アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2017-03-03 ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書第9回

[]ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第9回契約書チェックのポイントその4 20:46 ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第9回契約書チェックのポイントその4を含むブックマーク ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第9回契約書チェックのポイントその4のブックマークコメント

1.はじめに


 本当は契約書回は前回で終わりのはずだったのですが大人の事情でまだ続きます。2017年3月6日のある会社での出来事。。。



2.ストーリーパート


「今日は代理権・代表権について解説する!」


月曜日の朝、朝一で井上先輩に呼び出され、会議室に連れ込まれた。何かと思ったら、契約書の話の続きのようだ。井上先輩は先週の金曜日に午後一杯休暇を取っていたけれども、それと関係があるのかどうかは分からない



「会社の場合、誰か個人が会社を代表または代理して契約を締結することになる。いわゆる『サイナー』『署名者』だ。さて、会社を代表または代理できるのは誰かな?」


この程度なら、ロースクールで勉強した。


代表取締役です。会社法349条4項は『代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。』と定めていますから。」


「ということは、代表取締役以外の事業部長とか部長とかは会社を代表または代理できないということか。」


「えっと、そうだ、委任状です。代表取締役の発行した委任状があれば、事業部長でも部長でも会社を代理できます!」



「確かに有効に作成され、変造・偽造されていない委任状があれば、当該代理人に行為能力がある限りは有効に会社に効果を帰属させることができる。でも、契約実務で、社内の人間が判子を押す時、委任状を取っているか?」


「取ってません。。。」


「すると、契約は無効と?」


「いや、そうではないと思いますが。。。」


会社は代表取締役以外の使用人、日常語だと『従業員』ないしは『役職員』に対し、契約締結権限その他の権限を与えることができる。会社法14条1項*1はその表れだ。そうすると、社内で契約締結権限が与えられていれば、例えば部長や事業部長でもよい。特に相手が大企業で、しかも新規取引先ではなく、既存取引先の場合には、部長クラス以上で、かつ、当該部門に関係する契約であればその人をサイナーとして認めることが実務では多い*2。」


「なるほど、そうすると、契約締結権限を持っている人と契約すれば安心、ということですね。」



「そこまで即断はできない。例えば、部長がサイナーだが、事業部長の決裁がないと契約が締結できないとか、事業部長がサイナーだが、社長の決裁がないと契約が締結できないという場合がある*3決裁等権限に対する制約・制限が存在することは稀ではない。」


「確か、ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人の代理権に加えた制限は善意第三者に対抗できない(会社法14条2項)のではないですか? 取引の相手方がその制限を知らなければ、大丈夫なのではないでしょうか。」


「いい発想だ。ただ、大企業なら決裁制度があることは普通だろうし、決裁について相手から告げられることもある。その意味では、決裁が下りていることを確認するがよいだろう。実務ではそもそも決裁の有無を確認しないこともあるが、『決裁下りましたか?』と聞いて『下りました。』と回答してもらう程度はやるべきだと思う*4。」


「なるほど、代理権・代表権についてはあまり意識しないできましたが、実はとても重要だということが分かりました。誰に代理してもらうのか、そのような権限の付与が適正な手続で行われた真意に基づくものなのかといった点は決しておろそかにしては行けませんね。


「そうだな。特に法律を仕事にしている人にとって、これをおろそかにすることは自殺行為に近い。」


井上先輩は、一見目の前にいる僕の方を見ているようで、実は別のところをはっきりと見据えているような気がした



3.解説のようなもの

実務ではあまり「このサイナーに代表権・代理権があるのか」がギリギリ問われる事案は多くないと思われます。当事者がお互いにある程度地位の高い人をサイナーとして指定し、その肩書き上普通は当該事項について契約締結権限がある位の地位にあれば、それ以上に「委任状を出せ」「権限規程を出せ」等とは言わないのが普通と思われます*5


このような実務の背景としては、会社法14条1項、会社法14条2項があるので、「ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人」といえるくらいの地位を与えられている人と契約すれば保護される可能性が高いこと、及び特に決裁が済んでいれば、会社としての法律行為を行う効果意思は存在し、後はそれを表示した人が「使者」に過ぎなくとも契約は成立したと考えられること(特にその後会社がその履行に向けて行為した場合には「承諾の意思表示と認めるべき事実」(民法526条)と言える場合も多いだろう)等が考えられます*6


 これに対し、新規取引先等の場合には、代表権・代理権の有無は大変重要な問題です(この確認をおろそかにすると有名な会社を騙った取り込み詐欺的な被害にあったりしかねません)。まあ、この調査をどこまでやるかは1つの問題ですが、登記を取ったり、調査会社を利用するのは、(後者の場合、信用・債務履行能力の側面が強いと思われますが)このような点の確認という面もあるでしょう。


 いずれにせよ、代理・代表というのは、実務では頻繁に行われ、あまり深く考えられないことも多いのですが、このような点は決しておろそかにしてはいけない基本だなぁ、と思うところです。


まとめ

 以上で契約書関係の4回の連載は終わり、来週からは別のテーマに移行します!

 なお、特に上記の実務の背景たる法律論については、まだ十分に詰められておりませんので、皆様のご意見をお待ちしております。

*1:事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。

*2:職務権限規程を出して下さいというと実務では変な人だと思われるでしょう。

*3:場合によっては代表取締役社長がサイナーだが、取締役の決議がないと契約が締結できないという場合があるが、今回は割愛します

*4:「決裁権限規程と稟議書を出して下さい」とかいうと、実務ではおかしな人だと思われるだろう。

*5:怪しい場合にはこちらの地位を上げて「こちらの都合で申し訳ないのですが、もう少し格が高い方をお願いします」等という感じでしょうか。ご参考

*6:この辺りは詰めて考えていないので、詳しい方はぜひ教えて下さい。なお、最悪の場合使用者責任(民法715条)を追及することになるでしょう。

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