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活字中毒者地獄のりす蔵 RSSフィード

2018-06-17

さらば国分寺書店のオババ/椎名誠

| 18:05

さらば国分寺書店のオババ 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ』を読んだよ。オババに会っていたとは…。

本書が情報センター出版局から出版されたのが1979年11月。どうして、本書を知ったのかは全く記憶にない。けれども、本書は当時の自分にとって衝撃的な出会いだったんだと思う。本の帯には「スーパーエッセイ」という文字が有ったのは覚えているから。そして、本書で椎名誠を知り、ハマっていった自分。本書が椎名誠のデビュー作でもあったんだけどね。

何が衝撃的だったかと言えば、その文体と内容。文体は昭和軽薄体と名付けられていたけれども、なんとも言えないリズムというか、繰り返し感というか、比喩的表現というか。

例えば、自動改札になる前の駅の改札にいた仏頂面の駅員(そんな人達がいたことさえ知らない世代がいるという事実にもショーゲキだが)と、それに対比し、必要以上にマイクでがなりたてる車掌車掌がこんなことをしていたという事実もスゴイ話だけど)について、

改札口とかキップ売場では「オレここ数年口ひらいて声なんか出したことねえよ」というような、東日本仏頂協会専務理事みたいな顔をしている奴ばっかりなのに、車掌という職業になるととたんに雄弁デカ声になってしまう、というのはこれはどう考えてみてもおかしいではないか。
シーナ氏。そんな調子で論調的には日本の制服関係の人たちに対する「おまえら気に入らない」話が続く。おっと、キップ売り場なんてものもあったな…。

ところが、シーナ氏が属するマスコミ業界のパーティーに参加して、気がつく。

マスコミは消えてしまってもいいが、消えてしまっては困る、という人々に、なんと「制服関係」の人々が多いことか。これはまったくショーゲキ的なことである。
と反省の弁。さらに、制服関係の人たちと同類だと思っていた国分寺書店のオババ。そして、その国分寺書店がある日突然になくなってしまうと、
不思議なもので、人間というものは自分の生活にとってそんなに深い関係があるわけでもないのに、そこに黙って存在していれば安心し、なにかの都合で急になくなってしまった、ということになると、その空虚感は思いがけないほど大きなものになるらしいのだ。
シーナ氏。今回、改めて読み返してみるとこんなストーリーがあったんだね。自分の初読は文体と表現に圧倒されていただけで、終わってしまっていたんだろうね。改めてシーナ文学の魅力を知りました〜。っていうか、これって文学か?

さらば国分寺書店のオババ 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ
さらば国分寺書店のオババ 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ椎名 誠

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2018-05-20

小説 君の名は。/新海誠

| 06:27

小説 君の名は。 (角川文庫)』を読んだよ。時間も空間も飛び越える。

去年の夏にアニメ映画として話題になっていたこの作品。だから、あえて「小説」というタイトルが付くみたい。あらすじはあちこちに書かれているので、もうここでは書かないことにする。よくある中高生向けの恋愛ものかと思うけど、その要素を加味したもっと広大な世界を描いているんだよね。

では、この物語の読みどころ(見どころ?)は何か?

まずは、空間を飛び越えるということ。東京という都会と、岐阜県の地方の間を交互に登場人物が飛び越えていく。ここまではよくある物語だと思うけど、さらに時間も飛び越える。これは予想外の展開だったかな。そして、この時空を超えて、ある場所で二人が会おうとする。このシチュエーションが分かったような分からないような状況で展開していく。うん、この微妙な状態が最後まで続くんだよね。

そして、都会と地方の対比として、匂いを持ってくることに目からウロコ。

今になって、東京は様々な匂いに満ちていることに私は気づく。コンビニ、ファミレス、すれ違う人、公園脇、工事現場、夜の駅、電車の中、ほとんど十歩ごとに匂いが変わった。
と表現しているよ。

さらには朝日が昇る情景描写が秀逸。

山の端から朝日が昇る。湖の町を、太陽の光が順番に洗っていく。朝の鳥、昼の静寂、夕の虫の音、夜空の瞬き。
とか、
ビルの間から朝日が昇る。無数の窓を、太陽が順番に光らせていく。朝の人波、昼のざわめき、カタワレ時の生活の匂い、夜の街の煌めき。
と。朝の描写でもこれだけ違うのかと、改めて納得。

題名のつけ方もマーケティング的に考えているのかな、なんて思う。自分以上の世代でも「君の名は」に反応する人は多いだろうからね。

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2018-05-18

アンダーグラウンド/村上春樹

| 23:03

アンダーグラウンド (講談社文庫)』を読んだよ。日常の中の暴力。

作家の村上春樹っていうとほとんど小説の人というイメージだと思うけど、本書は数少ないノンフィクション作品の一つ。そして、その題材は、地下鉄サリン事件。村上春樹とこの事件が自分的にはどうしても結びつかないんだけど、どうしてこれを書こうとしたかは、本書の中で、

もっと具体的に述べるなら、「そのときに地下鉄の列車の中に居合わせた人々は、そこで何を見て、どのような行動をとり、何を感じ、考えたのか?」、そういうことだ。私はそのことが知りたかった。
と筆者本人が述べている。それでも、自分としてはよく分からなかったんだけど。作家魂に火が点いたってことなのか…。

内容的には、事件の被害者(遺族を含む)に筆者独自にインタビューし、それをまとめたもの。インタビューを受けた人たち(インタビューイ)は総勢62名というから、相当のボリュームだよね。だから、文庫にすると700頁以上。勿論、軽症の人もいるし、残念ながら未だに後遺症に悩まされる人も。

取材の時期が事件後1年以上は経過しているので、インタビューイの語る言葉は淡々としているという印象。そして、誰もが状況が把握てきておらず、自分が被害にあっているという感覚を持っていない。だから、多少身体の具合が悪くても、会社に行こうとする人たちが多数。

もう一つは現場の状況で印象的だったこと。

私がいた小伝馬町の駅前、その一角はたしかに異常事態なんです。でもそのまわりの世界はいつもどおりの普通の生活を続けているんです。道路には普通に車が走っているんです。あれは今思い返しても不思議なものでしたよね。そのコントラストが、ものすごく不思議だった。
という証言。異常事態(非日常)のすぐ隣に日常が流れているってこと。東京都心という場所だからこそのコントラストなんだろうね。ちょっと怖い気もするけど、前述の「それでも会社に行こうとした。」ということが普通に起こり得るんだよね。

最後に筆者の言葉。

私たちはこの巨大な事件を通過して、いったいどこに向かって行こうとしているのだろうか? それを知らない限り、この地下鉄サリン事件という「目じるしのない悪夢」から、私たちは本当には逃れることができないのではないだろうか。
この事件から自分は何を考えたのか。それすらも曖昧な状況のような…。あまりにも巨大な事件の為、整理しきれないというのが正直なところかな。

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2018-04-12

27歳からのMBA グロービス流ビジネス勉強力/グロービス経営大学院

| 15:36

27歳からのMBA グロービス流ビジネス勉強力』を読んだよ。結局はPDCA。

以前に、JMOOCを受講した際に、参考図書として上げられていたのが本書。講座の講師がグロービス経営大学院の教員だったゆえの参考図書なんだろうね。

では、いきなり本書の趣旨。

本書は、「学ぶ技術」を速読術、記憶術、試験必勝法といった即効性のあるスキルを身につけるためのものではなく、「ビジネスパーソンとして成長し続けるために、日常生活そのものを、学び続けるサイクルにするためのもの」 と位置づけて紹介していきます。
そう、これはまさに学びのPDCAサイクルの確立ってこと。そのために、何をどのようにしていったらいいのかを、まとめて紹介しているよ。でも、学びって範囲が広くて、どれをどのように?って考えてしまうけど、結局は、
変化が激しい今の時代に置いて、普遍的に学べることは、唯一「学び方」そのものかもしれません。
ってこと。学び方を学ぶこと、これは意外に重要なんだよね。

で、その学び方。重要なのは「アウトプット」。インプットは今までの勉強の延長でなんとかなるかもしれないけど、アウトプットはあまり学ぶ機会がないからね。筆者曰く、

学びを効果的にするためはアウトプット、アウトプット、アウトプットです。
と、端的。そして、適切なフィードバックを受けるためにも良質なアウトプットが必要になり、
いずれにせよ、レベルの高いフィードバックを引き出せるかどうかは、「自分がアウトプットに対してどれだけ準備を重ねてきたか」ということ次第です。全力でアウトプットするからこそ、その対価として質の高いフィードバックが返ってくるのです。
ということに。

変化の激しい時代に、学び方も変わるんだ…ということを学びました。27歳は遠い昔だけどね。

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2018-04-07

ゲゲゲの女房/武良布枝

| 00:06

ゲゲゲの女房』を読んだよ。ごく普通の人生。

NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の原作本。この番組の放送は2010年の春秋だったけど、なぜか自分も見ていたのをよく覚えている。普段はNHK連続テレビ小説を見ることはないから、不思議。余談だけど、NHKの番組Webページを見ていたら、登場人物に今人気の星野源が…。意外にこういうことって多いよね。

内容としては、漫画家水木しげるの妻・武良布枝が著した自伝エッセイ。とはいえ、本人のことよりも、夫・水木しげるのこともかなりの分量で書かれている。ん?もしかしたら、水木しげるのことの方が多いかも。

自伝だから、まずは自身の生まれ育った街のこと。島根県安来市。そこでは、

目には見えないけれども、私たちを守ってくれる神様や、無礼を働いたら怒って 災いを引き起こす存在が、いたるところにいるということを、町の人たちみんなが肌で感じ、心から信じていました。それは、怖いことではなく、むしろこの町に住む安心感につながっていました。私が、魂や神様、仏様を身近に感じるようになったのも、こうした古里があったからだと思っています。
という経験。これは、のちの水木しげるの妖怪を扱った漫画に繋がっていくよね。水木しげるとの縁というか。

そして、結婚。水木しげるの仕事ぶりについて、

精魂こめてマンガを描き続ける水木の後ろ姿に、私は正直、感動しました。これほど集中してひとつのことに打ち込む人間を、私はそれまでに見たことがありませんでした。
という思い。見合いをして5日後には結婚というスピードだったけど、こんな夫の様子を見て、尊敬の念さえ抱くようになる筆者。

そして、貧乏生活から抜け出て、売れっ子漫画家になる水木しげる。生活がガラッと変わってしまうが、ベースとなるポリシーは変わらない二人。

晩年。自身の人生を振り返って筆者は、

人生は入り口で決まるのではなく、選んだ道で「どう生きていくか」なんだろうと、私は思います。
と。自身の生き方もそうだったんだろうけど、水木しげるの生き方も同じだったんだろうね。いい話を読ませていただきました。

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