ISPが迷惑メールを受信時に排除することは「通信の秘密」の侵害か?

ISPの人は読むしかないでしょう。またにわかISPな人も(何

ところで、通信の検閲の禁止については?!

電気通信事業者であるISPは、電気通信事業法の義務が適用される。特に、同法第4条の「通信の秘密」を侵害した場合、未遂のケースでも懲役と罰則が科せられる。これを回避するためには、「当事者の同意がある」「業務上必要な『正当業務行為』」「緊急避難に該当する」のいずれかの条件を満たす必要がある。

インバウンドチェックの従来の考え方として「送信ドメイン認証のインバウンドチェックは、広い意味でフィルタリングに分類される行為。フィルタリングは通信の秘密に抵触するものなので、基本的に利用者、つまり受信者の個別の同意が必要」と説明。また、フィルタリングは常時実施されるものであるため、「緊急避難」は適用されないとしている。

1 オプションのサービスの設定者に対してのみ行なう やり方次第では、従来の法解釈でも何とかできる範囲
2 全員に基本サービスとして提供するが、デフォルトでは無効にする やり方次第では、従来の法解釈でも何とかできる範囲
3 全員にデフォルトで有効にして提供するが、利用者が個別に解除できるようにする 利用者ごとに解除する機能を提供する場合、やり方次第では、従来の法解釈でも何とかできる範囲
4 全員に一律に提供し、設定は解除できない 違法の可能性があるため、さらなる検討が必要

インバウンドチェックの手法

a Webメールで認証結果を表示し、ヘッダに認証結果を挿入する「ラベリング」 利用者が同意していれば問題ない
b 認証結果でエラーとなったものは、迷惑メールとして利用者のスパムフォルダに振り分ける 利用者が同意していれば問題ない
c 認証結果でエラーとなったものは、利用者のメールボックスに配送しない 従来の法解釈ではアウト

送信ドメインを偽装しているメールは、一時に多数に送信されていると推定できる。そのため、送信ドメインを認証し、その結果をラベリングする行為は「大量送信される迷惑メールにより生じるサービスの遅延などのメール送信上の支障のおそれを減少させるための行為」と判断され、「正当業務行為」と認められるという。

結局ラベリングは同意が無くても違法性は阻却されます。

送信ドメイン認証を用いたフィルタリングの流れでは、「送信ドメインの認証」「認証結果のラベリング」「(ラベリングの結果などに基づく)フィルタリング行為」を経て、受信者にメールが届く。今泉氏の話をまとめれば、送信ドメインの認証とその結果をラベリングする行為は、当事者の同意がなくても正当業務行為として違法性が阻却されることになる。

以下の条件を全て満たせば、利用者の有効な同意を取得したものと認められる

  1. 同意後も、随時利用者が任意に設定変更できること
  2. 同意の有無にかかわらず、その他の提供条件が同一であること
  3. 同意の対象・範囲が明確に限定されていること
  4. 平均的利用者であれば同意することが合理的に推定されること
  5. フィルタリングサービスの内容について、事前に十分な説明を行なうこと