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2011-02-05 涼宮ハルヒの敗訴! 「驚愕」不出版による責任追及の可否!?

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注意:本エントリには、涼宮ハルヒシリーズ(分裂まで)のネタバレが入っております。未読の方は先に読まれることを強くお勧めいたします。

1.涼宮ハルヒの驚愕が発売される!?

 全てのハルヒファンが、待ち望んだ日がもうすぐ(5月25日)来る。涼宮ハルヒの驚愕が発売される

 読者の皆様はよくよくご存知と思われるが、要するに、

 

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)

ハルヒシリーズ既刊最終巻である「涼宮ハルヒの分裂」が、


朝比奈さんの腕をつかんだハルヒが飛んで出てきた。開口一番、

 「さ、行くわよ! 有希ん家まで、一直線にね!」 

ほとんど怒りにも近い感情的な表情で叫び、先頭に立って走り出す。

 無論――。 

その団長命令を拒否する団員は、どこにもいなかった。

           ―― 『涼宮ハルヒの驚愕』につづく 

谷川流涼宮ハルヒの分裂」295頁


で終わる、いわば「上下巻もの」ないし「前編後編もの」だった。

2007年4月の「分裂」発売時点では、「驚愕」発売日を「6月1日」とするカウントダウン看板が各書店*1に掲示されていたので、後編とされる「涼宮ハルヒの驚愕」は、すぐ手に入るものと期待していた*2

ところが、その後度重なる延期があり、はや3年以上の月日が経った。

幸いにも、先月、初回限定版が予約可能になり、やっと手に入るだろうという安堵感と、発売が5月25日とまだ先であることから、エンドレススプリング*3の再現になるのではという不安感が相半ばしているのではないだろうか。


 さて、単なる一ファンであれば、こういう場合には、やきもきしたり、予習*4をするというのが通常の対応だが、法律実務家(の卵)としては、常に最悪の事態と、その場合の法的効果を考える必要がある*5


問題の所在

前後編である「涼宮ハルヒの分裂」のみが出版され、「涼宮ハルヒの驚愕」が出版されない場合の法律関係はどうなるか?

それは、シリーズ物なのに、途中で作者がゲームにはまって続刊が刊行されない場合と同じ扱いなのか、違う扱いなのか?


2.「驚愕」の不出版につき、谷川先生や出版社に責任を追及できるか

 ここで、法的な争い方としては、契約責任と不法行為責任の2つが考えられる。詳細を語り出すと長くなるのでかいつまめば、赤の他人にも追及できるのが不法行為責任、売り主等何らかの契約を結んでいる相手だけに追及できるのが契約責任である。

 取り敢えず谷川流先生を訴えたいとか、出版社K*6に対して訴えたいというのであれば、「不法行為」である。


民法第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


 要するに、故意(わざと)か過失(ミス)によって、他人の権利を侵害し、損害を与えたら、賠償せよということである。

 例えば、車が人を轢いた交通事故であれば、被害者は怪我等をして「権利」が侵害されている。そして、轢いてしまった理由がよそ見*7等のミス(「過失」)であれば、過失により権利を侵害したとして、治療費等の損害を賠償しないといけないというものである。

 不法行為のメリットは、何にも契約関係のない赤の他人*8にも、責任を追及できるところである。読者にとっては、谷川先生や出版社Kとの間では契約が成立していないので、訴えたければ不法行為になる。

 しかし、著者が書かないのが出版社への債務不履行*9となっても、それが契約関係もない一般の第三者への不法行為になることはなかなか考え難い。要するに「約束を破ったことは、約束をした人との間で責められても、無関係の第三者に*10責められる筋合いではない」ということである。裁判所も、基本的にこのような考えを取っている*11

 第三者である読者が「大々的に出版を告知しておいて出版をしない(執筆しない)ことで4年間夜も眠れない日々を過ごして来た。精神的ダメージにつき賠償せよ(慰謝料を払え)」等といっても、「第三者に対する関係では不法行為とは言えない」等として棄却されるのが落ちであろう。 


2.書店に対する契約責任を追及〜「分裂」に不履行はない!?

 不法行為 が難しいとすると、契約責任を追及することになる。読者と契約関係にあるのは、書店である。つまり、本を売る、買うというのは「売買契約*12」というれっきとした「契約」であり、買主たる読者は、売主たる書店に*13契約責任を追及できる

 今回考えられるのは「驚愕」が出版されないことが、書店の「債務不履行」として、債務不履行による損害賠償等を請求することであろう。つまり、書店が債務を履行しない、有り体に言えば「約束を破った」と言えれば、損害賠償等を請求できる。

 もっとも、ここで本件の特徴は、「契約があるのはあくまでも涼宮ハルヒの分裂の売買契約に過ぎない」ということである*14。「驚愕」については未発売であり、売買契約そのものは成立していない。


 問題意識を整理すると

赤の他人についても成立する不法行為責任は難しい 

   ↓

契約関係にある人だけについて成立する債務不履行責任を考える

   ↓

書店とは「涼宮ハルヒの分裂」の「売買契約」はあるが、「涼宮ハルヒの驚愕」の売買契約はない

   ↓

涼宮ハルヒの驚愕」の不出版については、書店も「赤の他人」なのではないか!?

涼宮ハルヒの分裂」という本自体*15はつつがなく(代金と引き換えに)引き渡しを受けており*16、この点に鑑みれば「涼宮ハルヒの分裂」の売買契約上の義務を書店は果たしているようである。そして、「涼宮ハルヒの驚愕」については単なる赤の他人間で不法行為しか追及できないとなれば、読者は一切法的責任を問うことができず、単に事実上不満を述べるだけ*17ということにもなりかねない。

それでいいのか!?


3.判例を探せ!

もちろん良いはずがない !このままでは、読者は「泣き寝入り」である。また、これは、作者が続編を書かずにゲームに興じること*18を助長し、日本文化におけるコンテンツの充実という社会的要請にも逆行する結論である。

ここで、法律家*19は、判例を探す。裁判所が類似の事件でどういう解決を与えているかを探れば、ヒントは見えてくるはずである。

 ところが、後編が出なくて読者と裁判になっている事例は*20ない

そういう「かなり近い」事案がなければ、「利害関係」や「問題となる局面」できるだけ似ている判例を探し、その「判例法理」つまり、その事件以外にも適用し得る裁判所の考え方を探るべきである。

 

 あった !

最高裁判決平成8年11月12日である。事案は本の売買ではなく、スポーツクラブ付きリゾートマンションの売買が問題となっている。

事案

Xが「スポーツクラブ付きリゾートマンション」をYから購入した。Xは、スポーツクラブ会員契約と、マンション購入契約を締結した。マンションは無事引き渡され、耐震偽装等の問題もない。ただ、スポーツクラブが予定通りできず、売り物の屋内プール等が作られなかった。

この事案で、「スポーツクラブ会員契約」を解除できるのは問題ないだろう*21。問題は、それ自体はきちんとできているマンション購入契約の解除の可否である。

売り主のYはこう主張する*22


スポーツクラブ会員契約とマンション購入契約は全く別の二つの契約である。

マンションは、約束通りの広さの、耐震工事もきちんとしたものを引き渡している。

スポーツクラブがないマンションなんて世の中のマンションのほとんど全てではないか。スポーツクラブがないからマンションとして成り立たないなんてことはない。

スポーツクラブ会員契約をマンションと同時に勧誘したことは事実だが、それは、Xがマンション購入契約をしようと思ったきっかけに過ぎず、Xは、このマンション自体の良さに惹かれて購入したものである。

少なくともマンション購入契約は解除できないはずである。

しかし、最高裁はこう判断した。

マンション購入契約と、スポーツクラブ会員契約は、別個の契約ではあるが、契約の目的が相互に密接関連しており、社会通念上、いずれかの契約が履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成できないと認められる場合であれば、一つの契約(スポーツクラブ会員契約)の不履行を理由に、マンション購入契約を含む複数契約全体を解除できる

このように、複数の契約が相互密接に関連して一方の履行だけでは全体について契約をした意味がなくなる場合には、全体がきちんと履行されない限り、*23全体について債務不履行として解除できるのが、判例法理である。

この判例法理は、布団を買ってモニターになれば布団代以上のモニター料が入ると言われて布団購入契約とモニター契約を結んだ場合*24等で実際に適用されており、単にマンションの事案のみに当てはまるものではない。


4.いかなる場合に「続編」不出版が「従前の本の売買契約」の債務不履行になるか

 すると、本件では、判例法理に照らし、涼宮ハルヒの驚愕」が出版されないことが、「涼宮ハルヒの分裂」の売買契約の債務不履行になるのかが問題となる。もう少し一般化すれば、漫画や小説において、続編が刊行なされない場合はよくある*25が、いかなる場合に「続編」不出版が、続編と一緒でなければそれまでの本を買った(全体について契約した)意味がないとして、「従前の本の売買契約」の債務不履行になるかの問題である*26


 一般に、「一巻を出して人気が出ればシリーズ化」という予定で一巻が刊行される本も多い。特にライトノベル業界はそうだろう。また、雑誌掲載の漫画では「打ち切り」という制度がある。すると、「続編を意識して伏線を張ったが回収できないで終わる」というパターン自体はあり得ることで、それだけで打ち切りまでに出版された本や漫画が全て無意味になるというのは通常は考え難い

 もっとも、読者は、「本」というハード*27を買いたいのではなく、そこに載っている*28「作品」というソフトウェア*29が欲しいのである。すると、物理的には複数の本になっていても、実体が一つの作品*30であれば、その全てが揃わない限り(仮に前編について「本」というハードが完成していても)「作品」を買った意味はない(よって、後編が発売されないのは債務不履行)ということになるのではないか。

 具体的には、ミステリーで、「問題編」と「解決編」の二部構成を取ったとしよう。そして、問題編だけが出版され、解決編が出ない。この場合、通常は*31謎が提起されただけでは作品として成立せず、それに対する一定の回答めいたものが与えられて初めて作品として一まとまりのものと認められるから、「一方の履行だけでは全体について契約をした意味がなくなる」と言ってよいだろう。

 この点、「一まとまりの作品になっていない」のか「伏線が未回収」なだけなのか、境界についてはやや曖昧な領域があるが、作品の内容という客観と、著者の意図という主観を総合して判断すべきだろう

  

5.「分裂」は作品として未成立!

 では、涼宮ハルヒシリーズはどうか?

 まず、「驚愕」不出版は、「涼宮ハルヒの憂鬱」から「涼宮ハルヒの憤慨*32」までの各巻との関係では債務不履行にはならないだろう。つまり、「キョンの本名が明かされていない*33「国木田谷口が噂する、キョンの『中学時代の女』」等の伏線は「分裂」以降で回収するため、「憤慨」までの段階では回収されていないが、その点が明かされなくとも、それぞれの本*34で一つの作品となっているのであって、「分裂」以降の出版がなければ「憤慨」までを買った意味はないとは言えないだろう。

これに対し、「分裂」と「驚愕」の関係は「伏線未回収」というのとは質的に異なるだろう。つまり、冒頭でラストシーンを紹介したとおり、SOS団と同種キャラであるが異なる個体*35の一団が形成され、その中には橘や藤原という朝比奈さんを誘拐しようとしたけしからん奴らもいた。その影響なのか、あの長門有希が「熱を出して寝込む」という異常事態に、SOS団員みんなで有希のマンションに向かうシーンで終わっている。

 客観的に見ても、これまでの巻では、このような「謎」ないし「危機」についての対応と解決*36は巻中で完結していること、及び、作者が巻末で「『涼宮ハルヒの驚愕』につづく」として主観的にも未完成であると認めていることに鑑みれば、「分裂」は主観客観共に作品として未成立であり、「驚愕」が出版されてはじめて「分裂」を買った意味があると言える。

 よって、「驚愕」が出版されない場合には、読者は「分裂」を買った書店に対し、債務不履行を理由に損害賠償を求められる。「分裂」の代金に加え、不出版により他に発生した*37損害があれば、賠償を求められる。

 このような結論は、書店に不測の損害を与える不当なもののようにも思われる。しかし、*38読者は「驚愕は2007年6月1日発売」という書店の看板を信じ、2007年夏、少なくとも2007年度内には「驚愕」が発売されると誤信して購入しており、このような誤信助長に書店も責任があると解さざるを得ないだろう*39

 また、例えば、イタズラなKiss」「ネオ・ファウスト」のような作者死亡等によるやむを得ない中断*40は、債務不履行につき帰責性*41がないとして賠償は否定される*42

 更に、「4年間夜も眠れない日々を過ごして来た。精神的ダメージにつき賠償せよ(慰謝料を払え)」といってみても、そのような精神的ダメージが続編不出版につき通常発生する損害かは疑問があり、因果関係が認められず、債務不履行により発生した損害ではないとされる可能性がある*43。通常書店なら、前編の代金程度を想定しておけばよいのではないか。

 そして、仮に書店が読者に対し責任を負うとしても、書店から出版社、出版社から作者へと責任を追及できる*44。つまり、最終的には作者が責任を負う必要があるから作者が続編を書くことへのインセンティブになるのである*45。 

まとめ

 判例法理によれば、「涼宮ハルヒの分裂」は「涼宮ハルヒの驚愕」と一緒になってはじめてそれを購入する意味があると言え、万が一「驚愕」が発売されなければ、読者は書店に債務不履行責任を追及できる。そう、読者が訴えれば、書店は「敗訴」するのである。

しかし、ファンにとって欲しいのは「勝訴判決*46」ではなく、「涼宮ハルヒの驚愕である。一ファンとして、予定どおり5月25日に「驚愕」が発売されることを心より願う次第である。

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検察は朝比奈さんをこう守る

*1:どこで買ったか思い出せなかったが、アニメイトの透明カバーが掛かっているのでアニメイト池袋本店と推察される。あそこに看板がなかったはずがない。

*2手前味噌で恐縮だが、2007年4月初旬にSOS団よ戦前非合法日本共産党の失敗に学べ! - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常で「『涼宮ハルヒの驚愕』において新団員が誕生する可能性が高いが、共産党の苦い失敗に学び、慎重すぎる程慎重に新団員を選出することが、SOS団の発展には不可欠である。」「 敵は外の僕女ではない。危ないのは『内』なのである。」と書いた頃には、こんな展開は夢にも思っていなかった。

*3:「驚愕」の発売に関してだけ、2007年4月から5月にかけての二ヶ月が永久繰り返されること

*4:「分裂」までの全巻を読み直すこと。なお、人によっては、ハルヒちゃんシリーズを含めたり、アニメ・映画を含めたりするだろうが、これは、「原作原理主義」vs「アニメあってのハルヒシリーズ」等の思想対立とも絡むので、「面白ければどっちでもいいじゃん」の日和見主義者は深入りを避けたい。

*5:これは本当である。最悪の事態になるリスクを説明しておけば、これを踏まえどうするかは経営者の判断であるが、最悪の自体を予測せず、安易に「大丈夫」と言えば専門家責任が発生しかねない。ただ、某○○○のように、リスクを事細かに説明し過ぎて結局何が経営判断上主要なポイントか分かりにくくなっているのは…ゲフンゲフン

*6大人の事情(嘘)

*7:専門用語で「前方不注視」わざわざ難しく言うのが法律のおかしなところである

*8:運転手と被害者の関係は、車の事故までは名前も顔も知らない赤の他人だった訳である

*9:ただし、債務の性質上自由意思を束縛して書かせても目的を達成できない(良いものができない)ため、代替執行、間接強制等ができず、裁判上は「被告谷川流は、原告に対し、涼宮ハルヒの驚愕の原稿を作成し、引き渡せ」等の判決は取れない。せいぜい債務不履行による損害賠償の問題であろう。

*10:法的に

*11:建築の不具合で第三者が被害を被った場合に、単に約束どおり建築していないだけという場合、直接の契約の相手方は瑕疵担保責任や債務不履行責任といった契約責任は追及できるが、第三者が不法行為責任を追及できるものではなく、基本的安全性を欠く建築物である等の加重された要件を満たさなければならないとする最判平成19年7月6日民集第61巻5号1769頁等参照

*12:民法555条

*13:債務不履行等の責任があれば

*14:驚愕を予約すると、涼宮ハルヒの驚愕の予約による契約関係が成立するが、かかる書籍売買の予約の法的性質の分析は長くなる(簡単に言えば、書籍の予約契約は実務上は延期されてもキャンセル可能になるとか、予約金を払っていれば返金されるという程度で拘束力が弱い扱いなのだが、それが「法的」にも拘束力が弱いのか、単に訴訟等が割に合わないというだけなのか検討が必要であろう。)ので、今回は予約していないことを想定して検討する。

*15:ここがポイント

*16:誤植でもない限り

*17http://www.syu-ta.com/blog/2008/06/17/005337.shtml参照

*18:○樫とか、富○とか

*19:の卵

*20:公刊判例を調査した限り

*21:実は、Yは、「スポーツクラブ自体はできている、屋内プールの問題等ちょっと予定通りでないけど、まあ、気にするな」という主張をしていたが、最高裁に排斥された。

*22:分かりやすくするために若干デフォルメあり

*23:例え一部が履行されていても

*24:途中でモニター料が払われなくなり、モニター契約を解除したが、(布団自体は確かに納入されているので)布団購入契約を解除できるかが問題となった広島高判岡山支部平成18年1月31日判例タイムズ1216号163頁

*25:個人的にはややマイナーなものの、イリヤの秋山瑞人先生のミナミノミナミノ

ミナミノミナミノ (電撃文庫)

ミナミノミナミノ (電撃文庫)

が印象的です。

*26:と、説明の便宜上簡潔にまとめたが、実際には、上記判例との差異として、「判例の事案では、契約が両方とも締結済み」という点がある。契約が一方だけ締結されている本事案では、射程外ではという問題がある。個人的には契約が一方しか成立していないことは密接関連性を否定する方向の事情であるものの、密接関連性さえ立証できれば判例法理を適用してよいように思われるがいかがだろうか。

*27:法律家チックに言えば「有体物」

*28:法律家チックに言えば「化体」された

*29:法律家チックに言えば「無体物」

*30:あえて言えば「製本の都合や体裁の関係、ないしは執筆時期等の関係等で便宜上一つの本には乗せていないが、それらの事情がなければ一つの本に載ってしかるべきもの」。「ハルヒシリーズ」等を指す「作品」ではない。

*31:解決しないのがこの作品の斬新なところだ等の場合は除く

*32:短編なので、正確には「陰謀」

*33:なお、分裂でもまだヒントが増えた程度

*34:短編集は短編毎

*35周防等がいるので「個体」。なお、断じて長門有希は「個体」ではない。

*36:「落とし前」

*37:相当因果関係ある

*38:少なくとも発売と同時に買った

*39:看板等誤信助長行為がある本件は比較的判断がし易いが、助長行為がない場合の対応は残された課題であろう。

*40:決して「作者がゲームにはまる」は含みません

*41:要するに天変地異等どうしようもない理由で履行できなくとも違法ではないということ。

*42:本件では、谷川先生は「蜻蛉迷宮」を書いているので、まず責任を回避できないだろう。

*43:個人的には普通の本屋はライトユーザも多いので因果関係は否定されるが、専門店であれば相手が作品をこよなく愛するオタクである以上一定範囲であれば精神的ダメージと因果関係が認められてもいいような気もする。

*44:契約がある者同士で契約責任を追及

*45:後編が書けない可能性があるなら、前編だけの発売は、「作品として未完成なものを見切り発車で販売した」と評されてもやむを得なかろう。後編執筆に不安があれば、少なくとも「1まとまりの作品」として完成した段階で二巻同時発売等して、読者の不測の損害を避けるべきであろう。

*46:結局裁判なのでお金で解決ってなってしまうんですよね…

tbrwstbrws 2011/02/07 22:20 いつもながら大変面白いエントリと思います。

客としては、2007年6月1日ないしそれを起算点とする相当期間内に驚愕が発売されるのでなければ分裂は買わなかったであろうこと、この動機が黙示に表示されていたことを主張して、分裂の売買契約につき95条の無効主張も可能かもしれません。とはいえ、債務不履行なら債務者の帰責性が要件でない点で債権者に有利ですので、やはり債務不履行で構成したほうがよい気もします。(作者死亡等によるやむを得ない中断でも、債務不履行責任を追及するにあたっては、不都合はないでしょう。)

問題はやはり、驚愕の売買契約が未成立であり、分裂の売買契約に基づいて「2007年6月1日ないしそれを起算点とする相当期間内に驚愕を引き渡す」という債務(とその不履行)を書店に認め得るか、という点でしょう。この点は、契締上の過失の応用(例えば、思うに契約締結前でも信義則上の付随義務が発生→ここで書店は驚愕が発売されるという不確実な事象を断定的に述べて勧誘→よって書店に付随義務違反あり)でクリアできるかもしれません。

書店側を弁護させていただきますと、驚愕が2007年6月1日発売予定との宣伝行為は出版社から告げられた期日を嘘偽りなく発表したもので、宣伝行為に過失がないとの主張(帰責性を不要とする構成に対しては反論になり得ませんが)、または、ぼろっちい古本を返されても書店としては売れなくて困るから、著しく損傷として548条1項で解除権消滅との主張が考えられます。

根本的なところ、著者には表現の自由、すなわち表現を「しない」自由もあるはずで、金銭賠償で威嚇することで著者に「作品を書け」という圧力をかけるのが果たして正当なインセンティブといえるか、疑問なしとしません。

ronnorronnor 2011/02/08 00:39 コメントありがとうございます。
まず、「分裂を返す」というだけが目的であれば、錯誤が有利な気がします。結局、分裂と驚愕に「一体性」が認められれることが債務不履行責任追及の要件であるところ、一体性があれば通常は「要素の錯誤」が認められるでしょう。すると、債務者(書店)側が帰責性がないことを立証すれば責任を免れ得る債務不履行より、錯誤が有利と思われます。ただ、アンサイクロペディアにあるような「俺の四年間を返せ!」といった主張は債務不履行でないとできないので、一応債務不履行の問題にしました。
「驚愕」の契約が未成立というのはご指摘のとおりとても難しいところですが、個人的には、契約締結前の過失のような「驚愕」の債務不履行を考えるより、「驚愕の出版を当然に予定していた分裂」の債務不履行とした方がより責任が追及し易いかなぁと思っているのですが、ここは異論もあるところと思われます。
基本的に、書店は「出版社がそう言うのだから」という抗弁(帰責性不存在)を出すのだと思います。ただ、やはり、六月一日発売予定という看板を貼る場合(作為)と、単に本の帯に発売予定日が書いているだけの場合(不作為)では、その注意義務の程度は違うのではないかという問題提起です。

>著者には表現の自由、すなわち表現を「しない」自由もある
このご指摘はもっともで、例えば分裂以降が出ないのは、ファンとしては心苦しいものの、法的には自由でしょう。しかし、「中途半端なものを出して期待をさせている」という先行行為を前提としても、なお、表現の自由が優越するか、ここが、ポイントなのではないでしょうか。まあ、エントリにも書いたとおり、履行強制(無理矢理書かせる)はできない訳で、これで一定程度表現の自由が担保されるという考え方もありそうです。

tbrwstbrws 2011/02/08 18:40 すいません。債務者の帰責性が要件でないなどと馬鹿なことを書いてすみませんでした。履行不能の解除には債務者の帰責性が必要でした。帰責性が不要なのは履行遅滞の解除で少数説に立った場合にすぎないのでした。お詫びして訂正いたします。

ronnorronnor 2011/02/18 00:41 学説があるので考え方としてはアリだと思います。内田民法とかよんでいると、いつのまにか何が判例で何が少数説か分からなくなりますね。

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