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小人さんの妄想 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2013-03-22

マラソンの最適ペース配分

マラソンの本当のスタートは30kmから。正念場は35km以降。

これがフルマラソンの実感です。

スタート直後は元気でも、25kmあたりから次の1kmがやたらと遠くなってきて、30kmから先は足が上がらなくなる。

35kmから先は、もう泣きそう。。。とにかく、後に行けば行くほど辛くなる。

それを見越して、マラソンでは後半にいかに体力を残しておくか、ペース配分がとても重要になります。

たとえば目標タイム4時間だったなら、平均して 5km あたり 28分ちょっとで走ればよい、という勘定になるのですが、

実際には後半にペースが落ちてくるので、最初はもっと早くなければ目標タイムに達しないでしょう。

後半のペースダウンまで考慮に入れて、いったいどの位で走れば目標タイムに到達できるのか。

それを知るのに、うってつけのデータがあります。

先日行われた、東京マラソン2013の、約3万5千人のラップタイムです。


東京マラソンの 5kmごとの通過タイムは、各ランナーごとにネット上に公開されています。

例えば、1位 キメット デニス のタイムは以下にあります。

>> http://p.tokyo42195.org/numberfile/1.html

これらのページを読み取って、各ランナーのペース配分を調べてみました。


まず、完走した全ランナーのゴールタイムは、こんな風になっていました。

f:id:rikunora:20130322144002p:image

このグラフは、ゴールタイム別に人数を数え上げたヒストグラムです。

(ゴールタイムは、nettime = スタートの遅れ時間を差し引いた実質的な走行時間となっています)

横軸は、0を2時間として、1目盛りが10分間隔です。例えば目盛り7は 3:00〜3:10 を表しています。

青が男子、オレンジが女子。

人数はそれぞれ、

 男子 : 27824 人

 女子 : 7004 人

 合計 : 34828 人

  ・完走していなかった(ゴールタイムの無かった)データは除外

  ・一部のランナーにはnettimeが無かったので除外(たぶん計測もれ)

  ・車イス部門は除外

  ・ネットから読み取れなかったデータがある


グラフを見ると、男子のピークは大きく2つあることが分かります。

1つ目のピークは 4:00〜4:10 の領域、2つ目は 4:50〜5:00 です。

女子の方は、男子に比べるとやや右側(遅い側)にまとまっています。

また、女子のトップランナーは女子の平均から見れば大きく突出している、と言えます。(左側のしっぽが長い)

女子のトップは2時間1桁台(目盛りの1番目)ですが、それに続く目盛りの2番目、3番目は0人でした。

(男子のトップグループは、目盛りを追うごとに一律に増えています。)

男子の平均は 4:36:40 、

女子の平均は 5:03:57 、

全体の平均は 4:42:10 でした。


さて、ペース配分についてですが、今回は「平均速度」「ペースの落ち方」という2つの数値で考えてみました。

f:id:rikunora:20130322144057p:image

このグラフは、私自身の通過タイムです。

横軸が時間(秒)、縦軸が距離(Km)、5kmごとの通過タイムと、ゴールタイムがプロットされています。

グラフ中の青い線は、通過タイムに直線をあてはめたものです。

一方、赤い線は、通過タイムに二次曲線をあてはめたものです。

二次曲線というのは、一次の項が「平均速度」を、二次の項が「ペースの落ち方」を表します。

  (距離) = (平均速度) x (時間) + (ペースの落ち方) x (時間)^2

つまり、「ペースの落ち方が一定である」としてあてはめたのが、赤い曲線です。

こうして見ると、赤い曲線は実データにほぼぴったり一致していることが分かるでしょう。


二次曲線への当てはめは、R言語を用いました。

以下のようにして計算します。

# group1に距離データ(Km)を入力

> group1 <- c( 0.0, 5.0, 10.0, 15.0, 20.0, 25.0, 30.0, 35.0, 40.0, 42.195 )

# group2にタイムデータ(秒)を入力

> group2 <- c( 0.0, 1551.0, 3047.0, 4570.0, 6156.0, 7774.0, 9534.0, 11430.0, 13478.0, 14387.0 )


# まず、直線へのあてはめを行ってみる

> result1 <- nls( group1 ~ A*group2, start=c(A=0), trace=T)

6880.418 : 0

9.775715 : 0.00304483


# 次に、二次曲線へのあてはめを行ってみる

> result2 <- nls( group1 ~ A*group2 + B*group2^2, start=c(A=0, B=0), trace=T)

6880.418 : 0 0

0.3064999 : 3.485183e-03 -3.787300e-08


# グラフに表示する

> plot( group2, group1 )

> lines( group2, fitted(result1), col="blue")

> lines( group2, fitted(result2), col="red")


3万5千人ものデータの中には、極めて一定ペースで「まっすぐに走る人」たちがいました。

例えばこのランナー、まるで機械で測ったようにイーブンペースです。

f:id:rikunora:20130322145957p:image

このデータに二次曲線を当てはめようとすると、二次の項「ペースの落ち方」が小さすぎて計算エラーになってしまいます。

> group1 <- c( 0.0, 5.0, 10.0, 15.0, 20.0, 25.0, 30.0, 35.0, 40.0, 42.195 )

> group2 <- c(0.0, 1476.0, 2940.0, 4392.0, 5852.0, 7316.0, 8800.0, 10265.0, 11738.0, 12361.0)

> result2 <- nls( group1 ~ A*group2 + B*group2^2, start=c(A=0, B=0), trace=T)

6880.418 : 0 0

0.008521979 : 3.414125e-03 -2.830771e-10

0.008521979 : 3.414125e-03 -2.830773e-10

以下にエラー nls(group1 ~ A * group2 + B * group2^2, start = c(A = 0, B = 0), :

step 因子 0.000488281 は 0.000976562 の 'minFactor' 以下に縮小しまし

こういった場合には、二次曲線ではなく、単純に直線を当てはめました。(二次の項=0とした)

ちなみに、上の例は 32bit版R言語だとエラーになりますが、64bit版R言語だとエラーになりません。

こんなところに精度の差が出るのですね。


こうして計算した3万5千人の「平均速度」と「ペースの落ち方」をまとめたのが、下のグラフです。

まずは「平均速度」。

f:id:rikunora:20130322144226p:image

平均速度は、中心が左側(遅い側)に寄っていて、右側(早い側)に裾野が広がっている分布となりました。

一部のトップランナーが群を抜いて突出している、ということです。

理屈で言えば、この(平均速度のグラフ形状)=(ゴールタイムのグラフ形状) になってもよさそうですが、

見たところ必ずしも一致してはいません。

ということは、次の「ペースの落ち方」が影響しているわけです。

f:id:rikunora:20130322144301p:image

ペースの落ち方は、ほぼ左右対称のきれいな分布にまとまりました。

左右の細長い裾野は、稀に極端にペースが落ちる人と、反対にペースが上がる人も居る、ということを示しています。

f:id:rikunora:20130322144322p:image

ペースの落ち方の、中央部を拡大したグラフ。

黒い線を入れたところが、ペース落ち0のライン。

この線より右側が後半にペースアップした人、左側がペースダウンした人、ということです。


ペース配分の傾向は、トップランナーと遅い人で差があるのでしょうか。

「平均速度」と「ペースの落ち方」を、ゴールタイム階層別に集計してみました。

以下のグラフは、ランナーをゴールタイム30分区切りで階層に分けて、

各々の階層について「平均速度」と「ペースの落ち方」の平均をとったものです。

まず「平均速度」から。

f:id:rikunora:20130322144407p:image

当然ながら、速い方が平均速度が高い。(グラフは反比例の曲線に乗っている)


重要なのは「ペースの落ち方」のグラフです。

f:id:rikunora:20130322144441p:image

まず意外だったのが、ペースの落ち方が最も激しいのは、2:00〜2:30 のトップランナーグループだったということです。

(グラフの下になるほど落ち方が激しい。)

たぶん、トップランナーは本当にのるかそるかの勝負をしていて、

わずかの不調で急激にペースダウンしてしまうのではないでしょうか。

最もイーブンペースに近かったのが 3:00〜3:30 のグループ。

それよりも早くても、遅くても、落ち方は大きくなる傾向が見られます。


以上の落ち方の傾向から、私は次のように考えました。

「3:00まではペース配分を均等に近づけることによってタイムアップが狙える。

 そこから先は、危険を冒してオーバーペースに挑まないと速くなれない。」

3:00までは、速くなるほどペース配分が均等に近づく傾向があります。

つまり目標タイム3:00まではイーブンペースを意図した方が良い、というわけです。

3:00よりも速くなると、ペース配分に失敗して途中で失速するランナーが目立つようになります。

つまり、3:00以内のランナーは「健康マラソン」ではなく「勝負マラソン」を走っているというわけです。


ペース落ち方の傾向を探るべく、[ゴールタイムxペースの落ち方]の散布図を男女別に描いてみました。

f:id:rikunora:20130322154213p:image

f:id:rikunora:20130322154254p:image

上が男子、下が女子。

点の塊が、左側に向けて「ラッパ型に開いている」ことが見てとれるでしょう。

どうやら上位ほど落ち方の開きが激しい、つまり「勝負傾向」があるようです。

ゴールタイムと落ち方の間に、あまり明確な依存性は見られません。

上位ほど、ややイーブンに近いかな、といった程度です。

(相関係数をとると、男子:-0.08, 女子:-0.19と、ほぼ無相関といった値です。)


さて、当初の目的であった、マラソンの最適ペース配分ですが、

上の「ペースの落ち方」に基づいて、次の2種類を掲げておきます。


【1】平均ペース

東京マラソン全体での「ペースの落ち方」の平均は、ほぼ -2.00E-08 でした。

この平均の落ち方に基づいて作成したのが、以下の表です。

f:id:rikunora:20130322144606p:image

この表によれば、

・目標タイム3:00なら、最初の 5kmを 20分で、

・目標タイム4:00なら、最初の 5kmを 26分で、

・目標タイム5:00なら、最初の 5kmを 31分で、

走るのが平均的なペースだということです。


【2】イーブンペース

最も「ペースの落ち方」が少なかった、3:00〜3:30 のグループの値は、ほぼ -1.50E-08 でした。

この「目指すべきイーブンペース」に基づいて作成したのが、以下の表です。

f:id:rikunora:20130322144657p:image

目標タイム3:00といったベテランは、こちらのイーブンペースを目標にすべきでしょう。


【1】平均ペースをグラフにすると、こんな風になります。

f:id:rikunora:20130322144833p:image

体感的には、後半でものすごくペースダウンしているように感じられるのですが、

実際グラフにすると、ほんのり上向きカーブ、といった程度なのですね。


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