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活字中毒者地獄のりす蔵 RSSフィード

2018-03-25

なぜ男は女より多く産まれるのか/吉村仁

| 08:00

なぜ男は女より多く産まれるのか―絶滅回避の進化論 (ちくまプリマー新書)』を読んだよ。男が多いのは無駄のような気がするけど。

『素数ゼミの謎』の吉村先生。数学生物学の組合せっていう視点がユニークで、自分的には気になる先生の一人。ただ、残念なことに、学術的には「素数ゼミ」ではなく「周期ゼミ」という呼称になっているらしい。つまらない…。

で、本書の内容。題名がキャッチーだけど、言いたいことは副題「絶滅回避の進化論」の方。ということなので、

生物進化には、このように、従来の総合学説が提唱する「強い個体」の選択より、ずっと重要な「絶滅回避」の適応があるのです。そこで、総合学説の「強い個体」の選択は、“進化の第2原理”とし、「絶滅回避」つまり「生き残り」の適応こそが、“進化の第1原理”だと、本書では考えることにします。
と筆者。「強い個体」は環境が一定の場合に子孫を残せる強い個体がどの程度いるかという考え方、「絶滅回避」は環境の変化に応じて、生き残る為にどのような行動をするかという考え方。同じような議論に聞こえるかもしれないけど、よくよく考えてみると違うし、結論もまったく異なるわけ。その好事例が、素数ゼミの進化であったり、人間の男女比であったり。

だから、結論としては、

ダーウィン以来信じられてきた「強い者=(平均)適応度の高い者」が生物界で勝つ(生き残る)というのは幻想なのかもしれません。勝たなくてもよい、最悪のときにも生き残ることのほうがより大事なのです。
ということに。数学的な説明もあるから、この結論に納得。

この結論から導き出せること。それはリスク回避の考え方。だから、社会の経済活動にも応用できる。

このように、生物進化も人間の経済活動も、進化における生き残り戦略からみることができます。そして、その戦略から、生物だけでなく、私たち人間社会の在り方を理解できます。どのような社会にこれから変えていくか、私たちは今、岐路に立っています。
ということに。進化の話から社会問題に話が及ぶことになるとは、こういう予想外の展開って面白いし、好きだなぁ〜。

なぜ男は女より多く産まれるのか―絶滅回避の進化論 (ちくまプリマー新書)
なぜ男は女より多く産まれるのか―絶滅回避の進化論 (ちくまプリマー新書)吉村 仁

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本が好き!運営担当本が好き!運営担当 2018/03/28 13:42 突然のコメント、失礼いたします。はじめまして。
書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」を運営しております、和氣と申します。

貴ブログを拝読し、ぜひ本が好き!にもレビューをご投稿いただきたく、コメントさせていただきました。

本が好き!:http://www.honzuki.jp/

こちらのサイトでは、選ばれたレビュアーの方が本をもらえるようになる「献本サービス」を行っています。

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名前の通り「本好き」の方がたくさん集まって、活発にレビューを投稿して交流をされているサイトですので、よろしければぜひ一度ご訪問いただけましたら幸いです。

よろしくお願いいたします。

2018-01-20

これからの日本、これからの教育/前川喜平,寺脇研

| 10:37

これからの日本、これからの教育 (ちくま新書)』を読んだよ。その「これから」が分からない。

二人の元文部科学省官僚の対談をまとめたもの。特に、話題の前川喜平氏の登場とあれば、興味津々で読んでみたってわけ。でも、結局は、前川氏の言葉としては、冒頭と最後にまとめた文章だけ。それも、なんだかスッキリしたものではなかったような…。本書の大半を占める二人の官僚の対談は、ほとんどが寺脇研氏が話をし、前川氏が相槌程度にコメントや補足情報を付け加えるだけといった感じだし。

では、その少ない前川氏からの情報で、その精神に通底するものを見ていくと、初代文部大臣森有礼の言葉「自警」に辿り着く。前川氏曰く、

私なりに「自警」を要約すると、教育と学問にかんする行政をつかさどる文部省の責任は大変重いもので、その職務をになう人間は、十二分にその自覚をし、他の省庁と比較したりせず、その職に死んでもいいくらいの気持ちで、つねに自らを向上させ、職務に励まなければならない、ということが言われています。
と。この「自警」を幾つか引用して、退官前に文科省職員全員宛にメールで送ったのはその当時に話題になったよね。加計学園問題での一連の発言は、この精神から発せられているような…。

そして、日本の教育改革。二人の主張は「学校教育だけが教育ではない」ということ。例えば、

寺脇さんの言われるように、大事なのは、学習者の学ぶ場を保証することです。一人ひとりの、多様なあり方に即した、多様な学びの場を用意すること。
と前川氏。うん、これは間違ってはいないはず。逆にこの主張は旧来の文科省の考え方とか、他の省庁(財務省とか内閣府とか)とぶつかるんだろうね。

最後に、気になる前川氏の主張。

数学に関していえば、高校の必修科目から外したほうがいいと、ずっと思っています。
と。ドロップアウトの原因だからと言っているけれども、これはちょっといただけない。ちょっと拙速すぎやしないか?まぁ、反対は多数だろうから、実現はしないだろうけど。いや、実現したら日本は終わりだ…。

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これからの日本、これからの教育 (ちくま新書)前川 喜平 寺脇 研

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2017-12-23

現代語訳 武士道/新渡戸稲造,山本博文

| 21:54

現代語訳 武士道 (ちくま新書)』を読んだよ。いまだに武士道の精神が底流に。

超有名な本書。それだけにいつかは読みたいと思っていたけど、かなり以前から積読状態。Kindle本は場所を取らないから、積読の山がいくらでも高くなるのが玉に瑕。タイミング的には紙の本が切れたところで、ようやく読み始めたというわけ。現代語訳版ということで、思ったより読みやすく、多少の難読漢字や、意味不明もあったけど、無事に読了。

まずは副題について。本書に「日本人の魂」という副題があったというのは初耳。だから、訳者まえがきでも、

題名が「武士道」だけに、武士の規範や倫理を書いたものだと思われがちだが、この書物は単に武士道を解説するだけではなく、さまざまな事例をあげて、日本人の拠って立つ道徳意識や思考方法を明らかにしている。
と。そう、武士道って日本人の思考方法なんだよね。本書の中で、どうしてこういう考え方をするんだろうと日本人以外が感じていることの理由を明快に説明しているし。

そして、腑に落ちたのが「克己」。以前に「かっこ」と読んでしまい、恥ずかしい思いをしたことがあったから、余計に思い入れが強くなる。その「克己」について、新渡戸は、

しかし、絶えず克己を励行させる必要があったのは、まさに私たちが興奮しやすく、また敏感だったからだと私は信じる。
と言っているよ。そう、克己とはセルフ・コントロールのこと。敏感な感覚をいかに制御するか…。日本人だったら、分かるよね。

もう一つは、現代日本人にも理解しづらい「切腹」。新渡戸は、

この精神生理学説が認められるならば、切腹の論理はたやすく構築できる。それは、「私は、私の魂の宿るところを開いて、あなたにその様子を見せよう。それが汚れているか、清いかは、あなた自身で判断せよ」ということである。
と説明しているよ。はぁ、こう説明されると妙に納得してしまうよね。自己犠牲、謙る等々の概念と繋がってくるし。

これを思うと、やっぱり自分は日本人なんだな…と納得してしまうし、その中でも日本人っぽい日本人なんじゃないかと思えてくるんだけど…。どうなんだろ。どの日本人もそう思っていたりして…。

現代語訳 武士道 (ちくま新書)
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2017-10-02

世界が変わる現代物理学/竹内薫

| 22:13

世界が変わる現代物理学 (ちくま新書)』を読んだよ。議論の終わりはあるんだろうか。

科学本が好きで、適当に読み漁っているんだけれども、当然ながらアカデミックな読み方ではないわけで、自分がどこまで分かっていて、何が分かっていないのかも分からないわけ。とは言え、到達目標があるわけでもないので、それはそれでいいのかもとは思うけど、もうちょっと俯瞰してみてみたいというのは事実。

結果的に、その思いに沿っていたのが本書。現代物理学の今の位置とその考え方を筆者なりの解釈でまとめたのが本書。

おっと、前段が長くなったけど、本書の紹介はこれで十分かも。でも、そうなるとこのサイトの意味がなくなってしまうので、以下に概要。

ひと言で言ってしまうと、現代物理学は「モノからコトへ」とまとめられるのだと。

現代物理学の思想性は、量子重力理論という最前線の研究においてもっとも鮮明なかたちであらわれます。そこでは、すべての「モノ」が消え去り、すべては「コト」になるのです。そこでは、すべての「非虚構」が崩れ去り、すべては「虚構」と化すのです。
と筆者。これが思いっきり抽象化の世界。

さらに、「虚構」の世界を数学で表現すると、そこには複素数という概念が現れる。自分的には「おっと、そう来たか。」と。だから、「虚構」を「現実」に変換するのに、二乗したり。なるほどなぁ〜。

でも、「虚構」の世界、つまり「抽象化」ってどこまで行くんだろという素朴な疑問。多分、抽象化の限界は人間の限界ってことなんだろうね。そう、抽象化の完成は神の領域への到達なんだろうからね。

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2017-08-13

百姓たちの江戸時代/渡辺尚志

| 06:57

百姓たちの江戸時代 (ちくまプリマー新書)』を読んだよ。現代とそれほど変わりはなく。

江戸時代の普通の人々の暮らしについて、事例を多く盛り込んで詳しく紹介する本。ここで、普通の人々とは具体的には百姓のこと。網野善彦先生によると、「百姓とは農民にあらず」ということだけど、本書を読むと確かにそれは言えるんだろうなぁ〜と思えてくる。勿論、農業が主たる収入源だったのは確かなんだけど、それ以外にも様々な活動を行っていたことが本書を読むと分かるよ。

さらに筆者の考える百姓と農民との違いを、

農民は原始・古代以来存在していましたが、十五世紀頃まではその経営は不安定で、安定した家産を継続的に維持することは難しく、したがって家も広範には成立しえなかったのです。江戸時代は、百姓が一般的に家を形成したという点で、日本史上画期的な時代だったといえます。
と表現しているよ。そう、家という観点から百姓と農民は違うんだよね。

そして、実際の人々の暮らし。衣食住や娯楽、病気、介護や所属する村や村民との付き合いなど、資料をベースに詳しく説明しているよ。これを見ると、その手段は違えども、今の我々の生活とそれほど変わりがないような…。

最後は百姓一揆について。江戸時代の後期になると訴状の用例集のようなものが流布し、それを元に一揆の訴状が作られるようになったとか。こういうものが読めたり書けたりするようになったのも、寺子屋による教育の成果なんだろうね。

百姓を侮るなかれと思うし、学ぶべき点が多くあるということを知ることも、歴史を学ぶ意味があるんだろうね。

百姓たちの江戸時代 (ちくまプリマー新書)
百姓たちの江戸時代 (ちくまプリマー新書)渡辺 尚志

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