なぜ男は女より多く産まれるのか/吉村仁

なぜ男は女より多く産まれるのか―絶滅回避の進化論 (ちくまプリマー新書)』を読んだよ。男が多いのは無駄のような気がするけど。

『素数ゼミの謎』の吉村先生。数学と生物学の組合せっていう視点がユニークで、自分的には気になる先生の一人。ただ、残念なことに、学術的には「素数ゼミ」ではなく「周期ゼミ」という呼称になっているらしい。つまらない…。

で、本書の内容。題名がキャッチーだけど、言いたいことは副題「絶滅回避の進化論」の方。ということなので、

生物進化には、このように、従来の総合学説が提唱する「強い個体」の選択より、ずっと重要な「絶滅回避」の適応があるのです。そこで、総合学説の「強い個体」の選択は、“進化の第2原理”とし、「絶滅回避」つまり「生き残り」の適応こそが、“進化の第1原理”だと、本書では考えることにします。
と筆者。「強い個体」は環境が一定の場合に子孫を残せる強い個体がどの程度いるかという考え方、「絶滅回避」は環境の変化に応じて、生き残る為にどのような行動をするかという考え方。同じような議論に聞こえるかもしれないけど、よくよく考えてみると違うし、結論もまったく異なるわけ。その好事例が、素数ゼミの進化であったり、人間の男女比であったり。

だから、結論としては、

ダーウィン以来信じられてきた「強い者=(平均)適応度の高い者」が生物界で勝つ(生き残る)というのは幻想なのかもしれません。勝たなくてもよい、最悪のときにも生き残ることのほうがより大事なのです。
ということに。数学的な説明もあるから、この結論に納得。

この結論から導き出せること。それはリスク回避の考え方。だから、社会の経済活動にも応用できる。

このように、生物進化も人間の経済活動も、進化における生き残り戦略からみることができます。そして、その戦略から、生物だけでなく、私たち人間社会の在り方を理解できます。どのような社会にこれから変えていくか、私たちは今、岐路に立っています。
ということに。進化の話から社会問題に話が及ぶことになるとは、こういう予想外の展開って面白いし、好きだなぁ〜。
なぜ男は女より多く産まれるのか―絶滅回避の進化論 (ちくまプリマー新書)
なぜ男は女より多く産まれるのか―絶滅回避の進化論 (ちくまプリマー新書)吉村 仁

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