アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

当サイトは、法律ヲタ&アニヲタな元法学部生の日常を描くblogです。
QB被害者対策弁護団として、「アニメキャラが行列を作る法律相談所」を総合科学出版様から刊行させていただきました
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2010-03-03 咲〜saki〜の雀荘実践教習の適法性

[][][]咲〜saki〜の雀荘実践教習の適法性 11:23 咲〜saki〜の雀荘実践教習の適法性を含むブックマーク 咲〜saki〜の雀荘実践教習の適法性のブックマークコメント

*本エントリには、咲〜saki〜のネタバレ(アニメ第4話、漫画第1巻)が含まれておりますので、「DVD全巻出たし、アニメを1話から見るぞ!」というような方にはおすすめいたしません。

咲-Saki- 9 [DVD]

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1.咲〜saki〜とは

 21世紀…世界の麻雀競技人口は一億人の大台を突破。我が国でも大規模な全国大会が毎年開催され、プロに直結する成績を残すべく高校麻雀部員達が覇を競っていた。

 咲〜saki〜とは、麻雀で全国を目指し切磋琢磨する少女(高校生)達の、青春物語である。


 周知の通り、2010年3月3日は、咲のアニメ版DVD9巻(最終巻)の発売日となっている。


2.雀荘実践教習とは

 ところで、原作版とアニメ版の両方を比較すると、いくつかの違いが出てくる。

その主なものとしては、

1.アニメ版では個人戦をやってる!

2.原作では地区予選前の合宿がほとんど描かれていないが、アニメ版では描かれている

3.アニメ版では和のわがままおっぱいが原作版より*1大きい

 といったものであろう。

 しかし、忘れてはならないのは、「原作で法律的にどうよと言われていた部分をアニメ版では修正した」というところである。例えば、咲が家族麻雀でお年玉を巻き上げられたエピソードが、「お菓子」を巻き上げられたエピソードに変わっている。ただ、なんといっても重要なのは麻雀店実践教習のエピソードである。


 麻雀店実践教習とは、原作であれば第3局「雀荘」、アニメ版であれば第4話のエピソードである。

地区大会突破を目標とした竹井久は、実戦経験が不足している宮永咲と原村和に経験を積ませようと、染井まこの家が経営する店の手伝いをさせることにした。

 久が「自分は18未満だから...」と言って行くことを拒んだことから、「何があるのか?」と怪しみながら二人が染井まこの家へ行くと、そこはメイド喫茶with雀卓(アニメ)又は雀荘(漫画)Roof-Topだった(なお、ノーレート)。

 そこで、お客さん相手に打った咲と和。最初は調子がよかったが、そこにやって来た怪しい女性(カツ丼さん)と打ち始めると....。

といったエピソードである。


原作を読むと当然に生じる、18歳未満の咲と和が雀荘で客を相手にしてよいのかという問題意識に答え、アニメ版ではメイド喫茶へと変わっているところがポイントである。


ところで、ここでまだ問題が残っている。それは、アニメ版で違法ではなくなったかである。以下では、まず、漫画版の適否を考察し、それからアニメ版について検討する。


3.そもそも原作は違法なのか?

 まず、原作のように一般的な雀荘で、和と咲が打った場合、これは違法か?

 ここで、雀荘は*2、風営法上の許可が必要である。

第二条  この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。

(中略)

七  まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業

第三条  風俗営業を営もうとする者は、風俗営業の種別(前条第一項各号に規定する風俗営業の種別をいう。以下同じ。)に応じて、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。


このように、*3風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)2条1項7号は、雀荘営業に、許可を要求する。これは、雀荘で客同士の賭け事が「行われがち」なので風営法により未成年等の接客等を規制することが必要といわれる。このような、風営法の規制を受ける店を「風俗営業者」と言う。まこの家も風俗営業者である。

ここで、風俗営業者に対する規制に「営業所で十八歳未満の客に客の接待をさせ、または客の相手となってダンスをさせること」の禁止が挙げられる(風営法22条3号、50条1項4号により1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。すなわち、雀荘で、年齢が18歳未満の人に客を接待させると違法なのである*4

「接待」という言葉については、2条3項が「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう。 」とされているところ、同条に関する警視庁の解釈基準によれば「客と共に遊戯、ゲーム、協議を行う行為は接待に当たる」と明記されている。

麻雀というゲームを客*5とやっている以上、営業所で十八歳未満の客に客の接待をさせたものとして、マコの親は風営法違反である


4.アニメ版の修正で違法ではなくなったのか?

 このような、原作版の問題に鑑み、アニメ版は内容を修正している。具体的には、マコの実家を雀荘ではなく、メイド喫茶にしている。この場合には、「営業」はあくまでもメイド喫茶であり、そこに雀卓が「あるだけ」として、風営法の適用を回避できるか。

 ここで、営業の該当性は、重要な問題であることから、いろいろな議論がされている。以下、風営法に関する唯一の*6コンメンタール(逐条解説書)である蔭山信「注解風営法」(2008年)東京法令の説明する基準をもとに検討しよう。

 まず、ある営業が風営法上の「まあじやん屋」に該当するかは、麻雀に関する営業がその主たる営業(メインの営業)である必要はない。また、麻雀競技によって得られる利益を目的とする場合*7には、当然に「まあじゃん屋」となるが、それだけではなく、麻雀と事実上密接な関連をもって得られる利益を目的とする限り、「まあじやん屋」に該当するとされる*8


 具体例としては、例えば、四校合同合宿の場とされた旅館をイメージしてみよう。あそこでは、雀卓を客室で貸していた*9。ところで、その雀卓貸出料が僅少*10な金額であり、かつ、それが旅館業と別個の営業ではなく、単なる旅館業に通常随伴するサーヴィスの一環であれば、風俗営業の許可は不要である*11

 これに対し、喫茶店等の他の営業をしている業者が、一定額以上の飲食物を注文した客のみに麻雀をさせていれば、これは麻雀と事実上密接関連する利益を目的とする営業として、風俗営業になる。

 また、喫茶店等の他の営業をしている業者が、*12すべての利用者に無料ないし僅少の対価で麻雀をさせている場合には、かかる麻雀ができるサービスと、当該他の営業(例えば喫茶店)の関連を検討し、例えば、当該喫茶店の料金に麻雀に係る遊技料金が含まれる等、麻雀との関連が深く、麻雀と事実上密接な関連をもって得られる利益を得ていると判断されれば、これは風俗営業となる。


 本件では、和がオムライスに「麻」「雀」と絵を描いて客に出しており、喫茶店業と麻雀の関連の深さを推認させる。また、客同士で打つだけではなく、客と一緒に従業員に準じる和・咲が一緒に打っている点も重要であろう。そして、雀卓目当てでやってきたカツ丼さん等が食べるカツ丼は相当の利益をRoof Topにもたらしているはずであり、雀卓が、単なる付随的な業務というよりも、有力な集客・接客の手段として、喫茶店業に大きな貢献を与えると言えよう。

 これらの点を総合すれば、*13マコの家は、麻雀と事実上密接な関連をもって得られる利益を目的としているといえ、依然として「風俗営業」を営んでいると解される。

この場合、マコの親は、「喫茶店だ」と強弁していることから、風営法の許可を取得していないようである*14。すると、単なる未成年の接客だけではなく、無許可営業として、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処される。つまり、単なる未成年接客だけの原作よりもよっぽど違法性が強い(もちろん罰則も重い)ことになってしまっているのである。

まとめ

アニメ版は、なんとか原作を適法にしようと、いろいろな改変を行っているが、弁護士のリーガルチェックを経ていないようであり、原作よりもよっぽど違法なことをやっていることになってしまっている

これをなんとか適法と解釈するには、競技麻雀人口が一億を超えるようになった咲の時代*15の世界は、麻雀は、囲碁将棋と同様に、麻雀風俗営業から外されるよう法改正がなされたと考えるしかないだろう。

風営法改正のため、賭博ではない、純粋な「楽しみのための麻雀」の裾野が広がり、法律が早期に改正ることを祈念する次第である。

関連記事(?):日経コラムに異議あり! 咲 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

*1:やや

*2:ノーレートでも

*3:なぜ平仮名なのかは不明であるが、

*4:罰せられるのはマコの親

*5:カツ丼さんはともかく、見知らぬおじさん2人との関係では「客じゃない」という抗弁は通じないでしょう

*6:新刊で入手可能な

*7:例えば、雀卓利用料として、利益が得られるような対価を徴収する場合

*8:「注解風営法」140頁

*9:プールにまで雀卓を持ち込んだ久のことであるから、一部は持ち込みがあったかもしれないが、あの数であるから、少なくとも旅館から借りたものが一部あるものと想像される

*10:安い

*11:ここでは、社会一般に、旅館が安い料金で雀卓を貸していることが、特段風俗を乱したり、射幸心を煽らないでうまくいっているという社会情勢が裏にあるものと思われる。

*12:注解風営法ではサウナを例示

*13:一定額以上の飲食物を注文した客のみに麻雀をさせたり、高額な対価を取っている場合はもちろん、例え無料や僅少な料金で麻雀をさせている場合であっても

*14:祖父の代で取った風俗営業を廃業したものと思われる

*15:といっても、現在から2100年までのどこか

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