「フライングガールズ 高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦」 松原孝臣 著

ソチオリンピック開幕まであと2ヶ月あまり。本書を読むと、まるで親戚の子どもたちが晴れ舞台に立つのを見守るような気持ちになってしまう。飛べ!飛べ!

美しいな。
本書に掲載されている写真を見て、しみじみと感じ入る。
表紙は高梨沙羅
2013年、史上最年少でワールドカップ個人総合優勝を果たした日本女子スキージャンプ界の期待のホープだ。


ソチオリンピックが近づき、彼女の名前がニュースに頻出する中で最近はスキージャンプにおける女性陣の活躍が知れ渡ってきた。
けれど、こんなことは知らなかった。
日本女子スキージャンプ界は高梨沙羅選手が突然彗星のように現れたわけではなく、そこに至るまでに、何人もの女性ジャンパーたちや関係者たちが様々な障害や不遇を乗り越えてきたことは。


日本のスキージャンプ界で初めて女子選手がノーマルヒルの公式大会でジャンプを飛んだのは今から21年前、1992年のことだ。
初めてのジャンプを飛んだのは、中学1年生だった山田いずみ選手。
当時、関係者の念頭にあったのは、

「女性にジャンプはできない」

という「強固な常識」だったという。
そんな非「常識」を覆すため山田選手は引退までの約20年間、渡瀬コーチなどの協力者とともに、飛び続けることで道を切り拓いてきた。
やがて、彼女を目標にたくさんの小さなフライングガールズが同じ道を歩み始める。
どの選手も口を揃えて言う「飛びたい」という言葉が、私たちには見ることも感じることもできない世界の素晴らしさを垣間見せる。


どの選手たちも、眩しいほどに美しい。
本書に掲載されている女子スキージャンパー、フライングガールズのどの写真を見ても思う。
なぜだろう。


2つの理由を思いついた。
1つは、写真の多くが積もった雪をバックにしているからではないかということ。
雪の中の女性って本当に綺麗だ。
無機質な白の背景に、頬を紅色に染めて笑う女性の姿って、まるで花のようだ。
もう1つの理由。
それは純粋に彼女たちが嬉しいから。
ソチオリンピックで初めて女子スキージャンプが正式種目に選ばれたこと。
度重なる苦境の中で先輩たちが切り開いた道を歩める誇らしさ。
なによりも、大好きな「飛ぶ」ことを仲間と共有できる喜び。
身体中がそんなもので満ち溢れているから。


ソチオリンピック開幕まであと2ヶ月あまり。
本書を読むと、まるで親戚の子どもたちが晴れ舞台に立つのを見守るような気持ちになってしまう。
日本のフライングガールズたちがどんな活躍を見せてくれるのか。
女子ジャンプナショナルチームのコーチとして戻ってきた山田いずみさんとともに、彼女たちの飛行を楽しみに待ちたい。

フライングガールズ 高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦

フライングガールズ 高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦