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小人さんの妄想 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2009-06-07

複素数の指数関数

複素数の指数関数 y = e^x をグラフに描くと、こんな感じになります。

f:id:rikunora:20090608023325p:image

多少大げさに言えば、このグラフは「人類が知っている図形の中で最も美しいもの」の1つではないかと思います。

ただし、ここに描いたグラフにはごまかしが入っていて、本当のグラフは四次元空間となります。

その四次元のグラフを脳内で想像できれば、きっと心底美しいと感じ取ってもらえることでしょう。

なぜ四次元なのか。

実数の関数 f(x) → y であれば、元が x という1つの数、先が y という1つの数だから、

合わせて2つの数になって、2次元の平面上にグラフを描くことができます。

ところが複素数というのは a + b i のような形で、実数と虚数の2つの数から成り立っています。

複素数関数 f(x + u i) → (y + v i) を考えると、元で2つ、先で2つ、合わせて4つの数が必要です。

なので複素数関数を完全にグラフ化しようとすれば、四次元空間が必要なんです。

でも、我々は4次元のグラフを描くことができないので、

たいていの本なんかでは2枚の2次元グラフを組み合わせて、何とか表現しています。

(そんなの当たり前ですか?

 私は最初、このことが分からず、複素関数のイメージを思い描くのにずいぶん苦労しましたよ。)

さて、上のグラフは3次元なので、本来の4次元のグラフから1つの軸を省いています。

何を省いているかというと、関数の値を実数だけにして、結果から虚数を省いてあります。

グラフ中の x と i の平面が関数の元になる数(定義域)、y が関数の結果の実数値(値域)、

つまり f(x + u i) => (y) ということです。

グラフ中の x y 平面が、普通にお目にかかる実数の平面です。

3本描かれた赤い線のうち、ちょうど真ん中の一本が x y 平面上に乗っかっていますが、

この線が、実数で普通に見るところの指数関数グラフです。

グラフ中、黄色い点々で示してあるラセンは、本当はここにあるのではなくて、虚数の値を含んでいます。

所々、+1とか−1とか書かれている点だけが、このグラフのある3次元空間に顔を出しています。

それ以外の点々の部分は、虚数空間にワープしている、みたいなイメージです。


なぜ複素数の指数関数は、このような形をしているのか、順を追って見てみましょう。

まず最初に知るべきことは、複素数の掛け算です。

2つの複素数の掛け算は、複素平面上で見ると

 ・長さを掛けて

 ・角度を足す

という法則に従っています。

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長さの方は良いとして、なぜ掛け算すると「角度の足し算」になるのか?

直感的に言うと、複素数の掛け算とは「まわれ右」のように回るものだからです。

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そもそも虚数iとは、2つ掛け合わせたら −1 になる数のことでした。

実数の数直線上に1と−1をプロットして、自分が中央の0の位置に立っていることを想像してみてください。

この世界で、マイナス1を掛ける操作は、1の方を向いている自分の向きを、

「まわれ右」して180度反対向きになることに相当します。

さてここで、2回操作してマイナス1になるようなものを考えろ、と言われたら・・・

きっと180度の半分、90度横を向くことが思い浮かぶでしょう。

数直線から90度横を向いた数、即ちこれが虚数iのことです。

であれば、虚数iと実数を合わせて作った複素数は、きっと掛け算すると中途半端な角度、

30度なり、60度なりといった角度だけ回転するのではないでしょうか。

実際やってみるとその通りで、複素数の掛け算は目に見えない空間での回転になっていたのです。

* KIT数学ナビゲーション -- 複素数の積

>>http://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/category/fukusosuu/fukusosuu-no-seki.html


掛け算がわかったところで、次に知るべきことは、x が実数だった場合の複素数の指数関数

y = e^(i x) についてです。

答を先に言うと e^(i x) の値は、複素平面の単位円上をグルグルと回ります。

上に描いた「まわれ右」の図のような感じです。

掛け算が回るのだから、虚数の累乗 i ^ x という関数が回るのはわかります。

しかし、指数関数 e^(i x) がどうなるのかは、ちょっと想像がつきません。

そこで試しに e^(i x) という関数を、実数と同じように微分してみます。

  (e^(i x))' = i e^(i x)

虚数iが出てきました。

ところで、微分幾何学的な意味は何だったでしょうか。

それはグラフの接線のことでした。

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複素数の指数関数微分を見ると、どうやら虚数iの向きに接線が引けそうです。

ということは、複素平面上で言えば、接線は実軸から90度横方向を向いている、ということではないでしょうか。

複素数の指数関数 e^(i x) は、いつでも自分の値(ベクトル)の90度横方向に接線が向いている・・・

そう思って、ある1点からスタートして、90度横向きに線をつないでゆけば、結果は円になるでしょう。

以上が、複素数の指数関数が回転することの直感的なイメージです。


 e^(i π) = -1

これはオイラーの等式と呼ばれる有名な式です。 >> wikipedia:オイラーの公式

ファインマンは「すべての数学のなかでもっとも素晴らしい,そして驚くべき公式」と述べたのだそうです。

微分によって、複素数の指数関数 e^(i x) が回転するところまでは想像できるのですが、

それではなぜ、ちょうど x = π のとき、この回転がピタリ180度(πラジアン)進むのでしょうか。

それは、円周上を半周したときの経路の長さがπとなっているからです。

まず、指数関数の底が e ではなくて、別の数だったらどうなるかを考えてみましょう。

例えば 2^(i x) だったら、どうなるか。

この式を微分すると

  log(2) i・2^(i x)

となります。

e と比べると、log(2) という余計な定数が出てきます。

これが何を意味するか。

複素平面上で考えた場合、接線の向きは90度で変わらないのだが、

その点における速度、つまり回転のスピードが変わってくることを意味します。

底を変えても、複素数の指数関数はやはり単位円上を回ります。

ただ、回るスピードだけが変化します。

なので、底を少しずつ変えてスピードを調整すれば、どこかにちょうど「x=経路の長さ」となっている、

いわば「最も自然な速度」が見出せるはずです。

そして、その「最も自然な速度」を出す数が e となっていた、というわけなのです。

e のことを「自然対数の底」って言いませんか。

どの辺りが自然なのかというと、微分した値が、ちょうど指数関数の値それ自身に等しくなること、

つまり (e ^ x)' = e ^x となっていることです。

この「自然な」感覚を複素数に当てはめれば、変化のスピードがちょうど経路の長さに一致している数は、

きっと e になるだろうという気がしませんか。

残念ながら、直感に頼れるのはこの辺まで。

正式には、やはり指数関数を展開して比較してみるのが王道です。

* オイラーの公式 -- 物理のかぎしっぽ

>> http://www12.plala.or.jp/ksp/mathInPhys/euler/


さて、以上で最初に掲げた「複素数の指数関数の全容」を理解する準備が整いました。

y = e ^ (i x) という関数の形を考えると、単位円上をぐるぐる回転しているわけですから、

複素空間上での関数の軌跡は x 軸に対してラセン形を描くことになります。

これが最初のグラフ上で、黄色い点々で示した曲線です。

ラセン上の点は、一回転ごと、つまり2πごとに同じ値を示します。

オイラーの等式に従って、πだけ進んだところがちょうど−1、そこから2π進んだところもやはり−1、、、

ということで、2πごとに同じ形が繰り返されるわけです。

いま−1の方に着目しましたが、+1の方でも同じことが起こっています。

虚数成分が0、つまり実数平面上では e ^ 0 = 1 となっています。

この+1の点も、−1と同様、2π間隔で虚数空間上に出現します。

ところで、実数平面上には「普通の」指数関数のカーブが(赤い線で)描かれています。

この指数関数のカーブは、虚数空間の中でも2π間隔に出現するのではないか。

実際その予想は正しく、e^(2πi+x) = e^(2πi)・e^x = e^x となっています。

また、e^(πi+x) = e^(πi)・e^x = -1・e^x = - e^x ですから、

マイナスの側にも、実数での指数関数カーブを逆さにしたような曲線が並びます(緑の線)。

それでは、規則正しく並んでいる赤と緑の指数関数カーブの間を結んでいるのは、

グラフに示した黄色い点々のラセンだけでしょうか?

実は、このラセンはたまたま実数成分x = 0 にあるものを描いただけで、

それ以外の場所も、指数関数カーブ上にある全ての点が(グラフには描かれていませんが)

ラセンで互いに結びつけられているのです。

例えば実数成分x = 1 の場所には、e^(1 + ix) = e^1・e^(ix) = e ・e^(ix) ですから、

半径を e に広げたラセンがあるわけです。

実数成分xが小さいところ、グラフの奥の方には半径の小さなラセンが、

実数成分xが大きいところ、グラフの手前の方には半径の大きなラセンが、

互いに赤と緑で描かれた指数関数カーブを結びつけている、、、

それが、四次元の複素空間に描き出された「複素数の指数関数の全容」なのです!


ペカリペカリ 2009/06/09 21:27 複素数の積って周波数の掛け算を理解するキーなのですが・・・
いまだ、理解できないでいます・・・ショボン。

rikunorarikunora 2009/06/10 09:23 私も最初はさっぱり解らなかったのですよ。
でもこれって、習うより慣れろみたいなところがあるんです。
とにかく複素平面にプロットできるようなソフト(Wolfram|Alphaとか)をいじくっていると、あるとき、はたと気付きます。
完璧だけど実感できないような数学的証明を眺めていてもダメ。(私の場合はそうだった)
とにかくグラフを描いてみる。
形が見えてくると、ホントに美しいのですよ、これ。

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