいは主人公が転校したことで起こっている人間関係の変化が面白いですね。
 恒一中心だと、例えば看護婦の水野さんは完全に恒一にハマってましたよね。入院してた中学生男子と電話番号交換したり、仕事中に電話かけてきたりしてるあたりも凄いのですが(最初は夜勤中に病院内だったのが最後は昼間に屋上でとエスカレートしてる)、夜勤上がりで待ち合わせて二人で食事しながら長話と、恒一の方はともかく水野さん的にはかなり気があるという感じでしょう。恒一が鳴のことを話しだして茶化すあたりはやや嫉妬的なものも感じたりします。あのまま行けば恒一は食べられちゃうよな……とまで思っていましたw
 他にも、亡くなった委員長こと桜木さんも主人公と言うか東京への憧れを打ち明けてますし、赤沢さんも恒一の進学先を聴いて行こうかとか言ってみたりそれに反応して恒一を睨む男子生徒もいるなど、かなりの波紋を呼んでいます。他のクラスメイトには見えない(?)とはいえ、鳴にも気遣われてるあたりなかなかモテるのかもしれませんね。
 他にも、最初は仲良さげにしていたのにあまりに鳴の方へ行く(実際にはいないものがいるかのように振舞おうとしてるのでしょうが)ことで距離を取り始める勅使河原君とかも面白いですよね。赤沢さんが欠席した時に色々とうかつなことを言っても肝心なことは言えなかったようなので不器用というかアホなんでしょうが、でも憎めない良い奴な雰囲気を出してますよね。まともな話ならいい友達になるんでしょうが。他にも色々とキャラはいますが、エンディングや公式のキャラ紹介ページで紹介されていてもまだまだ接触の少ないキャラばかりですから、事件が動いて来てどう恒一へのスタンスが変わるのかも個人的には楽しみが多いです。恋愛絡みも、赤沢さん絡みとかであるのかもしれませんね。

  • 人形による暗喩?

 1話から頻繁に入り、人形の店も出てきたりと非常に人形がよく出てくるのですが、これは何を示しているのでしょうか?
 まあ言及するまでもないのでしょうけど、事件にこれから関わる人、あるいは巻き込まれた人、という意味なんでしょうね。鳴に似た人形から、鳴がそもそも人形なのかどうかという疑いもあるわけですが。4話で店にいる時に落下した人形はその後のエレベーター落下の示唆をしていた可能性もある……と考えると、OPで脚が取れたり首が落ちたりしているのも今後のコトを示しているのかもしれません。1話で鳴が引きずっていた人形は、その時に亡くなった鳴の「半身」たる「ふじおか未咲(苗字は漢字不明)」という子のものかもしれませんが、それと事件がどう関わっていくのかは何とも言えないところですね。

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 とまあとりとめもなく書いてみましたが、ホラー以外の部分だけでもかなり楽しめる作品と言うか、かなり懐は深いしホラーながらアニメ化した理由も納得の内容になっていると思います。
 グロをはっきりと描くスタイルなのでそこで引かれるのは勿体無いという感じですが、そういうシーンには目をつむったり背けたりしながら観るのも、一つの観賞スタイルとしては正しいのかもしれませんね。確実に面白くなってきているので、先々が演出的にも楽しみです。既にご覧になってる方は期待して待ちましょう。まだ観ていないという方がいれば、何とか追っかけて欲しいと思います。
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