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活字中毒者地獄のりす蔵 RSSフィード

2017-10-17

アジア辺境論/内田樹,姜尚中

| 19:11

アジア辺境論 これが日本の生きる道 (集英社新書)』を読んだよ。現実的なんだろうか…。

内田先生の『日本辺境論』を読んで、自分的には目から鱗。そう、辺境だから故に、世界から見たらヘンな日本なんだいう認識が持てたっていうわけ。それ以来、内田先生の辺境論に傾倒しているわけで、本書が出た時は勿論必読を決意ってこと。

で、今回は内田先生と姜尚中氏がユーラシア大陸の辺境地域について、語るというもの。その主旨は、アジア地区を辺境であると定義し、日本、韓国台湾(場合によっては香港まで)での連帯を!ということ。その是非は本書を読んで、考えてもらうとして、自分としては、内田先生の目から鱗的な論考を本書の中から読み取りたいな…というイメージ。

まずは、はじめにから。

日本が「アメリカ属国であって、主権国家ではない」限り、日本が自前の世界戦略を語る日は来ないだろうと僕は思います。
内田先生。つまりは、日本は未来を語るビジョンを提示てきていないということ。だからこそ、本書でそれを語るのだとも。

そして、反知性主義という用語から。複雑な話から単純な話に還元しようとする誘惑を反知性主義と定義する。そう、本当は「そんな簡単な話じゃない」ことは分かっているのに、「簡単な話」にして、知的負担を軽減する。そう、今の社会はそういう傾向が強いよね。政治の論点にしてもそう。だから、

反知性主義感染力が強い。あくびがうつるように、ため息がうつるように、「もう難しいことを考えるのに疲れたよ」という愁訴はあっという間に広がってしまう。この徒労感からどうやって民主制を守るのか、それが喫緊の課題だと僕は考えています。言い換えるなら、「難しいことを考えることを厭わない」という意欲をどうやって保持するか、もっと踏み込んでいえば、「難しいことを考えることをむしろ好む」ような傾向をどうやって創り出すか。それが民主制を守るための思想的な急務ではないか。僕はそんなふうに考えています。
内田先生。いや、まさにおっしゃる通り。論点が単純なのは分かりやすいけど、そうそう物事の本質は単純ではないからね。考えることを厭うことを放棄したくはないよね。

それを思うと今度の選挙。なんだかそれでいいのかなぁ〜という違和感だけが残るんだけど。

アジア辺境論 これが日本の生きる道 (集英社新書)
アジア辺境論 これが日本の生きる道 (集英社新書)内田 樹 姜 尚中

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2017-06-11

モッタイナイで地球は緑になる/ワンガリ・マータイ

| 06:50

モッタイナイで地球は緑になる』を読んだよ。アフリカの様子を再認識。

2004年にアフリカ系女性として初のノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさん。本書は彼女の著作『THE GREEN BELT MOVEMENT』を福岡ハカセが翻訳したもの。タイトルを直訳すると「グリーンベルト運動(GBM)」だよね。

でも、どうしてGBMが平和賞なんだろうという点がミソで、本書を読めばその意味が分かってくるよ。

そして、もう一つのミソが「女性」ということ。

ここで、そのようなグループのメンバーの大半が女性であることに気がづくのは重要だ。そうすれば、開発グループが女性グループと呼ばれるわけが納得できるだろうから。
と言うように女性の活躍がグループの中心になっているわけ。さらには、
女性グループが社会に明らかな影響を及ぼしているのを見て、大勢の男性が女性を敬い、高く評価するようになった。また、自らGBMのグループに加わり、環境保護運動の一翼を担うことを誇りに思う男性も現れてきた。
という展開までも。だから、平和賞受賞の一つは女性の社会への貢献の拡大という側面もあるのだろうね。

もう一つの側面は、貧困、格差、腐敗、欺瞞などの社会的問題。マータイさんは、

アフリカをダメにした犯人が高学歴アフリカ人エリートであることはまぎれもない事実である。彼らは、現代的なライフスタイルや価値観の影響ばかり受け、従う人々に誠実に向き合って説明責任を取るという文化をなおざりにした。こんな人間は、リーダーシップのお手本にはならない。
と糾弾する。これは政治的な問題でもあるよね。だから、マータイさんは政治の世界にも進出する。内部からの改革を目指して。

最後に、タイトルにある「モッタイナイ」という言葉。マータイさんがえらく気に入った日本語だったよう。アジアの国々にはごく普通にある言葉らしいけど、英語にだけは訳し難いとか。無理に訳すと“経済的でない”といった何とも意味深くない言葉になってしまうとか…。

まだまだ、世界には政治的にも社会的にも安定しない国がたくさんあるんだよね。アフリカは遠い国だったと思っていたけど、少しはアフリカのこと、世界のことが分かったかな。

モッタイナイで地球は緑になる
モッタイナイで地球は緑になるワンガリ マータイ Wangari Maathai

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2017-03-04

ソウルの練習問題/関川夏央

| 08:23

新装版ソウルの練習問題 (集英社文庫)』を読んだよ。近くて遠い国は今でも。

1980年台の前半、筆者の関川夏央が韓国を旅し、そこで感じたこと、出会った人々を通して、当時の韓国をマスコミではない視点から伝えたもの。当時、関川氏の年齢は30歳代前半だったのだろうと思う。日本と韓国は、今のように旅行の自由度は低く、団体旅行がほとんどだったみたい。そこへ単身乗り込んでいく関川青年というシチュエーション。

で、その韓国はどうだったのか。

「孤独」という言葉がある。バベリズム、つまり言語的意思疎通不能によって生じる不安と混乱と、結果として一旅行者が異郷で味わうすさまじいまでの孤独感を味わいたいならば、ぼくはためらうことなく、韓国の旅をすすめる。
と。そう、キーワードは「孤独」。同じアジア圏で、且つ隣国でありながら、こういう境地に至ったのは「ハングル」という表音文字が一つの原因。顔も形も日本人に似ているのに、そこにあるのはハングルだけの世界。漢字か英語がそこに少しでもあれば、これだけの孤独感はなかったのかもしれないね。

さて、日本と韓国の関係はいつまでも微妙。

八二年の夏だけに日本人が嫌われただけではないのだ。長く濃い影を百年以上にわたって朝鮮半島のうえにおとしつづけてきた心の歪んだ表情の巨人、日本と日本人は嫌われつづけているのだ。
と筆者。それでも、だからこそ今韓国に旅行するのだと強気なんだけど、相当に精神には応えているんだろうね。

そして、言語の壁。筆者は韓国語を言語の密林と表現しているよ。

勇敢というよりも、多少の自尊心を持つ青年ならば案内人を伴わずに密林に分け入ろうとするだろう。たとえ結果は悲惨に終わっても、実りなしといえない。言語の森を実感し異文化の刺激のなかで、鏡のなかの自分の姿を冷静に観察できるようになるだろう。
と言い、それが異文化体験なのだとも。筆者とスンジャとの関係はまさにこの異文化体験なんだろうなぁ〜。

新装版ソウルの練習問題 (集英社文庫)
新装版ソウルの練習問題 (集英社文庫)関川 夏央

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2015-12-20

知らないと恥をかく世界の大問題6/池上彰

| 06:36

知らないと恥をかく世界の大問題 (6) 21世紀の曲がり角。世界はどこへ向かうのか? (角川新書)』を読んだよ。もう21世紀の曲がり角か…。

このシリーズもあっという間に6作目。過去の5冊ともすべて読んでいるけれども、世の中何も変わっていないような気がする。あっ、変わっているんだけど、その歩みがあまりに亀足なので、それに気がつかないだけなのかもしれない。10年スパンで概観すれば、その変化に気がつくのかもしれないね。

まずは、アメリカとの関係。戦後70年の今年だけど、あの戦争は何だったのかと考えた時に、あの戦争がなんと呼ばれているかでその捉え方がわかる。そう、子供の頃は「太平洋戦争」って習ったような…。でも、あの戦争は中国との戦争も大きかったわけ。だから、最近では「アジア・太平洋戦争」と呼ぶことが多くなっているのだと。なるほど、ある意味でそれは正しい名称かもしれないね。日本が戦った相手は、主に中国とアメリカだったわけだから。

目を転じて、ヨーロッパ。ギリシャも気になるけど、やっぱりロシアの動きは注目。そこで「社会主義」と「共産主義」の違いを確認。

世界がすべて社会主義になれば、争い事がなくなり、国家という概念もなくなり、国境がなくなる。これが究極の理想社会=共産主義です。
なるほど、共産主義ってユートピアなわけで、国家という概念は超越しているんだね。そのソビエトが今のイスラムの問題の発端を作ったということも確認。歴史は繋がっているんだね。

経済格差の問題にも興味。ピケティ氏の指摘する格差の拡大のロジックは、経済成長率は安定すると1〜2%になるなかで、

結果的に一般の人は1〜2%レベルでしか豊かになれないけど、資産を持っている人は4〜5%の成長率で豊かになるので、格差はどんどん広がるというわけです。
ということだとか。社会の成長率の変化が格差を生むとは誰も考えなかったことだよね。

最後にアジアの情勢について。端的に言って、日中韓の関係なんだけど、池上流の視点は、

そう考えれば、北朝鮮だって中国だって、いまの政治体制が永続的なものであるはずがありません。他国を見るとき、そんな歴史観も必要だと、つくづく思います。
ということ。ベルリンの壁だって崩壊したし、日本だって政権交代があったし…。そういう視点で社会と未来を考えていきたいよね。

知らないと恥をかく世界の大問題 (6) 21世紀の曲がり角。世界はどこへ向かうのか? (角川新書)
知らないと恥をかく世界の大問題 (6) 21世紀の曲がり角。世界はどこへ向かうのか? (角川新書)池上 彰

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2015-03-06

木を見る西洋人 森を見る東洋人/リチャード・E・ニスベット

| 23:58

木を見る西洋人 森を見る東洋人思考の違いはいかにして生まれるか』を読んだよ。その違いを徹底検証。

いきなりだけど、東洋人と西洋人の違いは一言、「包括的に見るか、分析的に見るか」ってこと。つまりは、東洋人は包括的に見るから「森を見る人」で、西洋人は分析的に見るから「木を見る人」ってこと。これを延々と300頁に渡って検証するのが本書。

タイトルに興味をそそられて、気になっていた本だったけど、中盤からは「もう分かったから、その説明はもういいよ〜」と言いたくなるほど、その理屈を繰り返す。お腹いっぱいって、このこと。

とは言っても、このまま終わってしまうのは勿体ないので、その理屈をいくつか紹介するよ。

例えば、ゼロの概念。

ゼロ自体はギリシア人が考え出したものだったが、彼らは矛盾をもたらすという理由でそれを却下した。ゼロとはないことに等しく、そしてないものはないからである!ゼロの理解は、無限大や無限小の理解と同様、結局は東洋から輸入しなくてはならなかった。
と。そう、西洋は矛盾は即却下だから。そして、東洋は矛盾はあり得るものと考えるよね。矛盾と如何に付き合うか、折り合いをつけるかって。本書でいう「中庸」がそれ。

そして、こんな表現も。

ともあれ、アジア人にとって世界とは複雑な場所であり、連続的な実体から成り立ち、部分ではなく全体として理解するべきものであって、個人の力よりも集合的な力に左右されている。西洋人にとって世界とは、比較的単純な場所であり、文脈に注意を払うことなく理解することのできる個別的な対象物から成り立ち、個人の力に大いに左右されている。
そう、結局は包括的な分析的かっていうことを言っているんだけれどもね。

では、この違いは人類にとってどうなんだろうと考えると、それは「多様性」に辿り着く。

それゆえ両者には、あらゆる場面でお互いを補い、豊かにしあう力がある。
予想通りの結論だけど、これ以外に考えられるわけでもなく。いや、いろいろな実験とその成果が盛りだくさんで、自分自身が東洋人か西洋人かを判定しながら、楽しんだ本書でした〜。

木を見る西洋人 森を見る東洋人思考の違いはいかにして生まれるか
木を見る西洋人 森を見る東洋人思考の違いはいかにして生まれるかリチャード・E・ニスベット 村本 由紀子

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