ウソつきっ娘論理プログラミング
全ての問題にかわいい女の子が出てくる、「登場する人物の発言を手がかりに問題を解くタイプ」の論理パズル集。
- 作者: 小野田博一
- 出版社/メーカー: イーグルパブリシング
- 発売日: 2009/09/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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* 出版社での紹介 >> http://www.tp-ep.co.jp/ep-hp/top.html
第1問目は、こんな感じです。
* 第1問目の画像イメージ >> http://www.tp-ep.co.jp/ep-hp/images/top/ronripazuru_01.jpg
【Q1】水泳大会
水泳大会で、この4人が1位から4位を獲得しました(同順位はありません)。
スタート前の予想は下のとおりで、3人が当たり、1人が外れました。
誰が何位だったのでしょう?
ことり「私は1位」
なる 「私はすずより上位」
すず 「私は1位か2位」
あゆ 「私は1位か2位」
こういった問題が全部で60問出てきます。
試しに何問かやってみるとわかるのですが、この手の問題にはある程度パターンがあって、
コツさえ掴めれば、後はほとんど機械的に解けます。
・・・だったら、機械に解かせるべきではないか。
そう思って、まずこの第1問目をパソコンで解いてみることにしました。
実は、パソコンにはこういった論理パズルを解くためのプログラミング言語があります。
Prologです。
いくつかあるProlog実装のうち、今回は SWI-Prolog というものを使ってみました。
* SWI-Prolog's home >> http://www.swi-prolog.org/
Prolog言語自体については、こちらのページが参考になります。
* お気楽 Prolog プログラミング入門
>> http://www.geocities.jp/m_hiroi/prolog/
※ インストール時の注意点(Windows版)
※ もし Perl を使っていたのなら、拡張子に注意が必要です。
※ SWI-Prolog のデフォルトの拡張子は「.pl」となっており、Perl の拡張子と重複します。
※ このため、インストーラーでは「.pl」の代わりに「.pro」も選べるようになっています。
※ 私は「.pl」にも「.pro」にもせずに、以下の説明に従って拡張子を「.swi」に設定しました。
インストーラで拡張子を設定する項目がありますが、説明を読むと .PL と .PRO では不都合があるようなので、おススメされていた .SWI としました。
これで SWI ファイルをダブルクリックすると、SWI-Prolog を起動してプログラムが実行されます。
-- http://www.geocities.jp/m_hiroi/prolog/#SWI より.
さて、インストール後、最初に悩むのは「どこにプログラムを書けばいいの?」ということです。
以下に、やり方を書いておきます。
1.拡張子が.swi(人によっては.pl)という空のファイルを作成します。
例えば "test.swi" といった名前の空ファイルを作成します。
2..swiファイルをダブルクリックすると、SWI-Prologが起動します。
?- が入力プロンプトで、ここにPrologへの「問い合わせ」を入力することになります。
もし最初の.swiファイルにプログラムが記述してあれば、起動時にそのプログラムが読み込まれます。
しかし今回は空のファイルから起動したので、何も読み込まれていません。
3.メニューの [File] -> [Navigator...] を選択すると、Prolog Navigator ウィンドウが現れます。
4.ナビゲーター上では、最初に起動した.swiファイルが緑色に表示されています。
この緑色になっている.swiファイルを選択して、[右クリック] -> [Edit]、
またはメニューにある鉛筆アイコンのボタンを押すと、編集画面が立ち上がります。
プログラムは、この編集画面に書き込むことになります。
5.編集画面の使い方は、普通のテキストエディタと同じです。
ここにプログラムを書き込んだら、メニューの [File] -> [Save Buffer] で内容を保存します。
実のところ、この編集画面は単なるテキストエディタなので、
別のテキストエディタで直接.swiファイルを編集してもかまいません。
6..swiファイルの編集を終えたら、最初に開いたPrologのメインウィンドウに戻って、
メニューの [File] -> [Reload Modified Files] を選択すると、
変更のあった.swiファイルの読み込み直しが行われます。
7.以上のようにして、「.swiファイルの編集」->「読み込み直し」を繰り返して、
プログラミングを進めることになります。
8.Prologでプログラムを読み込むことを「Consult」といいます。
メニューの [File] -> [Consult...] から直接プログラムを読み込むこともできます。
また、入力プロンプトから、
?- ['c:/MyWork/Prolog/test.swi'].
とファイル名を入力することで、プログラムを読み込むこともできます。
(入力の最後にあるピリオド . を忘れずに!)
さて、当初の水泳大会の問題に戻りましょう。
まず最初に、登場する4人の女の子の全ての並び順(順列)を表示してみましょう。
.swiファイルに、次のプログラムを入力して、読み込み直しを行ってください。
moemoe_swimming(X) :-
permutation([kotori, naru, suzu, ayu], X).
permutation とは順列のことです。(permutation という表記は SWI-Prolog独自のものです)
Prologでは値の並びのことを「リスト」といって、[a, b, c] といった書き方をします。
そして、メインウィンドウの ?- プロンプトに、
moemoe_swimming(X).
と入力します。
女の子の並び順が、まず最初に1行だけ表示されます。
1行表示されたところでセミコロン ; を入力すると、2行目に次の並び順が表示されます。
セミコロン ; を次々に入力すると、全24通りの順列がなくなるまで表示が続きます。
途中でイヤになったら、ピリオド . か、リターンキーを入力すると、表示はそこで中断します。
次に、
ことり「私は1位」
という条件をプログラムに付け加えてみます。
プログラムを次のように書き換えて、読み込み直しを行ってみます。
moemoe_swimming(X) :-
permutation([kotori, naru, suzu, ayu], X),
nth1(1, X, kotori).
nth1(1, X, kotori) というのは、「X の 1 番目に kotori がある」という意味です。
(nth1 という表記は SWI-Prolog 独自のものです)
Prologでは、カンマ , 区切りで文章を付け加えると、AND条件として加わります。
また、セミコロンで ; 区切りで文章を付け加えると、OR条件として加わります。
(入力プロンプトで入力した ; セミコロンは、「また次の答は」という意味だったのです。)
メインウィンドウの ?- プロンプトに、先ほどと同じように moemoe_swimming(X). と入力すると、
今度は、ことりが一位になっている順列だけが表示されます。
?- moemoe_swimming(X).
X = [kotori, naru, suzu, ayu] ;
X = [kotori, suzu, naru, ayu] ;
X = [kotori, suzu, ayu, naru] ;
X = [kotori, naru, ayu, suzu] ;
X = [kotori, ayu, naru, suzu] ;
X = [kotori, ayu, suzu, naru] ;
false.
次の、
なる 「私はすずより上位」
という条件を入れるには、次のようにします。
naru_faster_suzu(L) :-
nth1(Idx1, L, naru), nth1(Idx2, L, suzu), Idx1 < Idx2.moemoe_swimming(X) :-
permutation([kotori, naru, suzu, ayu], X),
nth1(1, X, kotori),
naru_faster_suzu(X).
nth1(Idx1, L, naru) というところは、「L の中の Idx1 番目に naru がある」という意味です。
naru_faster_suzu(L) は、
「L の中に naru がある位置と、L の中に suzu がある位置を比べると、naruの方が小さい」ということです。
ここまでの条件にあてはまるものは、以下の3つだけになりました。
?- moemoe_swimming(X).
X = [kotori, naru, suzu, ayu] ;
X = [kotori, naru, ayu, suzu] ;
X = [kotori, ayu, naru, suzu] ;
false.
さらに、残る2人の条件も入れてしまいましょう。
すず 「私は1位か2位」
あゆ 「私は1位か2位」
naru_faster_suzu(L) :-
nth1(Idx1, L, naru), nth1(Idx2, L, suzu), Idx1 < Idx2.moemoe_swimming(X) :-
permutation([kotori, naru, suzu, ayu], X),
nth1(1, X, kotori),
naru_faster_suzu(X),
( nth1(1, X, suzu); nth1(2, X, suzu) ),
( nth1(1, X, ayu); nth1(2, X, ayu) ).
ここまで4人分の条件を入れ込むと、あてはまる結果は1つも無くなります。
?- moemoe_swimming(X).
false.
4人のうち、誰か一人がウソをついているということです。
順番に調べてみましょう。
まず、ことりがウソをついているとして、ことりの条件のところを not( ) で囲ってみます。
naru_faster_suzu(L) :-
nth1(Idx1, L, naru), nth1(Idx2, L, suzu), Idx1 < Idx2.moemoe_swimming(X) :-
permutation([kotori, naru, suzu, ayu], X),
not( nth1(1, X, kotori) ),
naru_faster_suzu(X),
( nth1(1, X, suzu); nth1(2, X, suzu) ),
( nth1(1, X, ayu); nth1(2, X, ayu) ).
結果、やはりあてはまるものがありません。
似たようなやり方で、なるがウソをついていたとすると、
・・・やはり結果なし。
続いて、すずがウソをついていたとすると、
naru_faster_suzu(L) :-
nth1(Idx1, L, naru), nth1(Idx2, L, suzu), Idx1 < Idx2.moemoe_swimming(X) :-
permutation([kotori, naru, suzu, ayu], X),
nth1(1, X, kotori),
naru_faster_suzu(X),
not( nth1(1, X, suzu); nth1(2, X, suzu) ),
( nth1(1, X, ayu); nth1(2, X, ayu) ).
結果が1つだけ出てきました。
?- moemoe_swimming(X).
X = [kotori, ayu, naru, suzu] ;
false.
つまり、これが答ということですね。
ついでに、最後のあゆがウソをついていたとしても、やはり結果は出てきません。
ということで、答はさっきの1通りしか無いことが確かめられました。
ひとくちにプログラミング言語といっても、Prologは他の言語とはかなり毛色が違っています。
定型プログラムを完成させるというより、対話しながら論理を探ってゆくためのものです。
どちらかと言えばデータベースに問い合わせるSQL言語に近い感じ。
あと、言うまでもないことですが、この本に着目したのは純粋に論理パズルを楽しむためであって、
決してイラストにつられてフラフラと手にとってしまったわけではありません!