罔殆庵

染井吉野ナンシーの官能世界

伝説の日中文化サロン上海・内山書店


『伝説の日中文化サロン上海・内山書店』読了。

内山書店と言えば、まずあたしの世代では神田神保町すずらん通りにある中国書籍専門店です。あたしが学生時代は現在の建物ではなく、二階の売り場で本を見ているとおばあちゃんがお茶を出してくれました。はす向かいの東方書店は思想、歴史関係が充実していて、内山書店は文学が充実している、という印象がありました。

さて本書は、その内山書店の前身、上海の日本租界にあった内山書店の歴史、そしてそこに集った日中の文化人の交流・友情の模様を描いています。その中心にいたのが店主・内山完造、そしてその夫人。彼らは商売人であるにもかかわらず、いずれ自分たちに返ってくるという信念のもと、全く商売にならないようなやり方で本屋を営みます。

それは、日本人も中国人も区別しない、右よりの人間も左よりの人間も区別しない、ただ困っている人がいればできる限りの援助の手を差し伸べる、という態度です。そして、その行為がしっかりと中国人の心にも届いてたという事実は、昨今の日中関係を見たときに非常に示唆的です。