サンブンノイチ個展

実はこの十二月、近所のオープンギャラリーでグループ展をやった。人様に見てもらうレベルじゃないんだが、まあ、恥かいてでも、何か学ぶものがあるでしょう、つうことで。展示した五枚を選ぶのに、まるまる二ヶ月以上費やした。

正義と慈悲

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正義とは何であるか。対義語は何だろう、慈悲か。人智が求める正義は、自然の力の前に挫けることもあり、これに対するのが、超自然的な、何か上の存在から与えられる慈悲だと考えるからだ。

人智を象徴するマス・トランスポートの牙城、駅を見据え、その整然たる様を正義に、そこへ差す光線を慈悲に見立てた。善きも悪しきも人が行き通い、物資、情報が渦を巻いている駅を俯瞰した時、同様の視点で人間模様を描いたシェイクスピアを連想した。

かつてこの世に生きた者は、みな一度は罪のために失われた。
ところが当然罪を与えて良いはずの神様は、
かえってあがないの道を示してくださった。……それを思えば
おのずと慈悲の言葉もそのお口から漏れようはず、
新しく生まれ変わった人にふさわしく。

「尺には尺を」、二幕二場

Why, all the souls that were were forfeit once;
And He that might the vantage best have took 835
Found out the remedy. How would you be,
If He, which is the top of judgment, should
But judge you as you are? O, think on that;
And mercy then will breathe within your lips,
Like man new made.

--- William Shakespeare
Measure for Measure, Act II, Scene 2

生と死

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先祖を祀る灯会は紛れもなく生けるものの活動だが、足元に広がるのは死者の眠る大地なのだ。夕暮れの一瞬、人間の生死を祝福または嘲嗤うかのように蠱惑的な色彩が現れて消える。

自然万物の母たる大地は、またその墓であり、
自然を葬るその墓は、同時にまたその母体でもある。
大地の胎(はら)より生まれ出たとりどりの子らは
おのれを生んだその胸にむらがり乳を吸う。

ロミオとジュリエット」、二幕三場

The earth that's nature's mother is her tomb;
What is her burying grave that is her womb,
And from her womb children of divers kind
We sucking on her natural bosom find,

--- William Shakespeare
Romeo and Juliet, Act II, Scene 3

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互いに愛しあう二人を見るとこちらも幸せになる。

おお、天井より見下ろし給え、神々よ、
そしてこの二人の上に祝福されし王冠を授け給え
われらをここまで導いた道をお示し下さったのは
あなたがたにほかなりません。

テンペスト」、五幕一場

Look down, you god,
And on this couple drop a blessed crown!
For it is you that have chalk'd forth the way
Which brought us hither.

--- William Shakespeare
Tempest, Act V, Scene 1

女性の美徳

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とある喫茶店で、昔、恋をしていた女性に、このカップで珈琲を供されたとき、まさに、そこに女性の美徳を見た気がした。奇しくもカップには女性を象徴する薔薇が模してあり、薫り高く熱い液体がこちらを誘っているようであった。

かくして天は自然に命じ、
世に広く散らばる美と徳をことごとく
一つの肉体に満たしめた。

「お気に召すまま」、三幕二場

Therefore heaven Nature charg'd
That one body should be fill'd
With all graces wide-enlarg'd.

--- William Shakespeare
As You Like It, Act III, Scene 2

阿呆

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阿呆というか、道化(clown)、その語源となる農夫(colonus)に連想される田舎者。一度目の結婚が破綻し、続いて失職し、喪失感と焦燥感に苛まれていた時期があった。程なく、深く共感するシェイクスピアの一節に巡りあった。あのときの、喪失感と焦燥感、一節に巡りあった時の救済された感じは、誰知ることもない遠い旅先で、人々の暮らしの様子に美しさを見だした時の感覚に非常によく似ている。

この我々の生活は、人々の訪れることもなく、
木々に言葉を、流れる小川に書物を見出し、
石に説教を聞き、あらゆるものに善を見だす。
「お気に召すまま」、二幕一場

And this our life, exempt from public haunt,
Finds tongues in trees, books in the running brooks,
Sermons in stones, and good in everything.

--- William Shakespeare
As You Like It, Act II, Scene 1