歴史を考えるヒント/網野善彦

歴史を考えるヒント (新潮文庫)』を読んだよ。日本史だって分からないことだらけ。

筆者は『日本の歴史を読みなおす』の網野先生。『日本の歴史を読みなおす』では、教科書に載っていない日本史を色々と知ることができたので、本書を本屋の店頭で発見した時、すぐに読みたい本リストに登録。ということで、今度はどんな日本史が示されるのだろうとワクワク感の期待満載で読み始める。

まずは、「日本」という国号はいつから始まったのか?という議論。筆者によると689年の浄御原令施行だとか。このこと自体も新たな認識だけど、そこから導き出せる結論はもっと驚く。つまりは、それ以前は 日本人というものは存在せず、倭人だったのだと。あの聖徳太子も日本人ではなく、倭人なわけ。ましてや、関東人は倭人にもならず…。 確かに、理屈的にはそうなるよね。何とも不思議な感覚だけど。この点について、

そして、何よりも問題なのは、我々がほとんど全く意識しないまま、「日本」をあたかも天から授かった国名のように、今でもぼんやり使い続けていることではないでしょうか。
と網野氏。仰る通り、考えたこともない日本人ばかりなんだよね。

そんな観点は地名にも表れる。「東国」という言葉は明らかに畿内からみての東の国だよね。だから、「東国」は日本国ではないわけで…。

そして、網野氏の「百姓は農民ではない」論。詳細は省略するけれども、その考え方の重要性を、

今後の歴史学の大きな課題は、これまで切り落としてきてしまった農業以外の分野に目を向け、それに関わる学術用語を大胆に創り出し、これまで全く薄かった分野の研究を推進し、豊かにしていくことだと私は考えています。その空白を埋めないかぎり、逆に本当の意味での日本列島の社会における農業の重要性、水田の大切さも、わからないのではないでしょうか。
と言っているよ。そう、百姓以外にも様々な言葉が使われているのは事実。そこから当時の人々の生活が見えてくるのに、百姓で一括りにしては勿体無いよね。

この後、不自由民と職能民、商業用語、日常用語の話と続くけれども、それもまた前述と同様。様々な言葉の中に人々の生活が垣間見える。言葉が歴史認識を変えることがあるんだね。

歴史を考えるヒント (新潮文庫)
歴史を考えるヒント (新潮文庫)網野 善彦

新潮社 2012-08-27
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