家族八景/筒井康隆

家族八景 (新潮文庫)』を読んだよ。人の心は恐ろしい。

筒井康隆七瀬シリーズ三部作と言われているものの1冊。多分、本書が最初に出て、後でその続きのようなものが2冊出たんだろうけど。

主人公は、人の心を読む能力を持った家政婦の火田七瀬。その能力ゆえに、働き先の家庭の中で、それぞれの家族の心を読み取ってしまう。そこには、家族間のドロドロした人間模様が浮かび上がる。それはそのまま家族の秘密になるわけなんだけど…。

例えば、七瀬は働き先の夫婦と食卓を共にすることをなるべく避ける。それは、

夫婦が互いに放射し続ける意識の醜悪さを眺めながら、表面平然として食事を続けるにはたいへな努力を要したからである。
ということ。人の心を読み取ることができなければ、こんな気を使わなくてもいいのだけど。

そして、七瀬のピンチを救うのも、この特殊な能力。人の心を読む能力を逆手に使うわけ。これを使うともうその家庭にはいられなくなるんだけどね。結局は、そのピンチを作ったのは、七瀬自身であるような気がするよ。ここはその能力を封鎖するのが七瀬自身のためのように思うんだけど。そう言ってしまうと、この物語が成立しないので、身も蓋もないことは分かるんだけどね。

自分も七瀬のように人の心を読み取れるようになりたいような、なりたくないような…。と思うと、三部作の全部を読んでしまいそうな予感です〜。

家族八景 (新潮文庫)
家族八景 (新潮文庫)筒井康隆

新潮社 1975-03-03
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