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小人さんの妄想 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2009-04-22

逆境の確率

テニスのサーブには2回のチャンスがあるので、たいていの人は、こんな打ち方をするようです。

1本目は失敗しても構わないので、上から思いっきり打つ。

もし1本目に失敗したら、2本目は確実に入るように、安全に打つ。

ところが、これは凡人の打ち方であって、トップクラスは違うのだという話を聞いたことがあります。

「私は、一本目は全力で打つ。

 もし一本目を外したら、二本目は一本目以上に、全力で打つ。」

確か、テニスの女王、ナブラチロワの言葉だったと思います。

古い記憶であいまいなのですが、とにかく2本目で安全確実を狙うといった、

そんな中途半端な打ち方はしないということです。

さすが、王者のテニスは違う。

ブログを検索したら、こんな記事がありました。

* サーブ2本の意味…

>> http://kodagirisan.seesaa.net/article/26281472.html

確かに、サーブが入る確率は、1本目であろうが2本目であろうが同じ条件です。

であれば、あえて1本目の確率を下げて、2本目の確率を上げる意味は無さそうです。

さらに相手が「きっと2本目は緩く来るな」などと期待していたのであれば、

裏をかいて「一本目も二本目も全力」は有効な戦略です。

(私はテニスというものをほとんどやったことがないのですが、テニスの得意な方、いかがでしょうか。)


以前、人から「ギャンブル必勝法」というものを教わったことがあります。

簡単のため、確率1/2の丁半博打で、買ったら2倍、負けたら0、ということにしましょう。

最初に1円賭けます。

負けたら掛け金を2円にします。

さらに負けたら次は4円にします。

さらに負けたら次は8円にします。

もしここで買ったら、トータルでプラス8円になりますから、これまでの負けは全部返せます。

そして、次回は改めて1円から再スタートします。

こういった具合に、次の掛け金を「前回の負けが全て返せるだけ」つぎ込めば、いつかは勝って元に戻ります。

ただ、これだけだとプラスマイナス0ですから、得するためには

「前回の負けを全て返して、それ以上に儲かるだけ」つぎ込む必要があります。

つまり、最初の1円で負けたら、次回は2円+1円=3円賭けます。

3円負けたら、次回は6円+1円=7円賭けます。

・・・これを繰り返せば、いつかは必ず儲けが出るはずです。

ただし、この方法を信じて全財産を失ったとしても、私は何の補償もしませんので、あしからず。


実際に試してみるかどうかはともかく、この「ギャンブル必勝法」を改めて見直すと、

どうも人の心理は「必勝法」の反対をいっているような気がします。

 ・買っているときは、イケイケで、どんどん投資を大きくする。

 ・負けているときは、しょんぼりで、手堅く投資を抑える。

これが、普通の人が取る態度でしょう。

必勝法」は、この逆なんです。

 ・負けているときほど、次の投資を大きくする。

 ・勝ったときは、堅実に、次の投資を抑える。

テニスの王者は、はからずもこれを実践していたわけです。

おそらく心理的に一番難しいのは「勝って兜の緒を締めよ」ってところではないでしょうか。

大勝ちしたら、次は1円に戻す。

たとえ運良く勝ったとしても、その直後に締めておかないと、勝利のプラスは将来に残らないのです。


分の悪い賭けに臨んだとき、どうすべきか。

例えば勝率1/3で、勝ったら3倍、負けたら0になるという賭けがあったとします。

手元に100円あったとき、次の3つの賭け方のどれがベストでしょうか。

A.100円全てを1度に賭ける。

B.50円ずつ、2回に分けて賭ける。

C.20円ずつ、5回に分けて賭ける。

それぞれの期待値を計算してみます。

A.3 * 100 * 1/3 + 0 * 2/3 = 100

B.3 * (50+50) * (1/3 * 1/3) + 3 * 50 * 2 * (1/3 * 2/3) + 0 * (2/3 * 2/3) = 100

C. 3 * 100 * 1 * (1/3)^5

  + 3 * 80 * 5 * (1/3)^4 * (2/3)

  + 3 * 60 * 10 * (1/3)^3 * (2/3)^2

  + 3 * 40 * 10 * (1/3)^2 * (2/3)^3

  + 3 * 20 * 5 * (1/3) * (2/3)^4

  + 3 * 0 * 1 * (2/3)^5 = 100

実はどれも100円で等しい、つまり、平均値を見る限り、どの賭け方も同じということです。

ならば、どんな賭け方であっても結果は同じと言えるでしょうか?

次に、それぞれの分散を見てみましょう。

A.{ 1/3 * (300-100)^2

  + 2/3 * ( 0-100)^2 }

   / ( 1 + 1 )

  = 10000

B.{ 1 * (1/3 * 1/3) * (300-100)^2

  + 2 * (1/3 * 1/2) * (150-100)^2

  + 1 * (2/3 * 2/3) * ( 0-100)^2 }

   / ( 1 + 2 + 1 )

  = 2500

C.{ 1 * (1/3)^5 * (300-100)^2

  + 5 * (1/3)^4 * (2/3) * (240-100)^2

  + 10 * (1/3)^3 * (2/3)^2 * (180-100)^2

  + 10 * (1/3)^2 * (2/3)^3 * (120-100)^2

  + 5 * (1/3) * (2/3)^4 * ( 60-100)^2

  + 1 * (2/3)^5 * ( 0-100)^2 }

   / ( 1 + 5 + 10 + 10 + 5 + 1 )

  = 460.91

細かく分割するほど、分散が小さくなってゆくことがわかります。

極端な話、1円ずつ100回とか、1銭ずつ10000回といった具合に、

うんと細かく多数の賭けをすれば、結果は安定して一定の勝率に近づくわけです。

なので、安定した結果を臨むなら細かく小出しに賭ける。

波乱を呼びたいのなら一発勝負で全額賭ける、となります。

以上からすれば、賭け方の戦略は次のようになるでしょう。

・分の良い賭け=勝率50%以上の場合

 できるだけ小分けにして、安定した勝ちを狙う。

・分の悪い賭け=勝率50%未満の場合

 できるだけ一つに集中して、一か八かの博打を打つ。

これは例えば、大企業ベンチャーといった状況にあてはまると思います。

ちなみに、二択の勝ち負けを累積した結果は、二項分布と呼ばれる確率分布に従います。

* コインを投げたら二項分布、パスカルの三角形 (サイトの宣伝も兼ねて)

>> http://miku.motion.ne.jp/stories/05_BinDist.html


以上をまとめると、

「負けているときは、むしろ縮こまらずに、思い切って大胆な行動に出よ」

となります。

コーナーに追いつめられたゴキブリが唯一生き残れる道は、敵に向かって飛ぶことです。

ゴキブリって飛ぶんですよね。実際これで2回ぐらい逃したことがある。)

逆境に強い勝負師であれば、多かれ少なかれ、思い切りの良い決断力を持ち合わせていることでしょう。


ところが、世の中には上とは全く逆の教えもあります。

「苦しいときは、辛抱していれば、チャンスは必ずやってくる」

「形勢が悪くなったら厚く打て」

これは、囲碁の世界での心構え。

ヒカルの碁勝利学」という本に載っていました。

ヒカルの碁勝利学 (集英社文庫)

ヒカルの碁勝利学 (集英社文庫)

ヒカルの碁」というマンガを読んだら、あまりにもおもしろかったので、勢いで読んでみました。

囲碁というゲームは長丁場なので、実力伯仲していれば、一局に一度は必ず苦しい局面に立たされる。

そのときに、どうするか。

「じたばたと新たな戦いを挑んだりせず、あわてずさわがずじっくり腰を落として打つ」のだそうです。

考えてみると多くの生き物は、夜間や冬といった悪条件の中を、睡眠、冬眠といった「じっとがまん」で乗り切っています。

あわてずさわがず、忍耐。

これはこれで含蓄のある教えなのですが、先ほど上で得た結論とは正反対です。

つまり、逆境に臨んだときに取るべき態度には、2種類の正反対の教えがあるのです。

[攻].テニス・ギャンブル型: 思い切って全力で勝負に出る。: 短期決戦: 信長タイプ

[守].囲碁・冬眠 : あわてずさわがず、じっと忍耐。: 長期持久戦: 家康タイプ

思い起こせば、勝負の名言といったものは結局、上の [攻].[守].どちらかに分類されるように思いませんか?

少なくとも、中途半端な戦略、というものは在りません。

戦力を少しずつ小出しにしてみるとか、多方面に渡って分散するとか、最悪のやり方でしょう。

攻めるなら攻めるで、全力決戦。

守るなら守るで、徹底的に忍耐。

中間はありません。


それでは、上の [攻].[守].は、どちらか一方が正しくて、他方が間違いなのでしょうか?

そんなことは無いようです。

状況と局面によって、この2つのどちらを適用すべきかが決まるからです。

してみれば、本当に重要なのは、今が [攻].[守].のどちらの局面なのかの判断です。

もし判断が誤って、逆の指針を適用してしまったら、最悪の結果になるからです。

では、一番大事な判断の指針、[攻].[守].の判断基準はどこにあるのでしょうか?

それにはいろんな要因があって、単純な結論は引き出せないのですが、

ここでは1つだけ判断基準を挙げたいと思います。

 「将来に希望があれば[守].今、やらねばならないのなら[攻].」

囲碁は長丁場ですから、今は苦しくても、いつか「チャンスは必ずやってくる」のです。

冬眠は、待てば必ず春が来ることが分かっています。

だから、囲碁も冬眠も、損失を最小限に抑えて守るのが最良の策。

一方、テニスやギャンブルは、待ったからといって、今より良くなる可能性はありません。

今、ここでやるしかない。

だから、全力で[攻].


今、世の中は不景気で、どこへ行っても「苦しいねぇ」という言葉しか聞きません。

この逆境へは、どう対処すべきか。

私は基本的には[守].であるように思います。

その理由は、上に挙げた通り。

景気というのは長丁場で、将来いつか「チャンスは必ずやってくる」からです。

でも、もしこの不景気が世界的な構造の帰結で、どんなに待っても良くはならないとか、

もう事情が事情で、どうしても今、やるしかないのであれば、全力で[攻].に回るべきでしょう。


※ 2010/10/21: 今頃になって分散の計算間違いに気付いたので訂正した。

ペカリペカリ 2009/04/25 20:09 なるほど!
長期戦では守りが主、短期決戦では攻めるが勝ちというわけですね。

確率のことになると眩暈がするわたしですが「結果」をありがたく使わせていただきます。

rikunorarikunora 2009/04/27 09:00 ありがとうございます。
我ながら、これができていれば今頃大金持ちになっているはず、と思うのですが、、、
勝ちに行く人を見ていると、中途半端をせず、とにかく徹底しているように見えます。
やるときは完全燃焼、やらないときはや全くやらない。
凡人にはなかなかそれができないんですよね。

ペカリペカリ 2009/04/30 00:29 rikunoraさん わたしのブログでこちらの記事を紹介させていただきたいのですがよろしいでしょうか?

rikunorarikunora 2009/04/30 10:17 どうぞどうぞ、紹介大歓迎。むしろ頭を下げてお願いしたいくらいです。
(ペカリさんのサイトでバナーをクリックしたら、ブログランキングの現代小説部門で1位になってましたよ)

ペカリペカリ 2009/04/30 20:08 ありがとうございます。紹介記事をupしました。ご意見、クレーッムありましたらなんなりとお願いします。

とる☆ねことる☆ねこ 2009/04/30 22:05 初めまして!!
ペカリさん経由で、来ました。
我が社も弱小企業、この不景気に恐怖を感じています。
でも、仰るように、攻めと守り、
両方が大切だと、痛感しています。
返済は攻めで、仕事は守りで…。
大変な時だからこそ、返す物は一気に返してしまおう!
しかし、仕事の方は、品質向上等しっかり守っていこう!
ハンパの出来ないとる☆ねこ。
余りの徹底主義に、批判も買っていましたが…。
自信が持てたように思います。

完全燃焼を目指します。
もともと、凡人じゃ無いので…(爆)
良いお言葉、ありがとうございました!!

rikunorarikunora 2009/05/02 12:55 はじめまして。
この記事が何らかのご参考になれて、嬉しいです。
全力で打ち込んだら、勝ったときに得られるものも大きいけれど、負けたときに失うものも大きいんです。
分散が大きいっていうのは、単にそれだけのことなんです。
そこで勝ちを呼び込むのは、前向きであるとか、完全燃焼してるとか、
結局のところ気合いで決まるのではないでしょうか。
えーと、何のアドバイスにもなってないんですけど、
とる☆ねこさんは気合充分に見えるので、大丈夫だと思いますよ(笑)

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