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活字中毒者地獄のりす蔵 RSSフィード

2018-04-15

新編・風雪のビヴァーク/松濤明

| 16:32

新編・風雪のビヴァーク (ヤマケイ文庫)』を読んだよ。文章力のチカラ。

本書は、登山家・松濤明の登山記録(日記)と山岳会の会報に投稿した手記を中心に編纂したもの。何度も同じタイトルで幾つかの出版社から上梓されているけれども、その後さらに発見されたものを追加したようだから、「新編」となったみたい。

1960年に『風雪のビバーク』として出版されたみたいだけど、当時ベストセラーになったとか。そして、「最後の手帳」に記された文章(松濤の遺書)が話題になったとか。

さて、内容の前に、この文章が優れもの。編者曰く、

一読すれば了解されるだろうが、この紀行文の「文学」としてのレベルの高さは、並のものではない。十八歳になったばかりで、これほどの筆力。彼が若くして逝かず、文学的才能を開花させたとしたら、どれほどの果実を成したことであろうか。
ということ。そう、確かに若干20代の若者とは思えない文章力だと思う。文学的とも言えるかもしれないけど、論理性もある。基本的に頭の良い人だったんだろうなぁ〜と感じさせる文章だよ。今の学生にここまで書ける能力があるかというとちと疑問。

では、その文章を幾つか紹介。

美しい月、夢幻的な月、いろいろ見た月の中にも、かつて私はこんなに物寂しい月は見たことがない。とつぜん激しいノスタルジアが襲ってきた。家、里が恋しい。「引き返そうか」悪魔的な衝動が胸をかすめた。しかしそれは意地でもできない。
これは文学的な文章かな。それでも、山に行く人皆が感じる感情を一文で表しているんじゃないかと思う。いいよね。

もう一つ。

山の懐ろは平和そのものである。明るい磧を渡りながらふと法悦にも似た無我におちいる。過去もなく、未来もなく、ただ現在だけが無限に拡がっている。いつかずうっと以前にも、こうしてこの磧を渡っていったように思う。それがまた明日の自分の姿のようにも思われる。
これは哲学的。これが書けるのは、山に行く度に感じていたことだからなんだろうね。それを文字にするのは難しいんだけど。

話題の「遺書」は、是非本書を読んでほしい。死を覚悟しても最後まで冷静だったような。いや、覚悟したからこそ、冷静になれたのかもしれないね。

新編・風雪のビヴァーク (ヤマケイ文庫)
新編・風雪のビヴァーク (ヤマケイ文庫)松濤 明

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2018-04-14

日本の山を殺すな!/石川徹也

| 18:11

日本の山を殺すな!―破壊されゆく山岳環境 (宝島社新書)』を読んだよ。その後を知りたい。

題名に惹かれて手に取った本書。読んでみて気がついたことは、情報が古かったということ。副題にある通り、「破壊されゆく山岳環境」について、日本各地の状況を詳細にルポしたものだが、その時期が、1997年から1999年にかけて。つまり、20年以上も前。環境省も当時は環境庁だったし、20年も経てば法律も変わっていたりするだろうし。

とは言え、当日の状況を知ることが今の有り様を理解することに繋がるので、本書を今読むことに意義がないわけではない。そして、20年前はそういう状況で、今はどうなのかをみることは、日本の山が殺されているのか生かされているのか、判断する材料になるよね。

本書に登場する事例は、山小屋のトイレ問題、高山植物の盗掘、山岳道路の建設、オーバーユース、砂防ダムの影響etc。その他に、世界自然遺産に登録された白神山地屋久島での現状は注目に値するよ。

例えば、世界遺産の意義について。

世界遺産とは、なんだったのか、と問われれば、こう答えるしかなさそうである―。開発頓挫で白神山地の主導権を失った林野庁や、自然保護運動にほとんど力にならなかった環境庁が、白神山地自然保護行政の主導権を握るための“道具”であった―と。
と筆者。穿った見方なのかもしれないけど、日本の行政のあり方を考えるとそれもあり得るかな…と。誰がどこで何を考えているのかということがよく分からないうちに決まってしまうってことがよくあるし。

あと、自分的には、林野庁って何をやっているんだろ…って、今回初めて気付かされた感じ。林野庁環境省の関係とかも。

もう一つ。

この国を代表する山岳資源が世界自然遺産に登録されてから五年が経った。しかし現在、白神山地屋久島も「世界に誇れる」と胸を張れるだろうか。このままでは世界遺産地域さえ守ればいいといった、大雑把かつ視野の矮小な自然保護行政だけが、大手を振って歩き始めるだろう。
と。そう、世界遺産というコトバに注目され独り歩きし、その中身はどうなっているのか。それを語る人がどれだけ理解しているのか。本書の事例のその後が気になるところではある。

日本の山を殺すな!―破壊されゆく山岳環境 (宝島社新書)
日本の山を殺すな!―破壊されゆく山岳環境 (宝島社新書)石川 徹也

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2018-04-12

27歳からのMBA グロービス流ビジネス勉強力/グロービス経営大学院

| 15:36

27歳からのMBA グロービス流ビジネス勉強力』を読んだよ。結局はPDCA

以前に、JMOOCを受講した際に、参考図書として上げられていたのが本書。講座の講師がグロービス経営大学院の教員だったゆえの参考図書なんだろうね。

では、いきなり本書の趣旨。

本書は、「学ぶ技術」を速読術、記憶術、試験必勝法といった即効性のあるスキルを身につけるためのものではなく、「ビジネスパーソンとして成長し続けるために、日常生活そのものを、学び続けるサイクルにするためのもの」 と位置づけて紹介していきます。
そう、これはまさに学びのPDCAサイクルの確立ってこと。そのために、何をどのようにしていったらいいのかを、まとめて紹介しているよ。でも、学びって範囲が広くて、どれをどのように?って考えてしまうけど、結局は、
変化が激しい今の時代に置いて、普遍的に学べることは、唯一「学び方」そのものかもしれません。
ってこと。学び方を学ぶこと、これは意外に重要なんだよね。

で、その学び方。重要なのは「アウトプット」。インプットは今までの勉強の延長でなんとかなるかもしれないけど、アウトプットはあまり学ぶ機会がないからね。筆者曰く、

学びを効果的にするためはアウトプット、アウトプット、アウトプットです。
と、端的。そして、適切なフィードバックを受けるためにも良質なアウトプットが必要になり、
いずれにせよ、レベルの高いフィードバックを引き出せるかどうかは、「自分がアウトプットに対してどれだけ準備を重ねてきたか」ということ次第です。全力でアウトプットするからこそ、その対価として質の高いフィードバックが返ってくるのです。
ということに。

変化の激しい時代に、学び方も変わるんだ…ということを学びました。27歳は遠い昔だけどね。

27歳からのMBA グロービス流ビジネス勉強力
27歳からのMBA グロービス流ビジネス勉強力グロービス経営大学院 田久保 善彦

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2018-04-07

ゲゲゲの女房/武良布枝

| 00:06

ゲゲゲの女房』を読んだよ。ごく普通の人生。

NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の原作本。この番組の放送は2010年の春秋だったけど、なぜか自分も見ていたのをよく覚えている。普段はNHK連続テレビ小説を見ることはないから、不思議。余談だけど、NHKの番組Webページを見ていたら、登場人物に今人気の星野源が…。意外にこういうことって多いよね。

内容としては、漫画家水木しげるの妻・武良布枝が著した自伝エッセイ。とはいえ、本人のことよりも、夫・水木しげるのこともかなりの分量で書かれている。ん?もしかしたら、水木しげるのことの方が多いかも。

自伝だから、まずは自身の生まれ育った街のこと。島根県安来市。そこでは、

目には見えないけれども、私たちを守ってくれる神様や、無礼を働いたら怒って 災いを引き起こす存在が、いたるところにいるということを、町の人たちみんなが肌で感じ、心から信じていました。それは、怖いことではなく、むしろこの町に住む安心感につながっていました。私が、魂や神様、仏様を身近に感じるようになったのも、こうした古里があったからだと思っています。
という経験。これは、のちの水木しげるの妖怪を扱った漫画に繋がっていくよね。水木しげるとの縁というか。

そして、結婚。水木しげるの仕事ぶりについて、

精魂こめてマンガを描き続ける水木の後ろ姿に、私は正直、感動しました。これほど集中してひとつのことに打ち込む人間を、私はそれまでに見たことがありませんでした。
という思い。見合いをして5日後には結婚というスピードだったけど、こんな夫の様子を見て、尊敬の念さえ抱くようになる筆者。

そして、貧乏生活から抜け出て、売れっ子漫画家になる水木しげる。生活がガラッと変わってしまうが、ベースとなるポリシーは変わらない二人。

晩年。自身の人生を振り返って筆者は、

人生は入り口で決まるのではなく、選んだ道で「どう生きていくか」なんだろうと、私は思います。
と。自身の生き方もそうだったんだろうけど、水木しげるの生き方も同じだったんだろうね。いい話を読ませていただきました。

ゲゲゲの女房
ゲゲゲの女房武良 布枝

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2018-04-01

新しい道徳/北野武

| 00:13

新しい道徳 「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか (幻冬舎文庫)』を読んだよ。道徳も変化する。

筆者は北野武。だから、この題名もアヤシイ感じがするし、副題の“「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか”はもっとアヤシイ…。でも、読んでみるとその内容はいたってまともというか、正鵠を射ることを語る北野武。

では、どんなことを語っているのか。

冒頭で結論を言うのも北野武らしい。

「道徳がどうのこうのという人間は、信用しちゃいけない」
と。そう、いきなり殴り込みか?って感じだよね。

それ以降は、なぜそう思うかということについて、その思いの丈をぶつけ続ける。

大人が心にもないことをいっている限り、子どもには伝わらない。道徳っていうのは、そういうものだと思う。他の教科のように、理屈で教えられるものではない。
とか、
自分がわからなくなっているのに、子どもには相変わらず昔ながらの道徳を語る。それがそもそもの間違いの元だと俺は思う。
とか。基本的に「道徳って何?」って分かっている人がいるのだろうか…ということ。だから、自分で考えるのが道徳であり、人に押し付けられるものではないってことだよね。

最後に。

子どもはなんだかんだいって、親や学校に教わった道徳観の下で生きている。大人になるということは、その誰か他の人が作ってくれた道徳の傘の下から出て、自分なりの価値観で生きる決断をすることだと思う。
そう、これは極めつけだと思う。だから、人によって道徳が違うし、時代によって変わっていくものなんだろうね。道徳について、久しぶりに真剣に考えたなぁ〜。

新しい道徳 「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか (幻冬舎文庫)
新しい道徳 「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか (幻冬舎文庫)北野 武

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