Hatena::ブログ(Diary)

小人さんの妄想 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2014-09-09

噛み砕いた破片の分布

私たちが食べ物を噛み砕いたときの破片の大きさは、どのような分布になっているのでしょうか?


* 複雑系にひそむ規則性 ―対数正規分布を軸にして―

>> http://ci.nii.ac.jp/naid/110008723070

ちょっと変わった破壊現象の例として,ヒトの咀嚼を紹介しよう.

ヒトの咀嚼は第ゼロ近似では,口腔内での歯による食品の連続破壊現象だと考えられる。

上で紹介したコルモゴロフのモデルは,外部から複数回の衝撃が加わった連続破壊現象を記述するモデルとみなすこともできるため,

連続破壊現象により得られる破片のサイズ分布は対数正規分布であると予想できる.

実際,生ニンジンを一定回数咀嚼した後の食片について, そのサイズ分布を調べると,

食片の平均サイズや総粒子数などに被験者間の個人差が見られるが,

分布の形は個人によらず見事に対数正規分布で記述できることが示されている.

上記はもともと日本物理学会誌に載っていた記事です。

これによると、咀嚼した後の食片は「見事に対数正規分布で記述できる」とあるのですが、果たして本当でしょうか。

さっそく試してみました。


噛み砕いたもの、MONO消しゴム.

f:id:rikunora:20140719103852j:image

破片が洗いやすいものということで、消しゴムを選びました。(鉛筆は食べていない)

これをモグモグやって、ちょうど飲み込めそうだな、と思ったところで吐き出しました。

f:id:rikunora:20140719105218j:image

破片を大きさの順に並べます。

f:id:rikunora:20140719113541j:image

並べ作業完了。

f:id:rikunora:20140719123314j:image

拡大すると、こうなってます。

f:id:rikunora:20140719123609j:image

f:id:rikunora:20140719123556j:image

破片の大きさでクラス分けして数えてみました。

・最大 12mm (幅 9mm)
〜10mm 9 個
〜8mm 15 個
〜5mm 25 個
〜3mm 29 個
〜2mm 65 個
〜1mm 96 個
〜0.5mm 115 個
〜0.1mm 158 個

f:id:rikunora:20140909153248p:image


この結果を両対数プロットしてみると、上に凸型の緩いカーブを描いていました。

確かに、この結果は対数正規分布に近い形です。

f:id:rikunora:20140909153336p:image


岩石などを破壊したときの破片の大きさの分布は、一般にはベキ分布に従います。

 * フラクタルビスケット、ポアソンスパゲッティ >> id:rikunora:20091213

岩石の破片は、感覚的には大きな少数の破片と、無数の粉末のような微細な破片に分かれます。

それと比べると、噛み砕いた結果は明らかに別ものです。

噛み砕いた結果は、

 ・極端に大きな破片が無い。

 ・粉末のような微細な破片も少ない。

 ・全体として“粒揃い”である。

こうした特徴は、カウントして分布を調べる以前の段階でも直観的に気付くことです。

人の咀嚼とは、効率よく一定サイズに落とし込む仕組みなのだと、つくづく実感できます。


「咀嚼 対数正規分布」でグーグル検索すると、幾つかの研究例がヒットします。

* 咀嚼による食品破壊の統計則(PDF)

>> http://www.phys.chuo-u.ac.jp/j/katori/?c=plugin;plugin=attach_download;p=research_record;file_name=kobayashi070718.pdf

 まとめ

1. 複雑系において基本的な確率分布は対数正規分布である。

2. 生ニンジン魚肉ソーセージの食片サイズ分布は対数正規分布に従う。

今回の結果から、このまとめの中に「消しゴムの破片」を加えてもよさそうです。


※ この結果は、他の話題も交えて数学月間懇話会(第10回)の場でお話させていただいたものです。

※ >> http://www.sugaku-bunka.org/数学月間の会/

とねとね 2014/09/12 12:59 フラクタルビスケットの記事は大好きですが、こちらは続編ということでおおいに楽しめました。とうとう口に入れてしまったわけですね!両者で分布関数が異なるというのはとても興味深いです。でもなぜ?という疑問がわいてきましたので、自分でも考えてみたいと思います。

とねとね 2014/09/14 20:03 rikunoraさん
この記事と「フラクタルビスケット、ポアソンスパゲッティ」の記事を読ませていただいて思いついたことがあります。
飲み薬には粉末、顆粒、錠剤、液体などの種類があるけれども、以薬の粒のサイズの分布を調整し、効き目を改良できるかもと思いました。液体の場合はコロイドの粒のサイズの分布の違いで、何か違った結果が得られれば面白いと思うのです。
素人が思いつくようなことは、すでに研究されているのかもしれませんが、もしやと思ってコメントとして書かせていただきました。

rikunorarikunora 2014/09/24 09:37 とねさん、どうもご無沙汰しております。

分布の違いについては、上の「複雑系にひそむ規則性」という論文がとても参考になりました。
対数正規分布,正規分布,べき分布のメカニズムが書かれています。
キモとなる部分は”乗算過程”というところです。
「対数正規分布に従 う物理量の時間変化は,乗算過程と呼ばれる確率過程によって数学的に表現される」
分布の違いは、背後にあるメカニズムの違いを反映していたのです。

「咀嚼」については、まじめに研究している記事が少なからずあって、
こんなことまでよく調べたな〜、と驚いています。
とねさんのコメントの通り、きっと単なる興味だけでなく、
きっと消化に良い食品とか、薬の効き目など、実用的な応用があるのだと思います。
実は液体の分布も、それはそれでおもしろいのではないかと思っています。

数学はさっぱり数学はさっぱり 2014/10/05 22:34 いきなり消しゴム食べてみたとか言い出してびっくり
人の話を鵜呑みにするより、自分で試してみようという姿勢に感服しました!参考にします!

rikunorarikunora 2014/10/06 11:49 ありがとうございます!
消しゴムを食べるくらい、やろうと思えば誰でもできることです。
ちょっとしたことでも、実際試してみるとおもしろいですよ。

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/rikunora/20140909/p1