ちーちゃんが世界にたった1人取り残されてしまう示唆なのか〜はたらく魔王さま!ED考察

 今期アニメはなかなか面白いものが多いのですが、その中でもコメディとバトルのバランスもよく非常に演出もいいなと思っているのが「はたらく魔王さま!」です。色々と見るべきところがあるこの作品ですが、今回はとりあえずというかエンディングの演出や何を描いているのかについて考えてみたいと思います。
 魔王さまのEDは止め絵中心の地味な感じのものになっているのですが、個人的にはnano.RIPEの曲とともに非常に良い締めになっていると思ってます。その中で描かれている内容がちょっと気になったので書いてみたいと思います。
 ちなみに、原作やコミカライズ等は読んでおらず、現時点までのアニメを観てのものですのであしからず。

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 最初のカットです。時計と共に千穂が待っているような絵ですよね。たびたび時計が出てくるわけですが、待ちぼうけを食らっているのか、あるいは時の経過を示しているのか……どっちもですかね。そんな絵だと思います。この後、どこかへバカンスにでも行ってるかのようなカットが続きます。

 宇宙に行ったり、

 何処かへ冒険に行って絶景を観てきたり。
 あのちーちゃんからは想像もつかないようなものすごいことをやっているのですが……。

 それらのカットの後に、不意に千穂の泣き顔が入ります。キャラクターについては静止画のカットばかりが続く中、ここだけはすごく動くので余計にこのシーンが印象的に映るようになっています。

 その後、エロいと評判の千穂の水着絵になります。下から舐めるようにスクロールして映してますからここもまたさっきの泣き顔とは別に印象的な演出になっていますよね。バカンスに行って誰かに(って間違いなく魔王にですけど)笑顔で振り向いていると思われる最高の笑顔のシーンなのでしょうね。

 そして最後のカット。これがまた興味深いものになっていて、魔王や勇者たちがみんなショーウインドーの中にいるんですよね。恐らくは人形の形で。

 OPのラスト1つ前のシーンなんですが、ここは明らかに魔王たちが動いている状態なんですよね。そこへ千穂が走っていくという。
 どちらにしても、異世界の住人たちとこちら側の世界の住人である千穂との対比というか本来の距離が描かれているのだろうとは思いますが、OPではまだそんな異世界の住人たちとこちら側の世界で一緒にいるということを示しているのに対して、EDでは終始千穂1人だけで、最後に人形という形でショーウインドー越しに観るだけというもの凄い距離感を描いているのが気になりました。そこで、EDで描かれているカットの意味とかを考えてみました。
 特に思うのが、この作品のメインキャラで千穂だけが現実の世界の住人なんですよね。他のメイン5人は全部異世界からやってきたキャラクターということを千穂1人だけ描くことでことさら強調しているように感じます。ヒロインキャラの中の1人だけがEDに出てくるような演出のアニメは他にもありますが、魔王さまの強調の仕方はちょっと違う意図があるような気がしています。
 もう1つ気になったのは、やはり泣き顔ですね。順番が前後しますが、あの振り返り水着絵と泣くシーンの同居がどうにも気になるところです。ここの意図ですが、これは恐らく「楽しかった日々」が過去のものになってしまったということの示唆ではないかと考えています。実のところ、魔王はいつか帰ってしまうのは間違いないところです。あるいはエミリアや他のキャラたちも魔王の動向次第でみんな引き上げてしまうでしょう。そうなるとごっそりいなくなってしまうわけです。泣き顔は、そうなってしまったからではないでしょうか? 原作読んでないですしそういう場面があるのかどうかはわかりませんが、ひとまずアニメのEDでは恐らくは訪れるであろう別れと、そんな時にはまず流すであろうちーちゃんの涙を描いているのかなと思いました。
 あとはやたらと時計を描いていたことですが、時間の経過とかそういうことを描いていたのもありそうですがそれ以上に「時」が人間である千穂と異世界のキャラたちとでは違うことの示唆もあるのかな……と思いました。魔王は実際には数百年生きているという感じのようですし、人間の千穂とは時の重みや加齢等も全然違ってくるのでしょう。そうなると時計をやたら描いていたこともそこに繋がってくるのかなあと思うわけです。
 また最後のシーンが人形の魔王たちである意味は、別れがあって涙を流し、思い出となった後に、そんな体験が実は夢物語だったのかな、とさえ感じてしまうほどに何も残っていない現実に1人生きている千穂、という感じなのかなと考えるとすごく切なくなるEDだと思います。そしてよく出来ているとも思います。

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 考察は合っているかどうかはわかりませんが、色々と考えさせられる中身になっているのは間違いないでしょう。
 止め絵中心のEDはあまり評価する人がいないような気がしていますが、制作現場の負担を減らし、かつ意味のある一枚絵でも映えるカットをよりすぐって構成するという意味では演出の腕も問われるのではないかと思います。ので、むしろ動かないED演出にこそ注目して観てみるのも面白いんじゃないかと思いました。