アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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活動する弁護団であり、現実の世界において法律相談その他法律事務を取り扱いません。

2018-12-24 書評:『緊急避難の理論とアクチュアリティ』

[]書評:『緊急避難の理論とアクチュアリティ』 12:20 書評:『緊急避難の理論とアクチュアリティ』 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常 を含むブックマーク 書評:『緊急避難の理論とアクチュアリティ』 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常 のブックマークコメント

緊急避難の理論とアクチュアリティ

緊急避難の理論とアクチュアリティ


1.はじめに

私は、刑法の緊急避難論については全く何も知らない*1。しかし、実務で様々な問題に直面する者として、最近のアクチュアルな問題には興味関心を有している。


ここで、緊急避難論がアクチュアルな問題にどう関係するかを主にドイツ語圏の比較法研究に基づいて提示した圧巻の一冊が弘文堂から出版された。深町晋也『緊急避難の理論とアクチュアリティ』である。


本日はちょうど12月24日という自分の愛するもの(=ほむほむと法律書)と触れ合う日であり、法律書と触れ合う「リア充」な時間を過ごすことは本日の目的に適っていることから、簡単に紹介したい*2。なお、まだきちんと「読む」というほどの時間をかけて読むことができていないので、誤読等があれば平にご容赦頂きたい。



2.自動運転車やブロッキング論が論じられている「アクチュアル」さは魅力的

 実務家にとっての本書の最大の魅力は、自動運転車やブロッキング論が論じられている「アクチュアル」さである。(なお、家族法に関する実務に従事している実務家にとっては、DV反撃殺人等の、家族刑法についても深く議論がされているので、この点も興味深いが、私は二次元に嫁(暁美ほむらちゃん)がいるだけなので、この点は割愛する。)



例えば、自動運転については、現在様々な議論が進んでいるが、生命法益のジレンマ(ディレンマ)状況について、いわゆる「トロッコ問題」を中心に、ドイツ法をその背景をも踏まえて参照した上で、日本法にどこまでの示唆が与えられるかをきちんと論じている(243-255頁)。


また、例えば、海賊版サイトのブロッキング緊急避難についても、短いものの、「児童ポルノサイトと海賊版サイトとでは、違法なコンテンツに関するサイトという点では共通するものの、緊急避難の成立要件との関係では、様々な事情において差異が存在すると言わざるを得ない」(257頁)等と論じており、今後のブロッキングのあるべき姿に関しても重要な示唆を与えている。


その意味で、本書は、研究者はもちろん、弁護士、企業法務パーソン、法学部生・法科大学院生・司法修習生、自動運転に興味がある方、ブロッキング問題に興味がある方、家族に関する法律問題に興味がある方等全ての人にとって必読の一冊である。


3.米国法について


*以下は、米国法に関して全く不勉強な法学徒による雑文ですので、その前提でお読みください。


 ここで、興味深いのは、本書の大部分がドイツ語圏との比較法研究であるが、一部*3において、米国法に関する比較法研究がされていることである。


 まず、気になったのは、(「緊急避難」の理論とアクチュアリティなのに)「緊急避難」についての米国法の制度と議論が紹介されていないことである。本書のテーマは緊急避難である以上、緊急避難というのが米国に存在するのか、存在するならば、それがDV反撃殺人についてどこまで使えるのか、使えないか、を論じるべきだと思われる。


 確かに日本の刑法37条の「緊急避難」と1対1対応ではないことは当然であるものの、いわゆるnecessityの法理は、日本語に訳する際に「緊急避難」という訳語を用いることも多いといえる*4。すると、例えばUnited Sates v. Paolello等を引きながら、米国における「緊急避難」というのがどのような法理であって、これがどのような事例に適用され、なぜDV反撃殺人に適用されないのか、というところに議論を持ってくることが、前提として必要だったように思わる。



 また、いわゆる生命に関わる有形力の行使(use of deadly force)という、DV反撃「殺人」事案で問題となる事例については、本書207頁のように「主観的な要素を大幅に重視」することで、正当防衛理論をドイツスイスの規定よりも拡張している、という側面が強調されている。


 しかし、実際には、逆に、米国法が生命に関わる有形力の行使の文脈において、正当防衛理論の利用を制限している面がある点を指摘しなければ、米国の正当防衛に関する法制度の紹介として、必ずしもバランスの良い紹介とは言えないように思われる。


すなわち、模範刑法典3.04(2)(b)(ii)は「the actor knows that he can avoid the necessity of using such force with complete safety by retreating or by surrendering possession of a thing to a person asserting a claim of right thereto or by complying with a demand that he abstain from any action that he has no duty to take」の場合には原則として生命に関わる有形力の行使による正当防衛が認められないとされている。これは、一定範囲でいわゆる退避義務ないし回避義務を認めたものと理解される。


 これに対し、少なくとも日本法では、退避義務ないし回避義務を否定する見解が有力なように思われるところ*5一定の場合に退避義務ないし回避義務を認めようとする米国法*6は、特に生命に関わる有形力の行使が問題となる場面においては一面では(確信の相当性を問題とするという意味で)その適用範囲を拡張しながら、他方では(一定の場合に退避義務ないし回避義務を認めることで)適用範囲を縮減しているという指摘が可能なように思われる。そうであれば、この両面を紹介しなければ、外国法の紹介としてバランスの良いものとはいい難いように思われる*7


  もちろん、本書185頁において「従来、我が国においては、本事例(注:DV反撃殺人事例のこと)は専ら正当防衛・過剰防衛の成否という文脈で論じられており、正当防衛論による解決の可能性を探る」ために米国法について検討するとあり、そういう意図から、あまり紙幅を割くおつもりがなかったのだろう、とは考えているものの、個人的にはなお脚注等でこの辺りの「米国の緊急避難論及び正当防衛論の全体像のうちどこに位置付けられる議論なのか」を明確化することが望ましかったのではなかろうか、という疑問が拭えないでいる。


*注:上記は、12:20時点の、本書のみを読んでの感想をまとめたものです。後記の補足をご覧ください。


まとめ

深町晋也『緊急避難の理論とアクチュアリティ』は、まさに適切なドイツ法圏の比較法を通じて日本が直面するアクチュアルな問題に対する示唆を与える、圧巻の一冊であり、全ての人にとって必読の一冊である。

もっとも、米国法の紹介部分は、紙幅等の制限があったのだとは想像するものの、もう少し言葉を補って紹介すべきではなかったか、という疑問がないわけではない。


補足(2018年12月24日13:45)

本稿につき、著者の先生から、


ドイツスイスに比して拡張的な適用がなされ得るアメリカ正当防衛からしても、DV反撃殺人事例の解決は困難であり、翻って緊急避難論による解決可能性を指摘することを意図していた」との指摘を頂戴しました。


本当にご丁寧にありがとうございます。

*1:せいぜい、井上宜裕『緊急行為論』と遠藤聡太「緊急避難論の再検討」(いわゆる「法学協会雑誌論文」)、西田・山口・佐伯編『注釈刑法第1巻総論』472〜505頁(刑法第37条、深町晋也執筆部分)を読む程度であり、緊急避難論について「知」っているとは到底言えない

*2:他にも書評したい本(例えば緑大輔『刑事訴訟法入門(第2版)』(日本評論社)等)があるものの、たまたま本日ツイッターで比較法の難しさについて考える機会をいただいたので、最近の模範的比較法研究をドイツ語圏についてされている本書を紹介したい

*3:具体的には「第3章緊急避難規定のアクチュアリティ 第1節DV反撃殺人事例 IV アメリカにおける議論状況の分析」(203頁〜207頁)の5頁

*4:本書で引用されているドレスラー著『アメリカ刑法』427頁も「緊急避難」という訳語を用いる。

*5:例えば、「侵害を予期した場合にその急迫性が失われるのであれば、侵害に対して正当防衛により反撃できないことになるから、侵害が予想される場所に赴いて実際に侵害を受けた場合、無抵抗で被害を甘受するか、反撃して処罰されるかのいずれになってしまう。」「それでは、一般市民に不正な侵害に屈した行動を採ることを求めることになり、侵害を不正と評価することを実際上矛盾した事態を招くことになってしまう。こうして予期した侵害について回避・退避義務を認めることは基本的にできない」(山口厚刑法総論(第3版)』124頁)参照

*6:少なくとも本書が引用する模範刑法典のレベルにおいて、ということである。その後は退避義務ないし回避義務を限定する議論があると承知している。

*7:なお、この模範刑法典3.04(2)(b)(ii)には例外規定が存在し、例えば模範刑法典3.04(2)(b)(ii)(A)では「 the actor is not obliged to retreat from his dwelling or place of work, unless he was the initial aggressor or is assailed in his place of work by another person whose place of work the actor knows it to be」とされているので、DVであれば、この例外規定によって退避・回避不要となりやすい、ということは理解しているものの、それでも、本書203頁〜207頁では、米国の「正当防衛」法を紹介して批評されている訳であり、確信の合理性が問題となっていて広く正当防衛が使えるという話だけを取り上げることがバランスが良いのか、という疑問はなおあたると思われる。

2016-09-24 ラブライブ!サンシャイン!!第1話〜第12話までの法的分析

[]ラブライブ!サンシャイン!!第1話〜第12話までの法的分析 21:37 ラブライブ!サンシャイン!!第1話〜第12話までの法的分析 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常 を含むブックマーク ラブライブ!サンシャイン!!第1話〜第12話までの法的分析 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常 のブックマークコメント


注意:本エントリはラブライブ!サンシャイン!!第12話(公開日である9月24日基準で「先週」分)までのネタバレを含んでいます。お気をつけ下さい!




ラブライブ!サンシャイン!!はこの3ヶ月間の私の生活の中心を構成し、生きる意味を与えてくれた。


既に、QBの勧誘にも勝るとも劣らないスクールアイドルへの勧誘方法の悪辣性については、



スクールアイドル勧誘規制とストーカー規制法〜ラブライブ!サンシャイン!!の法的考察 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常


の中で紹介したところであるが、


本日、最終話、第13話が放映されるにあたり、第1話から第12話までの法的考察をまとめたい。


1.個人的ベスト5


 まずは個人的ベスト5から。


 ベスト4及び5は、

中二病は、自分の好きな、輝いている姿を迷わず見せるという「自己実現」である。リトルデーモンとなるよう勧誘することは政治過程にも影響を与える自己統治の価値がある。表現の自由(憲法21条)の最も核心的な保護対象だ。



お小遣いを前借りして東京に行くというのはラブライブ!伝統の「法律の抜け穴」を突く名案だ。未成年者が東京旅行が終わった後に消費貸借契約を取り消す(民法5条2項)ことで、その返済を免れることができる(民法121条但書)。


思わず中二病の憲法的意義を再確認してしまうような第5話のヨハネに対する発言、そして映画(ラブライブ!The School Idol Movie)の穂乃果の名台詞を受け継ぐ第7話の発言に、千歌ちゃんが主人公にふさわしい「大物」だと確信しました



ベスト3はこれ。



徒歩1分あたり「80メートル」と決めたのは不動産の表示に関する公正競争規約施行規則10条10号であって、私立学校には適用されない。

「これが私たちの町です! 沼津駅徒歩1分(分速10キロ換算)!」

と言っても大丈夫? (ダメです!)



第6話の、廃校を免れるためなら法的に危ない宣伝文句をも辞さないAqoursの必死さに、ついつい法の抜け穴を探ってみてしまったが、やっぱりダメでしょうね。



第2位は、


「善子ちゃん!」「ギラン」二人の少女の視線が交錯する。

この瞬間、二人の間に

「共謀」

が成立した。

そこで千歌も逮捕罪(刑法220条)の共謀共同正犯(刑法60条)としての罪責を負う。


第9話の、いわゆるヨハネによる身柄拘束(二回目)ですね。現在研修所で集合修習中の皆様、こうやって現場共謀を認定するのが検察・刑裁です!



さて、輝ける第一位は!


Q「未成年者を理事又は監事に選任することはできますか?」

A「できます。(…)ただし(…)その法定代理人の同意を得なければなりません」

(俵正市『Q&A学校法人の管理機関をめぐる問題と対策』3頁)


第3話の鞠莉の衝撃の宣言に、ついつい専門書を買ってしまった。



小原パパ・ママが同意すれば、鞠莉は確かに理事長になれることが確認できたことに衝撃を受けた。



ということで、以下、各話毎に、法律ネタをまとめてみます。


2.第1話

・ルビィへの勧誘は最初はまだしも、最後は、「人の身体又は衣服を捕らえ」たとして、執拗な客引き等の禁止(静岡県迷惑行為防止条例10条2項2号)に違反するだろう。

・仮の名を用い、自己の実名を明かしたくないという自己のプライバシーに対する意向は法的に保護される(大津彦根支判平成27年1月22日参照)。ヨハネと名乗ったにも関わらず、実名を暴露した行為は損害賠償ものだ。

・学則上の部活動設立要件を満たしても「生徒会長でいる限り認めない」というのは、明らかな他事考慮であり、その拒否処分は違法である。私立学校なので民事訴訟法にもとづき承認を求めるべき。

・命を助けようと梨子を抱き止めるのは事務管理(民法697条)だが、本人の「意思に従って事務管理をしなければならない」(同2項)点に鑑みると、振り切ろうとしたのになお追いすがるのは違法?

・スクールアイドル加入契約は、契約の一種なので、双方の意思の合致が必要だ。「一緒にスクールアイドル始めませんか?」に対して「ごめんなさい。」では意思が合致せず、契約は成立しない。


3.第2話

・「ごめんなさい」と言う梨子に対し執拗に勧誘を続ける千歌。ストーカー規制法2条1項1号の「恋愛感情その他の好意の感情」該当性は微妙だが、静岡県迷惑防止条例4条の正当な理由なきつきまとい行為だ。

・「んん…。ごめんなさい…。」と怪訝な表情で断る梨子。これはストーカー被害者支援用語でいうところの「報酬」をストーカーに与えていることになる。生活圏に侵入されてめちゃくちゃになる前に、弁護士に相談だ!

・国民的アイドル、μ’sの名前を間違えることで、μ’sを侮辱した千歌。確かに民法では軽率な過失でも不法行為は成立するが、少なくとも「第三者」であるダイヤ様は千歌に対して請求権を持たない。

・校内放送のスイッチをオンにして生徒会長がアイドルオタクであることを校内中にしらしめたことは不法行為になり得る。故意はないだろうが、過失くらいはあるのでは?

・ストーカー行為にことかいてスカートめくりにまで及ぶのは違法だが、一瞬めくった程度だと強制わいせつには至らず、条例違反程度か。

・限定プリンを勝手に食べるのは窃盗罪。ただ、いつまでも取っておいて、自分のものであるかわからなくなっているとすると、窃盗の故意が否定されるかも。

・ぬいぐるみや浮き輪を投げたところ、違う人に命中!これは典型的な方法の錯誤(打撃の錯誤)であり、故意は阻却されない。


4.第3話

Q「未成年者を理事又は監事に選任することはできますか?」

A「できます。(…)ただし(…)その法定代理人の同意を得なければなりません」(俵正市『Q&A学校法人の管理機関をめぐる問題と対策』3頁)

・スキンシップという趣旨だろうが、胸を撫でて「相変わらず」等と言うのは、強制わいせつと条例違反の中間だろう。

・顔に「バカチカ」と書くのは、生理的機能も身体の完全性も害していないから傷害にはならないだろう。ただ、暴行罪と侮辱罪はあり得る。

・器物損壊は犬でも成立し得るが、傷害に至らないと成立しない。動物愛護法の愛護動物殺傷罪(46条1項)も同じ。

沼津駅前等の交通のひんぱんな道路において宣伝物、印刷物その他のものを配布若しくは販売する場合、道路交通法77条1項4号および静岡県道路交通法施行細則11条1項5号により、警察署長の許可が必要だ。「全速前進ー! ヨーソロー!」の前に法令を確認すべき!?

・ファーストライブに向けた沼津駅前でのビラ配りと執拗な客引き等の禁止(静岡県迷惑行為防止条例10条2項2号)については、千歌ちゃんの壁ドンまで至れば「進路に立ち塞が」ったとして違反になるが、曜ちゃん程度は問題ないだろう。

・日本一の鳥取砂丘を守り育てる条例10条1項1号のような規定があれば、砂浜への落書きは違法になるが、静岡県条例にはそのような規定は見当たらない。

・災害対策基本法第49条4第1項及び同第60条第2項に基づき、ゲリラ豪雨という災害に対応するため、避難所として浦の星女学園の体育館が指定されたというのが法解釈的には一番可能性が高い??


5.第4話

・内心と違う意思表示を相手方が善意無過失で信じた場合、民法93条(心裡留保)の規定によりこの意思表示は有効となる。一生懸命翻意するよう説得しなくとも、民法の規定により、既に運命は決まっていたのだ!

・4話冒頭の図書館のシーンを実写化する場合、必然的に本棚の本が映り込むが、それぞれの著作権者の許可を得るのは煩瑣だろう。平成24年改正により新設された著作権法30条の2により、基本的に許可は不要である。

・学内の規則である「5人以上」の人数要件に違反しているのを知りながらノリノリで判子を押す理事長は、文科省の設けている理事長の資質に関する基準を満たさないと思われる。

・学校法人の寄附行為及び寄附行為の変更の認可に関する審査基準第一の三(三)理事長は学校法人の業務の全般について主導的な役割等を果たすために必要な知識又は経験を有し,その職務を十分に果たすことができると認められる者であること。

・理事長が学生を兼ねる場合(それ自体の可否は兎も角)、少なくとも来自らが学生としての立場で加入するつもりの団体設立許可については、利益相反行為として特別代理人の選任(私立学校法40条の5)が必要だろう。

・部室にあった図書館の本は取得時効の主張も考えられる程埃を被っていたが、「所有の意思」(民法162条)が要件。元々が借りるつもりで所有の意思がない(他主占有)なら長く占有していても返さないといけない。


6.第5話

・電磁的記録媒体の効用をデータが記憶されていることそれ自体に求めれば、衣装等のデータを飛ばせば、器物損壊の構成要件を満たす(法教51号86頁、東京高判平成24年3月26日参照)ただし、故意がないので無罪。

・動物を一種の「放し飼い」状態にしていれば、相当の注意をもってその管理をしたとは言えず、その動物が与えた害について民法718条により責任を負わないといけないだろう。占有者は、腰の治療費の賠償等が必要だ。

・なお、「人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し、又はその監守を怠つてこれを逃がした者」(軽犯罪法1条12号)

・準委任契約は法律行為ではない事務を委託する場合に成立し、受任者は善管注意義務を負う(民法656条、644条)。単なる注意以上のものが要請されており、予想外の展開でもきちんと制止しなければ債務不履行だ。

・一気に順位を上げるきっかけとなったあのビデオが、後日「黒歴史」になった場合、検索エンジンに対し、検索結果からこのビデオを外すよう要請できるか。これは忘れられる権利の問題である。未成年なので肯定の方向か。

・はるか十数年前の、幼稚園における恥ずかしい発言の内容はプライバシーとして保護されるだろう。他人の幼稚園時代の発言を第三者に無断で漏えいすることは、プライバシー侵害として損害賠償等の請求対象になるだろう。

神学は不勉強であるものの、きっと天使にとっては、「故意堕天罪」が一番重い犯罪で、次が「過失堕天罪」なのではないだろうか。過失堕天罪の罰は天国のロッカー内にて拘禁とか?

中二病は、自分の好きな、輝いている姿を迷わず見せる、自己実現である。リトルデーモンとなるよう勧誘することは政治過程にも影響を与える自己統治の価値がある。表現の自由(憲法21条)の最も核心的な保護対象だ。


7.第6話

・「統廃合は廃校」というのは、法律的に正しい。私立学校法50条1項4号により、他の学校法人と合併することは学校法人の解散事由となる。なお、理事長一人が反対しても、理事の3分の2が同意すれば合併は成立し得る(同法52条1項)。

・鳥の羽を髪に突き刺して「堕天」させる行為は一見暴行罪(刑法208条)だが、PTSDの招来が傷害罪(刑法204条)という判例(最決平成24年7月24日刑集66巻8号709頁)によれば、中二病を発病させたとして傷害罪に問える?

・幼稚園時代の恥ずかしい言動を暴露することは違法なプライバシー侵害行為であり、損害賠償責任を負うだろう。なお、相互に当時のことを第三者に対し暴露しあっているようだが、不法行為に基づく損害賠償は相殺できない(民法509条)。

・先輩に唆されて短いスカートで踊る等、不道徳な人と交際し(少年法3条3号ハ)、また、日が暮れるまで帰れという保護者の正当な監督に服さない(同イ)少女は「虞犯」として少年審判の対象となり得る。姉の心配は法律上の根拠があった?

・徒歩1分を80メートルと決めたのは不動産の表示に関する公正競争規約施行規則10条10号であって、私立学校には適用されない。

「これが私たちの町です!沼津駅徒歩1分(分速10キロ換算)!」

といっても大丈夫? (ダメです!)

・動物の「占有者」は民法718条1項に基づき動物が他人に及ぼした損害について賠償責任を負う。しかし、喫茶店の犬(わた)を客が一瞬抱いただけでは、単なる占有補助者であって喫茶店オーナーと独立した占有者とは認められないだろう。

・住居侵入罪(刑法130条)は住居権者の意に反する侵入について成立する。勝手に入って来ると住居権者である両親が「激おこぷんぷん丸」なのであれば、その(推定的)同意がない以上、いくら侵入行為につき子どもの同意があっても有罪だ。

・「一生つきまとってやる」といった脅迫文言をもって脅迫罪で有罪とした事案(名古屋地判平成19年3月12日裁判所HP)等に鑑みると、「ストーカー宣言」をして自らの計画への協力を強要する行為は強要罪(刑法223条1項)だろう。


8.第7話

・お小遣いを前借りして東京に行くというのはラブライブ!伝統の「法律の抜け穴」を突く名案だ。未成年者が東京旅行が終わった後に消費貸借契約を取り消す(民法5条2項)ことで、その返済を免れることができる(民法121条但書)。

・相手の体のすぐ横を突く「壁ドン」行為はその程度によるが暴行罪(刑法208条)が成立し得るだろう(最決昭和39年1月28日刑集18巻1号31頁参照)。

・内浦民は田舎者である旨を摘示して公共の電波上でその名誉を毀損したことは沼津市内浦の人口が約2000人であることに鑑みると、名誉毀損が成立し得る(ほぼ同数で名誉毀損を肯定した最判平成15年10月16日を参照のこと)。

・お菓子の差し入れについては「浦女の凄いところを見せる」という負担がついた負担付き贈与(民法553条)というより、純粋な贈与と期待の表明と理解すべき。さもなくば「くやしくないの?」となった時、債務不履行の問題になってしまう。

・旅館のものだと信じて、同行者がお土産として購入したおまんじゅうを誤って食べてしまうのは、窃盗罪(刑法235条)の構成要件を満たし得るが、基本的には故意がなく無罪だろう。不法行為責任(民法709条)は別途成立し得る。

・公共の娯楽場でライバル宣言をしても、「著しく粗野又は乱暴な言動」とまでは言えないので、軽犯罪法1条5号に該当するとは言い難いのではなかろうか。それによって強く動揺させたとして業務妨害(刑法234条他)の可能性はある。


9.第8話

・人は、他人からその氏名を正確に呼称されることについて人格的な利益を有する(最判昭和63年2月16日民集42巻2号27頁)。嫌がってるにも関わらず「善子」と呼ぶ行為は違法行為である。

・天界から魔力を放つことにより、セイントスノーの順位に影響を及ぼしたのであれば、これは業務妨害(刑法233条、234条)に該当し得るが、魔力は「偽計」でも「威力」でもなく、不能犯だろう。

・複数人で会場前にうろついて、「ラブライブは遊びじゃない」「馬鹿にしないで」等とすごんで不安を覚えさせるという行為は、東京都迷惑条例5条2項違反なのではなかろうか。

・部屋までたどりつけば住居侵入罪(刑法130条)が成立することは明らかだが、たとえ端っこであっても私有地に侵入した以上は、住居侵入罪の成立を免れることはできないだろう。

・「うんというまでハグする」は、義務がないことを行わない限り身体の自由に害を加えると告知し、実際に暴力を用いているのだから、強要罪(刑法223条)の構成要件に該当する犯罪行為だ。

・演奏債務は典型的な不代替債務で間接強制しかあり得ない。しかし、性質上、間接強制で無理矢理演奏させても債務の本旨に従った履行とはいえず、その意味では間接強制も不可能と思われる。

・一方が両手を広げても、もう一方がそれを受け入れず素通りしてしまえば、百合は成立しない。これはまさに申込と承諾が合致してはじめて契約が成立する様を象徴するシーンと言えるだろう。

・他人が溺れそうになるのを見ただけではこれを止める義務は生じないが、法律、契約、慣習等で作為義務が生じる場合がある。スクールアイドルのメンバーもそのような慣習上の作為義務を発生させる?



10.第9話

・「善子ちゃん!」「ギラン」二人少女の視線が交錯する。

この瞬間、二人の間に

「共謀」

が成立した。

そこで千歌も逮捕罪(刑法220条)の共謀共同正犯(刑法60条)としての罪責を負う。

・天界の眷属の憑依によって性格が変化したとしても、天界の眷属は「人」として扱われないと思われるし、性格の変化は刑法上保護されていないことから、刑事責任の追及は困難。せいぜい不法行為か。

・刑法は第三者に対する正当防衛を認めるので、友人を助けるため、友人を捕まえた犯人の頭をチョップすることは、(暴行罪の構成要件を満たすが)正当防衛(刑法36条)として違法性が阻却される。

・スクールアイドルの衣装が落ちてきたのを拾う行為は、占有離脱物横領罪(刑法254条)が成立し得るが、単に「制服」に反応しただけで、それを処分しようという意思まではないかもしれない。

・他人の事故防止のためわざと歌わないことは帰責性否定事由たり得るか。難しい問題であるが、純粋な第三者ではなく同じスクールアイドルグループの一員の事情である以上、帰責性を否定し得ないだろう。

・相手が自分の当時の説明不足を悔い、黙示にビンタされることについて同意していれば、当該法益は処分可能な法益であることから同意により暴行罪(刑法208条)の違法性が阻却されるだろう。


11.第10話

・建造物侵入罪(刑法130条)は「正当な理由がない」場合にのみ成立する。「百合」は正当な理由となるという一人説を取りたいところである。

μ’sの合宿のスケジュールを示す図表は海未が著作権を有するが、これを複製できるか。創作性で処理するか私的使用(著作権法30条)で処理するかだろう。

・他人を溺れさせるのは殺人未遂(刑法203条、199条)にもなり得るが、そこまでの故意はないだろうから暴行罪(刑法208条)位で終わりか。

・「おばかさん」程度であれば、侮辱行為ではあるが社会通念上許される限度を超えないとして適法になる余地があるが、一文字抜いた「おばさん」はどうだろうか。

・「堕天使の涙」を食べさせることで、辛さで身体の完全性を害する行為は傷害罪(刑法204条)になり得るだろう。ただ、明らかに怪しい外観なので、危険の引受けがあった可能性も。

・寝ながら胸を揉むのは強制わいせつ(刑法176条)の構成要件に該当するが故意がないというよりは、そもそも「行為」ですらないという方が筋が良さそう。

・ 旅館の神様が尻子玉を抜く行為は一見傷害罪(刑法204条)に見えるが、尻子玉というものは存在しないので不能犯だし、そもそも旅館の神様は刑法上「人」として扱われない。


12.第11話

・特訓という名目でプール掃除をAqoursのメンバーにやらせるのは、先輩の権限濫用ないしいじめとも思われるが、コスプレしてノリノリの人もいるので、今回は適法の範囲内のように思われる。

・リトルデーモンの皆に漆黒卿の力を貰う契約の法的性質如何?力を貸す行為は一般には「法律行為でない事務の委託」(民法656条)として準委任の場合が多いが、漆黒卿の力に民法は適用される?

・生徒会長は理事長に仕事を手伝わせられるか。「学校法人を代表し、その業務を総理する」(私立学校法37条1項)理事長は生徒会長とも利害が対立し得る以上、会長を補佐するのは不適切だろう。

・突然襲いかかって胸を揉む行為は強制わいせつ罪(刑法176条)だから、自己の権利を防衛するため、犯人を投げ飛ばして尻餅をつかせる行為は正当防衛(刑法36条)として違法性が阻却される。

百合のあまり壁ドンしたり、押し倒してしまう行為。これらを正当業務行為(刑法35条)といえないのであれば、期待可能性の欠缺の理論を適用して二人を救うのが法律家だろう。百合万歳!


13.第12話

・闇の契約を結ぶことで漆黒の鼓動を打つ悩みを抱えた場合どうすればよいか。多分闇の契約は公序良俗違反(民法90条)なので、法律上の保護は受けられない。やはり親切な先輩に悩みを聞いてもらう等の事実上の対応が適切であろう。

・リトルデーモンから魔力、霊力、すべての力を受け取るための魔方陣のロウソクの火を消す行為はどのように評価されるか。リトルデーモンとヨハネの間の契約を侵害したという場合、債権侵害の法理が適用され、賠償が限定される可能性がある。

・握手は不代替作為義務であって、いくら別人が代わりに握手したり写真を撮ってあげるといっても、到底債務の本旨に従った履行にはならないだろう。ダイヤ様は民法を勉強すべきである。

・目のところを強く押さえつけ、跡まで残るのは傷害罪(刑法204条)であるが、自己の名誉に対する現在の危難を避けるためやむを得ずにした行為として緊急避難(刑法37条1項)の可能性がある。

・電車の中で隣に座って胸を触りながら「ビッグになったね」と言う行為に対しては、「訴えるよ」というのが正しい。強制わいせつ罪は親告罪(刑法180条1項、176条)なので、告訴してはじめて起訴できる。



まとめ

ラブライブ!」の伝統を引く要素も、「サンシャイン!!」オリジナルの要素もあって、どちらも大変楽しめる傑作アニメ、ラブライブ!サンシャイン!!法学的にも興味深い論点が目白押しです!


「Dear 千歌さん、私はAqoursが大好きです。法律をもっと勉強して早く0を1にしたいと強く想いました。」


3ヶ月間、楽しい時間をありがとうございました!


(来月から、何を心の支えに生きて行けばいいんだろうか。。。。?)

2012-10-20 住居侵入事件の次は、建造物侵入事件!?

[][]QBを助けようと改装中のフロアに侵入したまどかに緊急避難が成立するか? 14:10 QBを助けようと改装中のフロアに侵入したまどかに緊急避難が成立するか? - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常 を含むブックマーク QBを助けようと改装中のフロアに侵入したまどかに緊急避難が成立するか? - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常 のブックマークコメント

1.はじめに

ここ10日くらい、ツイッター上で、毎日1個、魔法少女まどか☆マギカの法学考察をやらせていただいている。フォロワーさんの中にもまどマギがお好きな方がいらっしゃるため、お陰でいろいろと議論をさせていただけることに感謝している。

今回、その議論を踏まえて次の事例を法的に検討してみたい。


第一話。さやかと一緒にCDショップで物色中、

まどかの頭の中に「助けて」という声が聞こえる。

声のする方へと改装中のフロアを進んでいく、まどか。

そこには、ほむほむに襲われる傷だらけのQBがいた。


全てを理解している今なら、鑑賞しながらまどかに対し、

「そいつの言葉に、耳を貸しちゃダメぇ!!」

と言いたくなりますが、まだ第1話。まどかが何のカラクリも分かっていない段階なのですから、しょうがないだろう。


さて、まどかが改装中のフロアに入っていった行為は、形式的には *1建造物侵入罪に該当する*2


刑法130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

「改装中」として一般人の立ち入りを禁止するフロアに侵入することは刑法130条違反である*3


まどかは、このまま有罪になってしまうのか!?


2.正当防衛も、緊急避難もあるんだよ

形式的に犯罪を定める刑法の条文*4に該当しても、その行為が「悪い」(刑法用語で「違法」)といえない限り処罰はできない。それは、刑罰という重大な不利益を科せるのは、国会が犯罪として定めた行為のうち、悪くて(違法で)非難できる(有責の)行為だけだからである。


ところで、国会が刑法において犯罪と定めた行為は通常は悪い行為である。だから、むしろ、「その行為が悪いとはいえない例外的事情(違法性阻却事由)」があるかが問題となる。


(正当防衛

第36条1項  急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

緊急避難

第37条1項  自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。


まず、正当防衛(刑法36条1項)は、自分を襲う等の「悪い相手」に対する防御のために、その相手に対して被害を与える行為は仮に形式的に刑法の条文にあたっていても「悪い」とは言えないよねということである。イメージとしては、気が狂ってほむほむを殺そうとしたマミ先輩からほむほむの生命を守るために、マミ先輩を殺す等である*5。ここでは、悪い*6人(マミ先輩)がいて、その人(マミ先輩)に対する対抗が問題となっている。


まどか建造物侵入事案においては、店の店主の「建物(の改装部分)に勝手に入られたくない」という利益(法益)が侵害されている訳だが、別に店主が何か悪いことをした訳ではない。店主に対する対抗としての店主に対する建造物侵入行為が問題となっていない以上、正当防衛は成立しないのである*7


次が緊急避難であり、これはまどかの行為について、一見、成立しそうにも見える。

緊急避難が何なのかについては、リクルトスツーさんの新刊漫画、見滝原で「交通安全」の話をしよう

がわかりやすい*8ので、ぜひご参照されたいが、イメージとしては、野犬に襲*9われたので、隣の家に侵入して逃げるといった場合である。確かに、正当防衛と異なり、隣の家の人は何も悪くない。でも、そのままだと犬に噛まれて自分の身体が害されるという場合、それよりもより重要性が低い隣の人の「住居に入られたくない」という利益を犠牲にしてもしょうがない(「悪い」とはいえず無罪)というものである。


緊急避難が認められるためには、[1]生命、身体、財産への現在の危難、[2]避難の意思、[3]それ以外に危難を避ける方法がないこと(補充性)、[4]生じた害が避けようとした害より小さいこと(法益の均衡)が必要である。


ここで、まどかは、QBに現在生じている生命、身体の危難を避けるため、唯一の方法としてQBがいままさに襲撃されている改装中のフロアに侵入しているところ、せいぜい住居侵入程度の害しか生じていないのだから、緊急避難が認められると思われる。


ところが、QBは人間ではない


そもそも、緊急避難というのは、刑法が守ろうとするより大きい利益(法益)を守るため、より小さい利益は犠牲にしてもしょうがないというものである。ところが愛護動物*10ですらない宇宙人の身体や生命は法益ではない。つまり刑法はこのようなものを守ろうとしていないのだ。そこで、QBに対する危難が生じていても、店の経営者の法益*11を犠牲にしていい理由はなく、QBを助けるための緊急避難ができないのである*12


3.類推解釈の禁止と向き合えますか?

ここで、

というコメントをいただいた。



確かに、民法において、契約の主体となることを欲するQBを人間と同様に扱うことには合理性がある。しかし、刑法には類推解釈の禁止という大原則がある。


例えば、「巴マミをボッチにした人は死刑」という法律があるとしよう。ここで、志筑仁美(緑の子)が上条君を誘惑して、さやかをボッチにしたとしよう。


「マミ先輩もさやかちゃんも、多感な見滝原中学の生徒で、かつ魔法少女なのであって、ボッチにしたらソウルジェムが真っ黒になって魔女化してしまう。こんな共通点があるんだから、マミ先輩というのはあくまでも例示であって、さやかをボッチにした仁美も死刑だ!」


こういう、似たモノについての規定をそのものとは違うが似ているモノに類推して適用することが「類推解釈」だ。

このような解釈は、民事法では広く認められているが、刑事法では厳禁である。


刑法は、法益という、生命、身体、住居等のとても重要な利益を守るために、「生命を侵害しちゃだめだぞ」といった規定を置いている(法益保護機能)。


しかし、これと同時に、刑法は「人権保障機能」という重要な機能を担っている。刑法*13が刑罰を定めているということは、逆にいうと、犯罪として定められていない限りは、何をやっても罰せられないという意味で、何がやっていいことで何が*14やってはいけないことかを明示し、その範囲において国民の自由を守るという意味がある。


ところが、類推解釈で「この行為は犯罪行為と似てるから、やっぱり犯罪!」とされてしまうと、刑法の人権保障機能が阻害される。人々は安心して活動できなくなるのである。


そこで、QBを刑法上「人」とみなすことは、刑法の類推適用となるのであり、なかなか難しいだろう*15



4.最後に残った誤想避難

このままでは、まどかは有罪になってしまう!?


そもそも、なぜまどかが改装中の暗いフロアに侵入したのか。それは、「助けて!」「僕を助けて」と、頭の中に声が響き、誰かが助けを呼んでいる!と思ったからである。

確かに、「魔法少女の衣装案」をノートにまとめる等ややメルヘンチックなところはあるが、鹿目まどかは平凡な一中学生。そりゃあ、人間ではない宇宙人が「助けて!」「僕を助けて」というとは思ってないだろう。


そうすると、まどかの主観的には「助けを求めている人を救済するため建造物に侵入した」という緊急避難が成立しているのである。

主観:緊急避難が、成立している、ような!?

客観:(宇宙人を救うことが)緊急避難になんてなる訳ない。


このような、客観的には緊急避難とは言えないが、主観的には緊急避難だと思い込んでいる*16場合が、「誤想避難」の問題である。


そもそも、犯罪が成立するためには「故意」が必要である(故意責任の原則)*17

 故意、それは、非難である。犯罪に対し刑罰という重い制約を課す以上、「今のはマズかったよ、まどか!」と非難できない限り、犯罪とはいえないのである。


その「非難」というのは、わざと悪いことをやる、「自分がそれをやっていると認識しながら悪いことをやる」*18ことに対する非難である。

確かに、条文には悪いことのリスト(犯罪カタログ)が記載されているので、自分が刑法の条文によって「やるな」と言われていることをやっていると分かっていれば*19、通常は非難できる。改装中と書かれて閉鎖されている空間に侵入すること*20自体は、まどかは認識していた。


しかし、緊急避難や正当防衛のように、「悪い」とはいえなくなる事情があると誤って信じていれば*21「自分がそれをやっていると認識しながら悪いことをやる」とはいえない。


そう、まどかのように、自分が緊急避難をやってる、悪いことではなくなる(違法性が阻却される)と誤解している人は「非難」をすることができず、故意が否定され、無罪なのである(「誤想避難」)! *22



まとめ

まどかは、建造物侵入罪を規定する条文(構成要件)に該当する行為を行い、また、それは悪い(違法)行為である。

しかし、人間の命を守ろうとして行った行為(緊急避難を目的とする行為)であり、実際には助けようとした人がQBという宇宙人であったため、緊急避難にはならないとしても、まどかを「ひどい人だ!」と非難することはできない。そこで、誤想避難として故意が欠けるので無罪となる。

なお、本論考を作成する際には、ツイッターで行った、@kokonoyaさん、@pat_R_I_O_T_ さんとの議論を参考にさせていただいた。ここに深く感謝の意を表させていただく。

*1:法律用語でいうと「構成要件的には」

*2:建造物侵入罪の判例としては、出身中学校に侵入して、校庭に机を並べて「9」の字を描いたというリアル笹の葉ラプソディ事件がある。東京地判昭和63年7月7日判例タイムズ676号243頁

*3:少なくとも構成要件レベルでは。

*4:構成要件

*5:実は、この事例には結構細かい論点がたくさんあるが、ここでは割愛し、同人誌に譲る。

*6:違法行為を行う

*7:正当防衛はかなり緩い要件で認められてしまう。自分は何も悪いことをしていない店主が、「正当防衛だから」といって権利を侵害されるのはかわいそうだ。そこで、緊急避難の問題となる。

*8:38頁の力作である

*9:@koudukiyuuki様、ご指摘ありがとうございます!

*10動物愛護法44条4項2号により「人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの」

*11:管理者の許諾権

*12: 例えば、山口「刑法(第2版)」76頁は、「現在の危難」を「の生命、身体、自由又は財産の侵害の危険が切迫している状態をいう」とする。

*13:刑法典という意味ではなく、動物愛護法の刑罰規定等を含む。

*14:法律上

*15:なお、QBをマミ先輩の「財物」とみるという方向性もおりますが、所有関係にあるのか、単にQBは「まどかを契約させたい」、マミ先輩は「ボッチから脱したい」ということで相互に協力関係をもっているという程度で、所有関係にはないのではとも思われます。

*16:別に、まどかが「緊急避難」という用語を知ってるかどうかが問題ではない。「助けをするためだ!」と思っているということが問題である。

*17:過失犯の話もありますが、建造物侵入に過失犯処罰規定はないので。

*18:山口「刑法(第2版)」108頁でいうところの「違法という評価を受ける事実の認識」

*19:構成要件事実の認識・予見があれば

*20:建造物侵入罪の構成要件該当行為

*21:違法性阻却事由該当事実を認識、予見していれば

*22:なお、誤想避難を認めた先例はみつからなかった。誤想過剰避難を認めた事例として、大阪簡判昭60・12・11判時1204号161頁、東京地判平成9年12月12日判例タイムズ976号250頁

KOM2010KOM2010 2012/10/20 15:42 RPガスです。

お説のように、インキュベーターを刑法上「人」としてとらえず、かつ、他人の所有物でも、愛護法対象の動物でもないQBを緊急避難対象の保全法益ととらえることができないというのは、説得力があると思います。


一般に、被告人、犯人にとって有利な類推解釈は認められているところ、緊急避難の適用範囲を拡大的に類推適用することも可能であるといえます。つまり、緊急避難によって保護されるべき範囲を拡大して、QBをその対象とすることは許されると考えます。

ただ、個人的には、刑法上もインキュベーターも「人」として扱うことは可能かと思います。たしかに、感情をもちあわせておらず、おおよそ人とはいいえないような肉体構成をとるインキュベーターが、人と同格同等の権利能力が認められるということは、民事上の観点からしてもさすがに肯定できないでしょう。しかし、人と対話することが可能で、その言動に従い「一定の」行動がなされている以上は、刑法上「人」として扱うことは、認めてもいいのではないかと思います。
→もちろん、我が国にはインキュベーターについて真正面から「人」としての権利能力を認めた規定は存在しないため、究極的には立法的手当は必要になろう。

そうすると、本件では緊急避難を認めてもいいのではないかと思います。

ただ、周知のように、QBはほむらが指摘するように魔法少女を蔓延させ、終局的には魔女を大量発生させるという、いわば地球にとって害虫的存在(害虫といった生易しいものではないが)になります。そうすると、「害虫」を保護するために建物の管理権を侵害したのであるから、法益均衡性が維持できず、この点で緊急避難が否定される余地はあります。

そのあとの展開は、まどかの保全法益についての誤信ということで、誤想避難が問題になろうかと思います。
→この点で議論したほうがしっくりくるのでは?つまり、まどかが仮に「QBは自分を含めて、やがてとんでもない厄災をもたらす存在である」ということを知っていれば、まどかはQBを助けるために建物の中へと立ち入ったのであろうか、という点が問題になりそうである。

ronnorronnor 2012/10/22 01:52 ありがとうございます。「被告人に有利な類推適用」という議論は1つの議論としてあり得ますね。ただ、「ほむほむがQBを殺すのは、立法的手当がなくとも殺人」という見解をまどかとの関係に限っているとはいえ取ってしまうことが妥当かというのは気になるところです。
「害虫駆除」のような議論をされているのは、たぶんこの問題意識からだと思うのですが、もし、立法的に宇宙人を「二等人類」とする解決を取るなら別ですが、立法なしに解釈で一度緊急避難で保護し得る法益たる「人(の生命身体)」と解釈してしまった以上は、「人」の命や身体が建物の管理権に劣後するという解釈は、やや苦しいのではないかと思うのです。
それでは!