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活字中毒者地獄のりす蔵 RSSフィード

2018-07-28

AI vs. 教科書が読めない子どもたち/新井紀子

| 15:08

AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読んだよ。さて、自分は読めていたのだろうか。

筆者は東ロボくんプロジェクトの推進者である新井紀子氏。本業は数学だったとは…。ということで、AIは何ができるかという観点では、随所に数学的な見解が示されているよ。その東ロボくんについて、東大に合格するロボットを作りたかったわけではなく、

本当の目的は、AIにはどこまでのことができるようになって、どうしてもできないことは何かを解明することでした。そうすれば、AI時代が到来したときに、AIに仕事を奪われないためには人間はどのような能力を持たねばならないかが自ずと明らかになるからです。
と筆者。なるほど、目的は分かった。でも、AIって限界があるのだろうか…。筆者が後述するように、数学的には論理、確率、統計という言葉だけで成り立っているコンピュータには限界があるという理屈。それ故に、シンギュラリティも来ないと断言しているよ。最近、シンギュラリティで頭がオーバーフローした自分的にはちょっと混乱。

で、後半はAIの話を受けて、「教科書が読めない子どもたち」の話。AIは「意味を理解しない」のだから、人間こそ意味を理解できなければならないんだけど、どうやらそこがアヤシクなってきているのだと。その点を十分な調査の上で、

読解力こそ、AIが最も苦手とする分野であることは、この本の中で再三述べてきました。しかし、残念なことに多くの人が、AIに対して優位に立てるはずの読解力で、十分な能力を身につけていません。さらに、日本の教育が育てているのは、今もって、AIによって代替される能力です。
と言っているよ。う〜ん、中高生は本当のこんなレベルなのか…。これじゃ、大学受験レベル以下のような気がするのだが…。

筆者的な結論。

重要なのは柔軟になることです。人間らしく、そして生き物らしく柔軟になる。そして、AIが得意な暗記や計算に逃げず、意味を考えることです。
と。そう言われると、分かるような気がする。意味を考えずに、機械的に処理しようとする人間が気になるこの頃だからなぁ〜。

AI vs. 教科書が読めない子どもたち
AI vs. 教科書が読めない子どもたち新井 紀子

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2018-07-26

数学する身体/森田真生

| 23:52

数学する身体 (新潮文庫)』を読んだよ。身体がなければ数学もできない。

単行本が出た時から気になってはいたんだけど、なんだか内容が高度な感じで少し様子見にしていた本書。今回、文庫版が出たということでようやく読みたい本リストに登録。そう、単行本の時に既に小林秀雄賞を受賞していたから、余計に難易度高いというイメージがあったかな。

筆者は1985年生まれの数学研究者森田真生氏。本書のねらいを冒頭で、

これは、数学に再び、身体の息吹を取り戻そうとする試みである。全編を読み通すために、数学的な予備知識は必要ない。数学とは何か、数学にとって身体とは何かを、ゼロから考え直していく旅である。
と筆者。そう、今の数学は人間の身体的感覚を超えたところで議論がなされている感じ。それはそれで論理としては正しいんだろうけど、それでいいのか?ということを考えることがテーマなんだろうね。

では、数学を身体化するとは何か。

ひとたび「身体化」されると、紙と鉛筆を使って計算をしていたときには明らかに「行為」とみなされたことも、今度は「思考」とみなされるようになる。行為と思考は案外に微妙なのである。
うん、これは分かりやすい説明かも。行為がいつの間にか思考になっていることってよくあるよね。人間の行動ってすごく複雑。

身体化の話のあとは、数学の進展について。それは抽象化というか、数学をメタ的に考える歴史。そして、チューリング岡潔が登場する。二人とも心の究明に向かっているのだけれど、そのアプローチが違う。

チューリングが心を作ることによって心を理解しようとしたとすれば、岡の方は心になることによって心をわかろうとした。チューリング数学を道具として心の探求に向かったとすれば、岡にとって数学は、心の世界の奥深くへと分け入る行為そのものであった。
まさに、アプローチが西洋的と東洋的だって言えるよね。筆者が岡よりの立場を取っているのは、やっぱり日本人だからなのかなとは思うけど。いや、自分的にはチューリングも好きなんだけどなぁ〜。

数学する身体 (新潮文庫)
数学する身体 (新潮文庫)森田 真生

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2018-03-25

なぜ男は女より多く産まれるのか/吉村仁

| 08:00

なぜ男は女より多く産まれるのか―絶滅回避の進化論 (ちくまプリマー新書)』を読んだよ。男が多いのは無駄のような気がするけど。

『素数ゼミの謎』の吉村先生。数学生物学の組合せっていう視点がユニークで、自分的には気になる先生の一人。ただ、残念なことに、学術的には「素数ゼミ」ではなく「周期ゼミ」という呼称になっているらしい。つまらない…。

で、本書の内容。題名がキャッチーだけど、言いたいことは副題「絶滅回避の進化論」の方。ということなので、

生物進化には、このように、従来の総合学説が提唱する「強い個体」の選択より、ずっと重要な「絶滅回避」の適応があるのです。そこで、総合学説の「強い個体」の選択は、“進化の第2原理”とし、「絶滅回避」つまり「生き残り」の適応こそが、“進化の第1原理”だと、本書では考えることにします。
と筆者。「強い個体」は環境が一定の場合に子孫を残せる強い個体がどの程度いるかという考え方、「絶滅回避」は環境の変化に応じて、生き残る為にどのような行動をするかという考え方。同じような議論に聞こえるかもしれないけど、よくよく考えてみると違うし、結論もまったく異なるわけ。その好事例が、素数ゼミの進化であったり、人間の男女比であったり。

だから、結論としては、

ダーウィン以来信じられてきた「強い者=(平均)適応度の高い者」が生物界で勝つ(生き残る)というのは幻想なのかもしれません。勝たなくてもよい、最悪のときにも生き残ることのほうがより大事なのです。
ということに。数学的な説明もあるから、この結論に納得。

この結論から導き出せること。それはリスク回避の考え方。だから、社会の経済活動にも応用できる。

このように、生物進化も人間の経済活動も、進化における生き残り戦略からみることができます。そして、その戦略から、生物だけでなく、私たち人間社会の在り方を理解できます。どのような社会にこれから変えていくか、私たちは今、岐路に立っています。
ということに。進化の話から社会問題に話が及ぶことになるとは、こういう予想外の展開って面白いし、好きだなぁ〜。

なぜ男は女より多く産まれるのか―絶滅回避の進化論 (ちくまプリマー新書)
なぜ男は女より多く産まれるのか―絶滅回避の進化論 (ちくまプリマー新書)吉村 仁

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本が好き!運営担当本が好き!運営担当 2018/03/28 13:42 突然のコメント、失礼いたします。はじめまして。
書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」を運営しております、和氣と申します。

貴ブログを拝読し、ぜひ本が好き!にもレビューをご投稿いただきたく、コメントさせていただきました。

本が好き!:http://www.honzuki.jp/

こちらのサイトでは、選ばれたレビュアーの方が本をもらえるようになる「献本サービス」を行っています。

1.会員登録 
 こちらのフォームよりご登録ください。
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 書籍を検索し【書評を書く】ボタンよりご投稿ください。
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 貴ブログ名をご記載の上、こちらのフォームよりご報告ください。
 http://www.honzuki.jp/about/inquiries/user/add.html

名前の通り「本好き」の方がたくさん集まって、活発にレビューを投稿して交流をされているサイトですので、よろしければぜひ一度ご訪問いただけましたら幸いです。

よろしくお願いいたします。

2018-02-10

コマ大数学科 特別集中講座/ビートたけし,竹内薫

| 14:34

コマ大数学科 特別集中講座 (扶桑社新書)』を読んだよ。数学オタク談義。

もう何年も前になるけれども、「コマ大数学科」という深夜枠でTV番組があったっけ。ちょっと難易度の高い数学の問題を、ビートたけし、東大女子学生、たけし軍団が解くというもの。解答の出し方がそれぞれに特徴があって、ビートたけしは直感型、東大女子学生は理論で攻める、たけし軍団は体力勝負という感じ。数学で体力勝負っていうと違和感があるかもしれないけど、例えば何度も繰り返して計算する必要がある場合はまともにやろうとすると、完全に体力勝負になるってわけ。

おっと、番組の話ではない。本の話。

ということで、TV番組「コマ大数学科」の番外編ということで、本書はビートたけしと竹内薫の数学談義。難解な数学問題を解くという本ではなかったので一安心だったけど。

では、二人が数学について、どう考えているのか。

まずは、ビートたけし。

数学っていうのは、合理的にタンスに服をしまうのと同じなんだと思いますよ。引き出しに下着やセーター、シャツって分けて入れたり、キレイな入れ方とか考えたり。整理しながら収納するのと、基本的に数学っていうのは同じなんじゃないのかな。
うん、これは数学の説明としては分かりやすいよね。ビートたけしの得意の幾何学的な発想法かもしれないけど。

そして、竹内薫。「数学は虚構だけど、宇宙の存在とは無関係ではない」というたけしの発言を受けて、

つまり、人間の脳が宇宙について考えた、その記述方法が数学なんです。
という見解。それが発展していくと、「数学は森羅万象を表すことができる」とか「数学は宇宙を支配している」とかとなり、完全に数学至上主義。そして、それに首肯する自分。いや、それでいいんだと思う。だって、そういう本なのだから。

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2018-01-20

これからの日本、これからの教育/前川喜平,寺脇研

| 10:37

これからの日本、これからの教育 (ちくま新書)』を読んだよ。その「これから」が分からない。

二人の元文部科学省官僚の対談をまとめたもの。特に、話題の前川喜平氏の登場とあれば、興味津々で読んでみたってわけ。でも、結局は、前川氏の言葉としては、冒頭と最後にまとめた文章だけ。それも、なんだかスッキリしたものではなかったような…。本書の大半を占める二人の官僚の対談は、ほとんどが寺脇研氏が話をし、前川氏が相槌程度にコメントや補足情報を付け加えるだけといった感じだし。

では、その少ない前川氏からの情報で、その精神に通底するものを見ていくと、初代文部大臣の森有礼の言葉「自警」に辿り着く。前川氏曰く、

私なりに「自警」を要約すると、教育と学問にかんする行政をつかさどる文部省の責任は大変重いもので、その職務をになう人間は、十二分にその自覚をし、他の省庁と比較したりせず、その職に死んでもいいくらいの気持ちで、つねに自らを向上させ、職務に励まなければならない、ということが言われています。
と。この「自警」を幾つか引用して、退官前に文科省職員全員宛にメールで送ったのはその当時に話題になったよね。加計学園問題での一連の発言は、この精神から発せられているような…。

そして、日本の教育改革。二人の主張は「学校教育だけが教育ではない」ということ。例えば、

寺脇さんの言われるように、大事なのは、学習者の学ぶ場を保証することです。一人ひとりの、多様なあり方に即した、多様な学びの場を用意すること。
と前川氏。うん、これは間違ってはいないはず。逆にこの主張は旧来の文科省の考え方とか、他の省庁(財務省とか内閣府とか)とぶつかるんだろうね。

最後に、気になる前川氏の主張。

数学に関していえば、高校の必修科目から外したほうがいいと、ずっと思っています。
と。ドロップアウトの原因だからと言っているけれども、これはちょっといただけない。ちょっと拙速すぎやしないか?まぁ、反対は多数だろうから、実現はしないだろうけど。いや、実現したら日本は終わりだ…。

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