TTバイクは本当に速いのか

TTバイク (Time Trial Bike) とは、一定の距離を最短時間で走るために作られた競技用自転車です。
その外見たるや、いかにもトライアロン!といった感じで、
普通にドロップハンドルの付いたロードレーサーよりもさらに極端なスタイルをしています。
この極端なスタイル、果たして本当に効果があるのでしょうか。

実は私、東京マラソンに参加したのをきっかけに、いずれはトライアスロンを目指して、
思い切ってTTバイクを購入しました。

Cervelo P2 (サーヴェロ P2)というTTバイク。
普通のママチャリなら10台くらい買えちゃうお値段です。
(これでもエントリーレベルなんだそうで、もっと上級モデルもあるらしい。TTバイク恐るべし。)
さて、このTTバイク、本当にママチャリ10台分の価値があるのでしょうか?
私は以前から、いわゆる普通のロードレーサーに乗っています。

TVT92 という自転車。
普通といっても、これだってカーボンでできていて、ママチャリとは比較にならないほど速い自転車です。
このロードレーサーとTTバイクで、どれほどタイムに差があるのか、試してみました。

まず普通のロードレーサーで、普段よく行く河岸の往復コースを走ってみました。
参考タイムは以下の通り。

行き: 22分 10秒
帰り: 20分 59秒

当日はほとんど風の無い日でした。
帰りの方が少し速くなっているのは、たぶん、帰りの方をがんばったからでしょう。
このロードレーサーには、エアロバーというものを取り付けています。

エアロバーというのは、ハンドルの中央付近から2本の角を突き出したようなもので、
これを使うと「空気抵抗が少なくなって速く走れる」と言われています。
しかしながら、今回タイムを計ったときには、エアロバーはほとんど使いませんでした。
主に使ったのは、ドロップハンドルの下側です。
普通のロードレーサーの場合、この程度(20分程度)の距離を最も速く走れるのは
ドロップハンドルの下側を握ったときなのです。(私の場合はそうです)
では、エアロバーは何のために付いているのかというと、「長い距離を楽して」走るための道具です。
エアロバーの台座に腕を乗せたまま走ると、ちょうど机の上に頬杖を付くように、
上半身を休ませることができます。
そして、上半身が楽をした分だけ、長い距離を疲れずに走ることができるというわけです。
エアロバーは楽をするところで、力を入れて走るときはドロップハンドルの下側、
私はそのように使い分けています。
エアロバーを使っても、私の場合、それほどまでに空気抵抗が減っているという感じはしません。
(さすがに向かい風のときには役立ちますけど。)
空気抵抗って、時速40k以上でないと目立った効果が出ないように思うのです。
私は普段40k以上で走ってはいなので、やはり「よりかかって楽をする」効果が大きいと思っています。

ところで、普通のロードレーサーにエアロバーが取り付けられるなら、こんな疑問が湧いてこないでしょうか。
 「普通のロードレーサーにエアロバーを取り付ければ、TTバイクと同じではないか」
これが0.1秒を争うトップ選手なら意味があるのかもしれませんが、趣味で乗っているような人にとって違いがあるのか。
とにかく買ってしまったからには、TTバイクが普通のロードレーサーよりも速いところを見なければ納得がゆきません。
TTバイクでの走行は、基本的にエアロバーを握りしめた、いわゆる「TTポジション」というスタイルになります。
同じエアロバーでも、普通のロードレーサーとTTバイクでは持った感じがかなり違います。

比較するとTTバイクのハンドルの方が、より低い位置にあって、全体重を乗せるような作りになっています。
ロードレーサーでは楽をするための道具だったのが、TTバイクでは速く走るための道具になっている感じ。
果たしてその持った感じが実際のタイム短縮につながるのか、同じコースを往復して確かめてみました。
当日はかなりの向かい風だったのですが、向かい風こそTTバイクの望むところです。
エアロバーを握りしめ、フンフン言いながら走ったところ、

行き: 22分 04秒

がガーン、ほとんど変わらない、、、orz.
 
 ・・・
 
いや、今日はかなり強い向かい風だ。
ひょっとすると、帰りは追い風の分だけ速くなるのかもしれない。
期待を込めて、帰りはものすごく気合いを入れて走ったところ、

帰り: 16分 45秒

おおっ、ブッチギリのタイムっ!
このコースで20分を大幅に下回ったのは、今回が初めてです。

 ・無風状態のロードレーサーと、向かい風のTTバイクは、ほぼ同等。
 ・同じ条件なら、TTバイクの方が10%程度速い。

さて、それほどまでにTTバイクが速いのであれば、従来型のロードレーサーは不要なのでしょうか。
実はTTバイクにも、弱点があります。
それは、「上り坂に弱い」ということ。
この連休に、買ったばかりのTTバイクで神奈川県のヤビツ峠というところに行ってきました。
上り坂に差し掛かると、どうも普通のロードレーサーのような踏ん張りが効かない。
平地で走るためのポジションが1点に定まっていて、それ以外のポイントに力を加えられない、そんな感じです。
結果、ヤビツ峠を上るのに、ちょうど1時間かかりました。



1時間というのは、どの程度なのか。

これは「少女自転車解放区」というイラスト集に載っていた1コマなのですが、
初心者の女の子ががんばって登って75分、となっています。
吹き出しのセリフ「速い人は30分台だ」。
おじさんのシャツには「へなちょこ45分」とあります(このマンガの作者がモデルなのかな?!)
WEB上に載っているタイムを見ると、

* 登坂TT -- ヤビツ峠
>> http://tohantt.info/climber.cgi/yabitsutouge/

1時間前後にはロードレーサー以外の自転車や、「初ヤビツ」といったコメントが目立ってきます。
この状況から察するに、やはりTTバイクは普通のロードレーサーより上り坂には弱いようです。
※ へなちょこ45分はかなりのご謙遜で、実は相当入れ込んでいる。
※ あと、言い訳すると、
※ ・途中の展望台で休んで写真をとっていた。
※ ・今回が「初ヤビツ」、なので直接の比較タイムが無い。
* その後、普通のロードレーサーでも登ってみて、直接のタイム比較ができました >> [id:rikunora:20130513]

結局のところ、同じ体力で何もかも良くなる、ということは無くて、

 ・平地ではTTバイクの方が10%速く、
 ・上り坂では普通のロードレーサーの方が(たぶん10%くらい)速い。

という棲み分けが成り立っているわけです。

※ ロングライド(180km)での比較も参考にしてください。
* クロモリ,カーボン,TTバイク 〜 東京湾1周自転車比較 >> [id:rikunora:20131227]

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ところで、このブログにコメントくれた方、楽しみに読んでくれている方、
また長らくサボってしまってすいません。
メールで励まして下さった方、とても感謝しています。
4月中に1個も記事が無いのはさすがにまずい思い、ギリギリになって更新しました。
現状、決して時間が取れないわけでもないので、またがんばって復活しようと思っています。
気長にお付き合い頂けると嬉しいです。