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2011-09-15 厚いが熱い道垣内先生の民法入門書

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ゼミナール民法入門

ゼミナール民法入門

*「ゼミナール民法入門」は、@chuben_ben先生にご教示頂きました。ありがとうございます。

1.厚い?熱い! 民法入門

厚い、民法入門書である。なんと約553頁。

代表的な民法入門書である米倉明先生の「プレップ民法」

プレップ民法 (プレップシリーズ) 第4版増補版

プレップ民法 (プレップシリーズ) 第4版増補版

が233頁であるから、その2倍以上である。


 しかし、その内容は熱い


2.豊富な具体例&背景説明

  本書の特徴は「条文・判例・通説をなぜそうなっているのかという観点から平易に説明する」というところである。

「詐欺による意思表示の取消は、取消前の善意の第三者に対抗できない」―これをこのまま覚えようとするならば、高校時代に世界史の年号を覚えたのと同じ苦労を背負い込むことになる。「なぜそうなっているのか」を理解するほうがよほどたやすいし、理由さえ理解しおけば、その場で考えても、結論を出すことができる。

道垣内弘人「ゼミナール民法入門」i頁


こういう問題意識に基づき、ローマ法から解きほぐす部分*1もあれば、利益衡量の背景事情を丁寧に説明する部分*2もあり、説明の方法は、各事項毎にバラバラであるが、それぞれの制度がどういうもので、どうしてそういう規律になっているのかを丁寧に解きほぐしている


 更に、具体例も豊富である。道垣内先生ご自身がロンドンからオーストラリアに引っ越した際の失敗話を話したりする*3

欺罔行為・強迫行為の「不当性」については、

セールス・トークに多少の誇張はつきものである。「この化粧品をお使いになりますと、絶対に10歳は若く見えます」といわれて購入した化粧品を使用して、初対面の人に「ねえ、年を当ててみて」といったら、ズバリ当てられた。こんなときに、常に詐欺罪が成立するのでは、セールスマンとしてはやっていけない。

(中略)

これは脅迫についても同じであり「この本で生き方を勉強しなければ、死後の世界で救われない」といったら「害悪を告げて畏怖させて、その結果として意思表示をさせた」といって強迫に当たるのだとしたら、布教活動は不可能である。

道垣内弘人「ゼミナール民法入門」85頁

 等は、目を引くだろう。


 判例の引用も多い*4が、サラ金規制の背景として、福岡地判昭和57年7月16日判例タイムズ475号72頁を引く。

 原告宅に押しかけ、応対に出た原告に対し、その再三、再四の拒否にも拘わらず、「やかましい。すぐ出てこい」「きさま、こら出てこんのか」などと罵声をはりあげ、さらに、原告に対し、突然とびかかり、原告の着用していた作業着の両襟を両手でつかみ、原告の首をしめあげたまま抵抗する原告の体を約1メートルひきずる等の暴行を加え、原告をいふ困惑せしめたものである。

 (中略)

原告に対し、こもごも「どうするんね。今日のうちにかたをつけてもらわんとね」「あんた払いきらんなら生命保険からとってやってもらえばいい」「妹があるやろ。妹に電話して今日の午後八時までに絶対に連れてこい」「逃げたいなら逃げてみろ。どこまでもおいかけるからな」

(後略)

道垣内弘人「ゼミナール民法入門」162頁

 と、かなり生々しい判決文をもってきている。


 このような、「熱い」筆致で、一応民法の財産法の全範囲について(濃淡はあれど)説明をしている。説明の範囲が広いからこその「厚さ」である。


 初心者はもちろん本書の対象者であるが、一定程度勉強が進んだ人も読む価値があるだろう。入門書だと甘く見ていると、民法177条は不動産に関する「物権得喪及び変更」なのに、民法178条は動産に関する「物権の譲渡」なのはなぜか*5といった難しい問題が出たり、「実際の契約書を民法の規定と照らし合わせみると、『ああ、民法ではこうなっちゃうから、それがいやでこうしたんだな』と契約条項の意味がしみじみわかることも多いのである。*6」等の実務的な記載があり、あなどれない。



3.社会人→未修者にぴったり

 本書の、いい意味でも悪い意味でも特徴的なのは、道垣内先生の「世代」にとってわかりやすい例を使っていることである。おおよそ40歳プラスマイナス5〜10歳といったところか。


 例えば、抵当権について説明する時に出てくるテレビドラマはゆずれない夜」*7であり、「マッハ文朱*8」以来のプロレスブームに鑑み、「ビューティペア」のかけめぐる青春で「双務契約」を説明する*9


 正直なところ、私個人的には「ゆずれない夜」というドラマは知らないし、「かけめぐる青春」も聞いたことがない。むしろ、「双務契約は魔法少女まどか☆マギカで説明する」方がずっととっつきやすい。しかし、これは、「世代」の問題であろう。

 私の1回り上の世代の方で熱くプロレスについて語ってくださった先生も少なくない。そう、道垣内先生の世代の人にとっては、とてもとっつきやすい例が豊富なはずなのである。


 その観点からは、社会人を経験して、未修でロースクールに入られた方*10にとっては、「ゼミナール民法入門」は最高の民法入門書といって差し支えないだろう。

まとめ

道垣内弘人先生の「ゼミナール民法入門」は、ある世代にとって、極めて身近な例を使って、民法の全体像を分り易く説明してくれている。やや厚いが、その分熱いので、分からないところはあんまりこだわらずに読み進めて1冊終われば、民法の基本的な条文・判例・通説、つまり「民法の基礎」が身に付いているはずである。

 おおよそ40歳プラスマイナス5〜10歳の「対象世代」の方は、ぜひ一読していただきたい。そして、対象世代ではなくとも、良い本なので、立ち読みでもしていただき、「熱さ」に共感されたら、ぜひ最後まで読んでいただきたい。

 最後に、@chuben_ben先生に、良い本をご紹介いただいたことへの感謝の意を表したい。

*1:例えば地上権に関する431頁の「ローマの香り」

*2:例えば、債権譲渡の規律を考えるためのポイントとして、それぞれの立場から5点の利益衡量点を説明する338頁

*3:74頁

*4:ちょっと引用が長すぎる感がある。もう少し引用部分を絞ってはどうかと思うところはある

*5:409頁

*6:137頁

*7:378頁

*8:ご丁寧にフリガナも振られている

*9:121頁

*10:最近急激に減少していますが…。

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