「A」/森達也

「A」―マスコミが報道しなかったオウムの素顔 (角川文庫)』を読んだよ。本当の素顔は分からない。

森達也氏の著作が気になり、少しずつ読んでいるんだけど、今回はだいぶ初期の作品。副題は、「マスコミが報道しなかったオウムの素顔」。そう、テーマは「オウム真理教」。一連のオウムの事件を契機に、オウムのドキュメンタリー番組の制作を目指し、結局は映画になるんだけど、その過程をまとめたのが本書。

時は1995年。そう、あの地下鉄サリン事件の年。筆者はオウムの荒木浩に連絡を取り、ドキュメンタリー制作の協力を依頼する。単なるニュース取材ではないことを主張し、了解を得る。そして、荒木浩を中心に、オウム信者の生活を撮影し続ける。

当然にいろいろな事件が起こるわけ。筆者にも荒木浩にも。メディアとの軋轢、警察との対決。家族との関係。微妙なバランスを保ちながら、動いていく。
筆者は、

「オウムの内部」と「包囲する社会」、この二つの対峙がこの作品の主眼だとしたら、荒木浩はその狭間でもがいている。どちらにも属せず、二つの言語を翻訳できず、煩悶し続けている。そしてどうやらこの亀裂に、この僕自身もいつのまにか落ち込み、まるで荒木浩と鏡面を挟むように、相似形で困惑し、身悶えし続けている。
と二人の関係を分析。そう、本書の中では、二人のもがき続ける姿が終わりなく描かれているよ。それは、映画が完成した後であっても。もしかしら、アレフに変わった今でもそうかもしれないね。

異なる視点で物事を見ることや、メディアの特性を知りつつ、情報をどう解釈するか、今の時代はますます重要になってきているよね。これ、忘れないようにしないとね。

「A」―マスコミが報道しなかったオウムの素顔 (角川文庫)
「A」―マスコミが報道しなかったオウムの素顔 (角川文庫)森 達也

角川書店 2002-01
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