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小人さんの妄想 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2009-05-05

3つの運動方程式

古典力学運動方程式には、3つの表現形式があります。

ニュートンラグランジュハミルトン

ニュートンのものが一番の基本で、最もシンプルです。

後の2つは解析力学と呼ばれる分野に登場します。

f:id:rikunora:20090506042209p:image

もとになる物理法則は1つなのですから、この3つは表現形式が違うだけで、本質的な中身は同じです。

ならば、運動方程式は1つで充分に思えるのですが、なぜわざわざ3つも用意したのでしょうか。

最大の理由は、ぶっちゃけ「量子力学のため」だと思います。

ラグランジュ形式、ハミルトン形式は、古典力学から離れて、量子力学にも適用されています。

なので、これがわからないと、量子力学で挫折することになる。。。

もちろん解析力学が作られた当初は、量子力学が目的だったわけではありません。

まずラグランジュ形式ですが、これは「最も効率の良い経路を見出す」といった目的に最適化されています。

* ラグランジアンに意味は無い >> id:rikunora:20090327

とにかくニュートン形式では「もうやってらんねー」ようなめんどくさい問題が、

ラグランジュ形式だと簡単に解けることがあるんです。

例は“解析力学”と銘打ってある本には必ず載っているので、そっちを見てくれい(無責任)。

次に、ハミルトン形式について。

ハミルトン形式は、もともと1本だった2階の微分方程式を、1階の微分方程式2本に分割したものです。

もともと1冊だった本を、上下2巻に分けて水増ししたようなものです。

それだけ聞くとあこぎな商売みたいですが、この水増しのおかげでハミルトン形式の1本1本の式は、

一塊の式よりも大きく融通が効くようになっています。

2つの式のつなぎ目として導入した「運動量」は、状況に合わせて自由に設定することができます。

具体的には、目的に合わせて座標系を自由に選ぶことができる、ということです。

「自由に設定できる運動量」のことを、「一般化運動量」と呼んでいます。


以下で、この3つの形式の橋渡しをしようと思うのですが、

ニュートン形式 => ラグランジュ形式 については以前の記事に譲ります >> id:rikunora:20090327

今回の目玉は、ハミルトン形式です。


その前に、たくさん登場する記号の解説を少しばかり。

解析力学では、どういう訳か同じ内容を別の記号で表すことがあるんです。

また、人により本により記号が微妙に違っていて、これがさらなる混乱を生んでいるように思うのです。

知っている人には当たり前なのかもしれませんが、私は慣れるまでかなり混乱したので、せめてここに書いておきます。

まず、座標を表す記号。

物体の位置座標と言えば、3次元であれば普通は(x, y, z) と書きます。

ところが解析力学では座標の意味を広げていて、3次元以上をも扱うことができるのです。

なので(x, y, z) ではなくて、(x1, x2, x3, x4 ...)と書きます。

同じことを繰り返し書くのは面倒なので、まとめて xi (i=1,2,3...) と書くこともあります。

さらに、いちいち (i=1,2,3...) と書くのがめんどくさいので、単に xi と書いてあったり、

場合によっては x だけ書いて複数の座標を表していることもあります。

また、解析力学では座標を x ではなくて、q で表すこともあります。

ハミルトン形式では q で書くのが慣例です。

たぶん運動量の p に合わせてバランスをとったのだと思います。

あと x が普通のデカルト座標っぽいのに対して、q は自由に選んだ一般化座標という感じなのでしょう。

ラグランジュ形式のところで、上の図では運動エネルギーのことをTで表しています。

これをKと書いているものもあります。

Kは Kinetic なのでしょうが、Tはなんなんだろう、よく知りません。

位置エネルギーは、上の図ではUで表しています。

これをVで表している本もあります。

微分の記号は、f'(x) のように ' を付ける書き方がありますが、

解析力学では d/dt のように、d で分数のように書くのが主流です。

' はニュートン流、d/dt はライプニッツ流です。

さらに、解析力学では文字の上に・(ドット) を付けて微分を表す、ということをしています。

あと、ライプニッツ流の書き方をよく見ると、d/dt と書いてあるところと、∂/∂t と書いてあるところがあります。

d で書いてあるところは単なる微分、∂(ラウンドディー)で書いてあるところは偏微分です。

微分とは、多変数関数について、ある特定の向きにだけ偏って微分するということですよ。

以上は余計な解説だったのですが、、、こんだけ出てくれば、間違わない方が不思議だと思うぞ。

記号、たくさん有り過ぎ。


* ニュートン形式 => ハミルトン形式

話を保存力場中の質点の運動に限定します。

保存力場と言ったのは、質点が受ける力を周囲の場(地形)によるものだけに限定しよう、ということです。

周囲の場から受ける力というのは、要はデコボコの地形の上に置かれた質点が

下り坂の向きに力を受けるということですから、位置エネルギー微分になります。

このときニュートン運動方程式は、

  - ∂U/∂x = m・d^2 x / dt^2    ・・・(1)

式の先頭に付いているマイナスは「下り坂の向きに働く」という意味です。

位置xの微分が速度になること、運動量とは(質量)・(速度)であることから、運動量pは

  p = m・d x / d t     ・・・(2)

この運動量pを用いて、最初の(1)式を書き直すと、

  - ∂U/∂x = d p / d t    ・・・(3)

となります。

さて、ここで質点の持つエネルギーについて考えてみることにします。

エネルギーは(運動エネルギー)+(位置エネルギー)ですから、それをHと書くことにすると、

  H = (1/2m) p^2 + U    ・・・(4)

この(3)式のHを運動量pで微分すると、(Uはpに依存しないから消える)

  ∂H/∂p = (1/m) p

運動量pとは、(2)式のことだったので、

  ∂H/∂p = d x / d t    ・・・(5a)

また、(4)式のHを位置xで微分すると、(pはxに直接依存しないから消える)

  ∂H/∂x = ∂U/∂x

(2)式によって、

  ∂H/∂x = - d p / d t    ・・・(5b)

この (5a), (5b)の2本の式が、ハミルトン運動方程式です。

エネルギーHを引き合いに出して、もともと1本だったニュートン運動方程式を、

位置xと運動量pの2つの変数による2つの式に書き直したわけです。


* ラグランジュ形式 => ハミルトン形式

ラグランジュ形式には、ラグランジアンLという量がありました。

ラグランジアンLは位置と速度に依存する関数、つまりL(q, q')ということです。

ここで、Lをほんの少しだけ変化させた変分δLというものを作ってみます。

  δL = (∂L /∂q) δq + (∂L /∂q') δq'   ・・・(6)

唐突に複雑な式が出てきたように見えますが、これ、要は2変数関数の全微分というやつです。

なぜこのような微小変化を考えたのか。

それは、Lを位置q と速度q' の2つに分解したかったからです。

Lには運動方程式の情報が1つにまとまって入っているのですが、

それを揺さぶってみると、位置、速度、2つのカケラが出てきます。

この2つのカケラを、それぞれ2本の式にしてしまおうというのが、δLを作った狙いなのです。

(別にδL=0として、最適なLを探そうということではない。)

(6)式の (∂L /∂q') という部分を、運動量であると見なします。

つまり、一般化運動量pを

  p = ∂L /∂q'    ・・・(7)

であると定義します。

この定義は天下り的ですが、試しに L = 1/2 m v^2 - U と考えて v = q' で微分してみると、

確かに p = m v となっていますね。

さて、ラグランジュの運動方程式とは

  d/dt(∂L/∂q') - ∂L/∂q = 0    ・・・(8)

でした。

この (7)式と(8)式を使って、先の(6)式を書き直すと、

  δL = (dp/dt) δq + pδq'    ・・・(9)

両辺から δ(pq') という値を引いてみます。

  δ(pq') = pδq' + q'δp

であることに注意。

すると、(9)式はこんな風になります。

  δ(L - pq') = (dp/dt) δq - q'δp

両辺の符号をひっくり返します。

  δ(pq' - L) = q'δp - (dp/dt) δq

この式の左辺 (pq' - L) ってところを、Hという記号にまとめましょう。

  δH = q'δp - (dp/dt) δq    ・・・(10)

ところで、Hはpとqの関数なのですから、全微分するとこうなります。

  δH = (∂H/∂p)δp + (∂H/∂q)δq    ・・・(11)

(10)式と(11)式は同じものですから、じっくり比較すると、次の2本の式が引き出せます。

  ∂H/∂p = q'    ・・・(12a)

  ∂H/∂q = - dp/dt = - p'    ・・・(12b)

この (12a), (12b) の2式が、ハミルトン運動方程式です。

いったい何のこっちゃ? と思われるかもしれませんが、いまやったことは結局

・運動の法則=ラグランジュの運動方程式の情報を盛り込んで、

・一般化運動量p、ハミルトニアンH、といった意味がありそうなパーツをまとめて、

・2本の式に変形した

ということなんです。


以上が、3つの運動方程式を結びつける最短ルートなのだと私は思っています。

でも、やってることはあくまでも「形式」の書き換えに過ぎないのですから、

式をいじるのがとっても好き、という人以外はあんまりおもしろくないですね。。。

ここでは具体的、物理的な意味を追い求めて、わからん、わからんと悩むよりも、

しょせんは数学的形式なのだと割り切って、

 ・式に慣れる

 ・式の形を観賞して楽しむ

のが良いみたいです。


もう少し深く知りたいのであれば、やはりこのサイトに飛ぶしかあるまい。

* EMANの物理学 -- 解析力学

>> http://homepage2.nifty.com/eman/analytic/contents.html


とねとね 2009/05/07 02:06 うぉ〜、コンパクトにそして親しみやすくLとHをまとめてしまいましたね!
解析力学って何のため?っていう疑問は最初は力学の問題がスマートに解けてしまうのに感動しながら天下りにマスターして、後に量子力学を勉強するときにそのありがた味に気づくのですよね。
連休中は知識吸収にだけ精を出していたので、とりあえず2日間仕事してからブログエンジンを回し始める予定です。

rikunorarikunora 2009/05/07 10:24 1.最初はわけもわからず暗記する。
2.量子力学になって、これはやばいと思って復習する。
3.そしてブログネタになる(笑)。
4.(たぶん)先に行けば行くほど、ありがたみが出てくる。
現在レベル4.目指して奮闘中。
「古典場から量子場への道」は、ゆうに1年以上かかりそうです。。。
そう、休みでない日はしっかり仕事があるんですよね。
このコメントは、こっそり仕事場で書き込みました。

とねとね 2009/05/08 14:35 > 「古典場から量子場への道」は、ゆうに1年以上かかりそうです。。。

この本は他の2冊より読みやすいので、きっとそんなにかからないと思いますよ。(僕の読み方が浅いからそう思うのかもしれませんが。)

プロフィールを拝見しましたが、僕も「コンピュータ(ソフトウェア)」関連のお仕事しています。

rikunorarikunora 2009/05/09 00:33 読解の速度が早いか遅いかは別として、結局のところ知りたいのは
 場が粒子になっているって、一体どういうこと?
なんです。
これが積年の疑問で、いまだもってよくわからない。
場=粒子を何の苦もなく受け容れている人は、いったいどんなイメージを持っているのだろう。

コンピュータと物理の相関って、やっぱり高いですね。
とねさんの並列スパコンというものに興味があります。

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