統計分布の基礎 -- 貧乏/金持分布

初出: 2007/04/26

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※ このメモは、とある場所で研修セミナーに用いた資料です。
※ 「100人の村でランダムにお金を交換したら?」
http://brownian.motion.ne.jp/memo/Binbou.php
※ 「幸せな時間・不幸な時間」
http://brownian.motion.ne.jp/memo/Happy.php
※ を見ながら、読むのがよいでしょう。

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「お金のいらない世の中」については、こちらを参照のこと >> d:id:rikunora:20080420

● 貧乏/金持分布

  たくさんの人に、たくさんのお金を全くランダムにばらまいたら、お金はどのように行き渡るのか?


  最初に全員が同じ額を持っていたとして、全くランダムにお金の受け渡しを行ってみよう。
  その結果はどうなるか?


  人数と金額を入力すると、金持ちから貧乏までの金額と人数を表にして出すものを作ってみよう。
  できればターン制にして、途中経過を出力してみたい。


    => つまり世の中というものはどのようになっているのか?


● 勝ち組と負け組
  この世に生まれつき2種類の人種、勝ち組人種と負け組人種がいたとする。
  勝ち組人種は有利な交換を行う確率が高く(つまりもらう確率が高く)、
  負け組人種は不利な交換を行う確率が高い(つまりあげる確率が高い)。


  このとき、勝ち組人種の分布と負け組人種の分布はどうなるだろうか?

● 借金がある場合

  最低所持金額を0円ではなく、借金=マイナスの金額も在りとしよう。
  このとき、金持/貧乏分布はどうなるか?


  また、借金ありの場合で、勝ち組と負け組がいたら、結果はどうなるか?

● 分布は何で決まるのか?

  分布形状を決める、本質的なパラメーターは2つだけ。
    「平均」と「分散」

正規分布とは

    f(x) = 1/(√(2π)σ)・Exp(- (x-μ)^2 / 2 (σ^2) )


  何やら恐ろしげに見えるが・・・
    平均 μ=0
    分散 σ^2=1
  の場合はもっと簡単で(これが標準正規分布
    f(x) = 1/(√(2π))・Exp(- x^2 / 2 )


  さらに単純化すれば、骨格は
    f(x) = Exp(- x^2)
  ということ。


  ここで、全部合わせたら1(100%)となるように ∫Exp(- x^2) dx の値を求めたい。
  計算すると √π という神秘的な数になる。

○ 神秘の計算 (こんなの絶対思いつかないぞ!)

  求める答を I とおいて、何を思い立ったか I^2 を計算してみる。
    I^2 = ∫Exp(- x^2) dx・∫Exp(- y^2) dy
      = ∫∫ Exp(- (x^2+y^2)) dx dy
  局座標変換
    x = r cos θ, y = r sin θ とおくと
    x^2 + y^2 = r^2,  dx dy = r dr dθ  だから
    I^2 = ∫[0〜2π] ∫[0〜∞] Exp(- r^2)・r dr rθ
      = 2π [ - 1/2・Exp(- r^2) ][0〜∞] = π
  よって
    I = √π


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● 難しい問題

世の中「放っておけば」どうなるか、およその予想がついたと思う。

それでは、どうすれば世の中良くなるのだろうか?
貧乏/金持分布がどういう形になっていれば、理想の世の中だと言えるのだろうか?

・「放っておけば最も上手く行く」というのも1つの考え方だろう。
  => いわゆる「自由放任主義」「市場原理主義」がこれ。
  => 有名な「見えざる神の手」(アダム・スミス)も、結局はこれ。

・しかし、これで全てが上手くいったわけでもなかった。
  => 独占、貧富の格差、世界恐慌・・・20世紀の歴史
  => 修正資本主義(ケインズ
     政府が景気の変動を緩やかにコントロールすべき、というもの。
     みんなが文句をたれる「税金、公共事業政策」も、つまるところここに源を発しているのだ。

・もっと極端に、いっそ格差、所有そのものを認めないという流派もあった。
  =>「貧乏な国」が社会主義共産主義に走った
  => ソ連と共に実質上消えた

現在では・・・
  自由放任派とコントロール派がせめぎ合いながら、道を模索している、というのが現状。
    ・・・この問題に「正解」は無い。


   この世に「全く公平な立場」の人間はいない。
   もし自分が「勝ち組人種」に組しているとしたら、どういう世の中が望ましいと考えるだろうか。
   もし自分が「負け組人種」に組しているとしたら、どういう主張をするだろうか。


   それでも「公平な世界が良い世界」であるとするならば、
   お互いがどういう主張を受け入れなければならないだろうか。


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貧乏/金持分布に挑んだプロジェクト

初出: 2007/05/23

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※ このメモは、とある場所で研修セミナーに用いた資料です。
※ 前出の、「統計分布の基礎 -- 貧乏/金持分布」
http://brownian.motion.ne.jp/memo/TheRichAndPoor.txt
※ の続きにあたるメモです。

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● 次元を増やす

・気体分子の速度分布(Maxwellの速度分布)

分子のおもちゃ箱・シミュレーション:
http://homepage.mac.com/mike1336/md/app/j401_450/422_MaxwellDistributionP/MaxwellDistribution.html

f(v)dv = 4πA v^2 exp( - mv^2 / 2kT ) dv
A = (m/2πkT)^(3/2)
・・・v以外を思い切り略すと
f(v) = v^2 exp( - v^2 ) f(v) = exp( - v^2 ) と比べてみよう

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地域通貨

・地方活性化の切り札として着目を集めた「ローカル・マネー」
・利子のない、目減りするお金 ・・・一言で言えば「利子が悪い」
・世界的には成功例あり
・日本でもよく話題に上がるが、成功例はあまり聞かない

 参考: http://www3.plala.or.jp/mig/index-jp.html
1. 法定通貨中央銀行が発行しているけど、地域通貨は市民の手で作り出すことができる
2. 法定通貨は全国で使えるけど、地域通貨は国の中でも限られた範囲でしか使えない
3. 法定通貨を借りる場合は利子がつくけど、地域通貨を使っても利子はつかない
4. 法定通貨ではどうしても貧富の差の拡大が起こってしまうが、地域通貨ではそのようなことがない
5. 法定通貨と異なり、地域に購買力を根付かせることができ、地域の活性化に役立つ

* 参考図書
エンデの遺言』{河邑厚徳,グループ現代} NHK 出版,2000 年
『エンデの警鐘』{坂本龍一河邑厚徳} NHK 出版,2002 年

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● ゲゼル研究会
http://www.grsj.org/

ゲゼル研究会は非政治、非営利、非宗教の姿勢で持続可能な社会実現に寄与したいと願っています。

・・・
そこでやっぱり、利益を上げようとする動機がみなを競争させるし、
この競争が成功と社会の豊かさをもたらすんだと考えた。

でも、結果はみたのとおりさ。確かに成功したやつはいる。
しかしそれ以上に負けたのもいてさ、所得の格差は広がった。
雇用をもたらすのは、競争だけじゃあ無理ってことも知った。

じゃあもう一度、マルクス主義のような無関心と感動のない社会を永続させるような体制に舞い戻るかい。

できない相談だよ。

三つ目の選択肢が要るんじゃないかな。
それを聞きにきてくれ、第三の途だ。
ゲゼル理論がそれに答えてくれるはずだ。

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PICSY(ピクシー)
「評価システム」を組み込んだ地域通貨
http://www.picsy.org/

世の中の商品やサービスには、「瞬間的に幸福量を高める側面」と「再生産に役立つ側面」の二つがあります。
ラーメン一つとっても、味がうまい、というのは幸福量の問題だし、食って元気になって働けるようになる、
というのは再生産の問題です。極端な話、ラーメンが、うまいだけで全然栄養のないものであれば、
その人は栄養失調になり、再生産できなくなります。

先ほどの医者と患者の話は、再生産的側面の強いものでしたか、
世の中の多くの商品・サービスは、この二面性を持っています。
現在の世界では、「瞬間的に幸福量を高める側面」の方が、商品の評価の基準としてはより重視されているようです。

例えば、コンビニで売っているようなお茶には、香料がたくさん入っています。
この香料は、体に悪い可能性が高いのですが、匂いがある方が好まれるので、投与されています。
しかし、後々のことを考えると、体を壊せば、もちろんそれ自体害悪である上に、
労働=再生産できなくなるので、その分、香料つきのお茶は、世の中に対する貢献度が低いことになります。
しかしその点は十分に消費者の評価の基準として組み込まれていません。

・・・
PICSYは、伝播投資貨幣(でんぱんとうしかへい:Propagational Investment Currency SYstem)の略で、
価値が人から人へと伝播していくという興味深い性質をもった新しい貨幣システムです。
コンセプトがまだ新しいので実用段階まではいっていませんが、
PICSY Projectは、PICSY実現のためのデモンストレーションソフトウェア開発と技術的、経済学的検証を行っています。

。。。2008年4月現在、ちょっと更新が止まっているみたいです。。。

ネットコミュニティ通貨の玉手箱
http://sacral.c.u-tokyo.ac.jp/~ken/gets/tamatebako.html

相対値貨幣の理論 すべてを投資にする貨幣
http://sacral.c.u-tokyo.ac.jp/~ken/gets/relativemoney/

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● 通貨の廃止
http://wiki.livedoor.jp/tuuka_haisi/d/FrontPage

産業用機械が人間の代わりに食料や全ての生活必需品を生産すれば、
人間は働かなくてもこれらの物資を入手できるようになる。
働かなくても物資を入手できるなら、通貨は必要ないはずだ。

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● 文明とは悪なのか

* 参考図書
パパラギ―はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集』[立風書房]
『人間不平等起源論』{ルソー} [岩波文庫]

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グラミン銀行

本家: http://www.grameen-info.org/
紹介: http://www.ochanoma.info/sc_bank.html
http://www.cafeglobe.com/news/gramin/
http://econgeog.misc.hit-u.ac.jp/excursion/00bengal/grameen/grameen.html
http://www.jca.apc.org/unicefclub/unitopia/2001/gramin.htm

・世界で最も貧乏な国から始まった「貧者の銀行」
−「グラミン」は「村」の意味
− 最も貧乏な人に無担保で、少額融資を多数に => マイクロ・クレジット
− 目標は「地上から貧困を無くす」こと

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1974年の飢饉のとき、大学教授だったユヌスは
「貧しい人々の本当の暮らしを理解し、近くにある村で毎日実際に使われるような、
本当に生きた経済学を見つけたいと考えるようになった」ことから、村々を自らの足で巡り始めた。
ある日、ある荒れ果てた家の前で一人の女性が竹の椅子を編んでいるところを目撃し(注1)、
5タカ(16セント)を借りて竹を買い、それを編んで5タカ50パイサ(100パイサ=1タカ)
で売ってお金を返すという話を聞いた。(注2)
ユヌスはその村で同様にして働いている女性のリストを作り、42世帯の人が合計856タカ(27ドル)を借りている事を知り、
たった27ドルで42世帯の暮らしを大きく改善する事ができる事に衝撃を受ける。
その後、銀行に貧困者対象の金融の案件を持ち込み、6ヶ月の交渉の末彼が保証人になる事で
貸し出しの元本を手に入れる事に成功。1983年には独立した銀行として政府から承認される。
 注1・バングラディッシュでは女性は近親者以外の男性とは話さない事になっており、調査の際には大変な困難が伴った。
 注2・金利は一週間で10%。椅子は金貸しに市場価格よりも安い値段で売る。
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・「恵んであげる」ことで貧困は無くならない
− ますます施しに頼るようになる
「恵んであげる」のは、相手が「かわいそうなもの、自分より下なもの」という意識があることの表れである。
チャリティを施すことによって、相手から自尊心や自立心を奪い、結局その人達のためにならない。
施す側が「恵んであげたこと」で安心し、問題から目を背ける。
バングラディシュは汚職が横行し、大半の援助は現場に届かない

・借り手の97%は女性
− 男に貸しても散財するだけ、建設的な方向に向かない
バングラディシュは男女格差が激しく、女性は「パルダ」の外には出ない。お金に触ったこともない。
バングラディシュの75%は読み書きできない。

・「5人組」
− 連帯責任、他者の債務を連帯保証

・返済率98%、グラミン銀行はビジネスとして成功している
− 事業展開:グラミン・フォン、グラミン・サイバーネットワーク
− 低利を謳うものの実際の金利は年率20%近く

・普段オフィスに居たら規則違反
−(今は立派なビルだが)トタン屋根、電話、水道、トイレ無し
− お客が来ることは無い、こちらから1件1件出向く
(お客は読み書きできない、看板は無意味、銀行に行ったこともない)

職業訓練は優先順位が低い
− 貧乏人は(全ての人は)生きる術を知っている
−「専門家」はまず訓練から入りがち、グラミンは融資から入る

・貧乏に国境なし
− 世界60カ国、先進国でも活動

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