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小人さんの妄想 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2008-05-09

ナマコの海 クラゲの海

地球上で最も繁栄している生物は何だろうか。

人間? アリ? シアノバクテリア

様々な意見があるかと思うが、私はひょっとすると「ナマコ」ではないかと思っている。


ナマコは実にいろんな海にいる。

最近は便利になったもので、日本から南太平洋の島々まで一気に飛行機で行ける。

南の島といえば青い海と白い砂浜が思い浮かぶのだが、

その青い海の底に必ずといって良いほど数多くのナマコを見かける。

  * インターネットを検索したら、こんなページがあった。

  「ナマコ学」 -- ナマコを愛する人の手記、おもしろい。

  http://www.namako.to/namako/namakoindex.html


もちろんナマコは南の島だけでなく、日本の近海にも数多く見受けられる。

太平洋側にも、日本海側にも、東京湾にも、瀬戸内海にも、沖縄の海にも。

また、ナマコは深海にも生息している。

むしろナマコは数千メートルに及ぶ深海にも適応できる、数少ない生物の1つなのである。

時としてナマコは大量発生し、「サンゴ礁の海底や深海底の一部では極めて大きな集団を形成することがある。」

  * wikipedia:ナマコ

ナマコが大量発生し、底引き網漁に甚大な被害を出したというニュースを見たことがある。


さて、以上の情報を総合するとどうなるか。

我々が直接触れることのできる海はほんのわずかな浜辺に限られているが、

当然、海はそのずっと先まで広がっている。

南の島にバカンスにいった人は、たぶん浜辺で数多くのナマコを見かけたかと思うのだが、

あれが「浜辺の近くだけ」にしかいないとする理由があるだろうか。

おそらく、浜辺の海底に点々としているナマコたちの列は、

きっとその先の海まで続いているに違いない。

つまり、ナマコの列は南の島から東京湾まで、浅い海底から深海まで、ずっと続いているのだ。


... 以上が、地球上で最も繁栄している生物は「ナマコ」であるとする理由である。


冗談はさておき、ナマコはどんな海にもいる、とてもありふれた生き物である。

ナマコと同じように、どんな海にもいるありふれた生物といえば「クラゲ」だろう。

クラゲも近海から遠洋までどこにでもいて、希に大発生して発電所の取水口をつまらせることさえある。

海は、上はクラゲ、下はナマコで挟まれているのだ。


ところが、海にはナマコやクラゲよりも、もっと大量発生する生き物がいる。

その最たるものは赤潮であろう。

赤潮の原因は、海の富栄養化による植物プランクトンの大量発生である。

あまりにも大量発生するため、海の色まで変わってしまうのだ。

赤潮とは、死の海の代名詞でもある。

ひとたび赤潮が発生すると、多くの海の生き物たち、

それこそクラゲとナマコとプランクトン以外の魚介類が死に絶えてしまう。


ここで1つ不思議に思うのは、なぜ死の海が「富栄養化」なのだろうか、ということだ。

栄養がたくさんあるのなら、むしろそれは生き物にとってたいへん結構なことではないか。

栄養が全く無い海に生物が住めない、というのならよく分かる。

ところが事実は逆で、栄養がたくさんあり過ぎると、生き物が死に絶えてしまうのである。


赤潮発生のメカニズムは、思ったほど単純ではない。

実のところ、生物というものは「飢餓に強く、飽食に弱い」のである。

なぜなら生命の長い歴史の中で、飢餓は常に生じていたが、飽食は滅多になかったからだ。

(いわゆる成人病の根本的な原因は、ここにあると思ってよいだろう。)


母なる海は、その構造からして生物にとって大きな矛盾を抱えている。

エネルギーの源である太陽光線は海洋の表面近くでしか得られないが、

物質の源である有機物は海底に沈んでしまう。

深い海では、この両方が同時にそろうことがない。

「潮目」が豊かな漁場となるのは、海底から上昇する流れが有機物を運んでくることで、

例外的に両方がそろうからなのである。


太陽光線を必要とする植物プランクトンは、表面付近に漂うために自ずと小さくなければならず、

有機物が取得できないため、その数にも制限がかかる。

植物プランクトンから栄養を得る捕食者は、大別して2つのグループに分かれる。

1つは小さな植物プランクトンを直接こし取って食べるグループ。

もう1つは死んで海底に沈んだプランクトンの死骸を食べグループである。

前者が動物プランクトンであり、後者がナマコなどの底生生物だ。


陸上の草食動物が一足飛びに大型になり得るのに対して、

小さな植物プランクトンからスタートする海洋生物は一足飛びに大型捕食者に達しない。

オキアミやカイアシ類などの動物プランクトンを経て、はじめて大型の魚の餌になる。

全てが一度にそろわないというジレンマゆえに、海は深さの点でも、大きさの点でも

多様な生物が存在できる場になり得たのである。


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*「EICネット」より引用

  http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&ecoword=%B3%A4%CD%CE%C0%B8%C2%D6%B7%CF

 海洋生態系

 カイヨウセイタイケイ 【英】Marine Ecosystem

 解説 |

 海洋は陸域からの距離と水深によって、陸域と接した海浜域、陸棚上の大部分を占める沿岸域、

 さらに沖側の外洋域に大別され、それぞれに特徴的な生態系が成立している。

 海浜域と沿岸域は陸域からの栄養塩類の供給と、波浪や湧昇流による堆積物のかく乱により、

 陽光性プランクトンによる一次生産が活発である。

 海浜域では藻場の発達にみられるように底生生物群集の生産量の割合が高いが、

 沿岸域では植物プランクトンによる生産が大半を占める。

 外洋域の生物群集には水深に応じた垂直分布がみられ、

 このうち太陽光の到達する水深150〜200m以浅は浅海水系と呼ばれ、

 ここに生育する植物プランクトンなど浮遊性の浅海水層群集が外洋域の一次生産者である。

 それより下方に生息する深海底生群集や深海漂泳群集は、

 浅海水層群集の生産した栄養物にほぼ依存している消費、分解者である。


* 「生命と進化 -- 浅海の重要性」

  http://green-forest.hp.infoseek.co.jp/seimei-2.htm

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以上のしくみがわかると、なぜ「栄養豊か」だと海が死に絶えるのか、その理由もわかってくる。

もし通常海底でしか入手できなかった有機物や栄養塩が、

海の表面でも入手できるようになったら、どうなるだろうか。

この状態は、とりわけ植物プランクトンにとって理想的な状態となる。

当然、植物プランクトンは爆発的に増える。

この爆発的に増えた植物プランクトンの死骸が海底に累積すると、今度は海底のバクテリアが急増する。

海底のバクテリアが増えると、海底の酸素を全て消費し尽くしてしまう。

かくして海底の酸素が少なくなり、魚たちは次々と窒息する。

海底のバクテリアが硫化物を生成すると、海面は乳青色や乳白色に見える。

これが青潮である。

植物プランクトンの中には、渦鞭毛藻など毒を持つものもいる。

こうしたプランクトンが増殖すると、他の生物はますます住みにくくなる。

海の表面を覆う植物プランクトンは、それまで中層域に達していた太陽光を全て遮ってしまう。

その結果、中層の生き物たちにもダメージを与える。


こうして海に栄養塩が入ると「表面の植物プランクトン、海底のバクテリア」といった2極化が起こる。

2極化が起こると、まっさきにいなくなるのは、それまで海の中程を泳いでいた大型の魚である。

次いで、食物連鎖の上の方から、中型の魚、小型の魚が姿を消してゆく。

生き残った生物は、たとえば汚染に強い貝礁などに立てこもって生き延びようとする。

もしこういった貝礁が残っていれば、汚染が引いたとき、再び豊かな海が甦るかもしれない。

だがそのまま汚染が続けば、最後の貝礁も死に至る。

最後に残るのは、ナマコやクラゲのような生き物だけになる。


  * 貧酸素水塊(酸素が少ない水)ができる仕組み [PDFファイル]

  http://www.pref.aichi.jp/suisanshiken/2116-ex.pdf


今、世界中に「死の海」は確実に広がっている。

もちろんこれはこれで重大な問題なのだが、赤潮発生のメカニズムをよく見ると、

単に海の中の生き物だけの問題に留まらないように思えてくるのである。


例えば、バランスよく回っていたある社会に、突然大量のお金を注ぎ込んだらどうなるだろうか。

一見するとその社会はとても豊かになるようにも思えるが、

実際には「富栄養化」と極めて似たような事態が進行するのではないか。


「死の海」とは言いながらも、そこであらゆる生物が本当に死に絶えているわけではない。

人間や大型生物からすれば死に絶えたように見えても、

そこは植物プランクトンやクラゲにとっては天国なのである。

有機物の分解速度に着目すれば、むしろ最速になっているであろう。


生命の本質の1つに「遠回りしていること」を挙げるべきだと思う。

炭水化物を水と二酸化炭素に変える最も効率的な手段は、直接燃やすことである。

生物はやはり炭水化物を分解してはいるのだが、水と二酸化炭素になるまでにうんと多段階の遠回りをしている。

生態系もそれと同じで、多様な生物が共に生きるためには、うんと多段階の遠回りをする必要がある。

壊れた生態系の特徴は、全てを手に入れた1つの生物で近道ができあがることによって、

遠回りの道が失なわれることにある。


海の生き物を守るだけでなく、海の生き物から学ぶこともまた必要だろう。

yahiroyahiro 2012/11/06 03:23 生命の本質の1つに「遠回りしていること」を挙げるべきだと思う。

それを含め「ホメオスタシス/恒常性」といいます。

例えば、
ある惑星をテラフォーミングする際に全土を草木で覆ったとします。
そうすると、惑星表面上の光と影の部分に変化が見られます。
つまり昼夜の温度差が減少し、環境の恒常性も保たれるのです。

rikunorarikunora 2012/11/07 12:55 なるほど、「ホメオスタシス/恒常性」という言葉を覚えました!

草木で覆えば温度差が減少する、という例から考えてしまうのは、
いわゆる温暖化の正体は、は温度差が増大する 〜 春と秋がなくなって、夏と冬だけになる、
ということです。
これってホメオスタシスの逆を行っています。

hirotahirota 2012/11/27 19:32 実際、温暖化は地球が太陽輻射量の増大に対して自動的に行ってるCO2調節を乱してますね。
地球が行ってるのは、温度上昇により水の蒸発が増え降雨浸食で溶け出す陽イオンがCO2を吸収して沈殿し、それがプレート運動で地中に飲み込まれる過程ですから万年オーダーのホメオスタシスなので、人類による100年オーダーの撹乱には対処しない。
まあ、100年後に人類が自滅しても何もなかったごとくホメオスタシスが続くでしょうが。

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