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小人さんの妄想 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2011-10-15

量子消しゴム実験やってみた

量子力学と言えば、日常とは縁遠い、特別なミクロの世界というイメージがあります。

ところが、やり方さえ工夫すれば、量子の世界を家庭でもわりと手軽に試すことができるのです。

今回やってみたのは「量子消しゴム実験」。

元ネタは日経サイエンス 2007年8月号に載っていたものです。

>> http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0708/200708_080.html

(このページから記事をダウンロード購入できます)

詳しい解説は元記事に譲るとして、以下に実際にやってみた結果を載せます。


■ 用意するもの

1.レーザーポインタ

手頃なものであれば、2〜3千円位で購入できます。私はこのレーザーポインタを使いました。

[asin:B001VA2P4W:detail]

2.偏光版

Amazonで購入しました、価格630円。

偏光板125mm 透過率38%

偏光板125mm 透過率38%

3.写真クリップ

 偏光板を立てた状態で留めておくものです。これが無いと実験は難しいでしょう。

4.ホチキスの針

 詳しくは後述。


■ 実験1.干渉縞を見る

レーザーポインタの正面に、まっすぐ伸ばしたホチキスの針を置いて、光線を二分します。

実験装置はこんな感じ。

f:id:rikunora:20111014215807j:image

ホチキスの針は、消しゴムにさして立ててあります。

f:id:rikunora:20111014215919j:image

レーザーポインタからホチキスの針までの距離は15cm程度、その先スクリーンまでの距離は1m程度です。

二分した光線の当たった先をよく見ると、輝点の両側に干渉による縞模様が出現します。

部屋を暗くしないと、よく見えないかもしれません。

f:id:rikunora:20111014220159j:image

ここまではレーザーポインタさえあれば誰でもできるので、ぜひ一度お試しあれ。

以下、幾つか気になった点について。

* 一番上手くいったのはホチキスの針

干渉縞を作るにあたって、他に、紙で作ったスリット、まち針、シャーペンの芯、を試してみました。

その結果、一番うまくいったのが「まっすぐ伸ばしたホチキスの針」でした。

なぜこんなものを思い付いたのかと言えば、元の日経サイエンスの記事にあったからです。

影を作る材質なんて何でも良いように思えるのですが・・・とにかくホチキス針でうまくいきました。

* ピンホールはダメだった

元記事では、レーザーポインタの先にアルミ箔を貼り、そこに小さな針穴を空けてビームを絞るようにとありました。

当初、私もその通りやってみたのですが、うまくいきませんでした。

というのは、レーザー光をピンホールに通すと、それだけで回折による縞模様が出てくるからなのです。

(これはこれで、別の実験になりますね。)

細く絞り込むと、できた縞模様が干渉によるものなのか、回折によるものなのか、区別がつきにくくなります。

私の場合は、いっそ絞り込み無しでやった方がうまくいきました。

もしかすると、穴の大きさを調整した絞りを入れた方が、もっときれいな結果が出るのかもしれません。

* キラッ☆

実際やってみると、マンガに出てくるキラキラ記号が、まんざらウソでもないことが分かります。

f:id:rikunora:20111015161455p:image

あれは光の波動性の成せる技だったのか。


■ 実験2.干渉縞を消してみる

次はちょっとした工作が必要です。

ホチキスの針の右側に縦方向の偏光板、左側に横方向の偏光板が配置されたものを作ります。

こんなものです↓ 台座には写真クリップを使っています。

f:id:rikunora:20111014231632j:image

購入した偏光板(サイズ12.5x12.5cm)を縦横4枚に切り分けて、そのうちの2枚を使用します。

このとき、ホチキスの針と左右の偏光板との間に、ほんのわずかの隙間も残さないこと。

作る際には、まず2枚の偏光板を横に貼り合わせて、その上から境目をホチキスの針でふさぐようにします。

貼り合わせは、単純にセロテープで行っています。

もちろん光をあてる部分にはセロテープを被せないようにします。

こうして作った、右側=縦偏光、左側=横偏光の装置に、先ほどと同様にレーザー光を当ててみます。

f:id:rikunora:20111014230837j:image

f:id:rikunora:20111014230710j:image

すると、今度は干渉縞ができません!

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・・・と、簡単に書きましたが、実はここで干渉縞を消し去るには、かなりの調整が必要なのです。

調整のコツは後回しにしますが、ここでは干渉縞が消えたものとして先に進みましょう。


■ 実験3.干渉縞を復活させる

干渉縞が消えている状態で、さらに、光線の先にもう1枚の偏光板を「斜め45度に」配置します。

f:id:rikunora:20111014231215j:image

すると、、、干渉縞が復活します!

f:id:rikunora:20111015104750j:image

ここで、偏光板の向きを回転させてみると、おもしろいことが起こります。

縦方向に置いても、横方向に置いても、干渉縞が消えます。

しかし、斜め方向に置くと、干渉縞が出現します。

斜め45度のときに、最も強く干渉縞が現れるのです。


ここで、実験のコツを記しておきます。

干渉縞の消去は、装置のちょうど真ん中に、左右等しくなるようにレーザー光を当てないとうまくいきません。

それを確かめる方法は、実験3の状態で、偏光板の向きを回転させることなのです。

レーザー光が左右同等に当たっていないと、縦か横かの、どちらか一方の偏光が強く出ます。

例えば縦方向が強かった場合には、光線の先に縦方向の偏光板を置けば明るく、横方向の偏光板を置けば暗くなります。

この縦横の明るさの違いを見て、ちょうど真ん中にレーザー光が当たるように装置を調整するわけです。

調整がうまくいけば、最終的には

 ・縦方向、横方向の明るさが同じくらいで、干渉縞が消える。

 ・斜め方向にるすと、干渉縞が出現する。

といった状況が実現できるはずです。


■ 一体何をしたのか

実験1 -> ホチキスの針の、左右を通った光によって、干渉縞を作った。

実験2 -> 右側の光と、左側の光が、偏光によって区別できるようになると、干渉縞は消えてしまった。

実験3 -> ところが斜めの偏光板を置いて、左右の区別が付かないようにすると、干渉縞が復活した。

つまり、干渉縞は「左右の区別がつかない状態に限って出現する」ことになります。

落ち着いて考えてみると、これ、とっても変なことです。

実験2によって、縦横に分離した光は、もはや干渉を起こさないことが分かっています。

なのに、実験2の「後に」置いた斜めの偏光板によって、再び干渉縞が復活するとは、これいかに?

ホチキス針の横を通過する光は、通過する時点で、その先にある斜めの偏光板の存在を「あらかじめ知っている」のか?

ちなみにタイトルの「量子消しゴム」は、斜めの偏光板が「光の過去の記憶を消してしまう」という意味です。


■ おまけの実験

偏光板を持っていたら、ついでにこんなことを試してみてください。

2枚の偏光板を同じ向きに重ね合わせると、向こう側はよく透けて見えます。

f:id:rikunora:20111015072246j:image

偏光板を90度ずらして、縦横を違えて重ね合わせると、光を透過しなくなります。

f:id:rikunora:20111015072325j:image

ここで、2枚の偏光板の間に、3枚目の偏光板を斜め45度に差し込むと・・・

f:id:rikunora:20111015072700j:image

・・・不思議なことに、3枚の方が2枚よりも光を通すようになります!

さらに、3枚目の偏光板を2枚の間ではなく、上に乗せて見ると・・・

f:id:rikunora:20111015073315j:image

・・・光を通しません!

なんとも納得のいかない事実です。


■ オリジナル量子消しゴム実験

以上の量子消しゴム実験は、家庭でもできる簡易版で、オリジナルの実験ではさらにおもしろいことを試しています。

* A Double-Slit Quantum Eraser Experiment

>> http://grad.physics.sunysb.edu/~amarch/

こちらに論文を訳された方がいます。

* TOSHIの宇宙 -- 遅延選択実験(タイムマシン?)(5)

>> http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-b442.html

この動画の解説がわかりやすい。

* 量子消しゴム時間旅行の夢を見るか?

D

L.ライムL.ライム 2011/10/16 02:24 はじめまして。
いきなりのお願いで恐縮ですが…。
実験3の「もう1枚の偏光板」を、装置の奥側ではなく手前側に配置して頂けますか。
「斜め45度」にして…。

せいたかのっぽせいたかのっぽ 2011/10/16 16:41 こんにちは。実際に実験するということにとても感動しました。
でも、私は、普通の生活(巨視的な現象)に、そうそう量子論やら相対論やら持ち出すのは不要という意固地な信念みたいなのがあって、少し懐疑的に読みました。
(アンチ量子論、相対論者というつもりではないです。)

今回について、量子論でなく、初等的にも以下の説明ができそうに私は思っています。

?光の干渉は、二つに分かれた波の山同士が強めあうことなので、偏光板を使って縦だけの振動と、横だけの振動に分けたら干渉しないということではと思います。

偏光物質を詳しく勉強せずに書くのは生兵法で恐縮ですが、

?偏光とは入射光に対し、例えば電場の振動方向に並んだ分子なり結晶軸の異方性で起こるもので、偏光板で左右縦と横に振動面が分かれた光が、斜めの偏光板に入れば、斜めの成分が取り出されて斜め同士で再び振動面はそろいますので、波の山、谷同士の干渉が復活するのではないかと思います。

?最後の実験は、偏光板を0°、45°、90°で光が抜けた。枚数を多くすると厚さでの減光も出てしまいますが、多分、0°、30°、60°、90°など、もっと角度の変化を小刻みに連続的に変えた方が光は通る気がします。似た例として、液晶のコレステリック(らせん構造)で光の偏光面が回転して通過するイメージです。

とても面白い記事でしたので、ちょっと違った視点で書いてみました。ニュートリノの論文最後のエネルギーによらず時間の差が同じってのに引っかかってたけどその時は書きそびれたので、今回は思いつきですぐ書いちゃいましたので駄文ご容赦を。(日経サイエンス読んだわけではないので、単純じゃないのかな。この書き込みで恥をかくことになるのかも。でも難しいのでだいたいいつも私にはさっぱり分からないです。(笑))

せいたかのっぽせいたかのっぽ 2011/10/16 16:44 ごめんなさい。文字化けしました。文頭?は、もとはマル1、マル2、マル3 と書いたものです。

rikunorarikunora 2011/10/17 13:40 L.ライムさん、
もう1枚の偏光板をホチキス針の手前に置くと、干渉縞はできません。
手前に置くと、単に光の点が全体的に暗くなる、といった感じになります。

せいたかのっぽさん、恥をかくどころか、極めてまっとうな見方だと思います。
もしこの実験結果だけを見たら、奇妙な量子論の解釈よりも、せいたかのっぽさんの方がずっと自然です。
なまじ量子論を学校や本で聞きかじった方が、頭が固くなっていました。
確かに、偏光板というものが
・振動方向を少しずつ正すガイドラインのような性質を持っていて、
・いきなり90度だと光を通さないけれど、
・角度の変化を小刻みに連続的に変えてゆけば光を通す
のだとすれば、矛盾なく結果が説明できますね。

実は元の記事にも、こんな意味のことが書かれています。
「この実験は少々”ずるい”、古典的な波動像でも説明することができる。
完全に証明するには光子カウンタを設置しなければならないが、アマチュア実験の手に余る」

で、考え直してみたのですが、
・光の強さを調べれば、もう少し言えることがある。
・最終的には光子カウンタまで持ち出さないと、完全に量子のせいだとは言い切れない。
その後、本格的な光学機器のホームページをちょっとのぞいて見たのですが、明らかに予算オーバーだった(^_^).
(このブログのコメント欄は、マル1, マル2が文字化けします。私も何度かひっかかった。)

hirotahirota 2011/10/20 19:39 「ごく弱い光で実験すると、光子が1個づつ飛んでくる」という知識を前提とするんじゃダメ?

rikunorarikunora 2011/10/21 10:40 なるほど、「光子が1個ずつバラバラに飛んでくる」という前提を入れれば、
そもそも干渉縞が生じること自体が不思議だし、上の量子消しゴムはもっと不思議になりますね。
人間の目を極限まで暗闇に慣らせば、光子数個程度までは認識できると聞いたことがあります。
そこまでできれば、量子の不思議が体感できるでしょう。

T_NAKAT_NAKA 2011/10/25 09:54 「光子っていらない子?」のコメントにも書きましたが、「光子カウンタ」が1個と検知したものは本当に「光子1個」なのだろうか?単なるエネルギーのやりとりではないのか?という個人的疑問は払拭できないんですよね。。

rikunorarikunora 2011/10/26 13:19 しまった、また光子と書いてしまった。
「光子」には、エネルギーのやりとりが必ずある最小単位で行われる、という以上の意味は無いと思っています。
では、そんな光が飛んでいる途中の状況はどうなっているかと言えば、、、う〜ん、波っぽいものかなぁ。
ここのところは何度聞かされても私自身、納得できていません。

hirotahirota 2011/10/27 13:04 そりゃ波でしょう。
個数が1個2個と数えられる波が飛んでくる、てのが一番正確なんじゃないですか?(波子?)
1個の波の偏光面が不確定になるって事が不思議ですが。

rikunorarikunora 2011/10/28 10:18 数えられる波、ですね。これからは「波子」で行きましょう。

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