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2007-05-03

[][] 山田花子自殺直前日記』/石川元『隠蔽された障害』

自殺直前日記 完全版 (QJブックス)

自殺直前日記 完全版 (QJブックス)

隠蔽された障害―マンガ家・山田花子と非言語性LD

隠蔽された障害―マンガ家・山田花子と非言語性LD

[あとで書く]と書いてupしたまま放置してますが、、、upした時点で自殺直前日記の方が半分読みかけで、読んでから書こうと思ってたら読めば読むほど気分悪くなって結局連休一杯かかって読了する有様。ついでに『隠蔽された障害』で断片的に紹介されている山田花子の作品をちゃんと読みたいとも思い注文中。明日届く予定。

というわけで5月8日夜にこれを書いています。とりあえず上の二つの本について簡単に紹介とか感想とか。

山田花子というのは吉本の芸人ではもちろんなくて、80年代から90年代始めにかけて活動していた漫画家の方の山田花子です。92年2月に統合失調症で入院、退院翌日の5月24日に飛び降り自殺。

僕が山田花子を知ったのはヤンマガ連載の「神の悪フザケ」が最初。独特の汚い絵柄で学校のイジメのような話を淡々と描く変な漫画で、強烈に印象に残りました。その後ヤンマガに彼女のコラムの連載があって、内容はよく憶えてないのですが、確かタイトルだかサブタイトルだかキャッチフレーズだかが確か「もっともっと滅ぼ」というもので、これがまた印象に残っていたのでした。僕の持っているドメイン horobi.com の元ネタはこれです。

自殺したという話を聞いたときは軽くショックは受けたものの、まあ、いかにもありそうなことだと思って割とスルーしてたのですが、4年ほど前に気になりだしてネットを調べていて見つけたのが『隠蔽された障害』です。当時既に絶版だったらしく福岡の紀伊国屋に1冊だけ流通在庫があって通販で購入しました。当時興味深く読んだものの、引用されている『自殺直前日記』の方が未読だったので併せて読んでから色々考えようと思いつつ放置してて、今更になって再読した次第。

著者の石川氏は精神科医で、患者の描く絵画の分析を手がけていたため、山田花子が自殺した当時、マスコミからコメントを求められたのが縁で彼女の両親と出会い、インタビューや資料提供を受けながら生前の山田花子の病状を推理していった結果、統合失調症以前に非言語性LD(Learning Disability = 学習障害)であったのではないかと結論付けています。非言語性LDというのは病名ではなく特定の症状を指す言葉で、アスペルガー症候群などで見られるものだそうです。

と、もっと色々紹介しようかと思ってたのですが、はてなの言及日記を漁ってたらいくつか出てきました。

Andy さんによるレビューと参考資料のまとめ。確かに妹の回想によるスクリーニングテストはテストの意図がわかっていると意図に沿うような記憶が偏って想起されそうで微妙ですね。

マンガ評論家の伊藤剛さんによる批判的なレビュー。僕が最初に『隠蔽された障害』を読んでから数ヶ月後に書かれてたのに今更気付きました。。。ていうか、遺族の抗議で絶版になってたのか! 読んだ限りではご両親も妹もほぼ全面協力といった印象だったのでびっくり。あとがきがご両親への手紙の形式になっていたし。カルテや学校の通知票の引用は当然ご遺族の許可を得たものとばかり思っていましたが。。。

伊藤さんは石川氏のマンガ表現の分析手法に異議を唱えていますが、半分賛成半分疑問。石川氏が「マンガという表現を知らない」という批判はもっともです。他の漫画家のマンガを対照群にとって比較しないとパースの狂いなどの特徴が技法なのか異常なのかはっきりした事は言えないはずですが、その可能性に気付かないのか手抜きなのか、そういうことはやっていないようです。

とはいえ山田花子の絵に見られるようなパースの狂い方がマンガ表現に一般的かというと疑問だし、意図的にやっている技法なのかどうかも疑問です。*1 意図的な「省略」か注意力の欠如による「欠落」かについては、「忘れもの」について省略する理由があるようには思えないし、コマ割りはしっかりしているという指摘は興味深いのですが、石川氏が指摘するパースの狂いや末端開放などの特徴は空間把握能力の問題と思われるのでコマ割りのスキルとは別の話な気がします。

「ヤマもオチもない」については、「忘れもの」にヤマもオチもあるというのは同意しますが*2、非言語性LDとの関連で言えば山田花子自身がヤマやオチを付けることに意味を見いだせないと語っている点が重要なのだと思います。

基本的に読者の立場から見て自分の伝えたいことが伝わりやすくなるように描くという姿勢がない、指摘されても理解できていないようだ、というあたりが、他者の立場に立って他者の気持ちを想像できないというアスペルガー症候群などで見られる特徴に一致するというのが石川氏の主張だと思います。

もっとも『自殺直前日記』の山田花子は他人から自分がどう見えるかを常に意識し想像しているので、上の見立てと矛盾している気もします。もっともその想像というのが他者の立場に立っているというよりは、ほぼ被害妄想といっていい内容なのが普通じゃないのですが、アスペルガーの人というと、ニキ・リンコさんなんかは「他人は情報端末」みたいな感覚(RPGのNPCみたいなイメージか?)だそうで、被害妄想というのとは違いますし。なんだかよくわかりません。

こちらは山田花子を知らないカウンセラーの方による割と好意的なレビュー。絶版になった理由は上述の通りで、再版は期待できませんし、プライバシーの問題が絡むので論文等から具体的に参照するのも憚られそうです。。。



結局『自殺直前日記』の感想は書けなかった。それはまた後日ということで。

追記

さいころじすと日記には関連する石川元氏の論文等がまとめてあって参考になります。

*1:パースの狂い方に一貫性がないので、素人目には「ちゃんとパースを付けようとして失敗している」風に見えるのですが。

*2:ただしオチが弱いというか多義的になってしまっているような。ハッピーエンド(?)にも見えるのは僕だけ? でも彼女の日記の傾向を見る限り、主人公が隣の子の無神経で矛盾した行動に傷ついているように描いたつもりなのだと思われる。