門井慶喜:人形の部屋

人形の部屋 (ミステリ・フロンティア)

人形の部屋 (ミステリ・フロンティア)

旅行代理店に勤務していた主人公は、妻の仕事上の成功によって主夫となることを決意、娘のつばめちゃんと妻を支える日々に精を出す。そんな彼のもとに、元の上司や通りすがりのおじさん、隣に引っ越してきた夫妻などが次々と謎をもちこみ、それらを常軌を逸したペダントリでもって解決するはなし。


主人公はいたって平凡な人間であったとのことですが、旅行代理店に勤めるうちに膨大な知識を蓄え、主夫となったいまではまるで豆知識大学の先生のような講釈を日々垂れ流すという、娘にとってはとても耐え難い存在として本書では描かれます。これはきついなあ。僕が娘だったら家出しちゃうなあと思いながら読んでいたら、まさに娘が家出してしまうエピソードが最終話。相変わらずの門井氏の物語を紡ぎ出す技の妙に、またしてもしてやられた気分になりました。つまり、あいかわらずとても面白い。

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