厘時のクラスター このページをアンテナに追加

2017-02-12

[]『龍帥の翼 史記・留侯世家異伝』3巻 川原正敏 作 講談社コミックス 『龍帥の翼 史記・留侯世家異伝』3巻 川原正敏 作 講談社コミックスを含むブックマーク

龍帥の翼 史記・留侯世家異伝(3) (講談社コミックス月刊マガジン)

3巻まできました。

そして張良、ついに出陣。

知謀というのは単なる頭の良さではなく、人の心の動きも読み取れる/予測できるという感じか。

それでも、なかなか思うようには行かなくて、窮奇・黄石の力だけでなく、劉邦能力はなくても器がめちゃでかい、でかいだけというのをちゃんと表現しているのがすごい)をはじめ様々な人の力添えを得て目的を果たそうとする張良の手腕(と心根)。

面白い

そして、わたし不勉強で諸々の『項羽と劉邦』の物語を知らない(『史記』も読んでいない)ので、この先がどうなるか全く判らず、ものすごくドキドキしながら読んでいます。

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2017-02-05

[]『本屋さんのダイアナ柚木麻子 著 新潮文庫 『本屋さんのダイアナ』柚木麻子 著 新潮文庫を含むブックマーク

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

わたしSFミステリなどのジャンル小説を中心(というかほぼそればっかり)に読んできているので、非ジャンル小説を読むのは新鮮でした。

という訳で初挑戦の柚木麻子作品でしたが、……大傑作。

ダイアナ日本人です。正式表記大穴)と彩子という、生まれも育ちも性格対照的な二人の少女小学三年生出会ってからの十年強の人生を描いています。それぞれの一人称を交互に。

まずは二人のキャラクターそれぞれが良い。

訳あって金髪に染めていて本が大好きでちょっとぶっきらぼうなダイアナ

年代ではしっかりしているように見えるし勉強もできるけど実は甘えん坊で子供っぽい彩子。

お互いに相手の見た目も環境も羨ましく思っていることを、そしてそれ故に惹かれあうこと(後の反発も含めて)を、相互視点を交互に描くことで立体的に浮かび上がせていく手腕がお見事です。

二人が中学高校大学社会人、と成長していくにつれ、悩みや喜びや想いも変わっていく。

それでも常に本と共にあるのが本好きな読者としては大きく共感できるところ。

そして作中にでてくる数々の実在の名作と並んで架空シリーズ秘密の森のダイアナ』。

この架空作品を巡る謎も、とても面白く、後半重要なカギとなります。

もし、もしですよ、この作品映像化されたなら(映画よりもTVドラマかな、あってるの)ぜひテーマ曲として欲しい、というのが極めて個人的趣味でこれです(RYUTist好きなのです)。

D

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2017-02-04

[][][]『1984年UWF柳澤健 著 文藝春秋 『1984年のUWF』柳澤健 著 文藝春秋を含むブックマーク

1984年のUWF

もうなんというか序章の少年中井祐樹が溜まらない。

小学生プロレス馬鹿にする同級生に口で負けたことがなく、中学生第一UWFに後れを取るまいと学校プロレス団体を立ち上げる。

かっこよすぎるだろう。

その後、カール・ゴッチ佐山聡藤原喜明前田日明というUWFキーパーソンに即して、プロレスから格闘技への志向を描き出していく。それと同時に、成長した中井少年佐山聡が創始したシューティングという格闘技選手としてそれを逆から見ている構図。

面白い

当時、元々猪木信者だったわたしプロレス最強からUWF、という方向性に(全面的ではなかったけれど)立脚して日々を過ごしていて、本書に引用されている様々な本も読んでいました。

時代が動いている手ごたえ、というのを確かに感じて。

知らなかったこと、知っていたこと、知っていたけれど忘れてしまっていたことを、たっぷりと読める幸せ

まだまだ掘り下げてほしい部分もあるし、ヒクソンVS高田で終わっているので続きが読みたい気持ちもある。

ただダッチ・マンテルについてこんなに読めたのがうれしい驚き。

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2016-08-06

[][]『シン・ゴジラネタバレ感想 『シン・ゴジラ』 ネタバレ感想を含むブックマーク

シン・ゴジラ音楽集














ではネタバレ感想を。

アメリカレジェンダリー・ピクチャーズ製作ギャレス・エドワーズ監督による『GODZILLA ゴジラ』のヒットを受けて日本でも『ゴジラ』を作るっていうニュースを聞いたとき庵野監督でやればいいに〜、と思っていた。

きっと素晴らしい『ゴジラ』を作ってくれるだろうって。

そしたら庵野総監督樋口監督特技監督という布陣になった。

大丈夫だ。

あとは公開を楽しみに待っているだけでよかった(宣伝が少なくて不安にはなったけど←結果としては先入観なしで観られてよかったよ)。

という訳で『シン・ゴジラ』。

情報なし、で観た。

ショック。

うわー、なにこれ!

これはゴジラじゃない。これはゴジラのエサになる怪獣だ。

メガヌロンだよ。

きっとゴジラから食われそうになって逃げて上陸してきたんだ。

最初上陸怪獣(のちにゴジラ第2形態と判明)を見たとき思った。

違った。

変わった。

進化というか変態というか。

おおっ、その手があったか

ということでサプライズにやられてそのまま心の中で拍手し続けて観ていきました。

街が、踏切が、信号がかっこよく。

政治家が、官僚が、技術者が、自衛隊員がきびきびと。

セリフを含めた映像テンポ気持ちいい。

巨災対というはみだし者・縦割り序列越境チームが、物語上でのゴジラ対応の要となりますが、彼らがの才能だけでゴジラに立ち向かえる作りにはなっていない。

とことん才能を発揮できる環境というカタルシスと同時に、ほかの組織との調整、上から承認必要というごつい足枷によってリアリティを補完する。

そこが気持ちいい。

一方今作のゴジラはというと。

見た目、遺留物、行動からこの巨大生物らしきものを推測していくしかない。

明確な意志がるあるのかないのか人間には判らない。

実はわたし怪獣映画を観るとき、登場怪獣心理を(心の中で)アテレコしていたりする。

えっ、俺だけですか、それって。

ビオゴジとかクレバーな感じで「ふっ、かかったな人間」みたいな。

ある意味、高貴で高い知性を持った野生動物みたいな感じで観ていた部分がある。

でも今回のゴジラにはそれができない。

そこは最初ゴジラと一緒ですね。

人間を憎んでいるのか見下しているのか関心があるのかないのかも判らない。

終盤、ヤシオリ作戦血液凝固剤を経口投与されて一旦動きを止めたゴジラが、突然前触れもなく熱戦を吐き出して第一部隊を薙ぎ払ってしまうところなんかは、酔っぱらって横になっているところを介抱されていた人が、下呂を吐いたみたいな感じで吐いた人もそれを掛けられた人も哀しい、という印象に(作戦名的には合ってるのでその解釈でいいのかも)。

絵面としてギャグみたいだけど、というのは特撮としてはけっこう大事なことで、平成ガメラ一作目でギャオスを閉じ込めるのに福岡ドームを使うように、高層ビルを倒してゴジラを下敷きにするときのカッコよさと大笑いが同時にくる感じが好きです。

特撮というパースを狂わせることを武器とする映像の力ここにあり。


傑作!と満足して劇場をだけれど、一度観ただけではちゃんと受け止められていないところも多々ありそうなので、また観にいこうと思っている今日この頃です。

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2015-11-03 イーガン『ゼンデギ』感想 このエントリーを含むブックマーク

[小説][SF]『ゼンデギ』 グレッグ・イーガン 著 山岸真 訳 ハヤカワ文庫SF

ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)

第一部。

2012年イラン。今の我々から見ると近過去ですが執筆原著刊行の時点では近未来

オーストラリア人ジャーナリストマーティンの、政治運動取材(とややそれを踏み越えた関わりも)を通じて、友や伴侶を得るお話

ボンクラで面倒くさい性格マーティンが、とき勇気をもって人を助けときに身動きのできない冷凍トラック内での退屈を好きな女性脳内画像コレクションを整理することで乗り越えときアクション映画級の落下人キャッチを体を張って行う。

2012年アメリカMITでヒト・コネクトーム・プロジェクトに参加しているイラン人情報科学者ナシムのお話

自身研究の進展やその研究目当てに接近してくる怪しい男キャプランに悩まされながらの日々。そして伝わってくる祖国イランニュース

頭の良さそうな人たちの手の込んだギャグアマゾン就職プレゼン)に笑いながらもけっこう重要なことがそのあたりに掛かれていて油断できない感じが、流石イーガン

そしてマーティン・ナシム二つのパートで蒔かれた種が、第二部で華開きます、絡み合いながら……。

第二部は第一部の15年後のイラクで、子供のために自分サイバー分身を残そうとするマーティンとそれに協力するヴァーチャル・リアリティシステム<ゼンデギ>の開発者となったナシムのお話

実は7月に一回読み終えていて今回再読。

更に訳者あとがきで触れられている『王書 古代ペルシャ神話伝説』も併せて読みました。

やっぱり傑作。『王書』もたいへん面白かった。

ストレートに読むと、マーティンの子供を思う気持ち、その想いと思い込みが強過ぎてせつない空回りをする部分が読みどころ。

ナシムの亡き父への想いとそれに突き動かされた(と自分では思っている)行動の結果の挫折感も含めて、この作品自分で思っていることと実際のギャップが、重要モチーフだと思いました。

マーティンもナシムも、けっして愚かな人ではないのに、けっこう間違っている。普通の人として。

その一面的見方ゆえの脆さみたいなものは、サイドローディングによって作られた知性や思い出の中の人物も同様なのかも。

でもそんな人々が、その中で精一杯に伸ばした腕を握りしめることができた場面が美しいです(完全な相互理解はできていないことも含めて)。

ラストでナシムが思い描く未来SFとして高まる感じですが、そこは読者の想像にお任せしている。

キャプランが本当のことを言っていないかも、とかも)

『王書』を読んだあとだと、マーティンの息子ジャヴィード(シームルグに面倒を見てもらってる)が、悪鬼キャプラン相手に大冒険とかも想像してしまいますね。

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