近代化と世間/阿部謹也

近代化と世間―私が見たヨーロッパと日本 (朝日新書)』を読んだよ。阿部先生からの最後のメッセージ。

結語の日付が2006年7月10日。阿部先生が逝去されたのがその年の9月。最後まで本書に朱を入れられていたというから、本書はまさに絶筆の書。200頁ながらの新書だけれども、先生の50年余の研究からの総決算を論じているよ。副題は「私が見たヨーロッパと日本」ということで、欧州と日本について章を分けて述べるという構成。

まずは西欧について。
個人の成立、二つの宇宙、キリスト教、賤民などのキーワードがあるけれども、それらが密接に関わりあい、西欧の社会を形作ってきたことが分かるよ。二つの宇宙の狭間で賤視された人々が生き、そこにキリスト教の影響が及ぶ。

人々は未だ森の霊や死者の軍勢を信じ、生き続ける死者の存在を信じ、さまざまな迷信の世界に生きてきた。しかしキリスト教はそれらを徐々に掘り崩しつつあったのである。
というように、二つの宇宙は否定され、ひとつの宇宙に収斂していくことで、徐々に賤視も無くなっていくと。そして、これをベースに日本の社会を考えていくわけ。

そこで、阿部先生はもう一度「世間」の問題を考える。

日本においては個人と「世間」との関係の中にさまざまな問題の原点が隠されており、民主主義を実現しようとすれば、少なくとも個人が「世間」から自立しなくてはならないことは明らかである。
と力強いご発言。世間では、「時間が止まっている」し、「無感覚である」とも。これは一般社会に限ることではなく、政治も大学も。

最後に、

自己の変革なくして、社会の改革などありえない。
と。阿部先生の恩師である上原先生も「解るということは、自分が変わることだ。」と言っていたことを思い出すような言葉。忘れられないフレーズになりそうだなぁ〜。
近代化と世間―私が見たヨーロッパと日本 (朝日新書)
近代化と世間―私が見たヨーロッパと日本 (朝日新書)阿部 謹也

朝日新聞社 2006-12
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