アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2013-05-10 憲法ガール出版記念特別版〜平成24司法試験年商法を小説形式で解説

[]商法ガール平成24年〜憲法ガール出版記念特別版 21:59 商法ガール平成24年〜憲法ガール出版記念特別版を含むブックマーク 商法ガール平成24年〜憲法ガール出版記念特別版のブックマークコメント

憲法ガール

憲法ガール

1.はじめに

僕は、うれしかった。ついに、待望の一冊が発刊されたから。

「先輩、何かうれしいことでもあったんですか?」

口に出す前から、喜びが全身からあふれていたらしい。図書館のいつものところに座っているテトラちゃんに見透かされてしまっていた。

「そうなんだよ、あの、憲法の司法試験過去問を小説で解説する『憲法ガール』が出版されたんだ

と言って、カバンから、本を取り出す。

憲法ガール憲法学者バベル先生が出版された憲法の解説書だ。小説形式で、新司法試験を解説してくれる。

「これで、憲法は一安心ですね。そうすると、問題は、商法、なんですが…。」

ちょっと、声のトーンが下がる。

「商法は、もう6年分解いたから、大丈夫なんじゃないの。」

僕たちは、既に平成18年から平成23年の過去問を解いてきた。これだけ解けば、商法で何が出ても対応できるだろう。

「そうなんですが、実際に解き始めると、分からないことも多くて。」

「いくら準備をしても、その場で100%解ける受験生はいないよ。むしろ、平成24年の論文は、満点が800点のところ、1位が596点だから、7割5分解ければ司法試験トップ合格だ。論文を採点してもらった約5000人の中でいうと、6割5分で上位1%以内、6割で上位3%、5割5分で上位10%、5割だって上位4分の1だ。2000番が377点くらいだから、4割7分くらいでいい。択一がよければ*14割5分でも合格する*2。」

「そうなんですね、安心しました。」

すこし、テトラちゃんの顔に明るさが戻ってきた。

「じゃあ、今日はテトラちゃん主導で問題を解いて行こうか。わからないところがあったら、僕がサポートするよ。」

「はい、よろしくお願いします、先輩!」


平成24年新司法試験過去問民事系


2.設問1

〔設問1〕上記5のとおり,22年総会において,Hは,B,C,D及びPの4名だけが取締役に選任された旨を宣言したが,この取締役選任の当否について,論じなさい。

なお,解答に当たっては,次の2点を前提としてよい。

ア.22年総会における甲社の会社提案の提出及び乙社による会社法第304条に基づく議案の提出は,いずれも適法であったこと。

イ.22年総会の日から3か月以内に,株主総会の決議の取消しの訴えは,提起されなかったこと。

「じゃあ、設問1はどう考えるのかな。」

「えっと、問われていることは、取締役選任の当否です。」

問題文から問われていることを確定させるのが、最初の仕事だ。

「そうだね。この問題を読んで気づいたことは?」

「えっと、おかしなところが1つあります。」

問題のおかしなところには、重要なヒントが隠れている。

「そう、ここだね。」

なお、解答に当たっては、次の2点を前提としてよい。

(略)22年総会の日から3か月以内に、株主総会決議の取消しの訴えは、提起されなかったこと。

「普通、乙社がPQR の3人を送り込もうとしたのに、1名しか送り込めなかった。そうしたら、3か月以内に株主総会決議の取消しの訴えを起こす。なぜだろうか。」

「それは、期限が過ぎると、争えなくなるから、ですか?」

「『争えなくなる』を正確にいうと?」

「手続の内容の法令違反等の無効の瑕疵は争えるけど、決議の方法の法令違反等取消し得るだけの瑕疵は争えなくなります!」

「そうだね。会社法831条1項だ。」

会社法831条1項 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時 監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は清 算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定 により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役又は設立 時監査役を含む。)となる者も、同様とする。

一  株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。

二  株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。

三  株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。

「このことは頭に入れておこう。 さて、小問1に行こう。問題意識は何かな?」

「はい、時系列表です!」

「よく分かってるね。」

時間を追って出来事が進む事案では、簡単な時系列表を作るだけで、理解が進み、ミスを防ぐことができる。

平成19年6月 監査役としてE(常勤)、F、Gを選任

平成20年6月 取締役としてA(代表取締役社長、1万株保有)、B、C、Dを選任

平成21年6月 取締役としてH(新代表取締役社長)を選任、Aは代表権のない会長に

平成21年7月 乙社が甲社株の買い集めを開始

平成22年1月 乙社が甲社株33万株を有するに至る

平成22年6月 22年総会開催。B、C、D、Pが選任。

22年総会直後 取締役で乙への本件貸付承認、監査役会で多数決により本件貸付を問題視しないことが決定

平成23年3月 Hは、監査役会に対し、E、Q、Rの3人を候補としたいと提案

平成23年4月 Hの提案が監査役会で否決。監査役会は、E、F、Gの3人を候補者とするとの議案(1)を可決し、これを総会に提出するよう請求

平成23年4月 Pは、乙社を代表して、E、Q、Rの3人を候補とする株主提案(議案(2))を行う

平成23年6月7日 Hは取締役会決議に基づき、議案(1)(2)を含む招集通知を発出

平成23年6月29日 23年総会で議案(2)が可決

「できました!」元気いっぱいのテトラちゃん

「そうだね、本番では時間がないから、こんなに詳しく書く必要はないけど、時系列表を書けば、事案が把握できるね。じゃあ、取締役選任については、どんな問題が、ありそうかな。」

QとRの得票を集計する前に、4人の取締役を選んで終わりにしてしまって、いいのでしょうか?

「いいじゃない、問題意識は、バッチリだよ。特に、QとRの投票結果が書いているけど、どうなっている?」

候補得票数得票率
3343%
3951%
4356%
6584%
4255%
4153%
4052%

QもRも、過半数の得票を得ています。」

「そうだね、そうだとすると、本来の当選取締役は誰だったのかな?」

「ここまでは、分かったのですが、その先、どう考えればいいか、わからなくて。A以外全員当選でもいいような気もするんですが、でも、それで本当にいいのかなって気持ちもあるんです。」

「法律上ないし定款上、取締役選任については、どういう制約条件があるかな。」

「過半数の得票、でしょうか?」

「根拠は?」

「定款でしょうか?」

甲社の定款には,(a)定時株主総会の議決権の基準日は,毎年3月31日とすること,(b)株主

総会は,取締役社長がこれを招集し,議長となること,(c)取締役の員数は,6名以内とするこ

と,(d)取締役の選任決議は,議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有

する株主が出席し,その議決権の過半数をもって行うこと,(e)取締役の選任決議は,累積投票

によらないものとすること,(f)取締役会は,その決議によって取締役会長及び取締役社長各1

名を定めることができること,(g)事業年度は,4月1日から翌年3月31日までの1年とする

ことなどが定められている。

「定款もそうだけど、もう1つは?」

「法律、でしょうか?」

最近、テトラちゃんは勘がいい。

「何条?」

「341条ですか?」

「そう。」

会社法第341条  第三百九条第一項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上 の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合に あっては、その割合以上)をもって行わなければならない。

「そうすると、やっと、定款の意味がわかるね」

定足数の緩和、ですか?」

「よくできているね。議決に必要な得票の数は、『過半数』でかわらないけど、定款で定足数を『三分の一』まで下げたんだね。もう1つの制約は?」

人数、でしょうか?」

「何人?」

「定款の6名以内、です。」

「今回、本当に6人を選任していいの?」

「えっと…。」ちょっとうつむいて考える。元気いっぱいのテトラちゃんもかわいいし、冷静に考えているテトラちゃんもかわいい。

「そうか、Hが1年前に選任されていて、来年まで任期があるから、22年総会で選べるのは5人だけなんですね。」

会社法332条1項 取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。

「よくできているね。ただ、もう1つ難しい問題がある。」

「議題と議案の違いはわかる?」

「えっと…」

「条文は?」

「303条、304条ですか?」

会社法第303条  株主は、取締役に対し、一定の事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次項において同じ。)を株主総会の目的とすることを請求することができる。

2  前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議 決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期 間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。この場合において、その請求は、株主 総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までにしなければならない。

(略)

会社法第304条 株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次条第一項において同じ。)につき議案を提出 することができる。ただし、当該議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行 使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三 年を経過していない場合は、この限りでない。

「そうだね。303条は議題提案権、304条は議案提案権ともいわれる。要するに、今回の総会は定款を変えるのか、取締役を選ぶのか、株式を発行するのか、どういう目的の会なんですかというのが議題。これに対し、じゃあ、取締役を選ぶとして、誰を候補にするんですかというのが議案だね。」

「なるほど、それが『制約条件』と、どう結びつくのですか?」

「今回は、議題提案権の行使期限は?」

「もう過ぎています。」

「そうすると、乙社が行ったことは?」

議案提案権を行使した、ですか。」

「そう。でも、議案提案権はあくまでも、『株主総会の目的である事項』、つまり、平成22年総会の目的としてすでに会社側が設定していた議題についてしか行使できない。今回の議題は?」

「取締役の選任、ですか?」

「ここは、問題文の記載が不明確だけれども、実務的には『取締役4名選任の件』として、取締役4名の選任とすることが多いね。まあ、そう明示していなくとも、動機としては任期満了に伴う改選であることは問題文に記載されている*3ので、会社側は、取締役4名を選任するための総会であり、そこに候補者毎に7個の議案*4があるところ、Pまでですでに4名の過半数獲得候補者が出たので、この段階で打ち切った、こう主張するだろうね。」

「でも、違和感があります。」

「そうすると、5人目で打ち切るべきだった、ってこと? そうすると、52%の得票を得ているRは落選となるけど。」

「……。ここが難しくて、よく分からないです。」テトラちゃん、元気がなくなってしまった。

「心配はいらない。この点は、そもそも『打ち切り』が適切かどうかだね。打ち切らずに、最後まで数えてはどうかい?」

「でも、そうすると、今回は6人が過半数超えなので、定款の員数を超えてしまいます。」

「1つの解釈は、6名全員が当選するが定款違反の瑕疵を帯びるというものだ。」

「それで、いいのでしょうか?」

「もちろん、これは1つの解釈だし、かなり不安定というのは事実だね。安定性という意味では、これはおかしいといえる。でも、安定性以外のもう1つの考慮要素はほかに何かわかるかな。」

「何でしょうか?」

「規則66条1項は覚えている?」

会社法施行規則第66条1項  法第三百一条第一項の規定により交付すべき議決権行使書面に記載すべき事項又は法第三百二条第三項若しくは第四項の規定により電磁的方法により提供すべき議決権行使書面に記載すべき事項は、次に掲げる事項とする。

一  各議案(次のイからハまでに掲げる場合にあっては、当該イからハまでに定めるもの)についての賛否(棄権の欄を設ける場合にあっては、棄権を含む。)を記載する欄

イ 二以上の役員等の選任に関する議案である場合 各候補者の選任

(略)

二  第六十三条第三号ニに掲げる事項についての定めがあるときは、第一号の欄に記載がない議決権行使書面が株式会社に提出された場合における各議案についての賛成、反対又は棄権のいずれかの意思の表示があったものとする取扱いの内容

「あ、平成21年のときにやったものですね。」

三博士没後100周年記念企画「法学ガール」〜新司法試験商法平成21年過去問その2 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

「そう、21年の問題では2号を考えたけど、今回は1号。この趣旨は何だと思う?」

「各候補者の選任に対する賛否を記載する欄を各議案毎に書く…ですか? う〜ん。」

「逆に、各候補者の選任に対する賛否を記載させないとするとどういう扱いになると思う?」

「えっと、会社提案を選ぶか、株主提案を選ぶか、ですか?」

「そうだね。実は、23年総会でも問題になるんだけど、このやり方と、規則66条1項1号の要求する方法ではどう違ってくるのかな?」

「えっと、今回は、Aの得票がとても少ないです。基本的には会社側の候補の再任に賛成だけれど、Aの経営責任は問いたいという声はあるんじゃないかな、と。」

「そう、そういう株主の意思を反映するにはどっちがいいのかな?」

「その場合、『会社提案を選ぶか、株主提案を選ぶか』という選択では、泣く泣く会社提案を選ぶか棄権するかになります。これに対し、各候補の選任について賛否を表明できるのであれば、Aに反対、BCDに賛成という方法がとれます。」

「そうだね。そうすると、66条1項1号が守ろうとするものは?」

各株主の意思、ですか?」

「そう、各株主の意思をできるだけ取締役候補毎に反映させようとしているんだね。そうすると、考えるべき要素は?」

「安定性と、株主意思です。」

「安定性からは6名の選任はだめだけど、株主意思の観点からは…」

打ち切りもおかしい」テトラちゃん、調子が戻ってきた。

「そう、そうすると、打ち切らずに株主意思を反映するにはどうすればいいだろうか。」

「そうだ。例えば、定款員数の5人上限だと考えて、得票数ベスト5にしてはどうでしょうか?

「そう、実務は、定款所定の員数の限度で投票上位者から役員に選任されたものとして扱っている*5。日本エルエスアイカードの事例*6では現実にこのような扱いがなされた。もちろん、この議題を『4名選任の件』だと狭くとらえれば、得票数ベスト4にしてもいいね。議題が取締役選任の件なのか、4名選任の件なのかは問題文からはどちらともいえないので、自分の考え方に従って筋道を示せばいい。」

司法試験では、複数の考え方を意識しながら自らの考え方を論ずる問題がよく出題される。その場合は、条文や定款等の制約条件を明示して、その範囲で可能な選択肢を示す。ここまでできたら、後はなんかかんか理由をつけていれば結論がどれであっても合格だ。

手法安定性株主意思
過半数得票者全員当選だが、定款違反の瑕疵を帯びる(取消可能)×
過半数得票者が選任すべき取締役の員数を超えた時点で打ち切り×
過半数得票者を得票順に並べ、取締役の員数内の人を当選とする

3.小問2

〔設問2〕上記1から上記7までを前提として,次の⑴及び⑵に答えなさい。

⑴ Hが甲社を代表して本件貸付けを実行しようとしている場合,A及びFが本件貸付けをあらかじめ阻止するために行使することができる会社法上の権限について,論じなさい。

⑵ Hが甲社を代表して本件貸付けを実行し,その後,乙社が倒産し,甲社が本件貸付けの返済を受けられなくなった場合,A及びFは,本件貸付けに関し,H,D及びPに対し,会社法上,どのような責任追及をすることができるかについて,論じなさい。

「次の小問は、本件貸し付けに対する監査役Fの対応だ。この問題を見て、何か気づくことはないかな。」

「あ、これも平成21年です!

司法試験の過去問は、既に7年分もたまっている。その意味は、既に重要な論点はその多くが過去問でカバーされているということ。

過去問をしっかりと解いておけば、自信を持って重要論点についての論述ができるようになる。もちろん、多くの合格レベルの受験生も過去問を解いているので、「差をつけられない」という効果もある。


「そう、平成21年の問題によく似ている。」

Z社は,X社の株主としての権利を行使し,合併契約の締結や当該合併契約の承認を目的とする株主総会の招集を阻止したいと考えている。Z社は,X社の株主として,どのような会社法上の手段を採ることができるか。理由を付して説明しなさい。

平成21年商法

三博士没後100周年記念企画「法学ガール」〜新司法試験商法平成21年過去問その1 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

「ただ、Aに関しては21年まんまの360条の問題だけど、Fに関しては1つ違いがあるね。」

「今回は、監査役の行為も問題になっています。」

前回問われたのは、株主による差止だった。ところが、今回は株主に加え、監査役も問題となっている。

「条文は?」

「385、条?」

監査役による取締役の行為の差止め)

第三百八十五条  監査役は、取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。

2  前項の場合において、裁判所が仮処分をもって同項の取締役に対し、その行為をやめることを命ずるときは、担保を立てさせないものとする。

「そう。385条の要件は、株主の差止の360条と比べるとどう違う?」

「平成21年で問題となった会社法360条では、監査役がいる場合の損害要件が『回復することができない損害』となります(3項)。これに対し、会社法385条は『著しい損害』です。」

主体根拠条文損害要件
株主(監査役設置会社360条3項回復することができない損害
監査役385条著しい損害

「そうだね、その意味は。」

監査役は、取締役の違法行為を監視する機関として、会社に対する損害額が多ければ差止られます。これに対し、株主の場合には、損害額がただ多いいだけではだめで、その損害が今差し止めないと事後的に回復できなくなることまで必要です。」

「よくできている。その差異の理由は?」

監査役がいるのであれば、主たる監視は監査役が行うべきであって、監査役が差止をする場合には要件を緩くし、株主が監査役の差し止める必要がないという意向にもかかわらずなお差し止めるのであれば、要件を厳しくする、ということでしょうか。」

「機関の役割分担の観点からよく合理性を説明できているね。」

丸暗記ではなく、このように、理由を理解しながら、各制度を理解することが大事だ

「じゃあ、本件では、差止ができるだろうか。」

「まず、違法行為かどうかの要件ですが、利益相反取引です。」

「利益相反取引は、平成18年と平成20年で出ているね。何条」

「365条、356条1項2号、です。」

(競業及び利益相反取引の制限)

第三百五十六条  取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

一  取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

二  取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。

三  株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

2  民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号の取引については、適用しない。

(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限)

第三百六十五条  取締役会設置会社における第三百五十六条の規定の適用については、同条第一項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。

2  取締役会設置会社においては、第三百五十六条第一項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。

「そうだね。こういう、兼任取締役の場合の適用についてはどう考える。」

「まず、判例が利益相反取引を認めた事案は、両者の代表者が同一人物であったという事案です(最判昭和45年4月23日民集24巻4号364頁)。これに対し、本問は、Pは乙の代表者に過ぎず、甲の代表者ではありません。しかし、平成20年と同様、私は、取締役は会社に善管注意義務や忠実義務を尽くさないといけないところ、Pは、本来甲の取締役として、当該貸し付けが甲のためになるかを考えるべきところ、乙の代表取締役として乙の利益のため、甲の利益を犠牲にする可能性があります。そこで、利益相反取引です。」

「ここは、実務的な提携関係等から複数社の兼任の必要性に鑑み、利益相反取引の範囲を限定する考え方もある。その場合には、単なる兼任では利益相反性は導けないけれど、今回は重要なポイントがあるよね。」

「それは、どこでしょうか。」

「乙って、どういう会社?」

「えっと、株主と取締役がPだけの会社、あ、Pと同視できます。」

「そうだね。江頭先生の教科書でも、取締役が全株式を持つ他社との取引を利益相反取引とする見解が有力説として紹介されている。」

取締役が全株式を有する他社との取引は「自己のため」の取引と同視〔す〕(名古屋地判昭和58・2・18判時1079号99頁)(略)るとの見解も有力である。

江頭憲治郎「株式会社法」(第4版)414頁

「でも、利益相反取引であっても、手続きを踏めばいいんだよね。」

「はい、利益相反関係にある取締役を特別利害関係人(369条2項)として決議から排除した上で、取締役会の承認(365条)を得れば...今回はその要件を満たしています。」

「そう、取締役会決議があることから、直裁な法律違反を指摘できない。」

「ど、どうすれば...」

「司法試験の問題には、必ず答えが書いている。設問2の怪しいところは。」

「え、えっと、Fが反対しているところが、怪しいです。」

説明が不十分であるとして、Fが強く異議を述べた

「うん。十分な説明がされていないというのは、どういう意味がある事実だろうか。」

「えっと、取締役は受任者(330条)として会社のお金を大事に使わないといけないのに、拙速に多額のお金を乙社に注ぎ込んでおり、これは善管注意義務違反です。」

「うん、この議論は1つの議論だね。でも、条文と照らし合わせてごらん。」

「えっと、えっと...あ、356条で『重要な事実を開示』しないといけないとなっています。」

条文を理解するというのは、その条文の具体的な適用を理解しているということだ。ここで、Fが「重要事実が開示されていない」といえば356条が出るが、「説明が不十分」では356条が出ないというのでは、勉強不足といわれてもしょうがないだろう。

「もちろん、Fの発言に過ぎず、客観的に重要な事実が取締役会で報告・説明されたのかという点は問題になり得るが、その貸し付けが甲に与える影響、使途、回収見込み等が説明されないか、それが一応説明されていても、取締役として、適否の判断をできる程度の情報が開示されていなければ、『重要な事実を開示』していないという法令違反が導かれる。特に上場企業でもないのに無担保貸し付けをするということについての情報がどこまで提供されたかは重要だね。」

「はい。後は損害ですね。」

「生じるおそれがある損害の具体的内容は比較的明らかだ。」

「乙が15億円を返さないことです。」

「これは著しいだろうか、回復は不能だろうか。」

「う〜んと、甲の資本金が30億円で、その半分ですから、著しいと思います。」

「きちんと問題文から根拠を拾っているね。そこでFは差し止められる。」

「回復については、乙はPの個人の会社で、事業もほとんど行っていないので、15億円も返せなくなる可能性があるのではないでしょうか。」

「まあ、この点は、33万株の甲の株式があるから、いざとなったら差し押さえられるといった議論もできるけれど、普通は金融機関から融資を受ければ(4)、担保を取るだろうから、責任財産が十分に残っているかは疑問だ。そこで、後で損害賠償をしたのでは回復できない損害が生じる、よってAもまた差し止められるという議論でいいだろう。」

「やっと、これで設問2も解けましたね。」

「じゃあ、最後のサブ論点だ。監査役会が賛成しているので、それでもFが一人で差し止められるかというポイントもあるんだけど。」

監査役会監査役の行動を妨げられないはずです。」

「そう、390条2項柱書だ。監査役会監査役の権限の行使を妨げることはできない。だから、Fは、監査役会の決定にもかかわらず、監査役の調査権限(381条2項)を行使して資料を収集し、差し止めを求めて訴えを提起することができるんだね。」

第三百九十条  監査役会は、すべての監査役で組織する。

2  監査役会は、次に掲げる職務を行う。ただし、第三号の決定は、監査役の権限の行使を妨げることはできない

一  監査報告の作成

二  常勤の監査役の選定及び解職

三  監査の方針、監査役会設置会社の業務及び財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定

「これに加え、実効性の観点から差止の仮処分についても触れられるといいね。じゃあ、後半、ある意味予想通り貸金が帰ってこない場合だ。責任追及の手続的根拠は?」

「Fは、386条1項」

本試験では、受験生がなかなか出せなかった条文だ。これがきちんと出るのは、実力がついている証拠。

監査役設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表)

第三百八十六条  第三百四十九条第四項、第三百五十三条及び第三百六十四条の規定にかかわらず、監査役設置会社が取締役(取締役であった者を含む。以下この条において同じ。)に対し、又は取締役が監査役設置会社に対して訴えを提起する場合には、当該訴えについては、監査役監査役設置会社を代表する。

「そうだね。Aは?」

「代表訴訟なので、847条です。」

(責任追及等の訴え)

第八百四十七条  六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。以下この条において同じ。)若しくは清算人の責任を追及する訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。

2  公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。

3  株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。

「うん。実体的根拠は?」

「会社法423条1項です。」

第四百二十三条  取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

「正解だけどそれだけでは間違い。今回は、利益相反取引があるから...。」

「よ、423条3項。」

3  第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。

一  第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役

二  株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役

三  当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(委員会設置会社においては、当該取引が委員会設置会社と取締役との間の取引又は委員会設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)

「そう、任務懈怠の推定が働く。今回のH、D、Pは何にあたるかな。」

「まず、Pは自己取引の相手方本人と同視できます。そこで、1号です。」

「なるほど」

「次に、HとDは賛成しているので3号です。」

「そうだね。そうすると、423条3項は単に任務懈怠を推定するだけだから、推定を覆し、Fの発言にもかかわらず、なお十分な事実は開示されており、拙速でもない合理的決定であるから、任務懈怠はないといえば、責任を免れられる、ということかな。」

「そ、そうだと思いますけど...。」

「条文は、1つ関係するものを見つけたら、少し六法を遠くに置いて、周りの条文をみてみよう。」

平成23年の465条のように、問題となる条文の近くに関連条文があることが多い。

「あ、428条1項!」

(取締役が自己のためにした取引に関する特則)

第四百二十八条  第三百五十六条第一項第二号(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引(自己のためにした取引に限る。)をした取締役又は執行役の第四百二十三条第一項の責任は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができない。

「うん、Pイコール乙と考えれば、自己のためにした取引をした取締役として、責任を免れられない。」



4.設問3

〔設問3〕上記12の後,A及びFは,23年総会において否決を宣言された議案(1)及び可決を宣言された議案(2)につき,株主総会の決議の取消しの訴えを提起しようと検討している。この訴えに関して考えられるA及びFの主張並びにその当否について,論じなさい。

「最後に設問3だ。AとFが取り消し訴訟を起こそうとしているという問題だね。まずは、ここであえてAとFの2人が出てきているのはどうしてだろうか。」

「AとFが本当に訴訟を起こせるか、確認せよということでしょうか。」

「そうだね。取消訴訟制度の趣旨は法的安定性。誰でも訴訟を起こせる訳ではない。じゃあ、誰が起こせるの?」

「えっと、『株主等』だと思います。」

「条文は?」

「831条1項です。」

会社法第831条1項  次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立 時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は 清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規 定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役又は設 立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。

一  株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。

二  株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。

三  株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。

「株主等って誰?」

「えっと…。」

テトラちゃんが、条文を探し始める。常に、条文に戻ること、これが司法試験商法の基本だ。

「あ、ありました!828条2項1号ですね!」

会社法828条2項1号 前項第一号に掲げる行為 設立する株式会社の株主等(株主、取締役又は清算人(監査役設置会社にあっては株主、取締役、監査役又は清算人、委員会設置会 社にあっては株主、取締役、執行役又は清算人)をいう。以下この節において同じ。)又は設立する持分会社の社員等(社員又は清算人をいう。以下この項にお いて同じ。)

「そう、会社法では、条文の途中で定義がなされていることがよくある。これは、金融商品取引法等の複雑な業法でもよくある立法技術なんだけど、素人にも分かりやすい法律という観点からは疑問があるね。そうすると、AとFはどれにあたるだろうか。」

「Aは、22年総会の時点で取締役ではなくなっていますので、『取締役』の立場では起こせませんが、1万株の株主なので、『株主』の立場で起こせます。」

「そうだね、じゃあFは?」

「えっと、監査役でしょうか?」

「でも、監査役の任期が既に満了して、議案(1)は可決されなかったのだから、Fはもう監査役じゃないんじゃないのかな?」

「あ、そうですね…。でも、なんかおかしな気がします。」テトラちゃんは、会社法のセンスをつかみ始めている。

「そう、その『おかしい』って気持ちは大事だよ。どうしておかしいのかな。」

「もしかするとFが意見を表明して、それが聴衆の心を動かせば、監査役に再任されるかもしれなかった訳ですよね。そういう意見表明の機会を奪った会社が、『Fはもう監査役じゃないから訴訟を起こせない』と言っちゃうのは、監査役原告適格を認めた831条の趣旨に反するように思います。」

「よく考えているね。じゃあ、831条の条文をよく見てみて。何か気づかない?」

「えっと…。」テトラちゃんは考えている。

「複雑な条文はカッコをはずせばいい。まず、カッコを全部取ろうか。そうすると、どうなるかな?」

次の各号に掲げる場合には、株主等は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は 清算人となる者も、同様とする。

「あ、大分すっきりしました。」

「そうすると、決議が取り消されることで、監査役になる人は原告になれるんだけど、Fは監査役になれるのかな?」

「う〜ん、任期が満了しているので、なれなさそうな気もします。」

「ここで1つカッコを戻そうか。」

次の各号に掲げる場合には、株主等は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は 清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項の規 定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役又は設 立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。

「この、346条の規定って何?」

「そうか、権利義務役員ですね!」

会社法346条1項 役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する

「そう、今回任期は満了しているけど、議案(2)が取り消されたら…」

「新任・再任監査役がいないので、欠員が出てしまいます!」

「そう、だから、Fは権利義務監査役として、831条の原告適格を満たすんだね。」

「難しいです…。」

「でも、あくまでもこれは条文だよね。問題意識をきちんと持って条文を読めば、条文操作でたいていの問題は対応できてしまうよ。」

「本当に条文って、大事なんですね。」

「うん、じゃあ、本案に入るけど、取消事由は?」

「831条1項にある、手続方法の法令定款違反・著しい不公正、決議内容の定款違反、特別利害関係人の関与による著しく不当な決議です。」

(株主総会等の決議の取消しの訴え)

第八百三十一条  次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。

一  株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。

二  株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。

三  株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。

「じゃあ、今回の問題だけど、まずは議案(1)だ。なんか紆余曲折があるけど、問題文でいう、監査役会が議案(2)を総会に提出するよう要求するというのは何条?」

「えっと、、、」

「もしかして、385条の辺りを読んでる?」

「図星です。」

機関に関する条文は、各機関毎にもまとまっているけど、340条代に選解任手続がまとまっているよ。」

「ありました、343条です。」

監査役の選任に関する監査役の同意等)

第三百四十三条  取締役は、監査役がある場合において、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。

2  監査役は、取締役に対し、監査役の選任を株主総会の目的とすること又は監査役の選任に関する議案を株主総会に提出することを請求することができる。

3  監査役会設置会社における前二項の規定の適用については、第一項中「監査役監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)」とあるのは「監査役会」と、前項中「監査役は」とあるのは「監査役会は」とする。

「そう、本来議案提出に監査役会の同意が必要なんだけど、取締役会が目論んだ議案(2)は監査役会が却下した。そして、監査役会は343条2項に基づき、議案(1)の提出を請求した訳だ。」

「なるほど、こういう仕組みなんですね。」

「その趣旨は?」

「えっと、監査役の独立性の確保、ですか?」

「そうだね。取締役会が『再任議案を提出したくない』と思えば、自由に再任議案を提出しないと決められるということでは、監査役は安心して監査できない。そこで、独立性を確保しようとしている。」

「そうすると、提出は適法だけど...Fが意見を言いたいけど言えていません。」

「何条?」

「えっと、えっと...」

会社法はタイトルの付け方がミスリーディングだよ。特に『等』というのがついているのは。」

「345条ですか。」

(会計参与等の選任等についての意見の陳述)

第三百四十五条  会計参与は、株主総会において、会計参与の選任若しくは解任又は辞任について意見を述べることができる。

2  会計参与を辞任した者は、辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨及びその理由を述べることができる。

3  取締役は、前項の者に対し、同項の株主総会を招集する旨及び第二百九十八条第一項第一号に掲げる事項を通知しなければならない。

4  第一項の規定は監査役について、前二項の規定は監査役を辞任した者について、それぞれ準用する。この場合において、第一項中「会計参与の」とあるのは、「監査役の」と読み替えるものとする。

「そう、会計参与の話にみせかけて、4項で監査役に準用している。これで、手続法令違反でいっちょ上がりかな。」

「そんな気も、します。」

「まず、3つの問題を考えようか。」

「1つ目は、もし、本来22年総会で、QとRが取締役になるべきなら、335条2項によって、違法な兼任にならない?」

監査役の資格等)

第三百三十五条  第三百三十一条第一項及び第二項の規定は、監査役について準用する。

2  監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。

「あ、なるほど」

「ここで納得しちゃだめ。最初の『おかしなところ』はなんだっけ?」

「取消訴訟が起きてません。」

「その意味は」

「取消事由に過ぎない瑕疵は主張できない。あ、取締役の選任方法の法令違反なので、単なる取消事由なので、もう瑕疵は主張できなくなってます!」

「そうだね。そういう議論ができればいいね。次に、株主総会で監査役を選任する場合も取締役と同じ要請が働かない?」

安定性と、株主意思ですか?」

「うん、株主意思との関係では?」

「3人の議案をまとめて出しています。」

「その問題点は」

「実はQは嫌でRだけがいいという株主意思が反映されません。」

「そう、これを取消事由にしてもいい。でも、取消事由にならないという裁判例があることも覚えておいていいだろう。」

株主総会において直接に自らの意見を表明をする機会が与えられていること、右の投票方法における相異は、大規模会社の多数の株主に株主総会における意見表明の機会を保障しようとの見地に立脚して採用された書面による議決権行使制度に内在する技術的な制約によるものであると認められることに鑑みれば、右の投票方法における相異をもって、本件株主総会決議が株主の平等の原則に反する違法のものであると解することはできない。したがって、控訴人の当審主張3も採用することはできない。

名古屋高判平成12年1月19日金判1087号18頁*7

「要するに、条文を見る限り、個別に賛否を言えるようにすべきなのは書面投票だけでしょうという議論だ。」

「う〜ん、なんか形式論という感じで違和感があります。」

「まあ、ここは、この見解を採らないで取消事由にしてもいいね。最後は、F自身が提訴した場合はいいけど、Aが提訴した場合には、Fについて生じた瑕疵を主張できるのだろうか。」

「株主総会取消訴訟は、会社全体に影響するものであって、個人の権利が侵害されたかを問う訴訟ではないはずです。客観的に瑕疵があり、原告適格があれば、誰について瑕疵が生じていてもそれを主張していいのではないでしょうか。」

「この辺りは、きちんと理由をつけて論じられていればいい。さて、じゃあ、議案(1)は取消でいいかな。」

「問題はないと思います。」



「議案(1)はどうなったの。」

「えっと、否決されています。」

決議が否決されているのを取消すのは意味がないんじゃない?

「あ、そ、そうですね。」

「この点は、『裁判例では、取消しの対象とならないとするものが多い』と簡単に解説してしまうものの本もあるのだけど、実は、公刊裁判例がある事件は2つだけ*8だ。しかも、平成22年総会終了時点では1つだけ。その唯一の裁判例は、決議取消ではなく、決議不存在確認の問題だったものの、否決の決議の不存在確認の利益を認めている。」

原告らが本訴において不存在の確認を求める決議は、いずれも、原告ら提案にかかる議案を否決する決議であるか、原告らは右決議が著しく不公正な手続によりなされた法律上存在しえないものであると主張しているのであり、右請求を認容する判決かなされた場合、会社は改めて株主総会を招集して当該議案を審議し、公正な方法により決議をしなければならない義務を負うものであるから、かかる公正な審議の場を求めることついて原告らに法律上の利益がないとはなし難いというべきである

山形地判平成元年4月18日判例タイムズ701号231頁

「なるほど。これに対し、もう1つの事件では、裁判所はどう述べているのですか。」

株主総会決議の取消しの訴え(会社法831条)の対象となる株主総会決議とは、当該取消しの訴えを会社法上の訴えとして設けた趣旨に鑑みて、飽くまでも「成立した決議」というべきである(略)議案が否決されたということは、上記決議が成立しなかったということであって、そもそも同法831条所定の株主総会決議には当たらない

東京地判平成23年4月14日資料版商事法務328号64頁

「いわゆるHOYA事件の一審*9控訴*10で、それぞれややニュアンスは違うんだけど、決議は可決されてこそ『決議』なのであり、否決なら『決議』とはいえない、ないし、少なくとも否決された場合には第三者への効果はないから取消す意味はないという論調だね。」

「答案上はどのようにすればいいのでしょうか。」

「これらの裁判例はかなり細かい部類に属する。基本的には、これらの裁判例を予め知っておくことは予定されていない*11。だから、自分の頭で考えることになる。例えば、株主提案が否決された場合、議決権の10分の1を得られないならば、3年間再度の提案が禁じられるという点から、当該決議を取消すことで提案禁止を解除する効果があるので、取消す意味がある場合もあるといった規範を立て、本件は株主提案の問題ないから取消できないといった議論は1つの筋だね。」

「なるほど、そういう議論もできるんですね。」

「そう、この辺りは否決の決議を取消す意味ってあるのかなという問題意識だけでも示せれば、後は『嘘』さえ書かなければ合格ラインだね。」

「わかりました。」


「最後、決議(2)だけど、ここまで検討すれば簡単だね。」

監査役の意見陳述の機会を与えない違法と、候補者毎に個別採決しない違法で取消ということですね。」

「ただ、実はも1つある。さきほど、監査役選任議案の手続について話たよね。」

監査役の独立性を保つという話ですか。」

「いくら監査役会の同意を要求しても、株をもっている取締役が株主提案したら、この同意要件の潜脱じゃないだろうか。」

「なるほど、そういう考えもあるんですね。」

「もちろん、例えば、監査役会と取締役の主流派が再任に賛成している時に、一部の取締役が監査役に問題があると主張して、別の人を任命すべきと考えて、株主提案権を行使する』等、取締役が提案する場合でも、潜脱ではなさそうな事案もある。そこで、問題意識さえ答案上に明記されていれば、取消事由にするか否かかは、どちらでも合格できる。」

「ありがとうございます! 以前に勉強した過去問が、試験を解く際にこんなに活用できるなんて思いもしませんでした。」

「司法試験は、平成25年の試験が終われば、もう8回も施行されている。サンプル問題とプレテストを含めれば10回だ。これだけ蓄積されていれば、試験委員にとっても、過去問を完全に外して問題を出題することは不可能と言っていい過去問の完全習得こそが、司法試験合格への近道なんだ。」

「今日もいろいろと勉強を教えて下さり、ありがとうございます。今度は、勉強以外も教えて…あっ、失礼します。

テトラちゃんが荷物を抱えてトコトコと小動物が捕食者から逃げるように立ち去っていった。


ふと、振り向くと、そこにあったのは、細長い影。



5.ミルカさん

「馬鹿ね。」

突然の言葉に、驚く。

「えっと、僕が、何か?」

「きみのことではないよ。」と、あわてる僕をスルーする、ミルカさん。

「乙社が今回甲社の支配権を獲得できたのは偶然に過ぎない。まず、最初の間違いは?」

「えっと、あ、そうだ。」ミルカさんに前に教えてもらったことを思い出す。「公開買い付けをやっていない。」

三博士没後100周年記念企画「法学ガール」〜新司法試験商法平成23年過去問その2 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

「そのとおり。」ミルカさんは、少し笑顔になってうなづく。「乙社は、『市場において甲社の株式を買い集め』ている。市場で株式を買い集めたら、株価はどんどん高くなり、加熱していく。一定以上買うならば、公開買い付けを使うのが、株式取得コストを安くするための常道。もう1つは?」

「もう1つは?」分からない。

「今回、株主提案は22年総会と23年総会の2回出されているんだけど、株主提案をする株主の立場からすれば、どっちのやり方がスマートかな?

「えっと、23年総会の方、ですか?」

「理由は?」

そういわれても、すぐに理由は出てこない。喉がカラカラになる。

実務では、一瞬の遅れが弁護過誤につながる。」そのとおりだ。今の自分では、万単位の従業員の生き死に直結する案件を責任を持って対応することはできない。

「会社の費用で自分の意見を広報してもらえるのと、自分で広報しなければいけないのでは、どちらえを選ぶ?」

答えは、いうまでもない。そ、そうか!

「会社法305条の要件を満たせば、『議案の要領』を会社が全株主に通知しなければならない! 株主側は、8週間前に会社に通知することで、広報コストを節約できるということか。」

「そのとおり。会社が提出する議案と同じ議題であれば、当日修正提案として議案を出すことは法律上可能。でも、当日議場に来る人は、『いわゆる包括委任状株主を除けば僅少であることが通常』*12。要するに、開会前に書面投票で雌雄が決していることが多い。勝ちたければ、事前に動くのが常道。」

「そうか、8週間前に通知することで、広報コストなく、株主総会で取締役を入れ替え、会社を支配できるのか。」僕は、ひざを打つ。

「広報コスト0はあくまでも、理論上のもの。実務では、大株主に直接会いに行って投票をお願いしたり、議決権行使助言会社に推奨をお願いしたり、株主にお手紙を書いたり、株主に電話をしたり、宴会場を借り切って説明会をしたり*13という仕事が必要。某アイ・アール会社を会社側と株主側でどちらが先に押さえるかが最初の勝負どころの1つと言われたりもする。」

そうなのか…。

「法律の規定と実務。その双方に精通することが必要不可欠だ。」

数年後、僕が弁護士バッチを付ける時、僕は、実務と法律に精通した弁護士に、なっているのだろうか。

「もしそうなれたら、きみと付き合いたいね。」

え、今、何て? 心臓が跳ね上がる。

裁判傍聴に付き合うってこと。もしかして、ドキドキした?」

何〜だ。最初から分かっていたような、ちょっと寂しいような。

「じゃあね。」

といって、図書館を去るミルカさん。

大分離れてから、小声で「裁判傍聴デート、楽しみだな。」と呟いていたなんて、その時、僕は、想像もしていなかった。

まとめ

今回は、憲法ガールの出版をきっかけに、特別編として超特急で商法ガールを作成しました。憲法ガールというすばらしいブログが書籍化しれたことに、感動しております。


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*1:仮に300点の場合

*2論文×1.75+択一×0.5が780以上になればいいので、論文が360の場合、択一が300なら780になる。

*3:5参照

*4:モリテックス事件判決(東京地判平19年12月6日判タ1258号69頁)参照

*5:田中亘「株主総会における議決権行使・委任状勧誘」ジュリスト増刊会社法施行5年理論と実務の現状と課題2011年5月号・8頁

*6:資料版商事250号10頁

*7:この点、日本評論社「司法試験の問題と解説2012」61頁は1審とごっちゃにしている。編集者が判例をきちんと確認する習慣をつけてもらいたいところである。

*8:なお、昭和六〇年(ラ)第五一号担保提供申立棄却決定に対する即時抗告事件についての仙台高等裁判所昭和61年1月20日決定も下記山形地判と同旨

*9:東京地判平成23年4月14日資料版商事法務328号64頁

*10:東京高判平成23年9月27日資料版商事法務333号39頁

*11:例えば、採点実感には「「否決の決議」が決議取消しの訴えの対象となるかという問題などについて,自分の頭で論理的な思考をして解答を導く」とあるので、現場思考を求めた趣旨と解される。

*12:大橋博行「六月定時総会における開示の充実等への企業の対応」商事法務1906号102頁

*13:そこで、お土産を…