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小人さんの妄想 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2011-01-04

富士山の方程式

あけましておめでとうございます。

年の初めに新春らしく、富士山の形について考えてみたいと思います。

富士山が美しく数学的に均整のとれた形であることは、日本人なら誰もが認めることでしょう。

それでは、あの富士山の裾野が描く優美なカーブは、どのような法則に従っているのでしょうか。

1つのヒントは「熱伝導方程式」にあると思います。

熱伝導方程式とは、時間とともに変化する熱の伝わり方を表す偏微分方程式のことです。

ちょうど熱が高い方から低い方に伝わるように、富士山を形作る砂礫も高い方から低い方へと崩れているのではないか。

きっと富士山の形は、物体の中を熱が伝わってゆく分布形状に似通ったものになることでしょう。


それでは、熱はどのように物体の中を伝わってゆくのでしょうか。

熱は、高温から低温に、温度差に比例して伝わってゆくものと考えられます。

f:id:rikunora:20110104193224p:image

温度差を高さの差に見立てて、熱が伝わってゆく物体を階段の連なったようなものだと見なせば、

階段の段差が大きな場所ほど、大きな熱が移動することになるでしょう。

熱が移動した結果、階段の高さは少しだけ変化します。

たくさん熱が流入した場所は温度(高さ)が上がり、反対にたくさん流出した場所は温度(高さ)が下がります。

この“階段流”の考え方に基づいて、

 1.段差に比例して熱を移動する。

 2.移動した熱量に合わせて、高さを補正する。

というステップをパソコンでひたすら繰り返し計算すれば、熱が伝わる様子をグラフに描くことができるわけです。

そうして描いたグラフの1つが、これです。

f:id:rikunora:20110104193225p:image

このグラフは、最初に二等辺三角形型(ピラミッド型)の山があったとして、

その後、ピラミッド型の山がどのように崩れてゆくのか、過程を示したものです。

山の裾野(グラフの両端)の高さは、いつでも0になるように設定してあります。

結果はこんな感じに、丸い丘のような形になりました。

しかし、これはどう見ても富士山型とは違っています。


そこで、もう少し条件を変えて、別のグラフを描いてみました。

f:id:rikunora:20110104193226p:image

今度のグラフは、

 ・左端の温度は常に1、

 ・右端の温度は常に0、

 ・最初、(右端以外の)全体の温度は0になっている、

という条件の下で描いたものです。

左から右に向けて熱が広がっていく様子がよく表れているでしょう。

熱が広がってゆく過程で、途中にちょっと富士山っぽいカーブが出現します。

しかし、カーブになっているのは途中の一時期だけで、最終的に熱の分布は一直線となります。

これが富士山に似ているかと聞かれれば、疑問符?を付けざるを得ません。


いったい何が足りないのでしょうか?

改めて考え直してみると、富士山二次元の広がりに対する分布、上の計算は一次元の線の上での分布でした。

上の一次元の考え方を拡張して、こんな風にすべきだったのではないでしょうか。

f:id:rikunora:20110104193227p:image

一次元の場合には、ある点と、左右に隣接する点について熱の移動を計算していました。

二次元では同じことを、前後左右の4つの点について計算すればよいわけです。

この考え方で、二次元の熱伝導を描いてみたのが下のグラフです。

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このグラフは、

 ・中心の1点の温度を常に100に保つ、

 ・裾野の縁(土台となる正方形の縁)を0に保つ、

という条件で描いたものです。

なんか、下の方がすごく富士山っぽくないですか。

このグラフの縦横比を変えて、富士山のシルエットに重ねてみると・・・

f:id:rikunora:20110104193229p:image

ほら、わりといい感じに合っているでしょう。

よく見ると、

 ・熱伝導の曲線の方が、実際の富士山のカーブよりもきつい。

  実際の富士山の方が直線に近い。

 ・(富士五湖側から見た)富士山は、実は少しだけ左右非対称である。

 ・宝永山が出っ張っている。(画面左側にあるコブ)

なんてことがわかります。

 結論: 富士山の形は、二次元熱伝導方程式の結果にかなり近い。


今回の計算は、ここの記事を参考にしました。

* 計算数理科学のブログ >> Excelで2次元熱伝導方程式を解く(その1)

自分でも富士山型を描いてみたい、と思った人は、ここで配布しているExcelマクロを改造してみましょう。

* 計算数理科学のブログ >> Excelで2次元熱伝導方程式を解く(その4)

富士山のシルエットの写真は、こちらのサイトから拝借しました。

* 高画質無料壁紙集 >> http://k-kabegami.com/

それでは、よいお年を!


※1/6追記. その後、「安息角」という言葉を初めて知りました。

「粉体(岩石、石炭、砂など)を積み上げたときに自発的に崩れることなく安定を保つ斜面の角度」

「斜面の角度や摩擦係数に起因する」とのことです。>> wikipedia:安息角

下の森山さんのコメントの他、詳しい知人からも教えてもらいました。

そこで思ったのですが、富士山って高さによって構成素材というか、地質が変化しますよね。

麓の方は土で、途中から砂礫となり、頂上に近付くにつれて岩が多くなってくる。

この素材の変化と安息角がバランスをとって、全体としてあんな形になるのではないでしょうか。

ミクロに見た安息角と、マクロに見た熱伝導方程式が一致していたら、すごいと思う。


森山森山 2011/01/05 15:19 凄い!!熱の伝導と安息角が一致しているとは

rikunorarikunora 2011/01/06 13:15 新年おめでとうございます。
「安息角」という言葉を初めて聞きました。土木も熱いですね!

三毛公爵三毛公爵 2011/01/21 17:12 新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。m(. .)m

熱伝導方程式と富士山をかけるとは( ゜д゜ )やられました。
熱と高度もどちらも結局のところはエネルギーだから、そういわれればそういう感じがします。がれきの大きさで砂か岩かというのは熱伝導率に変換できそうですね。

(´・ω・`)自然の類似性にはびっくりです。

rikunorarikunora 2011/01/24 20:36 この富士山の形が本当に合っているかどうかはともかく、
きっと自然は、突き詰めれば何らかの数理に一致しているのです。
そういうものが1つでも見つかると嬉しいものです。

hirotahirota 2012/02/17 17:51 頂上の火口から様々な安息角を持つ物質が出てくると、安息角以上の斜面では止まらず安息角よりなだらかな斜面で止まる。
平地の初期状態から適当な安息角分布の物質を出すシミュレーションをすると、富士山の生成過程が分かりますね。

rikunorarikunora 2012/02/22 01:47 以前、富士山に登ったことがあるのですが、言われてみれば頂上近くには岩が多く、
麓に近いほどサラサラした砂礫になっていたように思います。
・・・こうしてみるとシミュレーションのネタって尽きないですねぇ。

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