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小人さんの妄想 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2008-06-14

子供の戦略・大人の戦略2

運動会以外にも、ご近所で子どもたちと一緒に遊ぶ行事がときどきある。

「子供の戦略・大人の戦略 id:rikunora:20080602

今日はそんな中で、子供たちと一緒に「上履き探し」というゲームを行った。


「上履き探し」というのは、体育館で行うチーム対抗のゲームだ。

1チームは5〜6人程度、全部で4チームあった。

最初に全員の上履き、チームのメンバーも、そうでない人のものも全部合わせて1つの段ボール箱に入れる。

ゲームは1チームずつ行う。

よーいドンで、段ボールの中から自分の上履きを探し出し、チーム全員が上履きを見つけて履いた時点でゴール。

そのタイムを競う。


ゲームはまず子供チームから行った。

子供たちをみていると、段ボール箱に我先にと群がり、一斉に上履き探しを始める。

最初の子供はかなり早く上履きを探し当てるのだが、最後の一人はなかなか探し当てることができない。

そして、このゲームのミソは、最後の1人のタイムで成績が決まってしまうところにある。

どんなに最初の1人目が早くても、最後の1人が足を引っ張ると、それでチームの成績は悪くなってしまうのだ。

実際に見ると、どのチームでも、最後の1〜2人が足を引っ張って、そこで勝敗が決しているように見えた。


子供たちの中には、ほんとうに小さい子供と、そこそこ大きな上級生が混じっていた。

なので、まず上級生が一番足を引っ張りそうな小さい子供を助ける、というのが良い戦略である。

実際、何もせずに上履きを取り合ったチームのタイムは1:50程度、上級生が助けたチームは1:30程度だった。


探し出すのが早いからといって、必ずしも1番になれるわけではない。

実際ゲームの中で、全員が上履きを見つけたのに、まだ探し続けてしまうといった場面もあった。

「あれ、ない、あれ、ない、あれ、ない・・・みんな履いてんじゃん!」

これで15秒のロスタイム


次に、大人チームの番になった。

ここで大人チームとしては、どのような戦略をとるべきだろうか。

優勝チームが考えたのは、こんな方法だった。

まず、段ボール箱をひっくり返して、一度箱から全部の上履きを出してしまう。

そして、チームの全員が各々1足ずつ上履きを拾って、書いてある名前を読み上げながら箱に戻す。

もし自分の名前が聞こえたら、手を上げてその上履きを受け取る。

自分の上履きが見つかっても作業を続けて、全員が見つかるまで並列して探索を行う。

全員の上履きが見つかったら、残りの上履きを段ボールに戻して、作業終了。

実際にこの方法で、優勝チームは0:38の記録を叩き出した。

さすがと言うべきである。


このタイム差はひとえに「最初に段ボール箱をひっくり返すか否か」で決まる。

一度ひっくり返してしまうと最後の片付けが面倒だし、思い切りがいる。

むしろ、そのままの形で探したくなるのが人情というものだ。

しかし、落ち着いて理屈で考えてみれば、一度全部取り出してしまった方が圧倒的に早いのである。


上履きが全部で30足あったとする。

その中から上履きを1つ取り出して、当たればそこで終了、外れたら再び同じ作業を繰り返す。

この方法で上履きの探索を行った場合、平均でかかる時間はどのようになるだろうか。

1回目で当たる確率が、1/30。

2回目で当たる確率は、1回目の残り x 1/30。

3回目で当たる確率は、2回目の残り x 1/30。

4回目で当たる確率は、3回目の残り x 1/30。

  ・・・

このように、当たる確率は徐々に低下しつつも、後に長い尾を引く。

非常に運が悪ければ、たいへんな回数の試行が必要となるだろう。

この分布形状は、次の観察結果によく一致する。

「チーム内の数名はわりと早いうちに上履きを探し当てるが、最後の1人の上履きはなかなか見つけることができない。」


一定の確率で独立なN回の試行を繰り返したとき、x回の当たりが出る確率分布は「2項分布」という名で知られている。

  Bin(N,P) = nCx P^x (1-P)^(N-x)

また、一度箱から取り出した上履きを箱に戻さずに探索した場合の分布には「超幾何分布」といういかめしい名前が付いている。

実際のところ、2項分布と超幾何分布の形状はそれほど違っているわけではない。

いずれの分布であっても、全部の上履きがそろう点は、分布の「長い裾野」の先にある。

だから、上履きの数が多く、人数も多い場合には、箱の中をかき混ぜて探すのは圧倒的に不利なのだ。


一方、箱から全ての上履きを取り出して順番に処理すれば、全ての作業は最大でも上履きの数だけで確実に完了する。

上のかき混ぜ方式が「後に長い尾を引く」分布だったのに対し、順番に処理した場合「三角形にスパッと切れる」分布となる。

しかも、もしかけ声が上手くいって完全な並列処理ができれば、全体にかかる時間は 1/(人数) となる。

30足の上履きに5人でかかれば、各人6回の試行で終わるはずだ。


それでは、いかなる場合であっても「かき混ぜ処理」よりも「順番に処理」した方が早いのだろうか。

原則的にはそうだろうが、あえて言えば「少人数、少数の試行回数で運に任せて一発逆転を狙うとき」だけ、かき混ぜ処理が有利になるかもしれない。

箱に群がる子供たちを見ていると、ふと「バーゲンセールみたい」という感想が漏れていた。

そう、バーゲンセールの場合に限って言えば、戦略よりも迫力が大切なのだ。


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