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活字中毒者地獄のりす蔵 RSSフィード

2018-08-10

新幹線事故/柳田邦男

| 16:45

新幹線事故 (1977年) (中公新書)』を読んだよ。この歴史の上に、今の新幹線有り。

柳田邦男氏の交通機関の事故シリーズの1冊。柳田氏のこの手の本は航空機ものが多いけど、今回は鉄道。と言っても新幹線なので、そのシステムは航空機ほど複雑ではないけれども、大規模なシステムに運行が支えられているのは変わらないわけで、やはり事故の原因と背景を掴み、その根本的な対策を図ることは重要だよね。

本書で検証されるのは鳥飼車両基地品川車両基地、新大阪駅構内で発生した3件の新幹線による事故。その全てがATC絡み。これほど完全なシステムはないと当時の国鉄が自信を持っていただけに、これらの事故はかなりのショックだったみたい。でも、異常事態の発生は事実であり、それぞれにそれなりの原因があるわけ。

事故調査とは何かという観点では、

事故を調査し、安全を考えるということは、例えば落ちた橋を架け直せばよいというようなものではない。なぜ橋が落ちたのか、その原因となったいくつもの要因の、システム全体の中での位置づけを浮き彫りにし、なぜ「絶対安全」と考えられていたシステムの中に、事故の「落とし穴」があったのかを、普遍的な教訓として導き出さない限り、システム全体の安全への道を切り開くことはできない。
と筆者。そう、巨大システムには膨大なファクターがあり、あるファクターを改修しても、それにより別のファクターに影響を及ぼすことも多くあるよね。特にヒューマンファクターへの影響が大かな。

そして、そのヒューマンファクターについては、

安全にかかわる基本的な部分については、人間がいつでも取って代われるだけの対応力(知識判断力、処理技術)を保持するような教育訓練体系を整えることが、最低限必要な条件ではないか。機械と人間との間に境界線を引くのではなく、相互に重複させ、人間の主体的能力の退化を防ぐ道を考えることこそ、これからの技術に不可欠なのではないか。
と筆者。うん、多分、本書が上梓された時期には納得できる論調だったと思うけど、現代のAIの時代にこの論点はどう考えていけばいいんだろ。機械と人間との関わり方って、随分と変わってきているよね。そういう意味で、最新の新幹線ATCの仕組みを知りたいな…。

おっとその前に、ATSとATCの違いってなんだろ…とか、ATSも進化しているとか聞くし。交通系システムについて、知りたいことが多過ぎるわ…。

新幹線事故 (1977年) (中公新書)
新幹線事故 (1977年) (中公新書)柳田 邦男

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2018-07-28

AI vs. 教科書が読めない子どもたち/新井紀子

| 15:08

AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読んだよ。さて、自分は読めていたのだろうか。

筆者は東ロボくんプロジェクトの推進者である新井紀子氏。本業は数学者だったとは…。ということで、AIは何ができるかという観点では、随所に数学的な見解が示されているよ。その東ロボくんについて、東大に合格するロボットを作りたかったわけではなく、

本当の目的は、AIにはどこまでのことができるようになって、どうしてもできないことは何かを解明することでした。そうすれば、AI時代が到来したときに、AIに仕事を奪われないためには人間はどのような能力を持たねばならないかが自ずと明らかになるからです。
と筆者。なるほど、目的は分かった。でも、AIって限界があるのだろうか…。筆者が後述するように、数学的には論理、確率、統計という言葉だけで成り立っているコンピュータには限界があるという理屈。それ故に、シンギュラリティも来ないと断言しているよ。最近、シンギュラリティで頭がオーバーフローした自分的にはちょっと混乱。

で、後半はAIの話を受けて、「教科書が読めない子どもたち」の話。AIは「意味を理解しない」のだから、人間こそ意味を理解できなければならないんだけど、どうやらそこがアヤシクなってきているのだと。その点を十分な調査の上で、

読解力こそ、AIが最も苦手とする分野であることは、この本の中で再三述べてきました。しかし、残念なことに多くの人が、AIに対して優位に立てるはずの読解力で、十分な能力を身につけていません。さらに、日本の教育が育てているのは、今もって、AIによって代替される能力です。
と言っているよ。う〜ん、中高生は本当のこんなレベルなのか…。これじゃ、大学受験レベル以下のような気がするのだが…。

筆者的な結論。

重要なのは柔軟になることです。人間らしく、そして生き物らしく柔軟になる。そして、AIが得意な暗記や計算に逃げず、意味を考えることです。
と。そう言われると、分かるような気がする。意味を考えずに、機械的に処理しようとする人間が気になるこの頃だからなぁ〜。

AI vs. 教科書が読めない子どもたち
AI vs. 教科書が読めない子どもたち新井 紀子

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2018-07-21

失速・事故の視覚/柳田邦男

| 19:56

失速・事故の視角 (文春文庫 240-1)』を読んだよ。政治的殺人か…。

柳田邦男氏の航空機事故追跡ルポシリーズ(あっ、自分が勝手に呼んでいるだけ)の1冊。昭和51年の『失速』と昭和53年の『事故の視覚』という単行本から航空機問題に絞って、再編集したもの。ということで、事故の事例は古いものだけど、システムという観点で見ると、十分に現代に通じるものなのは確か。

単行版のあとがきが本書で紹介されているので、ここではまとめてそれを抜粋。

まずは、『失速』について。

ロッキード事件は、日本の戦後史を画する一大事件であり、さまざまな角度から書かれなければならないが、本書の第?部は、この事件を、アメリカの航空産業全体の眺望の中でとらえ、その歯車の中にわれわれがどのように噛みこまれているのかを、俯瞰しようとしたものである。
と筆者。そう、航空産業はシステムが巨大であるが故に、それによる得られる利益も大きいということで、あのロッキード事件のようなものが起こり得る。事故そのものよりも、そういう背景をもその要因となり得るってわけだよね。

もう一つの『事故の視覚』については、

なぜここで事故調査という言葉の定義をあらためて持ち出したかというと、本書をすでに読んだ方は理解していただけると思うが、事故というものを過失責任論優先の発想でとらえがちな日本の精神的風土を逆転させて、事故調査を安全技術論としてとらえる視点(フィロソフィー)を定着させる道を探ってみようかというのが、本書のねらいだからである。
と言っているよ。『マッハの恐怖』の全日空羽田沖事故も同じような事例だよね。事故調査委員会の結論はパイロットのミスだったわけだからね。

そして、大切になってくるのがシステム的思考。

システム的思考のないところには、合理的な事故調査は成立し得ない。
と筆者。日本人はどうしても精神論というか、周囲のことも考え過ぎて、事実の把握が曖昧になるよね。事実と責任は別物という考え方をしないとダメだよなぁ〜。

失速・事故の視角 (文春文庫 240-1)
失速・事故の視角 (文春文庫 240-1)柳田 邦男

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2018-05-19

未来予測の技法/佐藤航陽

| 19:29

時代を先読みし、チャンスを生み出す 未来予測の技法 (リベラルアーツカレッジ)』を読んだよ。テクニックではないような…。

特段に未来予測に興味があるわけでもなく、何気なく手に取った本書。占いとかいうわけでもなく、単にビジネス書だったからかも。読んでいて分かったんだけど、最近本屋で山積みになっている『お金2.0』の筆者だったんだね。図書館では予約多数で、順番が回ってくるのがいつになるか分からないから、もう『お金2.0』は読まなくてもいいかな…なんて。あぁ、どうでもいいことを述べてしまった。

本書はビジネス的な観点から、如何に未来を予測するか、その手法というより考え方をまとめた本。冒頭で、手法をまとめたと書いているけど、結局は考え方になってしまっているのではないかな…と。

この変化の激しい時代に予測なんてしたって、意味がない。それよりも変化に素早く対応できるようにした方が得策という考え方があるけれども、筆者の考えはちと違う。

「予測を放棄し、変化にすかさず対応する」。一見理にかなったこの戦略は、もはや戦略として意味をなしません。変化を見抜くことが難しい時代だからこそ、未来を的確に予測し、先回りできた企業と個人が最終的には勝利を収めるのです。
と。やっぱり、予測は必要なのね。いや、確かに必要だと思う。何もなければ、対応が対処療法になってしまうからね。

では、その具体的な手法。筆者は、

変化には一定のパターンが存在します。一見ランダムに動いているような市場の変化も、一定のメカニズムに則っています。その意味において、現在は過去の焼き直しであることが多いのです。
と言う。そう、これはそう思う。過去に起こったことが形を変えて、また現れる。それを人類は繰り返しているんだよね。だから、現象だけを捉えるのではなく、その原理を捉えることが重要なんだと思う。手法的には一般化してみるとか。

その一つの例として登場するのが、「エントロピー」。

エントロピーの増大は多くの物事に当てはまるパターンであり、今後IoTがますます進んでいくというのもその具体例のひとつです。なかでも注目すべきは、センサーの拡散です。
ということ。一般化して物事を眺めると、いろいろなことが分かってくるよね。こういう考え方、楽しいなぁ〜。いいなぁ〜。

時代を先読みし、チャンスを生み出す 未来予測の技法 (リベラルアーツカレッジ)
時代を先読みし、チャンスを生み出す 未来予測の技法 (リベラルアーツカレッジ)佐藤 航陽

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2018-03-17

ブロックチェーン革命/野口悠紀雄

| 11:33

ブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現』を読んだよ。IT革命の完成版。

今回も引き続き「Fintech」。筆者は野口悠紀雄先生だから、『仮想通貨革命』の続きっていう感じかな。だから、『FinTechが変える!』よりは、さらに社会的な観点からの「ブロックチェーン」を論述しているよ。

そして、論点は副題にある「分散自律型社会」ということ。要は、ブロックチェーン技術が分散自律型社会を出現させるということ。いや、Internetの出現により分散型社会になりつつあるんじゃないの?って思うかもしれないけど、金融的にはまったくそうなっていないということ。改めてそう言われると確かにそうかも。お金って未だに金融機関を通さなければ、何もできない状態だよね。でも、ブロックチェーンの技術は金融機関だけに留まらない。そこで、

世界はいま、ブロックチェーンという新しい技術の潜在力に気付いた。そしてそれが、未来のビジネスチャンスの宝庫であることに気付いた。それだけではなく、この技術が社会と経済を根底から変えてしまうことを認識したのだ。これはインターネットの黎明期と同じような状況だ。
と筆者。金融機関以外では、IoTやサプライチェーン、医療、教育などでも用いられるということ。ピンとこない分野もあるかもしれないけど、P2Pという概念が分かれば、同じことだと気づくんだよね。

もう一つ、信頼性をどう考えるかという問題。

ブロックチェーンの世界においては、人や組織を信頼する必要がない。改竄できないデータがブロックチェーンに埋め込まれているからだ。そして、数千台のコンピューターが働いてそれを維持している。これこそが信じるに値するものである。
そう、大企業だから、行政のやることだから信頼できるという世界からの脱却。だからこそ革命なのかもしれないけど、人々の心がここまで変えられるのか…。ましてや日本では難易度が高そうな気がするよね。

いや、いつの間にかそんな世界になっていた…っていうのが世界の変え方なのかなぁ〜。

ブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現
ブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現野口 悠紀雄

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