白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

CRM 顧客はそこにいる

CRM―顧客はそこにいる (Best solution)

CRM―顧客はそこにいる (Best solution)

なぜ今頃「CRM」なのか。それもあの「アクセンチュア」の本の紹介である。アクセンチュア株式会社。全世界に75000人のスタッフを擁する世界的コンサルティング企業。大企業にとっても、雲の上の存在だ。少なくとも世間はそう見ている。そこにいるエリート達は、超ノマドか、その予備軍だ。私たちは彼らの哲学、戦略、戦術をどう咀嚼し、判断すれば良いのか。この本は、教科書として学ぶような類の本ではない。あくまで参考書として用いるべきだと私は思う。本書は、「CRMにおいては、企業自らが、戦略を練り上げ、知識、知恵、知力をフル回転させて、その下部に位置する、業務プロセス層、ソリューションテクノロジー層を確立してゆくことが重要だ」という一連の流れを重視する。そして、顧客中心主義こそが経営の根幹だと説明する。
確かに、洗練されたモデルを鮮やかに提示されると、普通の人は成程とうなるのだろう。しかし、天の邪鬼な私は、常に批判的に読む。以下、私の感想を列挙しよう。
 1.顧客志向は重要だが、それは経営の要素であって全体でも本質でもない。
 2.本格的なCRM構築には莫大な費用がかかる。
 3.本格的なCRM構築には優秀な経営層の強いリーダーシップが不可欠だ。
 4.現実として、CRMで成功した企業の割合は少ないのではないか。(推定)
 5.CRM戦略の根幹をアウトソーシングしてはいけない。社内のドリーム・チームが行うべきだ。
 6.現代において、成功する経営者とは、周りからどう見えようとも、個性の強いタフな変人である。(もはや調整型の優等生、人格者では過酷な競争に勝てないだろう。)
 7.本書に記されたCRMの哲学の先を行かなければいけない。
 8.過去の顧客よりも、未来の顧客を見る力が必要だ。
ある人は、10人の会社、100人の会社、1000人の会社、1万人の会社、10万人の会社では、経営のスタイルは必然的に異なるし、また企業の発展に応じて企業の制度も文化も変化しなければいけないと言った。確かに、成長という土壌の中でどの企業も成長が見込める時代であれば、横並び的経営でも成長、発展が可能だった。しかし、現在の企業環境はそうではない。常に新しい顧客、新しい市場を開拓し続けなければならない状況なのだ。
そのために必要なのは、強いリーダーシップを持ったタフな変人だ。そして、それを推進する参謀であり部下であり制度である。つまり、新しいタイプのリーダーシップが求められているのである。
それは、極めて創業者的なリーダーシップだと言えるだろう。言葉は悪いが独裁的だろうし、もちろん現場の隅々にまで精通していなければならない。
CRMを技術的側面でのみ採用するならば間違いなく失敗するということを本書は教えてくれる。大事なのは、その哲学であり、新しいビジネスモデルであり、市場の開拓であり、イノベーション(技術的・社会的)だ。
繰り返しになるが、CRMの技法は経営の要素に過ぎない。そして、これからの成功する会社(勝ち組)は、間違いなく経営者が強烈なリーダーシップを発揮する会社だけになるだろう。ただし、勝ち組の会社の社員が勝ち組かどうかは別問題なのだが・・・。(笑)