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小人さんの妄想 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2013-07-28

波と粒子が同じである理由

あらゆる物質の構成要素は、つきつめると「波であり粒子でもある」。。。

普通の常識からは全くイメージできない、量子力学最大の謎(?!)に終止符を打つときがやってきました。

この図に描かれた話が理解できたとき、波と粒子の謎は解消します!

f:id:rikunora:20130728123020p:image


★ 我々が観測できる物理量は、対象の状態にエルミート演算子を施した固有値である。

これを、量子力学の前提として受け入れることにします。

(なぜこうなるか、と聞かれても困る。

 なぜかは分からないけれど、この前提を受け入れると万事うまくいく。)

エルミート演算子が物理的に満たすべき条件を示したのが、ハイゼンベルク運動方程式です。

 < ハイゼンベルク運動方程式 >

   ih~(dO^/dt) = [ O^, H^ ] = O^ H^ - H^ O^

    O^ : 時間変化を含むエルミート演算子、つまり O^ ≡ O^(t)

    H^ : ハミルトニアン、系のエネルギーを表す演算子

    h~ : エイチバー、プランク定数hを2πで割ったもの。

    [] : 交換関係を表す記号。[ A, B ] ≡ AB - BA ということ。

  (これもなぜ、と聞かれても困る。とりあえず前提として受け入れてくれい。)


以下では、調和振動子量子化をとことん考えてみます。

調和振動子というのは最も単純な「波」であり、普通に(古典的に)見る限り連続的で、

どこにも粒子としての「とびとびの」性質を持ち合わせていないように思えます。

ところが、上の★量子力学の前提を受け入れるなら、波から自然に「とびとびの」性質が導き出されるのです。


古典物理で、調和振動子運動方程式は、次のようになっていました。

 H = (p^2 / 2 m) + (m ω^2 / 2) q^2  -- ハミルトニアン、系全体のエネルギー

 dq/dt =  ∂H/∂p =  p / m

 dp/dt = - ∂H/∂q = - m ω^2 q

   q :位置、実は q(t)という時間の関数

   p :運動量、実は位置の微分 p(t) ≡ dq(t)/dt

   m :粒子の質量

   ω:角振動数

この古典的な調和振動子を、量子的な振動子に置き換えるには、

 ★の前提に従って、位置 p を、位置演算子 p^ に置き換える。

 ★の前提に従って、運動量 q を、運動量演算子 q^ に置き換える。

 ★の前提に従って、系全体のエネルギー H を、ハミルトニアン演算子 H^ に置き換える。

といった具合に、全ての物理量を演算子に置き換えます。

古典的な物理量(1個の数字)と、エルミート演算子では何が違うのか?

エルミート演算子の実体は、行列です。(行列によって表現することができます)

物理量は1個の数字ではなく、複数個(時には可算無限個)の数字の塊になります。

計算上の最も大きな違いは、掛け算の順序によって答が違ってくる、ということです。

古典物理の場合、掛け算の結果は順序によらないのが当然なので pq = qp です。

ところが演算子(行列)の結果は順序によって変わってきて、p^q^ ≠ q^p^ なのです。

そこで、いま1つの前提

 < 不確定性原理 >

   [ q^ , p^ ] = q^p^ - p^q^ = i h~

を要請します。(これもなぜ、、、以下同文)


ここまでの前提から、調和振動子が、確かにハイゼンベルク運動方程式を満たしていることが確認できます。

 H^ = (p^ ^2 / 2 m) + (m ω^2 / 2) q^ ^2    -- ハミルトニアン

・q^ をハイゼンベルク運動方程式に入れてみる

 i h~ (dq^/dt) = [ q^, H^ ]

  = q^ ( (p^ ^2 / 2 m) + (m ω^2 / 2) q^ ^2 ) - ( (p^ ^2 / 2 m) + (m ω^2 / 2) q^ ^2 ) q^

  = (q^ p^ ^2 / 2 m) - (p^ ^2 q^ / 2 m)    -- q^ ^3 の項は消える

  = (1 / 2 m) ( q^ p^ ^2 - p^ ^2 q^ )

  = (1 / 2 m) ( (q^p^ - p^q^) p^ + p^ (q^p^ - p^q^) )  -- ここで交換子を作り出すのがミソ

  = (1 / 2 m) ( [q^, p^] p^ + p^ [q^, p^] )  -- 不確定性原理 [q^, p^] = i h~ を適用

  = (1 / 2 m) ( 2 i h~ p^ )

 まとめると、

  dq^/dt = p^ / m  -- これって、調和振動子運動方程式(の片割れ)だ。

 

・p^ をハイゼンベルク運動方程式に入れてみる

 i h~ (dp^/dt) = [ p^, H^ ]

  = p^ ( (p^ ^2 / 2 m) + (m ω^2 / 2) q^ ^2 ) - ( (p^ ^2 / 2 m) + (m ω^2 / 2) q^ ^2 ) p^

  = (p^ q^ ^2 m ω^2 / 2) - (q^ ^2 p^ m ω^2 / 2)    -- p^ ^3 の項は消える

  = (m ω^2 / 2) ( p^ q^ ^2 - q^ ^2 p^ )

  = (m ω^2 / 2) ( (p^q^ - q^p^) q^ + q^ (p^q^ - q^p^) )  -- ここで交換子を作り出すのがミソ

  = (m ω^2 / 2) ( [p^, q^] q^ + q^ [p^, q^] )  -- 不確定性原理 [p^, q^] = - i h~ を適用

  = (m ω^2 / 2) ( - 2 i h~ q^)

 まとめると、

  dp^/dt = - m ω^2 q^  -- これって、調和振動子運動方程式(の片割れ)だ。

ここまでで分かったこと、古典的な調和振動子は、そのまま量子力学にあてはまる。

つまり調和振動子は、ハイゼンベルク運動方程式の解の1つになっている」


次に、p^ と q^ を以下の様に組み合わせて、新たな演算子 a^ と a†^ を作ります。

 a^  = (1 / 2 h~) ( m √ω q^ + (i / m √ω) p^ )

 a†^ = (1 / 2 h~) ( m √ω q^ - (i / m √ω) p^ )

なぜ唐突にこんなものを編み出したのか、、、ディラックという人が考え出したらしいのですが、

はっきり言って凡人の私には、天才の考えることは理解できません。

実はこの a^ と a†^ には際だった特技があって、

 < 交換関係が1になる >

  [ a^, a†^ ] = 1

となっています。(計算するとそうなります、お暇ならどうぞ。)

むしろ、こうなるように巧妙に選び出した、と言うべきでしょう。

それがどうした、と今の時点では思うかもしれませんが、やがて天才の深慮遠謀に気付く時が来るでしょう。。。


a^ と a†^ は、単に演算子の組み合わせを変えただけに過ぎません。

逆に、a^ と a†^ から、元の p^ と q^ に戻すことだってできます。組み合わせを変えただけですから。

 q^ =    √(h~ / 2mω) (a^ + a†^)

 p^ = (1/i) √(mh~ω / 2) (a^ - a†^)

つまり、a^ と a†^ の組み合わせと、 p^ と q^ の組み合わせの物理的な内容は同じなのです。


この a^ と a†^ でもって、ハミルトニアン H^ を書き直してみます。

 H^ = (p^ ^2 / 2 m) + (m ω^2 / 2) q^ ^2

  = (1/2m) ( (1/i) √(mh~ω / 2) (a^ - a†^) ) ^2

     + (m ω^2 / 2) ( (1 / 2 h~) ( m √ω q^ - (i / m √ω) p^ ) ) ^2

  = ( - h~ ω / 2・2 ) ( a^ ^ 2 - a^ a†^ - a†^ a^ + a†^2 )

     + (h~ ω / 2・2 ) ( a^ ^ 2 + a^ a†^ + a†^ a^ + a†^2 )

        -- 演算子の掛け算には順序があることに注意、単純な展開ではない。

  = (h~ ω / 4) ( 2 a^ a†^ + 2 a†^ a^ )

  = (h~ ω / 2) ( a^ a†^ + a†^ a^ )

  = (h~ ω / 2) ( a^ a†^ - a†^ a^ + 2 a†^ a^ )  -- うまく交換関係を作り出すのだ

  = (h~ ω / 2) ( 1 + 2 a†^ a^ )

 まとめると

  H^ = h~ ω ( a†^ a^ + 1/2 )   -- 書き換えたハミルトニアン

このハミルトニアンに含まれる a†^ a^ という部分には、

何かエネルギーの塊を表すような、本質的な意味がありそうです。

そこで、演算子 a†^ a^ をまとめた演算子を、さらに N^ ≡ a†^ a^ と再定義して、その性質を掘り下げてみます。

  N^ ≡ a†^ a^

N^ はエルミート演算子を組み合わせて作った演算子であり、

依然として“★量子力学の前提”に従うエルミート演算子になっています。

N^ の正体まだ謎ですが、とにかくその固有値が何らかの物理量を表しているはずです。

いま、N^ を状態 ψ> に作用させて、固有値 n が得られたのだとしましょう。

 N^ |ψ> = n |ψ>

次に、N^ を a†^|ψ> という状態に作用させたときの固有値を知りたいのですが、

そのための事前準備として、[ N^, a†^ ] を調べておきます。

  [ N^, a†^ ]

 = [a†^ a^, a†^ ]

 = a†^ a^ a†^ - a†^ a†^ a^

 = a†^ (a^ a†^ - a†^ a^)

 = a†^ [ a^, a†^ ]    -- 交換関係 [ a^, a†^ ] = 1 より

 = a†^

 まとめると、

  [ N^, a†^ ] = a†^  -- (☆†式)

この (☆†式)を使って N^ a†^ |ψ> を求めてみます。

  N^ a†^ |ψ>

  = a†^ N^ |ψ> + a†^ |ψ>   -- 上の(☆†式)から、N^ a†^ = a†^ N^ + a†^

  = a†^ n |ψ> + a†^ |ψ>

  = (n + 1) a†^ |ψ>

固有値が (n + 1) になっていることに着目してください。

「a†^ という演算子は、N^ という演算子が表す物理量を1だけ増やしている」

これが重要な結論。


似たようなことが、N^ を a^ |ψ> という状態に作用させたときにも起こります。

事前準備として、[ N^, a^ ] を調べておきます。

  [ N^, a^ ]

 = [a†^ a^, a^ ]

 = a†^ a^ a^ - a†^ a^ a^

 = (a^ a†^ - a†^ a^) a^

 = [ a^, a†^ ] a^    -- 交換関係 [ a^, a†^ ] = 1 より

 = - a^

 まとめると、

  [ N^, a^ ] = - a^  -- (☆式)

この (☆式)を使って N^ a^ |ψ> を求めてみます。

  N^ a^ |ψ>

  = a^ N^ |ψ> - a^ |ψ>   -- 上の(☆式)から、N^ a^ = a^ N^ - a^

  = a^ n |ψ> - a^ |ψ>

  = (n - 1) a^ |ψ>

固有値が (n - 1) になっていることに着目してください。

「a^ という演算子は、N^ という演算子が表す物理量を1だけ減らしている」

これがもう1つの重要な結論です。


ここまでを整理すると、

演算子 N^ は、エネルギーハミルトニアン)の一部を表している。

演算子 a†^ は、N^ の示す値(エネルギー)を1だけ増やす。

演算子 a^  は、N^ の示す値(エネルギー)を1だけ減らす。

どうやら演算子の正体を見破るときがきたようです。

演算子 N^ は、個数演算子と言って、“エネルギーの塊”の数を表している。

演算子 a†^ は、生成演算子と言って、粒子を1個作り出す作用を表す。

演算子 a^  は、消滅演算子と言って、粒子を1個減らす作用を表す。

ずばりこれが“粒子”の正体です。

調和振動子エネルギーは、とびとびの値(固有値)しか取ることができない。

その、とびとびのエネルギーの塊を、1個、2個と数えて、“粒子”と呼ぶことにしよう。

以上が、波と粒子が同じである本質的な理由です。

* 量子は波で理解できる >> id:rikunora:20120507


これで「とびとびの」メカニズムが分かったのですが、

それでも、ここで演算子によって示されたような粒子と、

私たちが日常的に思い描く粒子との間には、まだギャップがあるように感じます。

最大のギャップは、

 (1) 演算子によって示された粒子は“エネルギーの塊”であり、同じ場所にいくつでも入る。

 (2) 一方、日常的に思い描く粒子は「場所を占有するもの」で、同じ場所に1つしか入ることができない。

実は、(1)のような粒子のことをボソンと呼び、(2)のような粒子をフェルミオンと呼んで区別しています。

ボソンの代表例は光(光子)です。

確かに、光であれば同じ場所にいくつ重なり合っていてもおかしくはないでしょう。

光が粒子だというのは、上の演算子に示したような意味で、エネルギーがとびとびになる、ということです。

一方、私たちが普通に思い描くような場所を占有する物質はフェルミオンで、電子、陽子などが代表例です。


なぜフェルミオンのように、場所を占有する粒子があるのでしょうか?

実は、ハイゼンベルク方程式の解は、上に示したボソンだけではなかったのです。

上を見直してみると、

・古典的な調和振動子は、ハイゼンベルク運動方程式の解の1つになっている

ということでしたが、逆に

ハイゼンベルク運動方程式の解は、古典的な調和振動子だけである

とは言っていません。。。

たいへん天下り的で、最初にどうやって思いついたのか全く謎なのですが、

ハイゼンベルク運動方程式には、いまひとつ、以下のような解があります。

 H^ = i ω q^ p^  -- ハミルトニアン

  p^ q^ + q^ p^ ≡ { p, q } = 0

    {} は反交換関係、{ A, B } = AB + BA を表す記号

  p^ ^2 = h~ ω / 2

  q^ ^2 = h~ / 2 ω

先のボソンの場合、古典的調和振動子(の対応物)という明確なイメージがありましたが、

今度の解の場合、古典的に対応するような物理的イメージがありません。

それでも、ここで示したような H^ p^ q^ の組み合わせは、

確かに(量子的な)調和振動子方程式を満たしているのです。確認してみましょう。

・q^ をハイゼンベルク運動方程式に入れてみる

 i h~ (dq^/dt) = [ q^, H^ ]

  = i ω ( q^ q^ p^ - q^ p^ q^ )

    ここで q^ q^ p^ - q^ p^ q^

      = q^ ( q^ p^ - p^ q^ )  -- うまく反交換関係にもってゆく

      = q^ ( 2 q^ p^ - (p^ q^ + p^ q^) )

      = 2 q^ ^2 p^

  = i ω ( 2 q^ ^2 p^ )

  = i ω ( 2 (h~ / 2 ω) p^ )

  = i h~ p^

 まとめると、

  dq^/dt = p^  -- これって、調和振動子運動方程式(の片割れ)だ。

 

・p^ をハイゼンベルク運動方程式に入れてみる

 i h~ (dp^/dt) = [ p^, H^ ]

  = i ω ( p^ q^ p^ - p^ p^ q^ )

    ここで q^ q^ p^ - q^ p^ q^

      = q^ ( q^ p^ - p^ q^ )  -- うまく反交換関係にもってゆく

      = q^ ( q^ p^ + p^ q^ - 2 p^ q^ )

      = q^ ( - 2 p^ q^ )

  = i ω ( -2 q^ p^ ^2 )

  = i ω ( -2 q^ h~ ω / 2 )

  = - i h~ ω^2 q^

 まとめると、

  dp^/dt = - ω^2 q^  -- これって、調和振動子運動方程式(の片割れ)だ。

確かに、ある種の調和振動子になっているようです。。。古典的イメージは全く湧きませんけど。


次に、ボソンのときにやったのと同じように、生成消滅演算子を作ってみます。

今度の演算子は、c^ と c†^ という記号にしておきましょう。

 c^  = (1 / 2 h~) ( √ω q^ + (i / √ω) p^ )

 c†^ = (1 / 2 h~) ( √ω q^ - (i / √ω) p^ )

今度の c^ と c†^ にも際だった特技があって、

 < 反交換関係が1になる >

  { c^, c†^ } = 1

 < 自身同士の反交換関係が0になる >

  { c^, c^ }   = 0  つまり c^ c^   = 0

  { c†^, c†^ } = 0  つまり c†^ c†^ = 0

となっています。(計算するとそうなります、お暇ならどうぞ。)

最初に思いついた人は、この反交換関係から遡って解を見つけたのだと思います、たぶん。


ハミルトニアン H^ を c^ と c†^ で書き直してみると、

 H^ = i ω p^ q^

   = i ω ( √(h~ / 2ω) (c^ + c†^) ) (1/i) √h~ω / 2) (c^ - c†^)

   = (h~ ω / 2) ( c^ ^2 - c^ c†^ + c†^ c^ - c†^ ^2 )  -- 自身同士の反交換関係は0

   = (h~ ω / 2) ( - c^ c†^ + c†^ c^ )   -- うまく反交換関係にもってゆく

   = (h~ ω / 2) ( - c^ c†^ - c†^ c^ + 2 c†^ c^ )

   = (h~ ω / 2) ( - 1 + 2 c†^ c^ )

 まとめると

  H^ = h~ ω ( c†^ c^ - 1/2 )   -- 書き換えたハミルトニアン

先のボソンに似ていますが、フェルミオンの場合、- 1/2 のところの符号がマイナスになっています。


粒子の個数演算子についても、ボソンの場合と同じように定義します。

 N^ ≡ c†^ c^

いま、N^ を状態 ψ> に作用させて、固有値 n が得られたのだとしましょう。

 N^ |ψ> = n |ψ>

今度は、N^ を続けて2回作用することを考えてみます。すると、、、

 N^N^ = c†^ c^c†^ c^

    = c†^ (1 - c†^ c^) c^   -- 反交換関係より c^c†^ = 1 - c†^ c^

    = c†^ (c^ - c†^ c^ c^)   -- c^c^ = 0 であった

    = c†^ c^

    = N^

 つまり、N^N^ と2回続けて作用した結果は、N^ 1回作用させた結果と同じだということです。

 N^N^ = N^

 N^N^ - N^ = 0

 N^ (N^ - 1) = 0

この場合、N^ の固有値 n は、0 または 1 のいずれかに限られます。

先のボソンの場合、固有値は 0, 1, 2, … と、非負の整数全てだったのですが、

今度のフェルミオンの場合は 0 と 1 の2通りだけなのです。

この点がボソンフェルミオンの実質的な違いです。


ボソンと同様、フェルミオンも以下の2つの関係を満たしています。

  [ N^, c†^ ] = c†^  -- (☆†式)

  [ N^, c^ ]  = - c^  -- (☆式)

確認してみましょう。

  [N^, c†^]

  = [c†^c^, c†^]

  = c†^ c^ c†^ - c†^ c†^ c^  -- c†^c†^=0 なので、後の項は消える

  = (1 - c^ c†^) c†^   -- 反交換関係 { c^, c†^ } = 1 より c†^ c^ = 1 - c^ c†^

  = c†^ - c^ c†^ c†^   -- c†^c†^=0 なので、後の項は消える

  = c†^   -- (☆†式) になっている

もう一方も確認しましょう。

  [N^, c^]

  = [c†^c^, c^]

  = c†^ c^ c^ - c^ c†^ c^  -- c^c^=0 なので、前の項は消える

  = - (1 - c†^ c^) c^   -- 反交換関係 { c^, c†^ } = 1 より c^ c†^ = 1 - c†^ c^

  = - c^ + c†^ c^ c^   -- c^c^=0 なので、後の項は消える

  = - c^   -- (☆式) になっている


ボソンと同様、フェルミオンでも (☆†式) と (☆式) が満たされていることが確認できました。

ということは、c†^ と c^ は(ボソンと同じように)生成・消滅演算子になっているはずです。

・個数演算子 N^ は、固有値 0 と 1 の2状態しか取ることができない。

演算子 c†^ は、N^ の示す値(エネルギー)を1だけ増やす生成演算子となっている。

演算子 c^  は、N^ の示す値(エネルギー)を1だけ減らす消滅演算子となっている。

これが、同じ場所に1つしか入ることのできない、フェルミオンという粒子の正体です。


何ともアクロバティックな計算でした。ごくろうさま。

追ってみるとわかるのですが、この計算、頭から順序良く解ける類のものと違います。

最初にどうやって思いついたのか全くもってイミフなのだけれど、

とにかくどこかの天才が思いついた答を後追いで確かめてみる。。。そんな類の計算なのです。


ところで、ハイゼンベルク運動方程式の解は、ボソンフェルミオンの2種類で全てなのでしょうか?

どうやらそれ以外の解もあるらしいのです、、、数学的には。

例えば、固有値が1,2,3の3つだけに限られるもの(同じ状態に2個まで入れる粒子)とか、

固有値がN個だけに限られるもの(同じ状態にN-1個まで入れる粒子)みたいなものが想像できるでしょう。

しかし、こうした解には物理的に対応するものが見当たりません。

※ あと、エニオンというものもあるらしいのですが、私の理解の範囲を超えているので省略。


波と粒子の二重性を理解する方法は、つまるところ、上に示したような数理的な方法以外あり得ません。

改めて、上の式をたどってみて下さい。

これを、何らかの古典的直観的な解釈に置き換えることができるでしょうか?

中には驚異的な感覚の持ち主がいて、ごく自然にイメージを思い描いているのかもしれませんが、

そのイメージを普通の感覚の持ち主に伝えるには、結局のところ数式に頼らざるを得ないでしょう。

「この世には、数理的な方法でしか理解できないものがある」

それこそが、波と粒子の二重性を考えることの、一番の価値であるように思います。


参考にしたもの:

はっきり言って、1つだけ読んでも理解できません!

(ということは、たぶんこのブログ記事だけを読んでも理解できない)

幸いなことに、インターネット上にも優れた多くの解説があるので、

それらを集めて見比べているうちに、だんだんわかってきます。そんなものです。

古典場から量子場への道 増補第2版 (KS物理専門書)

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こんなにわかってきた素粒子の世界 ?知って面白い素粒子の不思議? (知りたい!サイエンス)

こんなにわかってきた素粒子の世界 ?知って面白い素粒子の不思議? (知りたい!サイエンス)

* EMANの物理学 -- 量子力学

>> http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/contents.html

* 新量子物理学入門 (宮沢弘成)

>> http://www7.ocn.ne.jp/~miyazaw1/papers/newquantumphys.pdf

* 量子論 (野村清英)

http://maya.phys.kyushu-u.ac.jp/~knomura/education/quantum-modern/notes1.pdf

* 場の理論 (安江研究室) -- 第1章 粒子の生成消滅

>> http://phys.cool.coocan.jp/physjpn/field.htm

* 場の量子論 (阪大物理学オナーセミナー)

>> http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/handai-honor08/


※追記:ブコメより

> 1粒子の調和振動子の生成消滅演算子は粒子の生成消滅とは言えないのでは?

本当のことを言えばその通りで、

調和振動子を空間にびっしり並べたものが「場」であり、

・「場」の上で生成消滅するのが粒子です。

1個の調和振動子は、場の量子論の入り口にあたるわけ。


※追記:コメント覧より

上記のボソン調和振動子から得られた粒子的性質)を光にあてはめて、

「粒子状態の重ね合わせで波」を導出した記事があります。

* T_NAKAの阿房ブログ -- 「シュレーディンガーの猫」のパラドックスが解けた!!] _ 分かりたい自分のために

(1)http://teenaka.at.webry.info/201211/article_23.html

(2)http://teenaka.at.webry.info/201211/article_27.html

(3)http://teenaka.at.webry.info/201211/article_29.html

さらに、関連書籍の紹介

* とね日記 -- 「シュレーディンガーの猫」のパラドックスが解けた!:古澤明

>> http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/13b6c033f1ea5ef2b647e6eb1e374222


hirotahirota 2013/07/29 13:10 加算無限個→可算無限個
生成消滅演算子は場を平面波の和で表わすと(フーリエ変換)、係数として自動的に出ます。
ボソン,フェルミオン以外の解は低次元系で現実に存在してます。(素粒子じゃなく準粒子だけど)

rikunorarikunora 2013/07/31 21:49 ミス指摘、ありがとうございます。
> ボソン,フェルミオン以外の解は低次元系で現実に存在してます。
きっとこれがエニオンというやつですね。
Wikipediaに「二次元の系においてのみ現れる」と書いてあったところに親近感を覚える。

T_NAKAT_NAKA 2013/08/01 01:26 初めに量子力学を勉強したときは、ハイゼンベルグ描像の説明はなく、シュレディンガー方程式をひたすら解いて水素原子まで到達したという感じで、その途中で出てきた調和振動子モデルは単なる練習問題と思ってましたし、そこに出てくる生成・消滅演算子の意味も単純にエネルギー準位を上げ下げするもの以上の説明はありませんでした。私は光子を説明する方程式が知りたくて場の量子論をかじり始めたわけですが、最初は中々理解できませんでしたね。ハミルトニアンを一般化座標で表現して、質量 m の意味を消してしまわないと、マックスウェル方程式(波動方程式)に調和振動子モデルを当てはめるのが初学者には難しかったわけでして、そういうところを背中を押して貰ったらもう少し早く分かったかも知れません。そういう意味でこの記事の内容は素晴らしいです。
手前味噌になりますがrikunora さんにご紹介いただいた古澤明先生の本を調和振動子モデルでシュミレーションして記事を書いております(参考までに)。
[「シュレーディンガーの猫」のパラドックスが解けた!!] _ 分かりたい自分のために(1)〜(7)http://teenaka.at.webry.info/201211/article_27.html

T_NAKAT_NAKA 2013/08/02 12:28 折角なので、数式をちゃんと書いてはいかがでしょう?
http://www.codecogs.com/latex/eqneditor.php
http://www.sciweavers.org/free-online-latex-equation-editor
などを使うと比較的簡単です。。
[img]http://www.sciweavers.org/tex2img.php?eq=%E3%80%80%20i%5Chbar%20%5Cfrac%7Bd%20%5Chat%7BO%7D%20%20%7D%7Bdt%7D%20%3D%5B%20%5Chat%7BO%7D%20%2C%20%5Chat%7BH%7D%20%5D%3D%5Chat%7BO%7D%20%5Chat%7BH%7D-%20%5Chat%7BH%7D%5Chat%7BO%7D&bc=White&fc=Black&im=jpg&fs=12&ff=arev&edit=0[/img]

rikunorarikunora 2013/08/07 22:30 T_NAKAさんもいろいろと苦労されたのですね。
波と粒子の二重性は、私の中でも長らく疑問だったのですが、
最近ようやく上記の流れで納得することができました。

私にとって理解の上で役だったのが、以下にある宮沢弘博士の資料でした。
>> http://www7.ocn.ne.jp/~miyazaw1/papers/papers.htm
少し長いですが、引用します。

「電磁場の量子化は容易である。
電磁界をフーリエ展開して場を調和振動子の集団とし、それを第1量子化すればよい。
光量子から出発して同種粒子、対称統計の原理を導入するよりはるかに自然である。
私が初めて第2量子化された電磁場にたどり着いたとき、
なるほど波、粒子の二重性とはこのことであったかと目から鱗の落ちる思いであった。
電子場の第2量子化も電磁場のと同様に行えばよいが、
交換関係でなく反交換関係にしなければいけない。
これは陽電子のエネルギーを正にするため絶対に必要なのだが、
反粒子の出てこない非相対論的Schrodinger 理論では、
一つ入れば満員というPauli の排他原理を導くものとして受け入れることが出来る。」

また、多くの教科書などで粒子性の証拠に光電効果をあげていますが、
よく考えると、光電効果だけでは決定的な証拠にはならないのです。

光電効果は古典電磁場で説明でき、光量子は要らないことは30年前に知られている。
・K. Shimoda, T. C. Wang and C.  H. Townes:: Phys. Rev. 102, 1308 (1956)

多くの電磁現象で量子は要らないことは霜田が主張していることであり、・・・
・霜田光一: レーザー研究  25 320, 387, 442, 531 (1997).

どうやらその道では知られていることのようです。

数式エディタの紹介、ありがとうございます。
以前から T_NAKAさんのブログでは、きれいに数式が書かれているなぁと思っていたのですが、
こういうツールがあったのですね。
試しに次のエントリーで用いてみました。

msms 2013/10/12 15:15 最近、とねさんのブログにコメントを書いたのですが、エキセントリックと思われたのか無視されて掲載されませんでした。
その時は詳しく書いたけど、簡単に云うと、物理理論と云うものも人類の作った創造物であり、宇宙に法則があるわけではなく、宇宙を理解するためのシミュレータみたいな物である、との趣旨でした。人間の頭脳そのものがシミュレータ的なものであり、数学もそうであり、数学内蔵物理学もシミュレータにすぎない。宇宙を良くシミュレートできるが、適用限界はあるよ、と書きました。
 今回、この項を読んでみて、あなたなら同様に思うかもしれないと思いコメントしてみました。
 無論シミュレータだから価値が無いと言っている訳ではないです。とねさんには、そう受け取られたのかもしれませんね。

ポチパルポチパル 2016/05/21 11:18 図解も数式も、まとまっていて素晴らしいですね。実は私も「こんなにわかってきた素粒子の世界」を読み、いい本だなと思ったのですが1つだけ疑問が湧いてしまいました。もし、ご存じでしたら教えて下さい。電子はフェルミオンなのでp:運動量っぽい演算子とq:位置っぽい演算子の間に反交換関係が成り立つのですよね。一方で、水素原子中の電子の様子はシュレディンガー方程式から得られましたが、シュレディンガー方程式は運動量と位置の交換関係から得られますよね。ということは、電子のようなフェルミオンは運動量と位置に関しては交換関係、p:運動量っぽい演算子とq:位置っぽい演算子に関しては反交換関係が成り立つということで良いのでしょうか?

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