小説 君の名は。/新海誠
『小説 君の名は。 (角川文庫)』を読んだよ。時間も空間も飛び越える。
去年の夏にアニメ映画として話題になっていたこの作品。だから、あえて「小説」というタイトルが付くみたい。あらすじはあちこちに書かれているので、もうここでは書かないことにする。よくある中高生向けの恋愛ものかと思うけど、その要素を加味したもっと広大な世界を描いているんだよね。
では、この物語の読みどころ(見どころ?)は何か?
まずは、空間を飛び越えるということ。東京という都会と、岐阜県の地方の間を交互に登場人物が飛び越えていく。ここまではよくある物語だと思うけど、さらに時間も飛び越える。これは予想外の展開だったかな。そして、この時空を超えて、ある場所で二人が会おうとする。このシチュエーションが分かったような分からないような状況で展開していく。うん、この微妙な状態が最後まで続くんだよね。
そして、都会と地方の対比として、匂いを持ってくることに目からウロコ。
今になって、東京は様々な匂いに満ちていることに私は気づく。コンビニ、ファミレス、すれ違う人、公園脇、工事現場、夜の駅、電車の中、ほとんど十歩ごとに匂いが変わった。と表現しているよ。
さらには朝日が昇る情景描写が秀逸。
山の端から朝日が昇る。湖の町を、太陽の光が順番に洗っていく。朝の鳥、昼の静寂、夕の虫の音、夜空の瞬き。とか、
ビルの間から朝日が昇る。無数の窓を、太陽が順番に光らせていく。朝の人波、昼のざわめき、カタワレ時の生活の匂い、夜の街の煌めき。と。朝の描写でもこれだけ違うのかと、改めて納得。
題名のつけ方もマーケティング的に考えているのかな、なんて思う。自分以上の世代でも「君の名は」に反応する人は多いだろうからね。
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