植田正治展『写真の作法』〜高さ地上3センチのリアリティー(2)

植田正治 私の写真作法
 背景の喪失―植田さんの「砂丘シリーズ」がモダンでかっこいい半面、ぼくの心を少し傷つけるかのように引っかくのは、その砂丘が消し去った「背景」について想うからだ。
 1963年に大阪府で生まれた僕が小学校に上がる頃、つまり70年代に入ると、うちの近所の水田や沼地はどんどん埋め立てられていった。ガキンチョのぼくが、アメリカザリガニやフナを盛んに釣り上げていた沼地や、トノサマガエルなどを捕まえていた水田は、住宅地へと様変わりした。それは経済成長の「賜物」だった。

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