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この世界は私の生きていたい世界ではない

2017-01-20

2016年の演劇ベストテン

2016年の演劇ベストテン
観劇本数:74本

1位:ホリプロ『娼年』(原作:石田衣良『娼年』『逝年』、脚本・演出三浦大輔
2位:On7『ま◯この話〜あるいはヴァギナ・モノローグス〜』
3位:パルテノン多摩×FUKAIPRODUCE 羽衣『愛いっぱいの愛を』
4位:Q『毛美子不毛話』
5位:シベリア少女鉄道『君がくれたラブストーリー』
6位:『猟銃』
7位:劇団態変『ルンタ』
8位:彩の国シェイクスピア・シリーズ第32弾『尺には尺を』
9位:モダンスイマーズ『嗚呼いま、だから愛。』
10位:ハイバイ『夫婦』

【総評】
1位の『娼年』は、石田衣良の『娼年』『逝年』を原作に、三浦大輔が脚本を書いて演出した作品。「娼夫」である主人公が様々な女性とセックスをして彼女たちの内面に迫ってゆくという話だ。「舞台で性を表現する」ことをとことん突き詰めており、主演の松坂桃李はじめ女優も皆脱いで、身体を張ってギリギリのところまでセックスを表現。ホリプロ主催の大きな規模の公演なのに、ここまでやるのかと驚いた。
2位のOn7『ま◯この話〜あるいはヴァギナ・モノローグス〜』は、1996年のアメリカ戯曲を大胆かつスタイリッシュにアレンジし、On7の女優7人の生の声も入れ、女性器というテーマを様々な角度から描いたパワフルな作品。女性器にまつわるセリフを、ときには自らの経験も交えてあけすけに語る女優たち。ユーモラスなエピソードもあればシリアスなものもあり、観ていると笑ったり唸ったり切なくなったりと忙しい。この作品を上演したOn7の勇気に拍手。
3位のFUKAIPRODUCE 羽衣『愛いっぱいの愛を』は、パルテノン多摩フェスティバルの演目のひとつ。水上ステージでの公演で、様々な男女の物語を羽衣の名曲に乗せて描いた作品だ。高校生の男女の初々しさ、不倫カップルの性愛、そして別れてしまった男女の切なさ……。青空に囲まれた水上ステージは、日が落ちると暗い森のなかにいるような幻想的な雰囲気に。池のなかにざぶざぶ入り、水しぶきを上げてずぶ濡れになりながら熱唱する役者たちの姿は人間賛歌に溢れている。野外公演ならではのダイナミックさに圧倒された。
4位のQは、以前から注目している劇団。作・演出市原佐都子は、これまで一貫して「女性の性」を描いてきた。本作もまた「女性」という性の面倒くささ、醜さ、滑稽さを真正面から、これでもかといわんばかりに描いている。動物的な描写、荒唐無稽なエピソード、そして役者2人の怪演。思わず見入ってしまう。登場人物の吐くセリフが面白い。女性のモノローグ、性にまつわる下世話なセリフ。一方で、なんでも量産され消費され続けている現代社会に対する問題意識も。
5位のシベリア少女鉄道は、毎回いろんなネタをやって笑わせてくれるが、本作は特にはまった。はまったときのシベ少は最強。話が進むにしたがいネタがわかってきて、客席は爆笑の渦に。本作では登場人物たちが持つカードに特別な意味がある。1枚のカードを出すことで、展開が180度変わる。毎回感じるが、土屋さんの「言葉」のセンスがすごい。やってる内容は笑えるくらいくだらないのに、パズルのように緻密に組まれている。くだらないことに全力で取り組み、一生懸命作り込んでやっているのがシベ少の最大の魅力だ。
6位の『猟銃』では、井上靖の小説『猟銃』に出てくる3人の女――男の妻、愛人、そして愛人の娘の3役を中谷美紀が演じた。中谷美紀がただただすごい。メガネをかけたおさげの20歳の若い娘を演じた次の瞬間、鮮やかな赤いワンピースを身にまとった妖艶な女になる。最後は着物を着付けながら、死を間近にした女の業を見せる。どの女も心の内に「蛇」を飼っている。
7位の劇団態変の舞台を観たのは初めてだった。演出・出演などすべて身体障害者で構成されている劇団。身体障害者たちがレオタード一枚で舞台に上がり、パフォーマンスする。セリフはない。皆、ごろごろと床を転がる。立てる人は立って歩いたり跳ねたりも。転がる、といっても、人によって動きは全然違う。その動きは演出されたものだけど、その人自身から出てくる動きでもある。その人のその身体でしかできない動き、ほかの誰も真似なんかできない動き。この世で唯一の動き、身体。その一つ一つが彼ら個人の表現なのだ。圧倒的だ。
8位の彩の国シェイクスピア・シリーズ第32弾『尺には尺を』は、蜷川幸雄追悼公演。舞台裏を見せているかのようなオープニング、通路を多用して客席との一体感を持たせる演出は、蜷川幸雄のそれを踏襲している。後半ですべてが回収されていく戯曲が爽快。役者陣もテンポよく生き生きと演じていて、引き込まれた。ダブルコールで幕が再度上がると、なんとそこに故・蜷川幸雄の巨大な遺影のパネルが天井から下りてきた。観客はスタオベで熱い拍手を送り、泣いている人もちらほら。蜷川幸雄への愛と尊敬に溢れた、素晴らしい追悼公演だった。
9位 蓬莱竜太の作品は一定のクオリティを保っている。本作は最近社会問題ともなっている、夫婦のセックスレスをテーマにしたもの。セックスレスで悩む女性が、美人の姉や、妊娠した友人などの周囲の女性と自分の境遇を比べ、どんどん自己卑下していく。女性の自意識だけでなく、男性の心理も巧みに描いている。男女の分かり合えなさ、それでも一緒にいるということの意味とは……などいろいろ考えさせられた。
10位のハイバイ『夫婦』は、岩井さんご自身の家族の話で、『て』の続編のような位置づけ。暴力的父親の死を通して、夫婦や家族の関係を描く。「死」がテーマとなっているだけに、重い作風。もちろんハイバイならではの笑えるシーンも多いのだが、そう簡単に笑っちゃいけないんじゃないかと思わせる。舞台上に置かれた複数の机を、家の食卓や病院のベッド、研究所の椅子などに見立て、一人の役者が複数の役を演じてスピーディーにシーンが進んでいく。見せ方が巧み。

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