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小人さんの妄想 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2014-05-21

マックスウェル方程式は電磁気学の全てでは無い

ウィキペディアの「電磁気学」には、次の記載があります。wikipedia:電磁気学

・・・このローレンツ力とマクスウェル方程式電磁気学における最も基礎的な法則である。

ちょっと細かい話なのですが、なぜ単に「マクスウェル方程式は」ではなくて、

わざわざ「ローレンツ力とマクスウェル方程式は」となっているのでしょうか。

実は、ローレンツ力(又はフレミングの左手の法則)は、マクスウェル方程式とは別の、独立した法則なのです。

マクスウェル方程式から(直接的に)ローレンツ力を導くことはできません。


別の資料にも、こんな記載がありました。

ここでも基本法則は「マックスウェル方程式ローレンツ力」となっています。

電磁気学の基本法則は,マックスウェル方程式と呼ばれる,4つの式で表されます.

マックスウェル方程式を本当に理解するには,ベクトル解析という大学レベルの数学が必要になります.

しかし,その意味を言葉で表すことは,ある程度可能です.

マックスウェル方程式は,次の1から4を表しています.

  1.電荷電場の源である.

  2.N極だけ,S極だけ(単磁極)は存在しない.

  3.磁場が時間的に変動すると,渦巻き型の電場が発生する.

  4.電流が流れると,渦巻き型の磁場が発生する.

それから,電荷電場磁場からどのような力を受けるかを与える式が,電荷の運動を表すために必要です.

それは,ローレンツ力と呼ばれ,言葉で表すと,次のようになります.

  1.電荷電場に平行に力を受ける.

  2.動いている電荷は,磁場から仕事をしない方向に力を受ける.

  -- 電気と磁気の秘密 >> http://www.u-gakugei.ac.jp/~nitta/6cities_em.pdf

そのベクトル解析ってやつでマックスウェル方程式を書くと、こんな感じ。

f:id:rikunora:20140521174213p:image

ローレンツ力はこんな感じです。

f:id:rikunora:20140521174243p:image


さて、このマックスウェル方程式を額面通りに受け止めると、どこにも力(F)が入っていないことに気付きます。

マックスウェル方程式が言っているのは、あくまでも電場(E)と磁場(B)の関係であって、

電場磁場がどういう力を与えるかについては何も言っていません。

電場があれば当然、荷電粒子は力を受けるではないか、

磁石磁石の間には、くっついたり反発したりの力が働くではないか、

・・・などと思うかもしれませんが、そうした力(F)に関することわりは、全てローレンツ力の方が受け持っているのです。

たとえ力(F)のことを全く考えなかったとしても、マックスウェル方程式だけから電磁波予言することは可能です。

(もっと詳しく見ると、ここでローレンツ力に含めた「1.電荷電場に平行に力を受ける」は、

個別にクーロンの法則と見なすこともできます。

そして、クーロンの法則とはそもそも電場の定義なのだ、とするならば、

「2.動いている電荷は,磁場から仕事をしない方向に力を受ける」だけが

マックスウェル方程式に含まれない概念だということになるでしょう。)


ローレンツ力は「フレミングの左手の法則」として世に知られています。

ウィキペディアには次のように書かれています wikipedia:フレミングの左手の法則

『フレミング左手の法則はローレンツ力の方向を覚えやすくするために考案されたものである。』

たぶん中学校(かな?)で教わるので有名になっていると思うのですが、

私自身はこの「フレミング左手の法則」なるものを覚えていません(右手も覚えていません)。

唯一、「磁場は電流の周りに、右ねじにできる」ということだけを覚えています。

「右ねじの法則」さえ覚えておけば、フレミングの法則は導き出せるからです。

f:id:rikunora:20140521174350p:image

この図が、私流のフレミングの法則の覚え方です。

直観的には、流線の「濃い、薄い」で、電磁気の大半がカバーできると思っています。

ただ、ここでもう1歩深くつっこんで「なんで濃い方から薄い方に押しやられるの?」と問われたなら、

やはり「なんとなく」である、としか答えようがありません。

マックスウェル方程式に当てはめて考えると、

2つの磁場(B)を重ね合わせたとき、磁場の発生源にどんな力が働くかということを、

マックスウェル方程式は教えてくれません。

(ひょっとするとお互い何の影響も無しに、ただ重なり合うだけかもしれないのです。)

なので、どうしてもローレンツ力なり、フレミングの法則なりで、力の働き方についての法則を設ける必要があるわけです。


『古典物理は、ニュートンの運動法則とマックスウェル方程式で完結している。』

・・・これが世の中的な認識ではないかと思います。

私もつい最近まで、そう思っていました。

なぜこんな重箱の隅をつつくような話題を取り上げたかというと、

実は完結していなかった、ということが言いたかったわけです。

しかしながら、もし他の誰かが世の中的な認識を述べたとき、

「実はローレンツ力が含まれていない」などとツッコミを入れたなら、

あなたは100%間違いなく嫌味なヤツだと思われるでしょう。

なので、こんなことは一人でニヤニヤしながら胸中に秘めておくのが良いと思われます。

もし本気で(?!)マックスウェル方程式からローレンツ力を導出したかったなら、

「場の性質は座標変換に対して不変である」といった原理を敷く必要があると思います(たぶん)。

でもそれって「古典」では無いですよね。


ちなみにもう1つの有名な法則である「オームの法則」も、マックスウェル方程式ローレンツ力から導くことはできません。

それは電気抵抗が熱に絡んだ事象であり、古典物理のもう1つの大きな柱である熱・統計力学に立脚するからです。

オームの法則も、ミクロな立場から本気で(?!)考えようとすると、けっこう難しかったりします。


さばさば 2014/05/21 18:03 勉強になります
もっと物理の話を聞かせてほしいです

rikunorarikunora 2014/05/22 14:01 そう言ってもらえると嬉しいです。物理のネタはたくさんあります。
ただ最近、暇と気力が足りない。がんばらねば。

T_NAKAT_NAKA 2014/05/22 23:59 ローレンツ力って、電荷のクーロン力と力のローレンツ変換で説明できるかな?と思っています。時間の遅れで、電荷のクーロン力が弱くなる分を磁場という考えで説明するものと理解していました。「電磁気と力の(逆)変換の関係」 http://teenaka.at.webry.info/201206/article_34.html

こめかみこめかみ 2014/05/23 08:23 はじめまして。いつも楽しみに読ませて頂いてます。

物理学では「古典的」と言った場合、相対論も含むと思いますよ。
「古典的」の反対語は「量子論的」ですので。


そして仰る通り、マクスウェル方程式とローレンツ変換によって、ローレンツ力は説明可能だったと思います。

rikunorarikunora 2014/05/26 09:22 T_NAKAさん、こめかみさん、
お二人のコメントから、ローレンツ力と相対論の関係が私の中ではっきりしてきました。
T_NAKAさんの記事、正にこれが探していた、ローレンツ変換->ローレンツ力の最短の説明だと思います。

・相対論(ローレンツ変換)あり
 マックスウェル方程式+ローレンツ変換 -> ローレンツ力が導き出せる。
・相対論なし
 ローレンツ力を1つの法則(前提)と見なす。

なぜマックスウェル方程式がローレンツ変換まで含む5つの式ではなく、4つにまとめたのか。
たぶん、相対論ありにすれば5つ目は不要だろう、ということでこの形になったのでしょう。

あと、世の中的には相対論も古典に含めるのが一般的みたいですね。
電磁気を考えると、自然にそうなるのかと納得しました。

とねとね 2014/05/27 12:34 rikunoraさん

お久しぶりです。物理学系の記事、興味深く読ませていただきました。

ひとつ補足させてください。

> なぜマックスウェル方程式がローレンツ変換まで含む5つの式ではなく、4つにまとめたのか。
> たぶん、相対論ありにすれば5つ目は不要だろう、ということでこの形になったのでしょう。

それはジェームズ・クラーク・マックスウェルがローレンツ変換のことを知り得るはずがなかったからだと思います。
ネットで調べるとマックスウェルがマックスウェルの方程式を発表したのは1865年、彼が亡くなったのは1879年、そしてローレンツ変換はアイルランドのジョセフ・ラーモア(1897年)とオランダのヘンドリック・ローレンツ(1899年、1904年)により提案された。とウィキペディアに書かれています。

その後、なぜマックスウェル方程式がローレンツ変換まで含む5つの式ではなく、4つのままにしたか。についてはrikunoらさんがおっしゃっているとおりなのだと思います。

rikunorarikunora 2014/05/30 11:22 とねさん、コメントありがとうございます。
ここしばらくご無沙汰していて、すいません。

確かに歴史的に見れば、マックスウェルが先で、ローレンツ変換が後ですね。

私自身、未確認なのですが、オリジナルのマックスウェルの論文では現代風のベクトル解析が無かったので、
もっと多くの式を成分ごとに書き下していたらしいのです。
そしてマックスウェルの方程式を現在の形にしたのは、ヘビサイドという人物のようです。
ウィキペディアの「オリヴァー・ヘヴィサイド」には
「1884年、ヘヴィサイドは、当時は20の式から構成されていたマクスウェル方程式を、
今日知られる4つのベクトル形式の式に直した。」とあります。
それでもローレンツ変換よりは前ですね。

このあたりの経緯を探ると、もう少し何かわかるかもしれません。

せいたかのっぽせいたかのっぽ 2014/06/01 15:29 暑いですね。こんにちは。
このあたりの歴史も調べてみると、色々面白そうですよね。
ウィキペディアで見られる以上の面白い話はいっぱいあると思いますよ。

ローレンツ力そのものの現象はもっと古くに発見されているようなので、
以下は理論的側面での歴史ですが、

マクスウェル自身は、
1873年出版の『電磁気論』の中で、『運動する電荷は電流と等価である仮説』
を述べているので、
ローレンツ力はマクスウェル方程式から『演繹』されるもの
との考えだったと思います。
(それが相対論まで待つ必要があった、とは当然当時は知らなかったでしょうけれど)
(ジャクソンの電磁気学の書き方も原理的にはその立場と理解してます。)

以降、
1881年 トムソン F=αqv×B の式を初めて表した論文。(α=1/2と間違い)
1889年 ヘヴィサイド F=qv×Bと正しい式を導出した論文。
     (この中で、運動方向にとった軸が(1+v^2/c^2)^(1/2)の比率で縮む、
     ローレンツ短縮のひな型がすでに見られる)
1892年 ローレンツ F=qE+qv×B 電場も合わせて表記。
1895年 ローレンツ短縮の論文。
1997年 トムソン 電子の発見。
1905年 アインシュタインの特殊相対性理論の論文。

公式の名前が、ローレンツの偉業をたたえて、ローレンツ力と言っているだけで、
ローレンツ変換が世に出る前にかなりの部分まで理論では分かっていたんだと
推測しています。

面白いのは、
1889年のヘヴィサイドの論文が『誘電体中を運動する荷電体の電磁気的効果について』
1995年のアインシュタインの論文が『運動する物体の電気力学について』
という論文主題の類似性です。

少なくとも1997年の電子の発見以前は、荷電粒子(電子)の存在は仮説であり、
誘電体などの実際の物質中を舞台に、流れる電流(荷電粒子の仮設)を考えずに、
真空中を運動する一個の荷電粒子を考えること自体、つまり、
F=qv×Bと荷電粒子の電荷qを考えること自体、
かなり突飛なことだったんじゃないかなあ、と思いました。
(トムソンの頭の中では、既に電子の存在に確信があったのかもしれませんね)

ヘヴィサイドの伝記本、分厚いですけれど、このあたりの経緯を探るのならば、
知らないような面白いことがいっぱい書いてありますよ。オススメ(^-^)/

せいたかのっぽせいたかのっぽ 2014/06/01 15:33 (1-v^2/c^2)^(1/2)
直すまでもないですが、マイナスの誤記です。
すみません、気持ちで読んでね!

せいたかのっぽせいたかのっぽ 2014/06/01 15:37 1897年 トムソン 電子の発見。
1905年のアインシュタインの論文
誤記だらけですみません。。。

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