萌えと笑いの最大公約数のアニメ「キルミーベイベー」

 関西は放送が遅れていて最新話まで観れてませんが、個人的に今期のTBSアニメであるキルミーベイベーにハマっています。あの何とも言えないシンプルさというかチープさが引き起こしてくれる笑いがたまらない感じです。
 それにしても、主な登場人物が3人ということ、絵的にももの凄くシンプルであることなどを考えると、これが何故地上波のしかもキー局であるTBSでアニメ化されたのかというところからしても謎ですし、よくぞアニメ化してくれたって感じでもあります。逆になんでアニメ化しちゃったの?って言う人もいるでしょうが……。
 ただ自分としては振り切れた面白さがあると思ってますし、かなり実験的かつ挑戦的な企画だとも感じていますので、その辺について書いていきたいと思います。

  • 中心をはっきりしっかりと描ける強み

 けいおん!ゆるゆりが世間的に受け入れられたのは、軽音部やごらく部が作品の中心としてはっきりと描かれたことも大きいと思ってて、その中心とサブキャラという線引きもある程度明確になされていることで、何処を楽しめばいいかとか何処が楽しいかが凄くわかりやすかったと思ってます。その流れで行くと、やすなとソーニャの2人が中心であると明確に描きつつ、そこにあぎりが関与していくという人間関係の範囲的なものが非常にハッキリとしているあたりが、最近の前述のアニメの流れを受け継ぎつつも更に踏み込んだ描写をしているなと思うわけです。
 キャラクターが少ないことのメリットとしては、尺の大半を中心キャラの関係性やネタだけで描けるということです。例えばけいおんであれば、唯と梓だけを終始描くような感じですね。けいおんだと他のメンバーも出てますし彼女ら全員がいてこその作品ではあるんですが、中にはもっとその中の2人だけのエピソードだけを集中して観たい、という人もいるでしょう。キルミーベイベーはそうした需要を狙ったようにも見えます。個人的にはアホなやすなとなんだかんだ言って付き合いのいいソーニャの関係性が凄く楽しいですし、そこに呼ばれもいないのに出てくるあぎりのかまってちゃん的な可愛さも堪能できてますのでなかなかいい狙いじゃないかと思ってます。

  • キャラやシチュのバリエーション的な「逃げ」が無い

 キャラをたくさん登場させるというのは、バリエーションがあるとも言えますが、逆に言えばメインキャラにハマれなかった人に対して妥協しているとも言えます。キルミーベイベーはそうした「逃げ」を用意せず、やすなとソーニャ、ギリギリの妥協としてあぎりを出しているだけという少数精鋭かつこの3キャラだけで勝負しているとも言えますし、これだけで十分やれるという宣言にも見えます。
 中心キャラはいるのにそこだけではネタが広がらないのか色んなキャラを出すようなギャグアニメもありますが、この作品に関してはあの3人+モブキャラだけで成立するような笑いを追求しているとも言えますし、ある意味ではストイックさも漂ってます。

  • 癖になる声優さんの演技

 少ないキャラなのに無名な声優さんばかりを起用したことでどうなることやらと思ってましたが、これも全くの杞憂に終わりましたね。やすなのアホでウザいけど可愛いところ、ソーニャのカッコイイけどボケられるところ、あぎりの不思議なイントネーションとテンポによるキャラ立たせ……とほぼ完璧だと思います。
 個人的には、OPのやすなの歌声が非常にウザくて素晴らしいと思います。なかなかトリッキーな曲で高いところもあったりするんですが、あの高い声が良い感じにハマってますよね。EDは逆にソーニャの歌声が前面に出てて良いですよね。ちょっとヤル気がなさそうなけだるい感じで歌っているのが曲の独特なチープさと相まってこちらもいいと思います。キャラソンは主題歌と同じEXPOがプロデュースするらしいので聴いてみたいですね。

  • 作画スタッフが何故か本気の陣容

 キルミーベイベーのスタッフを観た時に驚いたのが、キャラクターデザイン・総作画監督が長谷川眞也さんだったことです。最近だとおとめ妖怪ざくろのキャラデザをされていましたが、ジェイシースタッフの古参でもありエース的なカードとも言えます。ざくろとは全く違う方向性のキャラデザな時点で驚きますがやはりすごいですね。その長谷川眞也さんがOP/EDの作画監督もされていますし、絵的な本気さが伺えます。各話の作画監督セーラームーン時代に長谷川眞也さんと組んでいた方や、イカ娘の各話作画監督を務めたるたろ〜さんなど、少ないながらもかなりいいスタッフを起用しています。
 もちろん、凄く動くのはごく一部で口パクとかも適当なんですが、適当さが作風にもあってますし、たまに動くことで効果的に見せることも出来てますのでいい絵面だと思うんですよね。絵柄そのものの安定感もありますし、当初考えていたよりも綺麗で可愛くできていると思います。

  • 絶妙なテンポ

 最近のギャグアニメだと、テンポがもの凄く破綻していた「日常」などがありましたが、それらに比べるとキルミーベイベーのテンポは凄く心地いいと思います。静止画やネタとネタの間の繋ぎのカットを、文字通り一呼吸置くくらいの尺にしていて、次まだかなーと思い始めるくらいから次のネタが始まるという具合で凄くテンポが良い気がします。アザゼルさんみたいなハイテンポではもちろんありませんが、ゆるーく一定のテンポが連続していて、ネタが合う人であれば間違いなく30分楽しく見られると思います。
 もちろん、前提にはやすなとソーニャ、あぎりたちが可愛いということがあります。彼女らのアホでゆるい掛け合いが、ネタとしては弱かったとしてもほのぼのと観られるということでもありますけどね。

  • もの凄く百合である

 ゆるゆりなどのヒットでにわかに盛り上がる百合アニメですが、このキルミーベイベーはそうした流れにも沿った感じがありますよね。
 何故やすなはソーニャにこだわるのか? 何故ソーニャはアホなやすなに付き合うのか? 何故あぎりは呼ばれてもいないのに突然現れて話しかけるのか……。ソーニャは殺し屋なのに高校に来なきゃいけないのかどうかとか人を殺したことのある目をしていないというところもありますが、付き合い良さそうで好かれそうなやすながソーニャにこだわっていたり、それを邪険にできないソーニャとか想像するとかなりお互いが依存しているのでは……?とも思うわけです。4話の海ですいか食べてる回なんかは、ふたりっきりで日が暮れるまで一緒にいたわけですし仲の良さというかお互いにとってもの凄く居心地の良い相手であることが凄くわかるシーンでもありましたよね。そういう前提的なものを考えながら観てると凄く和むわけです。

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 とまあほぼ絶賛状態なんですが、やすなかソーニャが好きにならなければかなり苦しいのも事実だろうと思います。あと、やはり全体的にはチープで一本調子の展開でもありますので、このノリや空気感が気持ちよくならない限りは視聴継続は厳しいと思ってます。
 ただ、少しでも面白いと思って見始めると、実はかなりの中毒性を持ってますからズルズルとハマってしまうこともあろうかと思います。また、原作とはオチを変えてきたりもしてますから原作ファンでもある意味楽しめる作りではないかと。まあ個人的には大好きなのでこのまま見続けていきたいと思います。

「キルミーベイベー」キャラクターソングCD やすな HOW TO ENJOY/今日も二人で

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「キルミーベイベー」キャラクターソング 【あぎり】

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